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【30万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
4章 代表不在。そして怪盗

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王都ローデリア南地区、東地区。

 グロッサ城、2階廊下。



 「ご報告します! 怪盗ハートゥが現れました!!」


 「やっぱり来たのね!! どこ!?」


 グロッサ王国最強部隊、《ルーライト》隊員マリア・ディスローグは早歩きで状況を確認していた。


 「王都の南地区です!!

  付近に配置されていた警備兵が追跡しています!」


 「南地区‥‥‥わざわざ1番遠いところから

  向かってくるなんてよっぽど自信があるようね!」


 マリアは刀の柄をギュッと握り締める。


 「‥‥‥(どうどう)」


 後ろからトコトコ走ってきた《ルーライト》最年少隊員、シロア・クロートがゆっくりと両手を動かす。


 「‥‥‥ありがとう。シロア、気をつけて!!」


 「‥‥‥(フンス!)」


 グッと拳を握りしめたシロアがその場から姿を消す。廊下を転移で移動していき、窓から飛び出していく。


 マリアは階段で1階へ降りると、正面の扉が開く。


 「エルリカ・アルリフォン、ただいま戻ったわ」


 そんな声と共に城内に入った1人の女性。茶髪でカールのついたショートヘア。身長は高めであるマリアよりも高い。そして白を基調としている《ルーライト》の騎士制服を着ている。


 「エルリカさん!」


 マリアはパァッと笑顔になり、彼女に駆け寄る。


 エルリカ・アルリフォン。22歳。《ルーライト》隊員でマリアよりも前から所属している先輩。


 勝ち気な性格で凛々しい。そんな彼女はとても頼もしく、マリアが尊敬している人物である。


 「マリア、あなたもいたのね。よろしく。

  シロアは? 確かいるって聞いてたけど」


 「シロアは転移を使って怪盗を追跡中です」


 「了解したわ。

  それと王国領内の南端で任務にあたっていた私に

  今日中に戻ってこいと言ったあの自己中バカは?」


 (それってルーク隊長のことよね‥‥‥)


 そしてエルリカはグロッサ王国第一王子で、《ルーライト》隊長でもあるルーク・グロッサに恐れ多い口を叩ける数少ない人物でもある。


 ルークに対してだけは、何かの恨みなのかあたりが強い。


 「あ、あの‥‥‥隊長は先ほど出発しました」


 「はあ!? あの馬鹿ルーク! どこに行ったの!?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 同時刻、アステス王国、王室。


 「招待に応じてくれて感謝する、ルーク王子」


 白髪混じりの髪をまとめた老人が右手を前に出す。


 「いえ、僕も話をしたいと思っていました」


 それに対し、金髪の青年は同じく右手を出して握手する。


 王室に集まったのは3人。グロッサ王国第一王子ルーク・グロッサ。アステス王国の国王、ウィル・アステス。


 「‥‥‥♡」


 そしてアステス王国第一王女、シルク・アステス。銀髪のお団子という、なかなか個性が強い髪型。そんな彼女の熱い視線は、ルークへと贈られている。


 「それで、日程はこれまでと同じと大丈夫か?」


 「ええ。大丈夫です」


 「‥‥‥ルーク王子は交流戦に出場されるのか?

  君はまだ5年生で、出場条件は満たしている」


 ウィルの声色が低くなる。ルークが出場するかどうかで交流戦の勝敗に左右するからだ。


 「そうですね。出場者が足りなければ出ますよ。

  まあ、今年はそんな心配は無用ですが」


 「無用だと? それは、つまり?」


 ルークはウィルに視線を合わせて言い放つ。



      「勝ちますよ。僕抜きでも必ず」



    「カッコよすぎーーー!!!! はぁ♡」



 ウィルよりも先にシルクが大声を上げ両手で胸を押さえる。



 「シルク‥‥‥ルーク王子、娘がすまない。

  どうしても今回の話し合いに参加したいと

  言われてな。理由は、察してくれ‥‥‥」


 ウィルは交流戦の話どころではなかった。この空気をなんとかしようと必死である。


 「い、いえ。個性があっていいと思います」


 ルークは苦笑いを浮かべる。ルークですらこの空気に困惑していたのだ。


 「はぁ‥‥‥♡ ルーク様‥‥‥♡ カッコいい‥‥‥♡」


 そんな空気を作り出した彼女は一切気づくことなく、ただ夢心地になっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「それが‥‥‥毎年恒例の『交流戦』の件で、

  アステス王国に招待されて向かいました」


 マリアの説明を聞いたエルリカはため息をついて額に手をつく。


 「あのバカ。それなら連絡しなさいよ‥‥‥」


 「私も知った時点で魔結晶でお伝えしようと

  思っていたのですが、隊長に口止めされてまして」


 「え、なんで」


 エルリカは聞きたい気持ちが先走り、マリアに詰め寄る。そんな彼女に対してマリアは目を逸らした。


 「『も、戻ってこいと伝えたから僕が招待されたことを

  エルに話すと余計な不安を募らせてしまう。

  彼女に余計な心配はかけたくないからね』と‥‥‥」


 「‥‥‥へえ、少しは思いやりを持つようになったのね。

  それならいいわ。あのバカをイジる材料が増えたし」


 人様に見せられないような邪悪な笑みを浮かべるエルリカ。そんな彼女を見たマリアは目を逸らすどころか顔を背けていた。

   

 (い、言えない‥‥‥!! 絶対言えない!!!

  『え? 反応が面白そうだから絶対言わないように』

  なんてカスみたいな理由だってことは、言えない!)


 マリアのついた優しい嘘により、エルリカの闘志に火をつけたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 王都ローデリア、南地区。


 (ふっふっふ! 雑な警備に捕まるわけがないのだ!)


 怪盗ハートゥはワイヤーフックを使い建物の間をくぐり抜け空を舞う。


 (ていうか寒いのだ!? 今日は風が冷たいのだ!!)


 今から王国戦力を敵に回そうとしている彼女は、全く緊張感の無いことを考えていた。


 「『ファイア』!」


 下を走っている警備兵が魔法を発動。火の玉がハートゥに迫る。


 「甘いのだ!!」


 ハートゥは身体を捻って一回転。火の玉が腰の隣を通り過ぎる。


 その直後、フックを違う建物の窪みに掛けて移動する。警備兵の機動力では全く追いつけない。


 (楽しい! 楽しいのだぁ!?)


 ハートゥは背後に人の気配を感じとり、反射的に後ろを向く。見えたのは薄桃色の髪。


 「‥‥‥(フンスっ!)」


 「危ないのだあ!?」


 少女の振りかぶった鉄棒ではなく、少女の腕を足で払うことにより少女の攻撃の軌道をずらした。


 お互いの体勢が崩れる。だが、優勢なのはーーーー


 「!? 消えた、のだあーーー!!!?」


 ハートゥは死角に転移してきた少女に蹴り飛ばされた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「‥‥‥(?)」


 王都、南地区。


 シロアはハートゥを落ちていった場所に転移した。だが、そこにハートゥらしき姿はない。


 「‥‥‥(!)」


 すると近くに小さな革袋が落ちていることに気づく。シロアはそれを拾い上げて周りを見渡す。落とし主を探しているのだ。



             プシュー



         「‥‥‥(わわわわ)」



 袋の中からガスが噴き上がる。それを吸ってしまったシロアは身体が揺れる。意識が、途絶える。


          「成功なのだ!!」


 そんな彼女を支えたのは怪盗ハートゥ。もちろん革袋はハートゥの仕業である。


 (良い子すぎる! 敵ながらちょっと心配になるのだ!)


 まるで彼女の保護者のようなことを思いながら、怪盗ハートゥは眠ったシロアを抱えて走っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 王都、東地区。


 「エリス、どこに、おるの」


 《エルジュ》の特殊戦闘服に身を包んだリゼッタは、建物の屋根から周辺を眺めていた。


 【血液凝固】を両眼に施すことで視力を引き上げる。その両眼で見渡していた。


 「ん、あれ、もしかし」


 エリスではないが気になる対象が目に入る。ぐったりとした少女を抱えている明らかに怪しい衣装と仮面をつけた少女。


 「はー、とぅ?」


 リゼッタは魔結晶でとある人物に連絡を取り始める。


 「いた、ひがしちく」


 『東地区だね! ありがと〜!』


 リゼッタは魔結晶を懐へと戻し、ハートゥを追跡する。だが。


 (ん、はや)


 怪盗ハートゥはシロアを抱えた状態であるにも関わらず、身軽なリゼッタでも追いつけない。それどころか少しずつ距離を離されていく。


 (ここで、どくはだめ、ぜったい)


 住宅や商店が広がる東地区の空へ毒を撃ち込むのは迷惑で危険だと悟ったリゼッタは毒による攻撃ができない。



           「【ムラサキ】」



 そんなリゼッタの思いやりを無に帰すような紫色の呪力がハートゥに迫る。


           「なんなのだ!?」


 ハートゥはワイヤー移動を中断して呪力をしゃがむように躱す。


 「あんたを殺して金髪女に恥をかかせてやる。

  その後、金髪女も殺す。屈辱を添えて!!!」


 「何言ってるのだ!? なんかこっわ!!」


 ハートゥはシロアをその場に下ろして臨戦体勢を取る。


          (ミア、こわ、こわ)


 リゼッタは身体を震わせながらミアに加勢するのだった。


   こうして、ハートゥは謎の2人に襲われ始めた。

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