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記録 精鋭部隊《黄昏》No.6、『黒薔薇』ミア

 これはエルジュ戦力序列第6位、精鋭部隊《黄昏トワイライト》に所属したミアの訓練生時代について記した記録である。


 個人の戦闘力はエルジュ内でトップクラスだが、仲間との連携を取ることが苦手。


 ミアは幼少期、孤児だったところを拾われたがそこは謎の集団。魔力保有量が平均より高いことに目をつけられ、人体実験をされる。膨大な呪力を受け入れる器として。魔力を全て取り除かれ、呪力を人為的に埋め込まれたのだ。


 その実験は失敗に終わり、地下ダンジョンに手錠で拘束されて放置。薄暗い地下で人生を終える‥‥‥はずだった。


 偶然そこに訪れたアイトに助けられて教官のラルドに紹介される。そしてエルジュへ加入することを決意。


 魔力は全く無いが、唯一無二の呪力使い。そのため訓練生の中で最も扱いが難しかった。


 試験項目に魔法があるが、魔力が全く無いミアは試験自体受けられない。カイルも別の理由で魔法を発動できない。だからといって試験一つ分を評価されないのはあまりにも不憫である。


 そこで魔法の試験を受けられないミアとカイルだけの特別ルール。それは教官との実戦の点数を2倍にするというもの。


 完全に平等とまではいかないが、訓練生全員に説明すると納得してくれた。


 そもそも任務で活躍するために訓練を受けているのだ。実戦で活躍できなければ意味が無い。


 そんな特別ルールを設けられた上でのラルド教官との実戦。




 「準備はいいか」


 「は? 見ればわかるでしょ。早くして」


 「う、うむ」


 鋭すぎる返事に反応に困るラルド。元暗殺組織のトップで現教官である彼ですらミアの扱いに困っていた。


 気を取り直したラルドは短剣を取り出して構える。ミアは何も構えない。立ち尽くしていた。だがそれだけで、ラルドの額から汗が流れる。


 (本当に、どう接すればいいのだ‥‥‥)


 呪力に触れれば1発アウトだと直感で感じているのだ。


 ミアの身体から呪力が溢れ出す。


 寒気がしたラルドは針を取り出して投げる。


 「【シロ】」


 そう言ったミアの足元から白い手のようなものが出現して針を掴む。


 (触れれば1発アウトで遠距離攻撃は通らない!

  これほどまでの恐怖、レスタ殿に匹敵する!!)


 ラルドが短剣を取り出して構える。


 「【クロ】」


 ミアの足元から黒色の呪力が広がっていく。ラルドは急いで壁際まで跳躍する。


 呪力の広がる速度が上がっていき、数秒後にはラルドの足元以外に呪力が広まっていた。意図的にラルドの足元には広めなかったのだ。


 「どうするの? 触れたら激痛だよ〜?

  そこから攻撃するのも大変そうだし。

  ま、今から足元も呑み込んであげるけど?」


 「ぬんっ!!」


 ラルドは両足に【血液凝固】を発動。近くの壁を蹴って水平に飛び、ミアに迫る。


 床はもう呪力に浸されているため、壁を蹴って移動するしかないと考えたのだ。


 ミアの腹に短剣を滑り込ませ、一文字に切ろうとする。訓練用短剣でなければ命に関わる一撃。


 その一撃が届く寸前。ミアは、笑っていた。


 「【シロ】」


 ミアの腹に白い呪力が浮かび上がり、ラルドの短剣を受け止める。そして接着剤で引っ付いているかの如く離れない。


 ラルドは咄嗟に短剣から手を離すが、時すでに遅し。ラルドが足を付ける壁に【シロ】でできた壁が待機しており、全身を包まれて拘束される。


 「まだやるの?」


 「‥‥‥降参だ」


 ラルドは、手も足も出なかった。




 後に知らされた実戦の点数は200点(特別ルールにより2倍)。


 ラルドに何もさせずに勝利し、戦闘においてあまりにも危険で、脅威になり得るポテンシャルの高さから評価された。


 体術と武術では半分以下の点数を叩き出したミアだが、特技と実戦では満点を記録した。


 数日後、ミアは序列6位に選出され、《黄昏トワイライト》への所属を果たす。



      ミアは、誰よりも危険な存在である。



     以上が、訓練生時代のミアの記録である。

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