ギルド連携魔物討伐体験、当日
ギルド連携魔物討伐体験までの4日間。
(平穏な学園生活って最高だぁ‥‥‥!!)
アイト、ギルバート、クラリッサ、ポーラの4人は談笑していた。
そして、もうすぐ始まる討伐体験について話し合う。役割をどうするか、得意魔法は何かなど色々話し合った。その過程で、アイトたちは打ち解けていった。
それぞれの得意魔法を、アイトは頭の中で整理した。
「俺は振動魔法だな!! 大剣に纏わせてぶっ飛ばす!!」
ギルバート・カルス。得意なのは振動魔法。快活に笑い、白い歯を見せる。
「私は幻影魔法ね。得意とは言っても、他の属性に比べたらだけど」
クラリッサ・リーセル。得意なのは幻影魔法。少し気恥ずかしそうに視線を逸らしている。
「わ、私は‥‥‥強いて言うなら、音魔法ですかね‥‥‥」
ポーラ・ベル。得意なのは音魔法。少し自信が無さそうに視線を下げて呟いていた。
(貴族たちが、あまり使わないような魔法が多いな。まあ、俺は個性派集団との付き合いも慣れてるし‥‥‥)
火や水、雷など‥‥‥一般的な基本属性魔法を使う人はいなかった。かなり偏った討伐班となったが、アイトは別に気にしていなかった。
アイトの言う『個性派集団』との付き合いというのは、もはや誰たちか言うまでもない。
「そういえばよ、アイト。お前の得意魔法って何だ?」
「え‥‥‥得意、魔法?」
すると、アイトの身体が硬直した。
得意魔法という概念が、自分の中には無かったのである。
(いつも属性同士を混ぜ合わせて、魔法を使ってるからなぁ‥‥‥)
顎に手を置いて自分の分析を行いつつ、やがて結論を出す。
「‥‥‥分からない。いや、無いかも」
「「「え?」」」
3人の声が重なり、アイトは苦笑いして誤魔化した。
(‥‥‥バットコミュニケーションっ!!)
自分の失敗を悟った。
そして‥‥‥ギルド連携魔物討伐体験、当日。
(初めての大規模な学園行事‥‥‥!! これは完全に平穏な学園生活だよなっ‥‥‥!!!)
アイトたち1年生は教員と共に、王都から少し北に移動していた。
冒険者ギルド本部『ジャバウォック』付近へと。
(立派な本部だなぁ‥‥‥)
アイトが月並みな感想を抱く間、引率の教員と冒険者ギルドの代表が握手を交わす。
「今日はよろしくお願いします」
「おう! こちらこそ頼むぜ! 将来冒険者になってくれるやつが増えると考えれば大歓迎だ! 王国からの報酬も多いしな!」
「ははっ、それはこちらとしても嬉しい限りです」
「それではさっそく移動しよう! 手本を見せる!!」
(いよいよ、行事が始まる!!)
アイトは完全に、ただの学生として前向きに参加していた。
◆◇◆◇
「とまあ、こんな具合だな」
付近の魔物がいるエリア。1年生は冒険者たちの実戦の様子を見学する。
「それじゃあ、予め決めていた討伐班に分かれてくれ!」
1年生が各自、自分たちの班で集まり出す。当然、アイトたち4人はすぐに集まった。
「近くでワシらが見ておるから、自由に討伐してくれ!」
冒険者の声が響き渡ると、1年生が一斉に動き出す。
「おいアイト! ここだと今いる魔物は一瞬でなくなっちまう! 遠くへ移動しようぜ!!」
「え、でも冒険者の人たちが見える場所じゃないとーーーってギルバート!?」
「ギル待ちなさい!!」
アイトはクラリッサと同時に大声を出して驚く。突然、ギルバートが走り出してしまったからだ。
「はあ、仕方ない。クラリッサ、ポーラ、行こう」
「はあ、全くあのバカ!!」
「は、はい!」
こうしてアイトたちは、開始地点から離れた場所まで移動してしまった。
「ッラァァァ!!!」
ギルバートの声と共に振り下ろされた大剣が、ゴブリンを一刀両断する。
「アイト! そっち行ったぞ!!」
「ああ!」
アイトは愛剣である『聖銀の剣』を使うわけにはいかず、一般的な鉄の剣を使用。難なく、ゴブリンたちを切り刻む。
「クラリス、ポーラ! もっと魔法かけろ!」
「わかってるわよ! ポーラ、まだいける?」
「はい! まだ大丈夫です!」
気合いを入れたクラリッサとポーラが、ゴブリンに対して幻影魔法と音魔法で足止めしていた。
アイトは大剣使いギルバートと共に前衛。クラリッサとポーラが後衛。2人が前、2人が後ろ。
「!? クラリッサさんっ、後ろ!!」
だが、アイトは予期せぬ事態に大声を出す。
クラリッサの背後に、息を潜めたゴブリンが回り込んでいたのだ。
「きゃっ! クラリッサさんっ!!」
ポーラが悲鳴を上げた直後、ゴブリンが勢いよく棍棒を振り下ろす。
ガンッ!!!
「‥‥‥え?」
アイトは次に、困惑しながら声を漏らす。予想外の光景に、目が離せない。
「背後に回り込むとか、最低ね」
クラリッサが後ろ手で背中に杖を回し、ゴブリンの攻撃を受け止めていた。そして手首で杖を回転させ、棍棒を弾き飛ばす。
「はぁ!!」
振り向いたクラリッサが、目にも止まらぬ杖の連撃を繰り出す。一撃が当たるたびに、ゴブリンの身体から鈍い音が鳴り響く。
「死ね」
そしてクラリッサが、逆手に持った杖を‥‥‥ゴブリンの心臓に突き刺した。
アイトたちは、近くの川付近で休憩中していた。
「クラリッサさん、すごいです!!!」
「いや、べ、別にそんなことないわよ?」
ポーラが目を輝かせて身を寄せる。クラリッサは少し恥ずかしそうに腕を組んだ。
「確かにすごかった。杖をあんな風に使うなんて」
「アイトまで‥‥‥」
そして、アイトは素直に称賛していた。
明らかに長年の鍛錬が垣間見える、彼女の杖捌き。
褒められたクラリッサが、むず痒そうに視線を逸らす。
「クラリスの戦闘スタイルは、杖でボコボコに殴ることだからな。前衛にしたかったんだが、2人にバレたくないって言ってたからよ」
「ちょっ、ギル!!」
「オレからすれば、なんで典型的な杖使いアピールしてたのかよくわからねぇ」
「ちょっとそのこと言わないでよ!! ‥‥‥ほんと口が軽いんだから」
クラリッサが顔を真っ赤にして息を吐く。もう諦めの表情が見て取れる。
「いや、これはクラリッサさんの大きな武器だ。確かに杖使いが物理攻撃を行うなんて、普通なら考えない。なるべく他の人に見せない方がいいかも」
だが、アイトは称賛を続ける。クラリッサの杖捌きが、それほどまでに見事だったのだ。
「アイトに言われなくても、誰にも見せる気なんてないわよ! これ、すっごく恥ずかしいんだから!!」
耐えられなかったのか、クラリッサが更に顔を赤らめてキッと睨む。
「ポーラ、アイト、特にギル!! 絶対秘密ね!!」
「特にって何だよっ!!」
「そうですよね。人に言えない秘密って誰にでもありますよね」
「‥‥‥ああ、そうだな」
アイトは即座に同意する。ポーラが呟いた言葉が、妙に心に刺さっていたのは言うまでもない。
その事で、アイトはふと思い出す。
(‥‥‥あれ。そういえばアクアたちって、どこにいるんだ‥‥‥?)
それは、冒険者ギルドに潜入している‥‥‥組織の構成員たちを。
◆◇◆◇
「今のところ大丈夫そうですね」
「あいつが低級の魔物如きに遅れを取るわけがねぇ」
「どうでもいいけど早く寝たいー」
「アクア!? まだ寝ないでくださいぃぃ!!!」
オリバー、カイル、アクア、ミスト。
彼ら4人は、木の上から1箇所を眺めていた。
「‥‥‥楽しそうです」
それは‥‥‥今も休憩しているアイトたち。
【血液凝固】で強化した眼で見ているため、距離はかなり遠い。
「ふう‥‥‥誰かおねがいします」
「んじゃ、俺がやるぜ」
【血液凝固】は長時間使うと疲れるため、1人ずつ順番に監視していた。オリバーの次は、カイルが監視を行う。
「エリスも過保護なんだって。なんで俺が子守みたいな事をしなきゃならねえんだ」
【血液凝固】を両眼に施したカイルが、呆れながら息を吐く。面倒くさそうな反応を見せる。
「ーーーカイルさん? 次、エリスさんを悪く言えば‥‥‥これ、ぶっ放しますよ?」
すると突然‥‥‥オリバーが躊躇なく銃を向ける。
監視を続けていたカイルへと。
カイルが両手を上げて、降参と言わんばかりに口を開く。
「‥‥‥ああ悪かった。だからそれを戻してくれよ」
「わかればいいです」
オリバーが素直に銃を懐に戻し、笑顔で話した。カイルが苦笑いを浮かべる。
「ねー寝ていい?」
「ダメですぅぅっっ!!」
全く別の話をしているアクアとミスト。あまりにも、4人の協調性が見て取れない。
「ーーーよし、そろそろ行こうぜ」
そして、アイトたちは移動を再開した。
カイルの監視を‥‥‥無意識に掻い潜って。




