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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
最終章 いつ、この地位から

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複雑な心中

「あんな強い人に気に入ってもらえて、本当によかったね?」


「文句があるならジャックさんに言ってくださいよ‥‥‥」


 アイトは眉を下げ、肩を脱力させて息を吐く。

 隣を歩くルーク・グロッサに、笑顔で責められているからだ。


「それだよ、それ。僕がずっと気になっていたこと」


「‥‥‥え?」


 足を止めたルークに、何かを指摘される。

 アイトは困惑しながら同じように足を止め、彼を見つめていた。


「本当に不本意だけど、君は形だけでもステラの婚約者なんだ。だから君は、僕の義弟ということになる」


「うぇっ‥‥‥」


「今、露骨に嫌そうな反応したね?」


 アイトは超速で首を横に振って、さっきの失言を必死に誤魔化す。


「まあ、いいや。話を戻そう。本来なら関わる機会も少なかったはずの僕たちが、今はこんなにも密接に複雑な関係性となってしまっている」


「なんか誤解を生みそうな言い回し、本当にやめてくださいね???」


 アイトは真顔で言葉を返すが、ルークが華麗に無視して話を続ける。


「‥‥‥だからせめて。その敬語くらい崩してもらわないと、僕だって気疲れする。せめて2人きりの時は、もっと馴れ馴れしく話してほしい」


「また誤解が生まれそうなことをっ!!」


 アイトは過剰に反応して狼狽える。だがルークが真顔で佇み、何かを待ち続けている。

 やがてアイトは大きく息を吐いた後‥‥‥少し躊躇いながらも口を開く。


「‥‥‥分かったよ、ルーク。これでいいか?」


 そして、少しだけ歩み寄ろうという姿勢を見せた。その言葉を聞いて、ルークが目を丸くする。


「ーーー呼び捨てにしろとは言ってないんだけど?」


「いい加減にしろやっ!!?」


 こうして、複雑な心中を抱える2人の仲は‥‥‥少しだけ改善した‥‥‥のかもしれない。




 グロッサ王立学園、生徒会室。

 王都で起こった騒動の影響で、まだ学園は再開していない。


「今となっては、完全に私的利用だね」


「今や()()()が生徒会長ですもんね‥‥‥」


 アイトは真ん中に置かれた()()のソファに座り込む。

 すると向かいに座った()生徒会長‥‥‥ルーク・グロッサが眉を下げて口を開く。


「はい、敬語。約束は守ってよ?」


「‥‥‥今やあの人が生徒会長だからな」


 アイトは嫌々言い直して、深く座り込んで目を細める。ルークとの会話に、少し嫌気が指している。


「君の言う事も理解できるよ。どう考えても学園を良くしようとか、考えてなさそうだからね。正直、立候補したのも驚きだったよ」


 ルークが苦笑いを浮かべながら、少し懐かしむように目を細める。アイトの嫌味などお構いなしに。


「でも()()は‥‥‥背負った責任を投げ出さないから大丈夫でしょ。それに、間違いなく面白いことをしてくれそうだし」


「あんたはもうすぐ卒業だから、そんな事が言えるんだよ‥‥‥」


 アイトは素直な感想を直球でぶつけた。その反応が面白かったのか、ルークが意地の悪い笑みを浮かべて足を組み替えている。


「君たちの学園生活、これからどうなっていくか楽しみで仕方ないよ」


「はいはい、そうですか」


「こら」


「ああ、そうかよ‥‥‥」


 アイトは思わず舌打ちしそうになりながら、視線を逸らして再度呟く。

 ちなみに、2人がこうして生徒会室にいるのは‥‥‥雑談しに来ているわけではない。



「ーーー生徒会長である私を差し置いて占拠するとは、大した度胸だな」


 勢いよく扉を開けて入ってきた‥‥‥()()()()と話をするためだった。


「スカーレット先輩‥‥‥腕はもう大丈夫なんですか?」


「大丈夫だ。絶対安静にしてれば治るそうだ」


「それ大丈夫じゃないですよね!?」


 アイトは颯爽と隣に座ってきた()()()()‥‥‥スカーレット・ソードディアスに声を出す。


「あぁ‥‥‥アイトくんのお隣がっ」


「どこに座ればいいですか」


「こんなの好きに座ればいいでしょ」


 1年Bクラス、アヤメ・クジョウ。

 1年Aクラス、ジェイク・ヴァルダン。

 1年Aクラス、システィア・ソードディアス。


 アイトとは別のクラスの友人が、室内へと入る。別に、アイト自身は驚いていない。


「ーーーこれって、何の集まりなんだよ‥‥‥」


「私に分かるわけないでしょっ」


「わ、私にも分かりませんっ」


「‥‥‥‥‥‥」


 そして、新たに別の4人が扉の外で困惑していた。

 1年Dクラス、ギルバート・カルス。

 1年Dクラス、アヤメ・クジョウ。

 1年Dクラス、ポーラ・ベル。

 1年Dクラス、ユニカ・ラペンシア。


「君たちも中に入って座ってくれ。ちゃんと全員座れるように用意しておいたから」


 アイトと同じクラスの友人たちが、ルークに促されながら室内へと入った。

 そして、最後に入ったユニカが‥‥‥内側から鍵を掛ける。


「これで、呼んでいた全員が集まったね」


 こうして、アイトたち10人が‥‥‥生徒会室で一堂に会した。ルークが司会進行のように颯爽と話し出す。


「君たちに集まってもらったのは‥‥‥もう、大半が分かってるよね」


 ルークの問いかけに、皆が何も言わずに佇む。

 アイトは思わず視線を下げて俯き、これからの話を甘んじて聞く姿勢に入る。


「ーーーアイト・ディスローグと『天帝』レスタは同一人物だ。この秘密を、他には絶対にバラさないようにしてほしい」


 ルークが、ついに本題を切り出した。

 アイトは俯いたまま、口を閉じて黙り込んでいる。少しの間、居心地の悪い静寂が訪れる。


「「うぇぇぇぇぇぇっ!?」」


 だがそんな空気をぶち壊す絶叫が2()()響き渡る。


「あ、ああアイトくんがっ!?」


「そ、そうだったの!?」


 その声の主は、ポーラとアヤメだった。

 アヤメに至っては、今まで何度かアイトの力の一端を見ている。その上で、こんな反応をしている。

 まさに、盲目。


「‥‥‥はぁ、そんな話? 身構えて損した」


「同感だ。彼が只者では無い事など、とっくに分かりきっている。それに、あのマリアさんの弟だからな」


 対照的に、淡々と言葉を漏らしたのはシスティアとジェイク。


「まあ、俺も似たような感じだな。今さら驚きはしねえよ」


「私も。明らかにDクラス、いや学生の域を超えてるし」


 続けて、ギルバートとクラリッサが納得したように呟く。やはり、力の一端を見てきた者からすれば‥‥‥特に驚くような事では無かったのだ。


「話が早くて助かるよ」


 ルークがどこか嬉しそうに微笑むと、少し身を乗り出して口を開く。


「知ってると思うけど、彼はグロッサ王国において‥‥‥必要不可欠な存在だ。彼の正体に関する情報は、全て国家機密となる」


「だから他者に話すなって事ですよね? そんなの言われなくても話しませんよ」


 彼の話を聞きながら、システィアが呆れた様子で言葉を返す。『どうでもいい』と、顔に書いているようだった。


「いや‥‥‥君たちが思っている以上に、この話は王国にとって重要な取引だ」


「‥‥‥取引?」


 皆の気持ちを代弁するかのように、システィアが即座に聞き返す。


「ああ。これから君たちには‥‥‥誓約書にサインしてもらう。そのために、君たちをここに呼んだんだ」


 ルークの一言は、この場にいる1年生たちを困惑させるには充分過ぎた。誓約書という縛りが重そうな言葉を、気にするのは無理も無い。


「‥‥‥‥‥‥」


 そして、アイトは終始何も言えなかった。自分が招いている今の状況で、皆に話せる事など無かった。


(俺自身が‥‥‥王国の平穏を壊す存在なのかもしれないな)


 無意識に、膝の上に置いた両手に力を込める。平穏な生活を望んでいる自分が、平穏を脅かす存在であることを自覚させられーーー。



   「それなら、条件を1つ追加してもらいます」


 すると静まり返っていた室内に、1つの声が響く。アイトを含め、皆が一斉に()()を見つめる。


「確か、ユニカ・ラペンシアさんだよね」


「はい」


 ルークに尋ねられ、灰色髪の少女‥‥‥ユニカは真っ直ぐ見つめ返す。彼女の目には、一切の迷いが無い。



「私もローグくんと同じ‥‥‥『エルジュ』の関係者です」


 そんな彼女が発した言葉に、室内の大半が驚きの声を上げる。ルークですら、目を見開いて困惑している。


「!? ラペンシア‥‥‥いったい何を」


 アイトは無意識に声を漏らして話しかけていた。だが、ユニカの発言は止まらない。


「だから‥‥‥私の事も口外しないという条文を、誓約書に追加してください。彼が代表の組織、その構成員である私の事も」


 そう言い放ったユニカの表情には、少しの迷いも見られない。むしろ、清々しいほど堂々としている。


「‥‥‥これは一本取られたよ。まさか秋頃に編入してきた君が、()()()の関係者だったなんてね」


 ルークが目を見開いて不自然に笑う。そんな彼を見て、ユニカが微笑む。


「彼がこの国にとって重荷になるなら、私もなってあげる。『地獄行ゴートゥーヘル』の()()()()()でもある、私もね」


 そして、新たな爆弾を躊躇なく投下した。当然、室内にかつてないほどの混乱と動揺が発生する。


「お、おいっ‥‥‥!!」


 アイトは思わず声を出してユニカの手を掴む。明らかに言う必要のなかった過去を晒し、堂々としている彼女の手を。


「あなたの存在は、決して脅威なんかじゃない。それを証明できるのは、私だけ。消せない過去を持つ私すら‥‥‥助けてくれたんだから」


 ユニカが清々しいほど微笑み、『してやったり』と言わんばかりに佇む。その態度からは、少しも後悔が見えない。


「あなた1人だけを、辛い目に遭わせないわ。私にも一緒に背負うから」


「ラペンシア‥‥‥」


 今、アイトの目には、1人しか映っていなかった。


「ほら、あなたと私って‥‥‥壮大な経歴を持つ似たもの同士でしょ?」


 少し気恥ずかしそうに笑う‥‥‥相棒ユニカしか見えない。心の重荷を、自分から背負ってくれた勇敢な彼女に。


「‥‥‥ほんと君たちって、隠し事が多いよね。だんだん腹立ってきたよ」


 そんな2人に割り込むように、ルークが低い声で話しかける。


「あなたたちが何も知らないだけよ。まだまだあるけど、もっと知りたい?」


 目を合わせたユニカが淡々と呟いて、ニヤリと微笑む。王子であるルークに対して、一歩も引かないどころか挑発している。


「‥‥‥もういい、疲れた。とりあえず、()()()の事に関する誓約書にサインしてもらう」


 ルークが呆れて息を吐くと、誓約書の準備を始める。その後‥‥‥室内の全員が何も言わず、自分の名前を記入した。


「もういいよ。みんな、お疲れさん」


 そしてルークが投げやりな言葉で手を振ると、1年生たちが順番に出ていく。


「失礼しました」


「失礼しました〜」


 アイトの後ろに続くユニカが最後に出て、扉を閉める。そして、2人は廊下を歩き出す。


「ラペンシア‥‥‥なんで、あんなことを」


組織エルジュの構成員なら、代表を気遣うのは当然でしょ?」


 アイトは即座に質問したが、ユニカに答える気は無さそうだった。


「おい、真面目に答えてーーー」


「なあ‥‥‥ちょっといいか2人とも」


 思わず声を荒げてしまうアイトだったが、前で立ち止まっていた3人に視線が移る。


「話してくれるよな?」


「話さないと許さないから」


「ちゃんと話してください」


 ギルバート、クラリッサ、ポーラ。同じクラスの友人で、学園内での付き合いは他の誰よりも長い3人。


「‥‥‥ああ、分かってる」


「私は殆ど話しちゃったけどね‥‥‥」


 裏の顔を持つアイトたちにとって、避けては通れない事だった。

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