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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
終章 王都奪還

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誤解を解く時

 混沌とした医務室の後。

 それぞれ、役割のある者たちが動き始める。


「ーーー今回の騒動は、全てわしに責任がある。皆の者、本当にすまなかった!!」


 国王ダニエル・グロッサは、民衆の前で騒動の説明とと謝罪を行い。


「じゃあユリア、行ってくるよ」


「はい、どうかお気をつけてください」


 王子ルーク・グロッサは、隣国アステス王国に滞在している妹ステラを馬車で迎えに。


「姉御っ、聞きたいことが山ほどある! 国王から許可は貰ったから、空いてる部屋で話をしよう!!」


「わかった、わかったから。引っ張るな」


「姉御の左腕‥‥‥こんなに柔らかくて繊細なのに、なんであんな剛力が繰り出せるんだ」


「本当に気色悪いなお前」


 ジャックとアヴリス・アルデナの『ルーライト』元隊長の2人組が、別室へ移動し。


「‥‥‥積もる話が、あるんでしょ。私は、王都の方を見てくるね」


 シロア・クロートが、気を利かせて離れていく。



「エリス‥‥‥」


「アイ、久しぶりね」


 医務室に残ったのは‥‥‥アイトとエリス。

 2人は‥‥‥約半年、会っていなかった。


「今回の騒動に、力を貸してくれてたのか‥‥‥」


「もちろん。私は『エルジュ』の代表代理よ? あなたの支えになるのが私の生き甲斐」


「‥‥‥そうだったな。本当に、ありがとう」


 どちらも冷静を装っているが、互いへの気持ちの昂揚が抑えられない。


「アイっ」


「エリス!」


 そして2人はどちらからともなく、熱い抱擁を交わす。アイトは、ベッドの上で起き上がっている状態。それにエリスが乗り上がって、抱き着いたのだ。


「あなたはいつも無茶ばかりするんだからっ‥‥‥ここに来るまで、心配で仕方なかったっ」


「エリスは俺よりもずっとしっかりしてるからな。昔も、今も」


 互いに言葉を送り、背中に手を回して抱き締める。それはまるで、恋人のように熱い。


「‥‥‥カンナから聞いた。『エルジュ』構成員に頭を下げた、あなたの気持ちを」


「エリス‥‥‥」


 だが、エリスが漏らした言葉は、2人の関係に大きな霧を立ち昇らせるものだった。

 エリスは手を離し、ゆっくりと身体を離して見つめ合う。


「私が‥‥‥あなたを巻き込んでしまったのね。私が先走って、あなたに大変な役割を背負わせてしまったのね?」


「それは‥‥‥」


 アイトは『違う』と言わず、たた首を縦に振る。

 これ以上、エリスに嘘は付きたくないという意識で。


「私ね‥‥‥自分の人生に大きく関わる人と接触すると、その人の未来が一瞬だけ見えることがあるの」


 エリスは遂に‥‥‥今まで黙っていた『共鳴』について、話し出す。勇者の魔眼の特性で、アイトと初めて出会った時に起こった、未来の話を。


「あなたが‥‥‥大勢の人の前に立って、遠くを見据えて堂々としている姿が見えたの。それを見た私は、あなたが何か大きな事をすると疑わなかった。だから、あなたを組織の代表にした方がいいと思ったの」


「‥‥‥エリス」


「でもね‥‥‥それは違ったかもしれない。私が見た光景はっ‥‥‥()()()()()()()()()()()()()()()だったかもしれない‥‥‥!!」


 エリスの赤い瞳から、一筋の涙が零れる。唇が震え、短く息を吐く。


「あなたが平穏に暮らす未来を、私が捻じ曲げてしまったかもしれない。そんなことにも気付かずに、私は今まであなたに大変な思いを‥‥‥」


 エリスは止めどなく涙を流し、嗚咽を漏らしながら頭を下げた。


「本当に‥‥‥ごめんなさい。あなたに苦しい思いをさせて、本当にごめんなさいっ‥‥‥!」


 普段は凛としている彼女が、必死に嗚咽を抑えながら謝り続ける。


「‥‥‥俺も代表続けてて、その事が気掛かりだったよ」


 アイトは彼女の頬に手を添え、優しく触れる。


「いひゃッ」


 ‥‥‥わけではなかった。エリスの頬を掴み、グニグニと引っ張る。


「俺の怒りはこの程度だよ。昔から1人で突っ走り過ぎ、もっと俺の話を聞いてくれ‥‥‥って感じだ」


「ゔぁい‥‥‥」


「でも、エリスが勘違いしたから‥‥‥俺は色んな人に出会った。大切な仲間が出来た。もっと強くなろうと思えた」


 アイトは穏やかに笑い、エリスの頬から手を離す。


「それが積み重なって‥‥‥最後には王都奪還を果たすまでに至ったんだ。一般的な家庭に生まれた俺が、一躍勇者みたいなことをやり遂げることができた」


 どこか懐かしむように、嬉しそうに話す。


「後悔や苦しい事は当然あったよ。でも‥‥‥『エルジュ』があって、俺は良かったと思ってる」


「アイっ‥‥‥」


 エリスが涙を流して声を震わせる。そんな彼女の頭を撫でて、アイトは優しく笑う。


「俺と一緒にいてくれてありがとう。俺を側で支えてくれてありがとう。助けてくれてありがとう」


「アイっ、そんなことっ‥‥‥」


「俺はもう正体がバレてしまった。これ以上、代表は続けられない」


「アイっ」


 アイトの言葉に、エリスが目を見開いて息を呑む。幾度に絡まった勘違いの糸は、もう無い。



     「俺は‥‥‥この地位から離れる」



   それは、『天帝』レスタの仮面を外す言葉。



     「この地位を、エリスに託したい」



 それは、アイトが最初から今まで言いそびれていた言葉。言うのが億劫になっていた言葉。


「『エルジュ』の2代目代表、エリス・アルデナ。俺が後見人だ」


 アイトはベッドの傍らに置かれていた天帝の仮面と聖銀の剣を‥‥‥エリスに託す。


「エリスが天使さんの修行を終えて帰ってくるのを待ってたんだ。今のエリスなら、絶対に代表としてやっていける」


「アイ‥‥‥」


 エリスが両手に受け取った仮面と剣を強く握り締め、涙を落とす。


「ーーー承りました。初代が築いてくれた今の『エルジュ』を、守り抜いてみせます」


 そして、彼女は覚悟を決めた表情で宣言した。


「ありがとう。エリスなら安心して任せられるよ」


 見届けたアイトは晴れやかな気持ちになるが、笑顔は秒で消え去っていく。


「‥‥‥とは言っても、他の構成員にも伝えなきゃいけないし、何よりターナたちに知らせないと」


「‥‥‥アクアとミアが、私の指示を仰ぐとは思えないわね」


 そして小声で本音を零したアイトとエリス。


「ははっ。結局、全然締まらないな」


「ふふっ。この感じ懐かしい。アイと出会った頃を思い出すわ」


 まだ継承には問題が山積みだが、2人はどちらからともなく笑う。もう、今の2人には勘違いもわだかまりも無い。


「さて、とりあえず‥‥‥俺、これからどうしよう!? 完全に正体バレたし、罪人として処刑されるかもっ!!」


「縁起でもないこと言わないで。あなたは絶対死なせないから。処刑とか言い出したら王国を滅ぼす」


「ちょっとエリスさん!? そうなったらもう完全に悪人だけど!? 指名手配されてるから信憑性増しちゃうし!!」


「あなたのためなら、悪魔でも何にでもなるわ」


「エリスが言うと洒落しゃれにならないからな!?」


 重々しい話を、まるで日常会話のように話す2人。


「ていうか姉さんにバレるのも時間の問題だしっ‥‥‥もういっそどこかへ高飛びするとか‥‥‥いや、でも」


「それ、悪くないわね」


「へ?」


「髪色を変えて名前も変えたら簡単に潜伏できるわ。それで冒険者になって稼いだら生活も容易い」


「あのぉ‥‥‥具体的すぎて笑えないんですけど」


「あなたは私が養ってあげる。だからずっと一緒にいましょ?」


「なんか複雑な気持ちになるんだけど!?」


 アイトとエリス。半年間会えなかった時間を埋めるように、会話を弾ませていく。


「姉さんの提案は‥‥‥私の心が拒否してるしね」


「ん、姉さん? エリスってお姉さんがいたのか?」


 話題がコロコロと変わり、それはもう和気藹々と。



          「ーーー見つけた」



 窓の外に‥‥‥白い翼を生やした金髪女性が現れるまでは。

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