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1人あたり‥‥‥82人

 暗殺組織『ルーンアサイド』、本拠地付近。


 アイト、エリス、ターナの3人が到着する。


 本拠地周辺は高度な幻影魔法で作られた結界があり、その外側からだと本拠地は全く見えない。


 何も知らなければ、ただ森が続いてるように見える。これは訓練を受けた構成員しか見つけることができない。


 眠っているヨファ君は責任を持ってアイトが異空間に保護。もちろんターナの承諾済み。


 「すごく大きいな。なんだこの大きさ?」


 「組織の規模が大きいからな。おそらく今でも200人はいるだろう」


 (う、うぇ〜〜‥‥‥帰っていい?)


 なんて言えないため、アイトは何も口に出さない。


 「さて、どうやって制圧するか」


 「ターナ? まさか決めてなかったのか?」


 「し、仕方ないだろ!大半の構成員は大したことないが、人数差。安易な作戦だと返り討ちに遭う」


 (あれ、俺とエリスの実力を買ってくれてる?)


 アイトは浮かれそうになる前に、咳払いして気を落ち着かせる。


 「ま、まあ確かに作戦を練る必要があるな。とりあえずエリス、中の様子を確認して」


 「はい、任せてください」


 エリスは少し前に屋敷を覗いた時と同じ構えを取り、じ〜っと本拠地を眺めている。


 「おい、あいつは何をしてるんだ?」


 ターナが小声で呟くと、アイトも小声で返事する。


 「さっき話したエリスの特技の1つだ。遠くを覗くことができるんだよ」


 「あれがそうなのか。すごいのは理解できるがなんか‥‥‥構えがダサいな。なんだあれは」


 「それを言ってあげるな」


 アイトが控えめに嗜めると、ターナは不機嫌になってそっぽを向いた。


 「レスタ様、確認できました。今の人数は246人くらいだと思われます」


 「それだと1人あたり82人か。それなら作戦次第で制圧できそうだな」


 ただ事実を述べるエリスに、軽く言うターナ。


 (1人あたり‥‥‥82人‥‥‥?)


 そして思わず戦慄してしまうアイト。


 「‥‥‥なあターナ。君はルーンアサイドで何番目に強い?」


 「なんだその質問は」


 「いいから答えて、何番目だ」


 「そうだな‥‥‥実際に戦ったことがないヤツもいるからわからないが、おそらく3番目だ」


 「3番? 君そんなに強いの?」


 「あ?貴様、完全に馬鹿にしてるな?一度ボクに勝ったからって調子に乗るな」


 「ご、ごめんなさい」


 「レスタ様。ターナの言ってることは正しいかと。アステス王国で名を轟かせているわけですから、私はかなり強い方だと思ってました」


 「それじゃあ、君より強い2人は?」


 アイトが尋ねると、ターナは目を閉じて話す。


 「1番強いのはもちろんボスだ。名前はラルド・バンネール。暗殺技術はもちろんのこと、戦闘技術も超1流。そして何より、【血液凝固】が恐ろしい」


 「血液凝固‥‥‥?」


 アイトが呟いた疑問に対し、ターナは自分の腕を見せながら説明する。


 「血液を体の一部分に多く流して止めることでその箇所を強化する秘術。私を含め全構成員が習得しているが、ボスの【血液凝固】は次元が違う」


 「な、なんか凄そうだな」


 「ちなみにバチンと音がなったら【血液凝固】が発動した合図だ。原理は教える必要ないだろ?」


 「わ、わかった。それで2人目は?」


 「次はボスの側近で、名前はミスト。歳はボクとほとんど変わらないがクールで冷酷な女だ」


 「女、ですか」


 「ああ。暗殺や戦闘を行っているところをボクは全く見たことがない。だが気配でわかる。確実に強い」


 ミストの方は情報が全然無いため、アイトは困りながら眉を顰める。


 「それならこの場合ってその2人を倒せば、その時点で降参させられる?」


 「それはそうだが‥‥‥その周りに大勢の部下が出回っているんだぞ。そいつらを無視していきなりその2人と戦えるかどうか」


 (それもそうだ。まずその取り巻きたちをラルドとミストから剥がさないと)


 アイトは2人以外とは戦いたくないため、必死に思考を巡らせる。


 「‥‥‥あ、こういう作戦はどうだ?」


 そして、思いついた作戦を2人に話す。



 行き当たりばったりの流れだが、いよいよ‥‥‥暗殺組織『ルーンアサイド』壊滅作戦が始まる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「ボス、屋敷の者たちの通信が途絶えました」


 側近ミストは小走りで大男に近づき、報告する。


 「なに? 20人は屋敷にいただろう。どうして全員通信が途絶える」


 その大男の名はラルド・バンネール。暗殺組織『ルーンアサイド』の代表である。


 「おそらく何者かの襲撃でしょう。誰かはまだ判断しかねますがーーー」


 ミストが淡々と話をするが、それは突然遮られる。


 突然建物に伝わる凄まじい衝撃と破裂音によって。


 「何事だ!!!」


 ラルドが血相を変えて叫ぶとルーンアサイドの警備係が現れた。


 「報告します!敵襲、敵襲です!!何者かがこちらに向かって様々な方向から魔法で攻撃してきます、見張りでは姿が捉えられません!!!」


 「なに?? 私が確認する!!!」


 ラルドは目に血液を多く送る。バチンと音が鳴った。


 【血液凝固】。視力を普段の5倍ほど跳ね上げる。


 その状態で目を凝らして外を見る。見えたのは黒いローブを着た少女。ラルドはもちろんそれが誰が知っている。


 「ターナ!? どうしてだ!?」


 「ボス、おそらく反逆かと。このままでは万が一ということもあります。急ぎ全構成員に抹殺の指示を」


 「待て。とりあえずターナに事情を聞く。皆のもの!ターナを生きたまま捕らえろ!」


 ラルドがそう言うと部下たちが一斉に本拠地の建物から外に出ていく。ターナが捕まるのは時間の問題。


 「これでもう安心ですね」


 「ミスト、用心しろ。何か腑に落ちん」


 「? と、申しますと?」


 「確かにターナは強い。おそらくお前と並ぶくらい強いだろう。だから腑に落ちん」


 「と、申しますと?」


 「仮に私を殺すつもりだったとしたら、この戦力差で攻めてくるには攻撃が派手すぎる。もしやこれは、陽動‥‥‥?」


 「ボス、ですが何のために陽動を?ターナは単独行動を好みます。仲間などルーンアサイドの中にもいないはず」


 「‥‥‥それもそうだが」


 ラルドたちがそう判断していた矢先。


 「ぬっ!!!?」


 気配を感じ取ったラルドが体勢を下げる。ラルドの真上に発生する、横一文字の空気の歪み。


 「!? ボス、どうなさいました!?」


 「敵襲だ!!」


 それを聞いたと同時にミストが無数にラルドに向けて針を無数に飛ばす。ラルドがそれを跳躍して避けると針はそのまま後ろに飛んでいく。


 「うお!?」


 そんな声が聞こえると同時に少しの針が弾かれる。残りの針はそのまま壁に突き刺さった。


 「危な、ぶっ刺されるところだった!」


 何もないところからそのような声が響いた後、姿が現わす2人。


 声を出したのは男。銀髪に目元を覆う仮面、手には短剣を持っている。どう見てもまだ成人していない少年。


 そして彼の隣にいる女。彼女から発せられる気配で、エルフの血筋だとラルドは認識する。


 「失敗した!!」


 「そのようですね。時間はありません。早くしないとターナが危険です。レスタ様、あの女は私が」


 「それじゃあ俺は、ボスだナっ!!」


 アイトが少し震えながら構え、ラルドは腰に差していた剣を抜く。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 アイトが立てた作戦はこうだった。


 まずターナには本拠地に対して派手な攻撃をしてもらう。


 すると相手側がそれに対応して大人数をターナに当てるだろう。そしておそらく最低でも親玉と側近は本拠地を動かないと考えた。


 そうなると本拠地には246人からかなりの数が減る。親玉と側近を含めても多くて10人くらいだと見積もっていたが運が良かった。その2人だけだった。


 アイトたちは大勢の取り巻きがターナに向かったのを確認する。


 「【クリーネス】」


 そして幻影魔法【クリーネス】を発動させ、アイトとエリスは透明になった。だが透明になっているアイトとエリスはお互いが見えている。


 この場合はアイトとエリスだけ周りに見えなくなったと言った方が正しいかもしれない。


 こうして透明になったアイトとエリスが本拠地を移動し、親玉の意識を刈り取って側近や取り巻きには降参させる‥‥‥という作戦を立てていたが失敗。


 ターナを制圧係をする選択肢もあったが、取り巻きたちを外におびき寄せるには敵対中のターナが1番の適任だった。


 ルーンアサイドの構成員はアイトたち3人の中だと、1番過剰に反応するのはターナだと考えたわけだ。


 だが今はターナを制圧係にしなかったことを、アイトはすごく後悔していた。不意打ちに失敗した挙げ句に無数の針で死にそうになったからである。



 そして‥‥‥アイトとラルド、エリスとミストという対人戦の形が出来上がる。


 正直逃げたいと感じているアイトだったが、既にターナは何百人相手に立ち回りを始めている。今さらやめるわけにもいかない。



 アイトは、覚悟を決めた。


 「い、行くゾっ! な、名前は、え〜と、ボス!」


 「貴様のボスではない!!」




 そしてアイト(ターナ)の短剣とラルドの剣がぶつかる。


 一方、エリスとミストも動き出そうとしている。



 こうしてアイトVSラルド、エリスVSミストの幕が上がる。


 この戦いの勝敗が、アイトの未来に大きな影響を及ぼす。

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