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え!? ちょっと!?

 「これでいいかしら」


 エリスは怪盗ハートゥに魔力封じの手錠を掛け、縄でぐるぐる巻きにした。


 すると倒れていた2人のうちの1人が目を覚ます。


 「‥‥‥んぅ。‥‥‥? あ! エリス〜!!

  最後に聞こえたのはエリスの声だったんだ〜!」


 「‥‥‥は?」


 ()()()が笑顔で抱き着いてくることでエリスは小さな声を漏らす。


 「‥‥‥調子でも悪いの?

  もしかして寝過ぎでおかしくなったーー」


 「違うよ!? しかも寝過ぎって‥‥‥そうだった!!

  今アクアの身体になってるんだ!!

  エリスごめんっ! 入れ替わっちゃったよ〜!!」


 「‥‥‥何を言ってるの??」


 ()()()がコロコロと表情を変えるだけでなく素直に謝ってきたことに驚きを隠せないエリス。それに何を言っているか全くわからなかった。


 「‥‥‥ふぁ〜。うるさいー」


 のそっと起き上がる()()()は伸びをした後、活力のない目でエリスを見つめる。


 「エリス、がんばったよー」


 「‥‥‥」


 全く抑揚のない()()()の声にエリスは声も出ない。


 「わ、私が説明しますーー!!!」


 手を挙げて駆け寄ってきたユリアが説明を始める。




 「‥‥‥本当なのね。まさか入れ替わってるなんて」


 エリスは今でも信じられないといった様子で額に手を置く。だか明らかに普段と様子が違うカンナとアクアを見て信じざるを得なかった。


 「ごめんエリス‥‥‥私が入れ替わっちゃったから」


 アクア(中身はカンナ)が頭を下げる。


 「謝らないで。あなたは悪くない」


 本心からそう答えるエリス。明らかにハートゥの入れ替え魔法は想定を超えていた。


 「こらー。勝手に人に頭下げるなー」


 「うにゃあ!? ごめんアクア!」


 カンナ(中身はアクア)がそんな彼女の頬をペチペチ叩く。自分が謝っているのを見るのは嫌だったのだ。


 それを理解したのか単にペチペチをやめて欲しいのか、アクア(中身はカンナ)はすぐに謝る。


 「とりあえず目的は達成した。

  早く怪盗を運んで帰りましょう」


 「はーい!」


 エリスたちは人目を忍んで南地区の『マーズメルティ』に移動を始めようとする。


 「ってユリア姫は帰らないとダメだよー!!」


 アクア(中身はカンナ)は思わずツッコミを入れる。


 「えー! いいじゃないですかぁ!!」


 2人はしばらくの間話し合う。だが結論は出ない。


 「ダメよ。帰りなさい」


 「わ、わかりました‥‥‥」


 そこでエリスが諭すように言うとユリアは渋々頷く。


 「!! 2人とも、早く行って!!」


 エリスが空を見た直後、大声でカンナ(中身はアクア)と怪盗を背負ったアクア(中身はカンナ)の背中を押す。


 「え? どうしたの!」


 「‥‥‥ごめんなさい、しっかり着地して!!」


 エリスは風魔法を発動。怪盗を含めた3人を北地区から出すように風で押し出す。


 「うにゃあ!?」


 「すずしー」


 そんな声を出しながらカンナたちは北地区から吹き飛んでいく。エリスは口元に黒い布を巻き、ユリアのそばへゆっくりと歩く。


 「ユリア王女。今までのことは他言無用よ」


 「は、はい!!」


 ユリアがそう言った直後。2人を遠ざけた理由が判明する。



         「何してんのよ!!!」



 バチバチっと弾けた音と共に黒髪ポニーテールの少女がエリスの前に降り立つ。



     「それをあなたが知る必要はない。

      『迅雷』マリア・ディスローグ」



   エリスはユリアの隣に立ち、相手の名前を呼ぶ。


 「! あんた、この前の!! ユリアを放しなさい!」

  


 エリスの顔を見たマリアはハッと声を出す。数日前、ルークの婚約者候補が来訪した際に城へ侵入した少女だと気づいた。


 「捕らえているつもりはないわ」


 「きゃっ」


 エリスはユリアの背中を押してマリアに受け渡す。マリアはユリアが隣に来たことで少し安心し、口を開く。


 「レスタの仲間! 毎回邪魔して、何が狙いよ!!」


 「今回は怪盗を捕らえることが目的だった。

  他の件の理由をあなたに話す意味は無い。

  それと怪盗は私たちで預かる。

  怪盗に攫われたユリア王女はご覧の通り無事よ」


 「何が無事よ!! 水浸しじゃない!!」


 「‥‥‥はあ」


 「わわっ!?」


 エリスは即座に風魔法を発動し、ユリアを秒で乾かす。驚いたユリアは変な声を上げていた。


 「これでいいわよね」


 自分はもう関係ないといった素振りで、エリスは背中を向けて歩き出す。


 「‥‥‥なんなのよ。あんたたちは!!」


 マリアは雷を纏って刀を横一文字に振り抜く。それを背中で感じとったエリスはしゃがんで躱す。そしてしゃがんだ体勢のまま左足を伸ばしてマリアを蹴飛ばす。


 「なっ!?」


 驚きと痛みで声を上げながら、後ろに飛んだマリアは着地する。


 「もういいでしょ? あなたは私に勝てない」


 (エリスさん‥‥‥かっこ良すぎますーー!!!)


 ユリアは完全に観客気分でこれから起こりうる戦闘を眺めようとしていた。


 「勝てない? ふざけんじゃないわよ!!!」


 マリアは再び刀を構えてエリスへと飛び込む。エリスは剣を鞘から抜く。


        剣と刀が音を立てて軋み合う。



        「はああぁぁぁぁ!!!!」


            「‥‥‥」



 気迫溢れるマリアに対し、エリスは静かに剣で押し返した。

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