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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
終章 王都奪還

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君の勇姿

「ーーーもしもし」


 アイトは魔族2匹に襲われる前‥‥‥魔結晶で連絡を取っていた。


「今どこにいる、ルーク王子」


 その相手は‥‥‥王国側の最高戦力、ルーク・グロッサ。聖騎士の魔眼を持つ、グロッサ王国の王子。


『今北地区に入る所だよ。遅くても15分で城に着く。マリアには王都内の安全のために動いてもらってる』


 ルークが早口で状況を説明する。いよいよ今回の騒動が、確実に終幕へ近づいている。


「‥‥‥じゃあ、それまでに城の周辺へ辿り着いてくれ。今から15分後に、()()()()()できるように」


 アイトは真剣な口調で話す。ルークが『どうするつもりだい』と聞き返す中、話を続ける。


「俺が王の間にいる元凶と交戦し、窓の方へと誘導する。それであんたが奇襲をかけ、元凶を城の外へと引き摺り出す」


『確かに外なら僕も戦いやすい。でも、魔族の上澄みであろう敵を誘導できるのかい?』


 ルークが低い声色で尋ねてくる。アイト、いや『天帝』レスタの力量に疑問を持っている。


「こっちはユリア王女と国王を守りながら立ち回る必要がある。どう足掻いても向こうが有利。俺が窮地に立てば、可能性は充分にある」


『‥‥‥君には本当に呆れるよ。なんで王国軍に入ってくれなかったんだい?』


 そんな言葉を聞き、アイトは思わず目を丸くする。


『本当に何様だと思うけど、父上とユリアを頼む』


 続いてそう告げられたルークの言葉に、アイトは更に目を丸くして、咳払いをした。


「‥‥‥言われるまでもない。じゃあ、15分後だ。魔力の気配と喧騒から、どこの窓かは分かるだろ」


『もちろん。それじゃあ約束通り、僕が美味しいところを持っていくから』


「‥‥‥ああ、それでいい」


 こうして、アイトは事前にルークと作戦を立てていた。先に交戦する自分が追い詰められ、窓際へと誘導する。

 そして、外から現れたルークが元凶を外へ引き摺り出す。


(消耗した俺より、万全のルーク王子の方が確実に敵を倒せるはず)


 王都での暗躍、エレミヤ・アマドとの交戦。アイトはその影響を加味にして、ルークに後を託すことにした。

 そのため、アイトは先に魔力解放を発動した。

 魔族の親玉ルシフェルに、自分の方が有利であると確信させるために。


(ルーク王子‥‥‥)


 『これでいいか』と発した後、アイトが内心で呟いた言葉だった。


 ◆◇◆◇


 首から血を漏らすアイトは、うつ伏せに倒れたまま動かない。それを窓の手摺りから見下ろしたルークが一瞥し、視線を妹のユリアに向ける。


「ユリア、無事か? 父上も」


「ぇ、あ、はいっ‥‥‥」


「そうか‥‥‥良かった」


 ルークは小さく息を吐くと、淡々と話し出す。


「僕はあの魔族を倒してくる。ユリアは治癒魔法で彼を頼む。今死なせるには惜しい男だ」


「ま、待ってくださいお兄さまっ!! 私は今ーーー」


 ユリアが必死に声を出す。

 だが、ルークは窓から飛び降りて去っていく。ルシフェルの討伐という大仕事が残っているため。


「アイトくんッ!!!」


 ユリアは両手の手錠をジャラジャラ鳴らしながら、必死に駆け寄ってしゃがみ込む。うつ伏せに倒れて動かない少年の肩を優しく揺らす。


「‥‥‥‥‥‥」


 アイトは何も声を発さないが、辛うじて呼吸はしている。咄嗟に魔力を首に注ぎ込んだ事で、切断だけは避けていた。


「ひゅぅ‥‥‥ひゅ‥‥‥」


 だが明らかに弱々しく、死が近いことを示している。首に掛けている魔石のペンダントの紐が、切れかかっている。


「〜〜〜っ!!」


 ユリアには、何かの暗示に見えてしまう。


「この手錠さえなければッ!!!」


 切羽詰まった状況に、ユリアは大声で喚く。

 とっさに服の袖を大きく破り、アイトの首元に当てて止血を試みる。

 深い傷口からは、血が溢れ出す。僅かに出血を遅らせるだけで、止める事は当然できなかった。


「ーーーぐぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!?」


 すると突然、絶叫が響き渡る。

 焦るユリアが、睨み付けるように声の方を見つめると。


「お父さまッ!!?」


 意識のなかった国王ダニエル・グロッサが()()を押さえて絶叫していた。その前には、黒いローブに身を包んだ謎の人物。

 そして、血が噴き出すダニエルの右瞼には‥‥‥。


「やっぱり目が覚めてしまうか。穏便に済ませたかったが、仕方ないな」


 謎の人物は、顔を仮面のようなもので隠している。明らかに、只者ではない雰囲気を纏っている。


「ようやく手に入れた王家の眼球。漁夫の利とはよく言ったものだ」


 そして左手に持っていた小さな()()を、箱の中に納めて懐に仕舞う。


「貴様ぁぁぁぁぁッ、何者だぁぁぁぁぁッ‥‥‥!!?」


「な、何をしているんですか、あなたはぁぁぁッ!!?」


 顔を歪ませるダニエルと、怒りを露わにしたユリアが同時に叫ぶ。黒いローブの人物は意に介さず歩き出す。


「さてと、次は()()()()貰おうか。世間に隠しているだけで、何か聖痕を宿してるかもしれないし」


 そして、平然と呟きながら距離を詰める。その立ち振る舞いと淡々とした狂気に、ユリアは足が震えて動けない。


「に、逃げろユリアぁぁぁぁッ!!!!」


 ダニエルの叫びが合図となったのか、ユリアに迫る狂人の魔の手。確実にユリアの顔へと伸びていき、彼女の瞼の裏側へとーーー。


「ーーーッ!!!!」


 ユリアの顔に、大量の血が降り注ぐ。それは夥しい量の出血で、少し生暖かい。


「!? あの男はっ」


「あぁっ‥‥‥!!」


 ダニエルが驚きの声を漏らす中、ユリアは思わず涙を流していた。狂人の右腕を押さえる、銀髪少年の姿を見つめて。


「‥‥‥‥‥‥」


 『天帝』レスタは何も言わず、今も首の出血をユリアに浴びせている。


「阻む者がいない時を狙ったのに、まさか動けるとはな。さすがノエルたちを苦戦させるだけある」


 その言葉は今のレスタ‥‥‥いや、アイトを驚かせるには充分だった。


「‥‥‥‥‥‥!」


 無言のまま相手の右手を突き飛ばし、足元の聖銀の剣を左手で引き寄せる。瀕死の重傷を負い、動く事すら困難な状態。アイト自身、どうして動けるか全く分かっていない。

 それはもはや、理屈じゃない。本能だった。


「‥‥‥‥‥‥」


 今のアイトは精神だけで、戦う力を絞り出している。


「ーーー時間を食い過ぎた。君の勇姿は尊敬に値するよ。だが、もう用は済んだ」


 黒いローブの人物が踵を返し、剣を握るアイトに背中を向ける。


「次は()()で会おう。勇敢な少年」


 そう言い残すと跳躍するように走り、窓の外へと飛び出して行った。訪れるのは、静寂のみ。



「‥‥‥‥‥‥逃げ、られ」


 アイトの目はグルリと反転し、ゆっくりとうつ伏せに倒れ込む。張り詰めていた緊張が解け、身体が拒絶反応を示した。

 倒れ込んだ時‥‥‥首に掛けていた魔石のペンダントの紐が切れる。うつ伏せのアイトの眼前に魔石が落ち、銀髪が黒髪へと戻っていく。

 そして‥‥‥一部が欠けていた仮面も、音を立てて隣に落ちる。


「あ、あぁ‥‥‥アイトくんッ!!!」


 ユリアは思わず、倒れた黒髪少年の名を叫ぶ。それは当然、同じ場にいる国王ダニエルにも伝わる。


「い、いったい何が起こっておるのだ‥‥‥アイト? アイトだと?」


 ダニエルは無意識に言葉を反芻し、絶句する。


「王国軍所属、マリア・ディスローグの弟‥‥‥か? 確か学園の1年で、ユリアの同級生っ」


 次第にダニエルは左手を震わせ、歯を食いしばる。


「‥‥‥この極悪人の正体を、お前は前から知っていたのかユリアっ!!!」


 そして彼の怒号が、ユリアの身体を震わせた。


「お父さまっ、誤解です!! 彼は悪人などではありませんっ!! 今回、私たちを助けてくれたのは他ならぬ彼なんです!!!」


 ユリアは大声を張り上げて言葉を返した。まるで自分自身を鼓舞するように。


「今までの悪業を忘れたか!? この男は害をなす災いそのものだっ、厳重に捕縛して裁きを受けさせる!!」


 ダニエルの意思は固かった。右目の激痛を忘れているかのように怒り、アイトを指差して弾糾する。


「ーーー何も知らない王様って、幸せよね」


 すると突然、近くの窓が割れると同時に人影が勢いよく滑り込む。そして立ち上がった女性は、眩い金髪を靡かせている。


「あ、あなたはっ」


「その鍵、下にあったわ。アイを治癒して」


 エルジュ構成員、序列1位エリス。

 彼女は右手に持った鍵をユリアの手枷に通し、素早く解錠するのだった。

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