14 つよつよミミックの怒り
アルカの村を襲った連中はグロイザーという名前のプレイヤーグループだとハコザキが言っていた。
オレ様が食べたレプラコーンの記憶からはどうやら数人の男達のグループだったようだ。
コイツら、楽しんでアルカの家族や仲間を殺したり連れ去ったようだ。
——全く気に入らない!——
食うために殺すならまだわかるが、食いもしないのに殺すのはエサへの冒涜だ!
それに日持ちしなければ殺して保存するわけでもないのですぐに腐る、全く非合理的だ。
オレ様はアルカに台車でダンジョンまで運ばせ、ハコザキとアルカとオレ様で話し合いをする事にした。
アルカは人間に村の仲間を殺された事で、人間のハコザキも敵視している。
だが、今オレ様達はみんなで組む事で成り立っている。
もしこの関係を崩されればオレ様にも不利になる。
「アルカ、ハコザキがお前の仲間を殺したわけではないだろう、そろそろ口を聞いたらどうだ?」
「ご主人様ぁ、でもぉ、コイツはアタシの家族を殺した人間と同じ種族なんですぅ! 違うとはわかってても気持ちが許せないんですぅ!!」
今まで仲間のいなかったオレ様にはその気持ちは正直よくわからんが、一応コイツらはどちらも今はオレ様の僕だ。
だから下手にコイツらに仲違いされるとオレ様のエサ獲得の為にも困るわけだ。
「まあ、一応話を聞いてやれ。オレ様の命令だ」
「……わかりましたぁ!」
これでハコザキが話しやすくはなっただろう。
「ハコザキ、そのグロイザーってのは何だ?」
「ちょっと待ってください、あちゃー。もうバッテリーが無いなー。外部バッテリーあと一本か」
ハコザキがいつもの銀色の箱を開き、オレ様とアルカに何かを見せた。
「コレですね、コレがグロイザーの配信動画です」
オレ様とアルカが見たのは、数人の男達が剣と何かの棒を持ってアルカの仲間を虐殺するものだった。
どうやらハコザキが言うにはこれはエーゾーとかドーガというらしい。
それを見ていたアルカが途中でもう泣きそうになっていた。
流石にハコザキもそれ以上見せるのは良くないと思ったのか、銀色の箱をしまい、アルカに謝っていた。
「ゴメンよ、確認の為とはいえ、キミに辛いもの見せてしまったね。でも、ボクも許せないよ! 次のミミック様のエサはコイツらにしてやる!」
「ハコザキ、アンタ……アタシのお父さんお母さん達の仇打ち、手伝ってくれるのぉ? 相手人間なのにぃ……」
「もちろんだよ! あんな奴ら、絶対に許さない!!」
どうやらハコザキとアルカは仲直りしてくれたようだ。
「ミミック様、実はお願いがあるんですが、ボクも一度家に帰っていいですか? バッテリーの充電が切れそうなんです。バッテリーの充電をしないと配信用のコンピュータが使えないんです」
コイツが何を言ってるのかはよくわからん。
だがどうやらあの銀の箱も魔法生物の一種で、アイツにエサを与えなければいけない、そのエサはハコザキの家にあると考えればいいのか。
まあ、いいだろう。
それがオレ様のエサを用意する事になるなら、止める理由はない。
「わかった、その代わりオレ様も連れて行け」
「わかりました、ミミック様。……そうだ、アルカちゃんも家に来ない? もう帰る家ないんでしょ」
「……」
返事はしなかったが、アルカはオレ様を運ぶという役割があるので、着いていくしかない。
オレ様達は一度ダンジョンからハコザキの家に行く事になった。
アルカは黙ったままオレ様の台車を押した。
そんなアルカにハコザキは何かを上から被せたようだ。
「ほら、この上着着てたら人間の子供みたいに見えるから、ボク達の世界では亜人は存在を認められてないんだ」
「………ありがとぉ…………」
アルカは僅かに聞こえる程度の声でハコザキにお礼を言っていた。
この門の向こう側がハコザキのいた異世界なのか。