表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【40万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
2章 ギルド連携魔物討伐体験

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/407

お昼付き合いなさい

 6月。

 ユリアの拉致、そしてアイトの『終焉』によるメルチ遺跡破壊から‥‥‥2ヶ月が過ぎた。


「‥‥‥」


 その間の組織エルジュの活動は、特に無かった。いや、無かったというよりは『黄昏トワイライト』が動くほどの任務が無かったということ。


(俺、普通の学生してる‥‥‥!!)


 つまり、アイトは暫くの間‥‥‥順風満帆な学園生活を送っていた。


 普通に授業を受け、時々ユリアたちと一緒に昼食を取り、放課後になると『マーズメルティ』でエリスとカンナ特製のお菓子を食べる。


 そんな生活を送っていたアイトは、 1つだけ大きな悩みがあった。それは。


(どうしよう‥‥‥クラスに友達がいない)


 アイトは1年生の中で、かなり悪目立ちしていた。


「ほらっ、行くわよ!」


 王国最強部隊『ルーライト』の隊員で『迅雷』と呼ばれるマリア・ディスローグが姉。


「こんにちは、アイトくん!」


 新入生代表で第2王女のユリア・グロッサと、定期的にお昼を共にするほどの仲。


「お邪魔させてもらってます〜」


 その姉の第1王女のステラ・グロッサとも面識がある。主に、男子生徒から嫉妬の念に駆られていた。


(どうしよう‥‥‥もうすぐ『ギルド連携魔物討伐体験』があるのに。このままだと班を組む人が‥‥‥いない!!)


 アイトは座り込んで頭を抱えていると、上級生が教室に入ってきた。


「アイト〜! 今日は紹介したい人がいるからお昼付き合いなさい! さあ行くわよ!!」


 やってきた上級生は、姉のマリアだった。アイトは思わず視線を逸らして体をのけぞらせる。


「逃げんなっ!!」


「グエッ」


 だが結局‥‥‥アイトは首根っこを掴まれ、姉に連行されていった。当然、またも悪目立ち。




「さあアイト! アンタが将来、『ルーライト』に入った時の先輩になる子よ! さ、自己紹介!」


 姉に連れてこられたアイトは、食堂の端に座っていた。そして、向かい側に座っている小柄な少女と目が合う。


「‥‥‥」


 薄桃色の長い髪が特徴的な、可愛らしい女の子だった。だが、無表情である。


「え、え〜と‥‥‥王国の最強部隊に入る気はないし、そもそも入れないアイト・ディスローグです。1年Dクラスです。よろしくお願いしま痛って!?」


 アイトは自己紹介の最後で‥‥テン身を乗り出したマリアに、勢いよく叩かれる。


「ごめんねシロア! この子ったら、昔から自分に自信がなくて」


「‥‥‥(フルフル)」


 マリアの声に、少女が首を振って答える。無表情のまま、彼女は佇んでいる。


「あ、この子の名前はシロア・クロート! 3年Aクラスで学校でも『ルーライト』でも私の後輩!」


「‥‥‥え? ルーライトに、所属?」


 アイトは目を見開いて絶句していた。そんな事には気付きもせず、マリアが意気揚々と話を続ける。


「この子ね、最年少で『ルーライト』に入ったのよ! シロア、本当にすごいんだから!」


「‥‥‥(ふるふる)」


 マリアの絶賛に、シロアが謙遜して首を振るという微笑ましい光景。

 だが‥‥‥アイトは目を細めて頬杖を付き、向かいに座る少女を見つめた。


(‥‥‥この人が、シロア・クロートか)


 王国最強部隊『ルーライト』。

 その隊員の情報は、メリナから逐一聞いていた。

 4月のユリア救出作戦以降、これからの行動で何かやらかさないように。

 アイトはどんな情報でも、とにかく取り入れるようにしていた。


(天才少女‥‥‥既に雰囲気からして特別な何かを感じる)


 シロア・クロート。17歳。

 グロッサ王立学園の3年Aクラス所属。薄桃色の長い髪で、少し小柄。そして、無表情で寡黙。


(いったい、どれだけ強いんだろう‥‥‥?)


 2年生の時にルーク王子から実力を認められ、『ルーライト』に入隊。最年少で入隊した。

 希少な時空魔法の使い手で、神出鬼没な戦闘スタイル(?)。まさに、天才という響きが相応しい少女。


(そして‥‥‥『時の幻影(クロノ・ファントム)』と呼ばれている。まさに、王国内屈指の精鋭‥‥‥)


 これが、メリナから聞いた彼女の情報だった。

 アイトは無意識に、シロアの事を見続ける。


(とりあえず、すっごく強いことはよくわかる)


「‥‥‥」


 2人は真顔で見つめ合うという状態が続く中、マリアが横やりを入れる。


「なに2人で見つめ合ってんのよ! もう仲良くなっちゃったわけ?」


「‥‥‥あの、姉さん? なんで、クロート先輩って話さないの?」


 アイトはここで、ずっと気になっていたことを質問した。


「あ、そうだったわね。シロア、言ってもいい?」


「‥‥‥(コク)」


 マリアが身を乗り出して尋ねると、シロアが首を縦に振って肯定を示す。


「えっとね。シロアは、話すのが苦手なの! 以上!」


(本人の許可必要だった!?)


 アイトは目を見開いて絶句してしまう。あまりにも、求めていた返答が返ってこなかった。

 だがシロアの佇まいから、もう追及すべきでは無いと悟る。


「わ、わかった。よろしくお願いします‥‥‥クロート先輩」


「‥‥‥(コク)」


「‥‥‥」


「‥‥‥」


(‥‥‥やばい。すごく話しづらい)


 アイトは何を話そうか考え込んでいた。そもそも、シロアには一方的に話す事になってしまう。


「あ、そういえばアイト。明後日行われる、グロッサ王立学園武術大会は知ってる?」


 偶然にもマリアから、別の話が飛んでくる。シロアも少し姿勢を正して反応していた。


「知ってるよ。最近その話よく聞くし」


 そしてアイトは、心外と言わんばかりに目を細めて言い返す。


 『グロッサ王立学園武術大会』。


 6月に行われる学内行事で、参加は強制ではなく希望者のみ。

 武術に自信がある者たちが切磋琢磨し、意欲向上と色々な武術を知ることを目的とした武術大会。


 ルールは一般的なもの。降参や戦闘不能、武器が手から離れたら負け。魔法の使用は禁止。あくまで武術で競い合う。命に関わるほどの攻撃も禁止。

 武器の種類は基本自由だが、試合時は管理会側が用意した刃のない鉄製の武器を使用。参加登録の際に希望の武器種を記入すれば用意してくれる。

 そして、大会はトーナメント形式で行われる。


 アイトにとっては、絶対に出ないと決めている学内行事だった。


「あ、姉さん出るの?」


「もちろん出るわよ。でも女子の部だから、ルーク先輩とは戦えないのよね」


(あの王子と戦いたいとか戦闘狂かよ‥‥‥)


 大会は男子の部と女子の部で分けられている。そのため、マリアがどれだけ強くてもルークと戦うことはできないのだ。


「そうなんだ、がんばって。応援してる」


 アイトは素直に応援の言葉を送る。すると、マリアが目を丸くしてガン見してくる。



「何言ってるの?? アンタも出るのよ?」



「‥‥‥はい??」


 アイトは、首を傾げて笑顔になった。妙な胸騒ぎが広がり、動悸が激しくなる。


「私がもうあんたの分の参加申請しておいたから。あんたの武器種は私と同じ剣にしておいたわ。

  明後日の大会であんたの全力を見せなさい?」


「はあ!?」


「口の聞き方!!」


「グエッ」


 アイトは勢いよく姉に叩かれた。シロアが何も言わずに2人を見守っている。

 すると、授業が始まる5分前の予鈴が鳴った。


「あ! もう授業始まるわね!それじゃあアイト、お互いがんばるわよ!!


「ちょちょちょい待ち!?」


「シロア、良かったら明後日の大会観に来て!」


「‥‥‥(コクッ)」


 話を終えたマリアが、まるで嵐のように食堂から一瞬で離れていった。初対面である、アイトとシロアを残して。


(あの自己中マイシスター‥‥‥!! マジで何してくれてんだ‥‥‥!?)


 心の中で姉の犯した惨劇を嘆く。

 明後日の武術大会に参加することが決定しまったことに。


「‥‥‥(??)」


 シロアが首を傾げて見つめている。先輩の視線に、アイトは少し焦りながら口を開いた。


「‥‥‥あ、すみません何でもないです。クロート先輩。あんな勝手な姉ですが、どうかよろしくお願いします」


「‥‥‥(コクッ)」


 そんなシロアの反応に、アイトは穏やかに笑う。


「あ、それでは授業なので失礼します!」


 アイトは急いで走り出す。完全に姉と同じ仕草と動きだったが、本人は気付いていない。


「‥‥‥(ハッ)」


 そして取り残されたシロアが、次の授業まで時間がないことに気づく。


「‥‥‥(ペコペコっ)」


 彼女なりに急いで準備するも、シロアは次の授業に遅刻してしまうのだった。


「も、申し訳ありません!!」


 そしてアイトも遅れてしまい、ますます悪目立ちしてしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ