74 つよつよミミックの留守番
退屈だ。
オレ様はハコザキとアルカが出かけて部屋で留守番していた。
以前のオレ様なら数年でも数十年でも平気で待ち続けていた。
だが、今はアイツらと一緒に暮らすようになって、短い時間でも楽しく過ごせるようになった。
だからこの短い時間なはずなのに、オレ様が退屈を感じるようになってしまった。
良くも悪くもアイツらと一緒にいる事でオレ様が楽しいと感じれるようになったのも事実だ。
しかし、反対に時間を長く感じるようになってきた。
こんなふうにオレ様が思うようになったのは何か変化だと言えるのかな?
オレ様がテレビを見ながらそんな風に考えていると、インターホンとやらを押す音が聞こえた。
「ピザマッドです。ご注文のお品物をお届けに参りました」
「オウ、よく来たな。鍵は空いてるぞ」
人間はオレ様の声を聞いても普通にオレ様がここの住人と思ったのだろう、ピザを玄関のところに置いて帰った。
どうやらもうジュウマンエンは渡してるらしいのでオレ様がコイツに何かを手渡す必要とかはなさそうだ。
だが、コイツ……この家に誰もいないとわかると、いきなり部屋に上がって物色し始めやがった!
「この家、かなりの金持ちみたいだな。住人もいないみたいだし……少し何か貰っていくか」
どうやらコイツは盗賊みたいだな。
だがここでオレ様が勝手に人間を殺すとハコザキやアルカにピザを用意させる生活が出来なくなる。
そう考えるとコイツをぶっ殺してわけにはいかないな。
だが勝手にオレ様の住んでるところを物色するやつを見逃すほどオレ様も甘くは無い。
さて、コイツには少しゆるいお仕置きが必要だな。
このバカ、オレ様の事にはまだ気がついていないようだ。
さて、イミテイトの魔法で俺様の姿をタンスにでも変えてみるか。
オレ様はイミテイトの魔法で見た目をこの部屋にありそうなタンスに変化した。
「何だ? タンスがなぜ部屋の真ん中に置きっぱなしなんだ? まあ引っ越ししてきた直後ならあり得るか」
コイツはバカみたいだな。
オレ様のイミテイトの魔法にまるで気がついていないようだ。
どうやらタンスに化けたオレ様は全く気が付かれていないらしい。
「コレだけ良いタンスなら洋服がたくさんあるかもしれないな、さあ、中身を見てみるか!」
バタン。
両開きのタンスのオレ様を開いた泥棒は、中に何も入っていなかった事にガッカリしたようだ。
「なんだよ、コレだけ良いダンスなのにまだ中身空っぽじゃねえかよ。クソ!」
そう言ってコイツはオレ様を蹴っ飛ばしやがった。
さて、見逃してやるつもりだったがお前がその態度ならもう許さんぞ。
オレ様は見えないように舌を伸ばし、コイツをタンスの中に閉じ込めた。
パタンッ!
「え? なんだよこのタンス、中から開かないぞ!」
泥棒はオレ様のタンスの中に閉じ込められ、外に出られない。
まあオレ様を内側から開ける事のできるやつなんているわけないからな。
お。丁度テレビで映画が始まった。
さて、2時間閉じ込めたままにしてやりながらオレ様は映画を見ているか。
オレ様が映画を見終わった頃、タンスの中に閉じ込められた泥棒はかなり疲れ切った様子だった。
さて、そろそろ出してやるか。
オレ様がタンスの扉を開くと泥棒は一目散に外に飛び出して逃げた。
まあ、退屈の暇つぶしにはなったから殺さずに見逃してやったが、次は無いからな!
しかしハコザキ達のやつ帰り遅いな。
まあ良い、ニュースにアニメとやらでも見て待っててやるか。
と思ってたオレ様だったが、あの泥棒を閉じ込めていたらピザ食い損なった……。
仕方なく冷めたピザを食ったが、コレが美味くなかったな……。
あのバカ、さっさと追い出せばよかったな。
オレ様は冷めたピザを食いながらそんな事を考えていた。




