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暗殺組織壊滅作戦

 「んぅ‥‥‥? う〜んぅ‥‥‥?」


 襲撃者が目を覚ます。


 「お姉ちゃん!」


 目が覚めた襲撃者は、目の前にいる弟に狼狽する。


 「え、ヨファ? 本当にヨファなの!? なんで‥‥‥大丈夫、ケガはない!?」


 「うん平気だよ!」


 襲撃者が、弟ことヨファを力強く抱き締める。


 「よかった‥‥‥本当に無事でよかった!!」


 「この変な人とお姉さんが助けてくれたんだ!」


 「!! この、2人が、なんで‥‥‥」


 襲撃者は疑問に感じていた。自分が襲いかかった上に、何も事情を話していない。


 にも関わらず弟を助けてくれたことで、困惑を強めていた。


 「助けてくれて、ありがっ、と‥‥‥」


 襲撃者はヨファ君の頭の後ろに手を回して指で後頭部を突く。するとヨファは意識を失ってしまい声が途切れる。


 (え、何したんだ??)


 「とりあえずヨファを安全なところへ移す。すぐに戻ってくるからここで待ってろ」


 (なんで俺たちが命令されてるんですかね?)


 アイトは納得いかなかったが、渋々受け入れた。




 その後、襲撃者はすぐに戻ってきた。


 「さあ、話を聞かせてもらおうか。これはいったいどういうことだ」


 そしてアイトたちが誘拐犯という前提で追及が来る。


 「俺たちはヨファ君を誘拐なんてしてない。それはさっきの彼の様子を見ればわかるだろ?」


 「それは、たしかに‥‥‥だが、だとしたらなぜこっちの事情が分かった?ヨファが拘束されてた場所を知ってた?無関係の奴がわかるはずがないだろう」


 「それは私の特技で見つけました」


 するとアイトの代わりに、エリスが返答する。


 「まず、あなたの記憶からヨファくんを探し出して彼の魔力を理解します。次にヨファくんが現在どこにいるかを彼の魔力を探知して発見した、というわけです」


 「そ、そんなことをやってのけたのか?にわかには信じられない」


 「それは信じてもらうしかありません。それにレスタ様はあなたに勝ってるのですよ?


 「それは‥‥‥」


 「もし私たちが誘拐犯ならあなたたちは既にこの世にはいない。ですが私たちはヨファくんを救出した」


 「‥‥‥」


 「これで私たちが誘拐犯じゃないのは証明できるのではないですか?」


 「‥‥‥その通りだ、な」


 襲撃者はエリスの言葉を受け止め、頭を下げた。


 「お前たちを誘拐犯と勘違いした。多くの無礼を謝罪する。すまない。それと弟を助けてくれて、ありがとう」


 「気にするな。これにて一件落着だ」


 そして、ここからがアイトとエリスにとって本題だった。


 「屋敷から金銭になりそうな物を全部回収して帰るか!」


 「そうですね!漁りまくりましょう!!」


 まるで慎みの欠片も無い発言を繰り出す主人公とその相棒。


 「ちょっと待て!!」


 すると屋敷に向かおうとするアイトとエリスを、襲撃者が呼び止めた。


 「ま、まさか‥‥‥あの屋敷が、ヨファが捕らえられていた場所か?」


 「うん、そうだけど?」


 アイトが簡潔に返事すると、襲撃者の顔色がだんだんと悪くなる。


 「嘘だ‥‥‥いや、気のせいかもしれない」


 襲撃者の独り言が続く。すると、アイトはまだ聞いてないことを思い出した。


 「君、名前は?」


 「‥‥‥ターナだ」


 「ターナか。俺はあ‥‥‥レスタ」


 「あ。やっぱり、『静寂』のターナですよね?」


 「!! それをボクの前で言うな!」


 エリスの発言に対し、ターナは顔を赤くしながら怒る。


 だが、微笑んだエリスは止まらない。


 「アステス王国で名を轟かせているターナさんに会えて光栄です。ね、レスタ様」


 「ウン、そうだナ」


 アイトは反射で相槌を打つ。ちなみに、全く分かっていない。


 「私はエリスです。よろしくお願いしますね」


 「ふん、何がよろしくだ」


 ターナがエリスに悪態をつく。エリスはそれを気にしてない様子だった。


 「ところで、さっきのお屋敷の方々がこんなものを持っていたのですが」


 エリスは胸ポケットからバッジのようなものを取り出す。どうやら月のようなものが描かれてるバッジだ。


 「それは『ルーンアサイド』のバッジ!?」


 「うん、そうだヨ」


 「や、やはりヨファを攫ったのはボクと同じ組織というのか!!」


 「その通りダ。ウラギラレタナ」


 話について行けてないと思われたくないため、アイトはまるで知っている風に装う。


 (同じ暗殺組織の構成員がヨファくんを誘拐だって?ど、どうして?)


 内心では考えがまとまらないアイトをよそに、エリスは詳しく話し始める。


 「『静寂』のターナは、実力は優れているが必要最低限の仕事しか行わない。あまり賞金を稼がないと有名です」


 「ソウイエバ、そうダ」


 アイトが適当に相槌を打つ間も、エリスの話は続く。


 「おそらくヨファ君を人質に取ることで無理矢理にでも暗殺任務を増やそうとしたのではないですか?もしくは単純にあなたを切り捨てようとしたか」


 「‥‥‥いや、ボスがそんなことをする人間には思えない。ボスは信頼に足る人だ」


 2人が話す間も、アイトは全く会話についていけてない。


 だが蚊帳の外はなんとなく嫌なため、それっぽいことを言い始める。


 「ターナ、君はその組織から抜けた方がいい。もしかしたらもう追手を手配されてるかも」


 「いや、もし本当に組織の犯行だとして、ただ抜けただけだとヨファも狙われ続ける。それに聞きたいことが山ほどある」


 「まあ、別に止めはしないけど」


 「‥‥‥よし、決めた。『ルーンアサイド』の本拠地を制圧する」


 「そっか、じゃあがんばっムグゥ!?」


 アイトは突然エリスに口を押さえられる。そして引っ張られ、ターナから少し離れた。


 「ど、どうしたエリス?」


 「アイト様! 協力しましょう!」


 2人きりの時は呼び方を変える、律儀なエリスである。


 「え?」


 「『ルーンアサイド』の本拠地は全くの謎。組織の構成員しか知らないのでしょう。つまり‥‥‥今ターナに協力すればその本拠地が私たちにもわかります」


 「うん、それで?」


 「本拠地には価値が高いものがたくさん‥‥‥それに押収品も多いはずです。必ず私たちに役立つものがあるはず。もし制圧できればそれをいただけますよ」


 (なるほど、もし役立つものが無くても制圧して物色するのもありだな)


 これが、主人公とその相棒の言動である。


 「あ、それなら!!」


 するとアイトは、思いついたことをターナに話しかける。


 「ターナ! 本拠地に魔導書ってある!?」


 「あ、ああ。これまでの押収した魔導書をいくつか保管してあると思うが」


 「俺たちが君に協力してルーンアサイドの本拠地を制圧したら、もらっていい!?」


 「別にそんなものに興味ないからくれてやるが、もしかしてボクと組む気か?」 


 「ああ手を組もう! 互いの目的のために!!」


 アイトは将来の生活のため、ターナは本拠地の制圧のため、今ここに同盟が結ばれた。


 「そうかレスタ。正直1人でやるつもりだったが、今は猫の手も借りたい状況だ。だから感謝する」


 「俺は猫か」


 「言葉の綾だ。少しくらいは頼りにしてる」


 「冗談だって」


 「さすがレスタ様、私もついていきます」


 ターナは素直に感謝を述べ、エリスも乗り気。


 そんな2人を見て、アイトも同様に気分が高揚していく。


 「さすがですレスタ様。あの『ルーンアサイド』の本拠地に攻め込むと決心するとは。それでこそ私の主です」


 「ん?」


 だがエリスが明らかに気になる内容を呟いたことで、アイトの気分は下落していく。


 「『ルーンアサイド』はアステス王国の中で最大規模の暗殺組織。私たち3人でも苦労すると思いましたが、レスタ様にはそんなこと関係ありませんよね」


 (‥‥‥??????)


 「レスタとエリスが手を組んでくれるとなると、1人あたり約100人だな」


 (‥‥‥???????)


 「本来は天候や本拠地に何人いるかを何日も偵察して策を考えるつもりだった。でも3人だと今夜で制圧できそうだ」


 (何言ってんのこの人たち!!!?)


 アステス王国最大の暗殺組織。その規模の大きさを、アイトは見落としていた。




 「エエェぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!?」


 「出ました!レスタ様の歓喜の声!大きなことの成し遂げる前で気分が昂ってるんですね!それでは私も。え、えええぇぇぇぃ」


 「何だそれ!?ボクは絶対やらないからな!」


 「あら?私たちはあなたと手を組んだのですよ?いわば今だけは同じ戦場に向かう同士。ですから波長を合わせていくべきかと、『静寂』のターナさん?」


 「くっ‥‥‥わかったよっ、やればいいんだろ!?」





      こうして、3人は大声を出す。


   「ムリぃぃぃぃ嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


       「むりぃぃやああぁぁぁあ」


    「‥‥‥むりぃぃやああ‥‥‥ほんとやだ」



  (いや無理ほんと無理マジで無理はやく帰ろ?)



 アイト、エリス、ターナ。3人による暗殺組織壊滅作戦が始まる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 暗殺組織『ルーンアサイド』所有の屋敷付近。


 「あの子を助けたか。よくやってくれたね仮面くん」


 アイトとは少し違う銀髪、仮面をつけた男は安堵していた。


 (今はもう時間が無いから帰らざるを得ないが、もし勇者の末裔がいたら‥‥‥最高だな♪)


 男は不敵な笑みを漏らし、その場を離れていくのだった。

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