‥‥‥油断するなよ
ルビーとセバスはグロッサ城、城門前に到着。
「! エマさんに執事さん! どこに行ってた!?」
すると、城門前にはルークがいた。
ルークはユリアと別れた後にステラの無事と安全を確認。
そして周りを兵士で固めていた国王も確認し、本格的にエマ(ルビー)とセバスの探索を開始し始めたところだった。
「申し訳ありませんルーク王子。
王子も知っておられると思いますが
謎の賊に襲撃されましてな。
部屋から飛び降りた時も王子に話ができずに
申し訳ありませんでした。
それからこの周辺に身を潜めた後、
ここに戻ってきた次第。お嬢様は無事です」
「2人とも無事で良かった。はじめましてエマさん」
「は、はじめまして!」
「とりあえず中へ。今日はもう休んで。
僕が周辺の警備にあたるから安心して」
「それは心強い。心遣い痛みいります。
お言葉に甘えます。お嬢様」
「はい。ありがとうございますルーク様」
ルビーとセバスは兵士に案内されていく。
(レスタさん‥‥‥お父様を、お願いします!)
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ユリアの部屋。
「急に窓から入ってくるからビックリしたよ〜!」
「お帰りなさい、エリスさん!」
「zzz」
「ええ、ただいま戻りました」
ルーナとセバスを城門前付近へ案内した後、エリスは2人と別れて城の周辺を走り、ユリアの部屋の真下へ。そして風魔法の飛行により窓から再侵入したのだ。
「カンナ、アクア。用心してください。
もしかすればこれから動く可能性があります」
「わかった! アクア! 起きて〜!」
「zzz‥‥‥」
「アクアには伝えなくていいです。
もしその時が来れば連れて行けばいいですから」
「そうだねっ! それじゃあ何があったか教えて!」
「わたしも知りたいですっ! エリスさんっ!!」
「は、はい。教えます」
(レスタ様‥‥‥お気をつけて)
エリスはカンナたちにこれまでの出来事の話し始めた。
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王都から離れたグロッサ王国領内のとある宿屋。
「‥‥‥それで? 1番近いのはボクだったのか」
「‥‥‥はい」
エルジュ精鋭部隊《黄昏》No.2、『死神』の異名を持つターナのご機嫌を伺うアイト。
アイトが《黄昏》の他メンバーに連絡すると、目的地の1番近くにいたのがターナだったのだ。
「‥‥‥まあいい。これも仕事だ」
「よろしくお願いします‥‥‥」
「組織のトップならもっと堂々としろ」
「でも、ターナに余計な仕事増やしちゃったし」
「‥‥‥はあ。本当に何もわかってないな、お前」
「ちょ、ちょっと待って!」
アイトはターナの後を慌てて追いかけるのだった。
「動くな」
「!? ひ、ひぃ!? なんだお前たちは!?」
アライヤ・ベネットが泊まっていた部屋をターナが探り出し、部屋の鍵を針で外し突入する。そしてアライヤの首に短剣を近づけた。
アイトはその後に部屋に入りターナの近くに立つ。
「‥‥‥いつでも殺そうと思えば殺せる。
バカな気を起こすなよ?」
「わ、わかった!! わかったから!!!」
「それじゃあ聞かせてもらおうか。今回の件を」
「‥‥‥今回の件、とは何のことだ?」
「‥‥‥とぼけるか」
「本当にわからんのだ!!」
(至って知らない時の反応だな。これは、まさか白?)
「黒だな」
アイトの心を読んだかのようなタイミングでターナはそう言った。
「く、黒?」
アライヤは戸惑っている。
「なかなか器用な魔法だ。言動と態度も悪くない。
だが、息遣いは誤魔化せなかったか」
ターナがそう言った途端、部屋のクローゼットから勢いよく何かが飛び出し、ターナを襲う。
「ターナっ!!」
アイトはターナの名前を叫ぶ。だがアイトの心配は杞憂に終わった。
襲撃者の首を、一瞬で背後に回ったターナが掻き切ったからだ。鮮血が机や床に飛び散る。
「言わなかったか? いつでも殺そうと思えば殺せると」
その声は襲撃者に届いていなかった。そしてアライヤはその場にダランと脱力した。
(まさか、気づいてたのか? 全く気づかなかった)
「よく気づいたな」
アイトは思わずそんな声を漏らしてしまう。
「は? 気づくに決まってるだろ。
まずアライヤは驚いた様子を見せたにも関わらず
呼吸が落ち着いていた。
つまり明らかに演技ということになる。
それにボクたちを見る視線を
クローゼットの中から感じた。
こいつがアライヤを魔法で操っていたんだろ」
(‥‥‥さすが、元暗殺者)
「アライヤは部下に運ばせる。ちゃんと今の状態を
見てもらわないと。ボクはここの後片付けをする。
血溜まりの死体が転がっていると宿屋に迷惑がかかる」
「え、じゃあ俺は?」
「エリスたちに連絡」
「え、でも1人で片付けなんて大変なんじゃ」
「お前、この死体の処理と血溜まりを掃除できるか?」
「‥‥‥お願いします」
アイトは部屋を出てエリスに連絡を取る。そして連絡を終えてしばらくするとターナが部屋から出る。
「終わった。近くにいる部下がすぐに来る。
ボクたちの仕事は終わりだ。帰る」
「あ、ああお疲れ様」
アイトは労いを言葉をかけ、ターナの後をついていく。
2人は宿屋窓から外に出て歩き出す。
「おい、なんでついてくる」
「いやがんばってくれたしご飯でも奢ろうかな〜って」
「‥‥‥ふん、勝手にしろ」
「それじゃあどこに行こうか。
もし希望がないなら俺のお気に入りの」
アイトはそう言った途端に口を閉じる。ターナも同じく構える。目の前に1人の男がいたからだ。その男覆面を付けていて顔はわからない。
「俺がやる。ターナは休んでて」
「‥‥‥油断するなよ」
アイトが前に出て剣を構えると、両足に『血液凝固』を発動。一瞬で相手に詰め寄り顔を掴む。
「【床ドン】!!」
そしてそのまま地面に叩きつけた。男は全く反応しないまま地面に叩きつけられ、指一つ動かさなかった。
「ふうっ。これでいいな」
アイトが立ち上がり男が動かないことを確認した後、ターナの方へ振り向き歩いていく。
(強くない敵で良かった。あ〜今日は疲れた〜)
アイトは任務が全て終わったと感じて気が緩んでいた。
ターナを見ると僅かに口角が上がった瞬間、一瞬で表情を変える。
「レスタっ!!」
「うぉぇ!?」
突然ターナが『血液凝固』を発動した腕でアイトを押し退ける。予期していなかったアイトは横に飛ぶ。
「っ‥‥‥」
その直後。ターナの腕に針が突き刺さった。