11 つよつよミミックの初配信
何やらハコザキのヤツが喜んでいるようだ。
なんでもアイツの声から聞こえるのは、ハイシン、だの、アカウント、だのって言葉のようだ。
言葉の意味はよくわからんが、それがエサを連れてくる事に繋がるなら何の問題もない。
「ハコザキよ、お前の言っていたハイシン、だのアカウントだのってのはどういう意味だ?」
「ミミック様には少し難しいかと、決して馬鹿にしているわけではありませんが」
「ハコザキ! ご主人様に何よその態度ぉ!? アンタご主人様をパカにしてるんでしょぉ!」
アルカ、ことあるごとにハコザキとケンカするのはやめてくれ。
もしハコザキが逃げたらまたエサを手に入れるのが難しくなる。
「お前達、ケンカするなら食ってしまうぞ!」
「「スミマセン」」
まあこの弱い二人がオレ様に逆らえるわけがない。
二人がケンカを始めたらこれで脅せば良い。
どうやらハコザキが何か落胆しているようだ。
「くっそー、あんな無名配信者のクソヤクザのアカウント使うんじゃなかった。出し子やってた時に大高の暗証番号やメルアドとか全部知ってたのに、アイツが死んで大高の口座とアカウント全部凍結されやがった!!」
何を落ち込んでいるかわからんが、エサの調達だけはきちんとやってくれ。
「ハコザキ、今日もきちんとエサを調達出来るんだろうな!?」
「はい、今そのために闇ギルドの闇バイトを調べてるところです。もう少し待ってください……えっと、コイツは……崎山! 確かコイツは動物虐待の末に未成年をいい事に人を殺したかったと言って親子連れをナイフで刺し殺して不起訴になったヤツだ! コイツにしよう!」
どうやら今日のエサの品定めをしていたようだな。
下僕としては感心だ。
そしてその日の夕方くらい、アイツは今回のエサを連れてきた。
「よお、ザコ。オレはな、お前みたいなヤツはいじめられて当然だと思ってるんだよ! 弱い生き物が強い生き物に殺されたりいじめられるのは自然の摂理なんだよ。当時未成年のオレはガキとババアを殺したけど不起訴になった、それはオレのオヤジが警察署長だからなんだよ!」
エサが何かほざいている。
ハコザキはニコニコしながらそいつの話を聞いているようだ。
「このダンジョンってのはいいよな。コボルトとかをガス弾で殺しても怒られるどころか褒められて金までもらえるんだからよ」
「でもまだ君未成年じゃなかった? アカウントは成人しか作れないのでは?」
「だからてめーがアカウントを作れば良いんだろうが! オレはそれを使って配信するんだよ。当然助成金は全額オレのものだからな! 聞いてるか、ザコ!!」
ハコザキがどう見てもアイツより年下のクソガキ相手に頭を下げている。
どうやらプライドのなさがアイツのプライドなのだろう。
「お、宝箱じゃねーかよ。中身はオレのものだからな! ザコ、手を出すんじゃねーぞ!!」
バグッ!!
「いっ!? いでぇー、いでーよおおぉぉ! なんでこんなことするんだよー、お前には相手の痛みがわからねーのかよ」
どうやらまたハコザキが変なお面を被っているようだ。
「さて、ジャスティスチャンネル。一度目の配信だ! 今回社会のゴミ箱に食べられるのは、みなさんご存知の親子連れ殺しの通り魔、崎山慎一郎だ! マスゴミは必死で隠していたが、コイツの父親が警察署長なのをいいことに圧力をかけて不起訴にしていたのはネット民なら誰でも知っているはず!
「てめぇー! ハメやがったな!! 誰に依頼されたんだよ!? あのクソガキの父親かよ、てめぇ、ザコ! オレの親父に言ってテメーの人生終わらせてやる!!」
煩い、さっさと食われろ。
オレ様は舌でこいつの手足を引きちぎり、先に手足を平らげた。
「わ、悪かった。残りの人生賭けて償いますから、助けてください、お願いします!!」
アレ? コイツさっきハコザキに弱い生き物が強い生き物に殺されたりいじめられるのは自然の摂理だと言っていなかったか?
それなら俺様に食われろ。
どうやらオレ様の食事シーンがハコザキにはとても楽しかったらしい。
何やら——登録者が初日で1万超えた——とか言っているようだ。