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1 つよつよミミックの世直し

 薄暗くじめじめしたダンジョン。ここは通称東京ダンジョンと言われている。

 そのダンジョンの部屋にヒーローのような仮面をかぶった男がいた。


「アンタね、わたくし達を呼び出したのは! 例の証拠、さっさと返しなさいよ、このクズ! 調子に乗ってあの顧客リストに手を出すなんて、アンタ人生終わったわよ!」

「どうせあのバカ女の母親とやらに頼まれたんでしょ、負け組が無駄な事しないでよね!」

「いじめなんていじめられる負け組が悪いのよ、金持ちに生まれなかった自分を恨みなさいよ、わたしたちを恨むなんてお門違いなのよっ!」

「……バカめ、お前達はもう終わりだ!」


 ヒーローの仮面をつけた男が指を鳴らすと、そこにはいきなり宝箱が現れた。

 ――いや、いきなり姿を現したのではない、透明化の魔法を使っていた妖精が手を離した事で透明化のスキルの効果が無くなったのだ。――


 宝箱が開き、中から出てきたのは、鋭い牙と長い舌だった。

 そう、この宝箱はミミックだったのだっ!!


「ウギャアアアアッ! 何よコイツ、キャァァアア!」

「助けて、食べないで。ほら、コイツらならいくらでもくれてやるからさ」

「何よこのブス、アンタこそ食われなさいよ! アタシを誰だと思ってるのよ!」


 

 ――煩い、エサのくせに黙っていろ。――


 オレ様はエサの女共を、舌で殴り気絶させた。


 バリバリゴリゴリむしゃむしゃムシャ……。


 今日のエサは三人か、まあ若い女だったのでそこそこ美味かったが、身に付けている香水が臭くてたまらなかったな。

 どうやったらあんな嫌な臭いの香水が作れるのだろうか、折角のエサが不味くなる。


 それに薬物とやらを多量に使っていたらしく、変な味だった。


 服や鎧、装飾品とかは不味いので食わないが、仮面をかぶった人間とレプラコーンの下僕がエサの持っていたそれを拾い集めている。

 所詮服や鎧なんてものはオレ様にとってはエサのパッケージや包み紙に過ぎん。


 これは早く口直しにピザが食いたいもんだ。

 さて、今日のメニューは何にするか、スモーク切り身ハラスいくらのサーモン四種のクワトロサーモンも捨てがたいが、和牛A4ハラミスペシャルも悪くない……。


 どうやら何か人間の下僕が――単独再生数二百万突破した!――とか言っているが、何の意味だかオレ様には分からん。


「うわぁ、これ都内の名門お嬢様学校の生徒手帳だぞ、コイツ、そんなとこの奴だったのかよ」

「ねえ? コレって何ぃ?」

「これは、違法薬物だね。これは持っているだけでこの世界では捕まるよ。だから匿名でボクが警察に届けておくね。ボックス様、配信用の映像、撮り終わったので依頼者にコレを見せてきます」


 オレ様はミミック、どうやら名前はボックスと呼ばれている。

 ボックスはオレ様を作って最初に箱を開けて食われた元魔王軍四天王の魔法使いの名前だ。


 オレ様には下僕が二人いる。

 一人はレプラコーンの少女アルカ、それともう一人は人間の男のハコザキって奴だ。

 コイツらのおかげでオレ様はメシに困る事は無くなった。


 まあどうやらそしてオレ様のやっている事は、ハコザキが言うには――社会のゴミ掃除――と言われているらしい。

 まあ、オレ様はエサが食えればそれでいいんだがな。


 オレ達はハコザキのアイデアをもとに悪人のお仕置きハイシンってのをやっている。


 どうやら今回のエサは、ハコザキが言うに……名門学校で売春を斡旋していた金持ちのお嬢様のいじめ首謀者という奴だったらしい。

 ハイシン依頼者はそいつ等に娘を売春させられた挙句いじめ殺された親だそうだ。

 まあ言葉は知っててもオレ様にはその意味がわからんし、エサの事情なんてオレは知らんけど、コイツらが言うならそれはそうなんだろう。


 オレ様のエサになるターゲットの下僕としてハコザキがパーティーの中に入り込み、オレの所におびき寄せる。

 そしてオレ様はダンジョンでエサの食べやすい場所へアルカに運んでもらい待ち構えるってワケだ。


 それをハコザキがドーガとやらにして、ハイシンするらしいが、オレ様には関係ない。

 ミミックのオレ様とレプラコーンのアルカと人間のハコザキ、それでこのパーティーとやらは成り立っている。


 まあ、こんな流れになったのには理由がある。

 それは……少し前の事だった。


 ――腹減った――


 腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った腹減った……!


 ここ数年全く何も食えていない。

 あの魔王のヤローが、くたばりやがったせいでここには誰一人として来やしない……。

 ここはかつてラスダンと呼ばれていた廃墟だ。


 あの頃はよかった、魔王が生きていたおかげでエサには困らず冒険者を喰らい放題だった。


 空腹が続きすぎてついに65535あったオレ様のHPも今や一桁に成りつつある。

 このまま何も食えなきゃオレ様は干からびてただの箱になってしまう。


 そろそろ何かオレ様に食わせてくれ。

 神でも悪魔でも何でもいい、オレ様にエサをくれ。


 ――だが、現実は非情だ……この世界には神も悪魔もいないのか。


 こうしてオレ様は朽ち果てて最後はボロボロの木の箱になって風化してしまうのか……。

 わけのわからない生涯だったもんだな……。


 ――だが、運命の悪戯とはそんな時に訪れるものなのかもしれない。――


 何かの気配をオレは感じた。

 この気配……魔力は……一桁前半? 雑魚じゃねーか。


 けど今のオレ様はあまりにも腹が減りすぎて、その一桁の雑魚を食えるかどうか、ここでもしエサにありつけなければ……今度こそ待っているのは衰弱による死だ。

 よし、ここはただの箱のフリをして……エサを待つとしよう。


「ふえぇぇぇ。ここってドコなのぉ? あたしぃ、一体どうしてこんなとこにぃ??」


 どうやらメスのモンスターみたいだな。

 だが今は箱を閉じたままなのでオレ様は周りが見えていない。


 MPで本来は赤外線探知、魔力探知、気流探知、音波探知、その他様々な探知機能を持っているオレ様だが、MP0の今の状態では基本の視覚探知以外できない。

 かろうじて聴覚もあるが、今の状態では近くの音しか拾えない程度だ。


 さらに蓋を開けるだけの力も今は使いたくないのでただひたすら開けてもらうのを待つだけだ。


「あ、宝箱だぁ。疲れたからここで寝ようっと……」


 おいおい、宝物を手に入れる為にオレを開けた奴は五万といるが、まさかオレ様の中で寝る為に箱を開けようとした奴は生きていて初めてだぞ。


「よいしょっとぉ」


 よし! 今だっ!! オレ様は大きな口を開けて数年ぶりのエサを喰らおうとしていた!

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