9 つよつよミミックの初魔法
「キャアアアア! タケちゃんがー!!」
見るからに頭の悪そうなメスが叫んでいる。
煩い、食事が不味くなるから黙っていろ。
オレ様はハコザキの用意したエサを捕食している。
筋肉質な男は正直言って少し硬くてエグく汗臭い。
早く口直しにアイツを食わないと。
どうやらメスはつがいのやつが食われたのを見てションベンを漏らしたようだ。
オレ様は内臓は好きなんだがこの内臓から漏れ出す液体はどうも好きになれん。
まあそのまま捕食するには問題ないがな。
このガタイのいい男、ハコザキに何か言っていたようだがオレ様に食われているうちに何も言えなくなった。
ハコザキはオレ様の食事している姿を何か妙な道具を通して見ている。
なんなんだアレは?
オレ様の食事を見たいなら、そんな変な道具を使わなくても僕なら近くで見せてやるんだがな。
もしオレも食いたいとか言ったら断るがな!
エサを手に入れるのは最終的に食ったヤツの権利だ!
だがアルカもハコザキも、オレ様にエサをよこせと言った事は一度も無い。
よく出来たしつけだとは思うが、アルカはオレ様が不味くて食わなかった光る石や何かの道具を喜んで拾っているし、ハコザキは相変わらず変な道具からオレ様を見ている。
オレ様の食事を見ながらハコザキは何かを言っている。
「皆さん、見てください。暴力系配信者を気取っていた社会のゴミ、元プロボクサーの高島功が社会のゴミ箱に食べられてしまいました! 高島は前科三犯の札付きのクズです、え? 私が誰かですか? 私は正義の代行者、配信者ジャスティスです!!」
——アイツ、何を言ってんだ??——
「ジャスティスは神出鬼没! 今は寄生型配信者として社会のゴミを片付ける為に現れる正義の代行者ですが、いずれはジャスティスチャンネルを立ち上げます! 皆さん、許せない悪、恨みがある人は今度立ち上げるジャスティスチャンネルに登録お願いします!!」
ますますわけわからん。
あの変な仮面といい……。
まあ、男の方はもう食ったから、次はコイツだ。
おや、アルカがあのメスの持ってる耳飾りを引っ張ってる。
邪魔なものを取り外してオレ様が食べやすくしようとは、僕として優秀だな。
まあ、そんな事をせずとも、もうオレ様の魔力なら防具外しの魔法は使えるだけ復活したがな。
——防具外しの魔法!——
「キャアアアア! なんなのよ、あっちゃんのお気に入りのブランド物の服がなんでバラバラになってるのよぉーーー!?」
メスの防具をはずしたオレ様は長い舌を伸ばし、メスを舌で絡め取り、一気に口の中に放り込んだ。
「さあ、モテない男諸君、男の敵、あっちゃんこと備藤敦子の最後の瞬間です! モテない男のサークルに入り込み、男を弄んだ挙句に高級品を献上させ、会計係に入り込んでは助成金を全てホストクラブに注ぎ込んで飽きたらサークルを仲違いさせて潰していた悪女! その備藤敦子が今、社会のゴミ箱に噛み砕かれようとしているのです!!」
アイツ、オレ様のエサをわざわざ説明する事に何か意味があるのか?
「いやぁぁぁぁぁっ! 助けて、助けなさいよっ、このクズッ、弱男! 〇〇インポ野郎!!」
煩い、そろそろ噛み砕いてやる。
——バギベギボキィッ! ゴリッゴリッ……ムシャムシャ。——
美味い。
やはりメスの踊り食いが一番食いごたえがあるな。
なんだか変な香水の匂いがしたが、これくらいなら想定内だ。
アイツ、結構使えるようだな。
オレ様が食事をする際の煩い大声は気に障るが、エサを調達する事はきちんと実行したのでそれくらいは許してやろう。
さあ、次のエサは何を連れてくるのか、まあハコザキのやつに任せてみるとしよう。
しかし、アルカはオレ様の防具外しの魔法で外した光る石を喜んで集めているな。
あんな食えないもの、どうしようってのだ?
オレ様にはわからん事だ。
まあいい、食事も終わったのでしばらく寝るか。




