表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【30万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
4章 代表不在。そして怪盗

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/360

王都ローデリア、北地区 中編

 『怪盗は、私が必ず捕まえる』。


 そんなことを言ったエリスの声はとても力強く、安心感がある。


 だが、カンナは別の理由で焦っていた。


 (ど、どうしよ‥‥‥このままだと、

  ミアとリゼッタは元に戻らないかも!!)


 人格が入れ替わったミアとリゼッタを戻す手段は2つ。


 1つは、『怪盗ハートゥ本人が再び2人に人格入れ替え魔法を使うこと』。だが彼女が無条件に2人を元に戻すことはない。例えば、ハートゥ自身が捕まった時の交渉材料として、2人を元に戻す。


 (それだと、エリスが怪盗を捕まえたとしても

  その後の交渉で有利なのはハートゥになっちゃう。

  だからそれは論外!! それならーー)


 手段は2つあると言ったが、実際は1つしかなかった。


 『カンナが怪盗ハートゥの人格入れ替え魔法をコピーすること』。


 コピーできればミアとリゼッタを戻すことができるし、ハートゥに弱みを握られることもない。そしてこれは【無色眼】を持つカンナにしかできない。


 だが、相手の技をコピーするには条件がある。


 それは実際にその魔法を見なければいけないこと。


 つまりもう一度怪盗ハートゥに人格入れ替え魔法を発動させ、なおかつカンナがそれを見るという状況を実現させなければならない。


 (だから、私は怪盗と戦闘しないといけない!!)


 考えがまとまったカンナは手で両頬を叩き、気合いを入れる。


 「ミア(リゼッタ)、リゼッタ(ミア)!

  私が必ずなんとかするから! ここで待ってて!!」


 「は? そんなことできんの?」


 「カンナ、かっく、いい」


 そんな声を背中に聞きながらカンナは2人から離れていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 『メリナ。エリスだけど、今話せる?』


 「エリスっ。丁度いいタイミング」


 グロッサ城、3階。


 マリアが離れていき、エルリカが城へ入ったことを確認したメリナは廊下の端にいた。


 メリナは今の状況を簡潔にわかりやすく説明する。


 『わかった、北地区ね。ありがとう』


 「エリスなら捕まえるって信じてる。

  だから今回の私の役目は、今わかった。

  私を追いかけてくる強敵を遠ざけること」


 『‥‥‥メリナ?』


 「『迅雷』は怪盗を追いかけていった。気を付けて」


 『‥‥‥ええ。あなたも気を付けて戻ってきて』


 そんな言葉を最後に、エリスと連絡を終える。


 (相変わらず、エリスは勘が鋭いな。

  さすが代表の右腕、そして代表代理だな)


 「っ‥‥‥これは、マズいかもね」


 メリナはわき腹に触れた右手が真っ赤に染まる。さっきの城の窓に飛び込むために激しく動いた反動で、マリアから受けた切り傷が開いたのだ。


 それをハンカチで押さえ、廊下に出る。


 (血が滲み出て垂れ落ちる前に距離を取らないと

  追跡を振り切れない。

  それに『金剛』に追いつかれた時点で終わり。

  これは、気を引き締めて行動しないと)


 メリナは頭の中で情報を整理し、慎重に行動を始める。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 王都ローデリア、北地区。


 (クックックッ、城で暴れた分この地区は緩いのだ!)


 ハートゥはユリアを担いだ状態でワイヤーで移動する。当然ただの警備兵たちには追いつけるわけがない。


 (これなら西、南へと動けば楽勝なのだ!)



      「見つけた〜!! ハートゥ〜!!」



 ハートゥの思考を遮るように聞こえる声。声のした方を向くと、そこには銀髪ツインテールの少女。その子の服装はーー。


 (さっきの妾のファンと同じ格好!?

  いつの間に妾のファンクラブができていたのだ!?)


 勘違いしたハートゥはカンナのことをじ〜っと見つめてしまう。


 (え!? あれってユリア姫!? 攫われてる!)


 カンナは情報にないことに足が止まりそうになる。だが必死に考えて足を止めることなく追いかけた。


 (ど、どうしよう!? どうしよ〜!!

  ユリア姫がいるなら()()は使えない!)


 ハートゥと遭遇した際にやろうとしていた作戦を実行できないカンナ。そのまま追いかけっこが続き、やがて北地区も半分を超えた地点へと差し替かる。


 (ユリア姫を無傷で引き剥がさないとっ!

  でも、追いかけるのがやっとな速さで飛び回る

  ハートゥに攻撃するのはーーー)



           「見つけたー」



         「えっ!? ぶふっ!!」


 カンナの思考を遮る声。声の主は凄まじい速さでカンナを追い越す。追い抜かされた際に水が飛び散りびしょ濡れになるカンナ。


 カンナをびしょ濡れにした張本人はクルクルと回転して宙を舞い、やがてハートゥよりも高い位置に留まる。


            「やー」


        「ぶへっ!? がぼぼ!!」


 抑揚のない声と共に放たれた水はハートゥに直撃。その際にハートゥが抱えていたユリアがすっぽ抜ける。


 「冷たっ!! ってうぇ!? 落ち、落ちます〜!!」


 冷たい水を浴びて目を覚ましたユリアは真っ逆さまに地面へと落下する。


 「やぁぁぁぁぁ!!!!」


 カンナは【血液凝固】を両足に発動し、地面を蹴って跳ぶように走る。


 (水浸しで、身体が重いっ!!!)


 建物と建物の間の壁を蹴るように飛び回ることで迂回せずに直線移動。落下しているユリアに最短ルートで必死に猛追する。


       「とどいてぇぇぇぇ!!!!!」



   視界にユリアを捉えたカンナは必死に手を伸ばす。



          「カンナさん!!」



   カンナの声に気づいたユリアも懸命に手を伸ばす。


 そんな努力が身を結んだのか、伸ばし合った2人の手が触れる。


 「うっ!!!」


 カンナはユリアを抱き寄せるが、勢い余って建物の壁に鈍い音を立てて背中から激突する。ユリアは包むように抱き締められていたため無傷で済んだ。


 「か、カンナさん!!」


 ユリアはすぐさまカンナの背中に回復魔法を施す。


 「いたた〜!! あ、ありがとうユリア姫〜!」


 「こちらこそ、助けていただきありがとうございます!

  さっきのカンナさん、カッコよかったです!!」


 ユリアはパアッと光りそうなほどの眩しい笑顔を見せる。


 「えへへ〜、それほどでも、あるっ!」


 カンナはドヤ顔でダブルピースをする。ユリアはそれを何も言わずに笑顔で見つめていた。


 「そこのファン! 宝を返すのだ!!!」


 そんな2人に接近する怪盗ハートゥ。カンナは自分のことを言われているのは知らず首を傾げていた。


 「早く捕まれー」


 それを阻止すべくアクアはハートゥと2人の間に水を飛ばす。身体能力の高いハートゥはそれを察知して後ろへと飛ぶ。


 「あの水飛ばしのファンめ! 厄介すぎるのだ!!」


 ハートゥがカンナたちから距離を取る。対してアクアはカンナたちの前に着地する。


 カンナとユリアが小声で話し合っていた。アクアは別に興味ないためその光景をぼんやりと眺める。


 「アクア! ユリア姫を守って!!

  私がハートゥを追う!!」


 ユリアと話し終わったのか、カンナが声を上げて立ち上がる。


 「え、動かなくていいの? やった〜」


 自分よりも水使いのアクアの方がユリアの護衛に向いていると判断したカンナはハートゥに飛び込む。


 「がんばってー」


 「うにゃあ!?」


 アクアに冷たい水を飛ばされ変な声が出るカンナ。その代わり、水に押されて加速する。


 「な、なんなのだぁぁ!!?」


 怪盗ハートゥはカンナと‥‥‥ゴツーンっと音が鳴りそうなほどの勢いで額をぶつけ合っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ