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王都ローデリア、北地区 前編

 「ふう、これで綺麗になったわ」


 《エルジュ》本拠地、訓練場。


 《黄昏トワイライト》No.1、『覇王』の手によって訓練場は以前よりもピカピカになっていた。


 エリスは確かな達成感を感じながら額から流れ落ちる汗を手で拭う。


 (そういえば、連絡は来なかったわね)


 エリスはそのことを疑問に思いながら訓練場を出る。


 「‥‥‥あれ?」


 そこで地面に落ちている何かを発見する。水に包まれていて機能を果たしていなかったであろう魔結晶を。


 「‥‥‥」


 エリスは自身の服とズボンに付いているありとあらゆるポケットへと手を突っ込む。何も入っていない。そして確信する。


 「‥‥‥私のだわっ!」


 エリスは足の回転を早めて即座に拾い上げ、拠点内を走っていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 グロッサ城。


 「やばいっ! このままだと!!」


 3階から落下し始めたメリナは下を見る。そこには当然、待機している『金剛』と『迅雷』。


 (あの2人相手だと私に勝ち目はない!!)


 メリナは風魔法の適性がないため【飛行】で空を飛ぶことができない。使えるのはアイト、エリスの2人のみ。


 ただし尋常ではない魔力を消費するため、普段は使うことがほとんどない。


 例外はカンナとミア。カンナは【無色眼】のコピーで【飛行】を使うことができ、ミアは自身の呪力【シロ】で翼を作ることができる。


 「っああっ!!」


 2階の高さに差し掛かった頃、メリナは咄嗟に身体を翻して窓を突き破り中へと入る。


 騒音と共に周囲に飛び散るガラスの破片。その中をメリナは滑り込むように倒れ込む。


 「あ、危なかった〜。

  思ったより刺さらなくてよかった」


 ガラスの破片を払いながらメリナは立ち上がる。


 (これで怪盗はエリスたちが必ず捕まえる。

  さあ、下にいる2人はどう出る‥‥‥?)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 グロッサ城、城外。


 「これは手分けして動くしかないわ。

  あの怪盗の速さに追いつけるのはあなたしかいない。

  城にいる鞭使いは私が対処する」


 エルリカは速やかに方針を話す。マリアもそれに異論はない。


 「了解です! エルリカさん、気をつけてください!」


 「マリアも気をつけて」


 マリアは怪盗が逃げた北地区へと移動を始め、エルリカは再び城へと入っていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 王都ローデリア、東地区。


 カンナは無事にミア、リゼッタと合流。今は人目のない所に場所を変えている。


 カンナは、頭がゴチャゴチャになっていた。


 「あーもう!! あの変態女腹立つッ!!

  絶対殺してやるッ!! 滅殺よ滅殺!!」


 「り、()()()()??

  どうしたのそんなに口が悪くなっちゃって!!」


 ()()()()は機嫌が悪そうに文句を垂れ流す。それを見ていた()()はぷるぷる震えていた。


 「こわ、ミア、こわこわ」


 「な、何言ってるの()()!!

  そんな大人しくなって! どこか調子悪い!?」


 「さっきから何おかしいこと言ってんの銀髪女!!」


 銀髪女。その呼び方をする人物をカンナは1人しか知らない。()()()()と見つめながらカンナは口を開く。


 「そ、その呼び方。まさか、ミアなの!?」


 「は? なに言ってんの。意味不明なこと言うな」


 「だ、だって‥‥‥これ!!」


 カンナは持っていた手鏡を見せつける。


 「‥‥‥は? は‥‥‥? ちょっと待ってよ‥‥‥

  意味わかんない‥‥‥マジで意味わかんない!!

  なんでミアが紫女の顔になってんの!?

  声も変わってるし!! はぁーーー!!!?」


 「カンナ、このからだ、ずきずきする。いたい」


 カンナは事の重大さを理解せざるを得なかった。



  「2人が、入れ替わっちゃってるーーー!!!!?」



   ミアとリゼッタの人格が入れ替わっていたのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 《エルジュ》本拠地、転移場所。


 エリスは最短ルートで転移場所に辿り着き、転移する。転移場所は王都の南地区に位置する、『マーズメルティ』。


 「! アクア!!」


 「zzz‥‥‥」


 転移した店の中で、アクアは机に突っ伏して眠っていた。


 「起きなさい!!」


 エリスはアクアの肩を揺らす。


 「‥‥‥ふぁ〜。あ、エリス〜」


 すると目をこすりながらアクアが目を覚ます。深〜い伸びをした後、立ち上がる。


 「状況は!?」


 「知らないー」


 抑揚のない声で即答するアクアにエリスは頭を抱える。だがそんな時間はないため、すぐさまアクアの手を引っ張って店の外へ飛び出す。


 「アクア! 怪盗ハートゥを見つけ次第捕まえて!

  できる限り国民に見られることなくよ!」


 「らじゃー」


 アクアは両手を地面に付けると、水を放出して移動していく。


 (国民に見られることなくって言ったのに‥‥‥)


 そんなことを嘆いても意味はない。エリスはすぐに意識を切り替えて移動しながら魔結晶で連絡を取る。


 「カンナ! 応答して! カンナ!」


 連絡を取る相手はカンナ。選んだ理由は単純に消去法。


 『エリス!! やっと繋がったよ〜!!

  今まで何してたの〜!!? 心配したよ〜!』


 怒りよりも先に心配が来るカンナに、エリスは彼女らしいと微笑んでしまう。


 (ダメだわ。今は一刻を争う)


 エリスはすぐに気持ちを引き締めて話しかける。


 「それは後で話すわ。怪盗は今どこ?」


 『それが‥‥‥リゼッタから西地区にいるって

  聞いたから来たんだけど、もう今はいないんだ〜』


 「もういない‥‥‥それじゃあもう」


 『城の中にいるかも! そういえば、城にはメリナが

  潜入してるから、今聞けばわかるかも!!』


 「そうね。わかったわ。ありがとう。

  ところでミアとリゼッタは? どこにいるの?」


 『あ〜‥‥‥今いっしょにいるよ? でも問題があって』


 「? どうしたの?」


 『いや、時間が無いから後で話すよ!』


 歯切れの悪いカンナに気になることはあるが、時間がないため彼女の言う通り後で聞くことに決めた。


 「わかったわ。それと、ごめんなさい。

  遅くなってしまって。でも安心して」


 エリスは一呼吸おいて、こう言った。


 「怪盗は、私が必ず捕まえるから」

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