12 つよつよミミックの移動台車
ハコザキは何かおかしな事をやっている。
あの変な仮面を被り、銀色の板で何か指を使って作業をしているようだが、何をやっているのかはまるでわからん。
「ハコザキ、アンタ何やってるのよぉ?」
「アルカちゃんか、いや、これは動画の編集だよ。今までに倒したモンスターを動画にする事で国から貰える助成金の申請の証拠にするんだ。えっと、ゴブリン八匹にコボルト三匹、それにレッサーウルフ二匹、それとスライム四匹か……単位にすると、これか」
ハコザキが何をやっているのか、オレ様にはまるでわからん。
だが、それがエサを集める事に繋がるならオレ様は止めさせるつもりはない。
エサを手に入れるために工夫や努力をするのは当然の事だ。
働かざるもの食うべからず、確か以前食った賢者とか言ってたジジイがそんな事を言っていたな。
オレ様は食った相手の能力をラーニング出来る。
だから本当はハコザキを食えばアイツが何をしようとしていたのかはすぐに理解可能だ。
だが、アイツには何度かエサを連れてきてもらった恩もある。
だからアイツを食って知恵や知識を身につけるよりは、アイツの得意な事をやらせてエサを連れて来させた方がよほど良さそうだとオレ様は判断した。
「ハコザキ、アンタ……アタシをアルカちゃんって、ずいぶん馴れ馴れしいわねぇ。あのねぇ、言っとくけどアタシ、アンタ嫌いだからぁ。アタシと同じご主人様の僕同士だから一緒にいるだけだからねぇ!」
「わかってるよ、ボクだって下手にアルカには興味ないよ。ボクの趣味はもっと胸の大きくておしとやかな女の子なんだから」
「ひどーい! 何よそれ、やっぱアタシ、アンタ嫌いっ!!」
コイツらは、オレ様の前でいつもケンカしてるな。
「煩い、二人ともケンカしてると食ってしまうぞ!!」
「「スミマセン」」
このやりとり、何回目だ?
まあ、二人ともオレ様のエサを連れてくる点ではきちんと働いてくれているからな。
そこはきちんと認めてやろう。
「ご主人様ぁ、アタシちょっと気になる事があるんですがぁ」
「アルカ、どうした?」
「そろそろここから移動しませんかぁ? アタシもちょっとお家に帰りたいし」
「帰るだと? まさか、逃げ出すわけじゃないだろうな!?」
アルカが家に帰りたいと言い出した。
まあ、下僕にしたコイツがオレ様を裏切るとは思えんが、さあどうしたものだろうか。
ここでアルカに逃げられたらまた食えない日々に戻る可能性もある。
そう考えるとオレ様はアルカと一緒にいたほうがいいな。
——よし、決めた!——
「アルカ、帰ってもいいぞ。ただし条件がある!」
「ありがとうございますぅ、ご主人様ぁ。それで、条件って何ですかぁ?」
「オレ様をお前の家に連れて行け。ハコザキ、お前もついて来い!」
「えぇ? ご主人様ぁ、コイツも連れて行くんですかぁ?」
「何だ、不服なのか?」
「いえ、ご主人様が決めたなら文句はありませんけどぉ……」
アルカの表情が明らかにものすごく嫌そうな顔だ。
だが、もしここでハコザキやアルカをバラバラに行動させればどちらかが逃げ出しかねない。
それならオレ様とこの二人を常に一緒にいる状態にしないと安心できん。
だからオレ様は、オレ様をアルカの家に運ぶように命令した。
「あ。ミミック様、もし移動するなら良いものがありますよ。
そう言うとハコザキは何か平たい板を取り出し、組み立て出した。
「よし、これでミミック様を運びやすくなる」
「あら、アンタ面白い事考えるじゃない。確かにこれならご主人様をアタシが持ち運ばなくてもいいわ。ご主人様もこれでいいですかぁ?」
どうやらオレ様はハコザキの作った台車の上に乗せられ、そのままこのダンジョンから一度外に出る事になった。
今からアルカの家に向かう為だ。