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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
終章 王都奪還

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戦い足りない

 グロッサ城、王の間。


「久々に()()を使ったから、けっこう疲れたよ」


 ルークは両肩を回しながら苦笑いを浮かべ、視線を移す。


「怪我は大丈夫ですか、父上」


「あ、ああ。ユリアに治してもらったから大丈夫だ。これほどの騒ぎを、わしの片目で済んだなら充分だ」


 国王ダニエルが右目を覆うように布を巻くと、ルークは穏やかに微笑んで頷く。


「ーーー今回の騒動の元凶は僕が倒した。これで魔王軍の侵略は失敗に終わった」


 ルークの雰囲気がガラリと変わった。彼の視線は、目の前にいる金髪少女へ向いている。


「それで今から話したい事は‥‥‥分かるよね?」


「分からないわね」


 金髪少女‥‥‥いやエリスは、一歩前に出る。自分の後ろで倒れている、黒髪少年を守るように。


「‥‥‥‥‥‥」


 治癒魔法により外傷が癒えたが、疲労困憊で意識のない‥‥‥アイト・ディスローグを守るように。


「やっぱり『天帝』レスタの正体は、彼だった。マリアが知れば、どんな反応をするだろうか」


「‥‥‥」


「アイト・ディスローグの()()について‥‥‥これ以上重要な議題が他にあるかい?」


 ルークが告げた言葉は、エリスの警戒を更に強めることに繋がる。だが、彼女はまだ魔燎破壊の余韻で魔力を練れない。


「落ち着きなよ、僕だって君と同じさ。力づくというのは最も適してない要素だと思うしね」


「‥‥‥だったら、王国側は彼をどうするつもりなの」


 エリスは目を逸らさず、単刀直入にルークへ問う。その緊迫した空気に、玉座の隣に立つユリアが息を呑む。


「僕が1番望む事は‥‥‥アイトくんが僕の部隊『ルーライト』に即入隊すること」


「! お兄さま」


 声に出して反応したのはユリア。エリスは何も言わずにルークの話を聞く。


「それと出来ればーーー君たち『エルジュ』も、王国軍に所属してくれたら文句無しだね」


 ルークの要求は単純明快。

 謎の組織『エルジュ』の構成員、つまり精鋭である人材の確保。


「もし了承してくれるなら、これまでの事は全て水に流すと約束する。君たちは今回の魔物みたいに、王国を揺るがすような事件は引き起こしてないからね」


「‥‥‥それがあなたの要求ね」


 エリスは表情を変えずに呟き、見つめ返す。既に答えは決まっていた。


「お断りよ」


 簡潔に拒否を示す。

 ユリアが緊張で口をアワアワさせる中、ルークは穏やかに笑う。


「ちなみに、理由を聞いていいかな? 罪人として裁かないんだから、なかなかの好条件だと思うけど」


「あなたの下に付くのが、死んでも嫌だからよ」


 エリスは堂々と、拒絶の言葉を口にする。


「何よりアイが、あなたの部隊に入るというのが気に入らない」


「‥‥‥へぇ?」


「彼は私たちの代表よ。彼が誰かに付き従う姿を、私は絶対に見たくない」


 それは、アイトに対する本物の忠義。

 アイトを尊敬し、その器に心酔している証。


「さすがレスタ、いやアイトくんの右腕だね。こんな素晴らしい傑物が隣にいて、彼は幸せだろうな」


「茶化さないで。交渉は決裂よ。私はアイを渡すつもりも、あなたの下に付く気もない」


「‥‥‥そういえば、彼とはこんな約束をしてね」


 ルークが口角を上げて、飄々と話す。


「『今回の騒動に関する事で、仲間の身柄を拘束しないこと』ってね」


「その約束、破る気?」


 エリスは即座に言葉を切り込むが、ルークが動じることは無い。


「でもね‥‥‥()()自身の事に関しては、彼は一言も口にしなかったんだよね」


 それどころか、エリスが動揺する事を言い返す。


「っ、そんなの屁理屈よ! アイは絶対に王国には渡さない!!」


「声が大きくなってるよ。なにを焦ってるんだい」


 もはや一触即発の寸前まで、2人の空気感は緊迫していた。


「ちょっと待ってくれルーク!! 彼女は私の姪で、お前たちの従姉妹いとこなんだ!! 血縁同士で殺し合うなど、私は断じて認めん!!」


 すると国王ダニエルが玉座から立ち上がって大声を出す。隣のユリアも何度も頷き、穏便に話が終わる事を願っている。


「そんなの前から()()()()()()()()


 だが、ルークの言葉はダニエルたちを硬直させる。


「僕と彼女は似たような金髪、それに勇者の魔眼を持っている。正直、父上の隠し子か何かと考えてましたから」


「る、ルーク‥‥‥お前ってやつは」


「それに見たところ、僕と同じか歳上に見える。彼女が()()()()()を持つなら、どうなると思いますか?」


 それは悪寒が走るほど底が見えない、泥沼の話。エリスが王族の子として認められたら、王位継承権はーーー。


「そんなの喜んで捨てるわ。心底興味無い」


「そう簡単にはいかないよ。周囲に知れたら、家臣たちの不安を煽る事になる。君の存在は、グロッサ王国には()()()()でしかない」


 エリスとルークは互いに目を細め、自然と剣に手を伸びていた。


「どうせ交渉は決裂したし、君はどんな事をしてでも彼を連れて逃げるつもりでしょ?」


「‥‥‥そうね。だから王国なんて頼りにならないのよ」


「決まりだね。結局、こうなるとは思ってた」


 2人が鞘から剣を抜き取り、相手を牽制するように睨みつける。2人の威圧感は、常人なら腰が抜けて立ち上がれなくなるほど強い。

 そんな険悪は空気に、当然ダニエルが声を荒げる。また、ユリアも後に続く。


「やめんかッ!!! これ以上不要な血を流すのは許さんぞ!!! まだっ、他の道が必ずある!!」


「そうですよお兄さまっ、エリスさん!! 共通の敵を退けたんですから、手を取り合うことだってーーー」


「無理だ」

「無理よ」


 ルークとエリスが同時に一蹴すると、それぞれ異なる構えで対峙する。


「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」」


 それはまるで、2人の周囲だけ世界が違うように感じられた。


「ーーーアイ、くん‥‥‥?」


 突然聞こえた、か細い声。

 聞き覚えがないエリスは横目で確認し、ルークは呆気に取られた様子で身体を向ける。


「‥‥‥シロア。無事だったんだね」


 シロア・クロート。

 グロッサ王立学園の3年生で、ルークが率いる精鋭部隊『ルーライト』の最年少隊員。



       「ーーーアイくんッ!!!!」



 そんな彼女は我を忘れたかのように大声を上げ、必死に駆け寄っていく。


「アイくんッ!! アイくんッ!! 大丈夫!? 怪我は無い!?」


 今も意識なくうつ伏せ状態のアイトに縋り付き、大声を出して身体を確認していく。

 血塗れの服を見て、アイトが今も瀕死の重傷だと勘違いしているのだ。


「シロアが、僕たちの前で大声を出した‥‥‥」


 ルークが目を見開いて凝視し、彼女の背中を見届ける。部下の知らない一面に、驚きが隠せない。


「‥‥‥アイなら大丈夫よ。ユリアさんが治癒魔法を掛けてくれたから」


 そしてエリスは‥‥‥剣を鞘に納めてシロアの肩に右手を置く。


「ほ、本当に‥‥‥?」


「ええ。疲労でこうなってるだけだから、安静にしてれば大丈夫。そうよね、ユリアさん」


「えっ? は、はい!! アイトくんは、私の全身全霊を懸けて治癒しましたから!」


「よ、よかった‥‥‥本当によかったッ‥‥‥」


 シロアが大粒の涙を流すと、エリスは彼女の肩を抱いて優しく包む。


 『ルーライト』隊員と『エルジュ』構成員。

 これまで敵対していた2つの組織、その中枢にいる彼女たちは今‥‥‥確かに繋がっている。


「アイくん‥‥‥私、がんばったんだよ」


「アイは、学園でも好かれているのね」


 アイト・ディスローグという、1人の少年によって。


「‥‥‥ふぅ」


 ルークは剣を下げてその光景を見続ける。もう、戦う気が削がれたのは、彼も同じだった。



「ーーー戦い足りないなら、私が付き合ってやろうか」



 シロア以外の全員が、扉の方へと目を向ける。ダニエルとユリアは息を飲み、無意識に睨み付けていた。


「疲労困憊の彼女を連れてきたのは、私だ」


 黒いローブを脱ぎ捨てた女性は‥‥‥眩い銀髪を振り乱す。


「それと‥‥‥そこで寝てるバカは、私の弟子でね」


 アーシャが飄々と笑って指を差すと、全員が今までにないほど絶句した。


「‥‥‥ジャックさんの勘は、正しかったのか」


 ルークの額から汗が流れ、頬を伝って床へと落ちる。目も大きく見開かれ、無意識に数歩動いていた。


「人生で1番驚きました‥‥‥アリスティアさん」


 絞り出した彼の言葉に‥‥‥アーシャは不敵に笑っていた。

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