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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
終章 王都奪還

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勇者の魔眼

 エリスの魔燎創造‥‥‥『疾風怒濤』。


 ノエルの魔燎空間を、ゴリゴリと突き破る。

 魔燎創造は、後出しの方が有利。それは先に発動したノエルも、当然理解していた。


「同時発動なんてっ、頭おかしいんじゃないの!?」


 だがエリスは既に、魔力解放を発動している。

 『魔力解放』と『魔燎創造』は互いに対となる奥義。片方を使えば、もう片方は使えない‥‥‥それが一般常識。

 両方を同時に発動する事は禁忌とされ、身体に降り掛かる負担は‥‥‥‥‥‥想像を絶する。ノエルもそれを分かっているからこそ、魔燎創造を発動した。


「なんで、お前の魔燎に揺らぎが出ないのよっ‥‥‥!?」


 ノエルが頭を抑えながら声を荒げる。禁忌を犯したエリスの魔燎創造は正常に作動し、特に身体の異変も見られない。

 そして‥‥‥景色がガラリと変わる。

 後出しで発動したエリスの魔燎が‥‥‥ノエルの魔燎を侵食した。


「私には数秒先の未来が見える。苦痛で叫ぶ私の、()()()()()も見えてる」


 自身の魔燎空間の中、エリスは指を両眼に向けて淡々と話す。


「その流れを()()()にずらせばば、その未来を回避することが出来るわ。それを常に続けるだけ。あなたもやってみれば」


 勇者の魔眼を持つエリスは、魔力解放と魔燎創造の発動による身体への負担を‥‥‥最小限に抑える事ができる。


「忌々しいっ、聖者の血がぁぁッ‥‥‥!!」


 ノエルが目を迸らせて歯を噛み締める。魔燎空間を破壊された事で、全身を襲う激痛に苦悶し‥‥‥()()()していく。

今の彼女は魔力を練れないため、重力魔法を発動出来ない。つまり、空に浮く手段を失った。

 急降下していく今のノエルは、大幅に弱体化している。魔燎創造はまさに諸刃の剣。


「あなたと違って、私は遊ばないわ」


 エリスは鞘から剣を取り出し、右手で強く握り締め‥‥‥飛行する。距離を詰めたエリスは、躊躇なく右手を伸ばして突きを放つ。


「ちッ」


 ノエルが舌打ちしながら、取り出した短剣で軌道をずらす。キィンっと甲高い金属音を響かせ、エリスの剣は彼女の頬を掠める。


「しぶといわね」


「お前がねッ!!」


 目を細めるエリスに、ノエルの短剣が迫る。エリスの剣はノエルの横にあるため、彼女の短剣を防ごうと間に合わない。


「ぐっ!? ぁあッ!!」


 するとノエルの真下から突風が吹き、彼女の身体が宙を舞う。エリスは魔燎空間内の中、意志一つで風を操ることが可能。

 自由自在に、荒れ狂う風を起こす‥‥‥まさに『疾風怒濤』。


「鬱陶しい風ねっ、お前とそっくり!!」


 だが意地なのか、ノエルは激しい風を浴びながらも短剣を手放さなかった。

 エリスは何も言わずに睨み付けると、風の軌道が変わる。相手ノエルがその場に留まれるほど、落ち着いた風。


「ッ!?」


 ノエルが呻き声を上げて左腕を見る。軌道が逸れて通過した風。それを浴びた左腕から血が滲み出ている。まるで、刀で浅く斬られたように。


「真空の、刃っ‥‥‥!! いちいち癪に障るわね!!」


 今エリスが起こしている風は、圧縮することで瞬間的威力を高めたもの。相手を吹き飛ばすほどの風量は無いが、触れた者の肌を切り裂く‥‥‥風の刃。

 エリスは何も言わず、無数の風を飛ばし続ける。それはまさに‥‥‥風の刃の乱れ撃ち。


「ちッ」


 ノエルが両手を交差して頭を守り始める。彼女の全身が、無数の風に晒される。首、右肩、左肩、右腕、左腕‥‥‥頭を除いた全身から血が噴き出す。


「かはッ‥‥‥」


 一方的な攻撃。ノエルが激しく息を乱して血を吐く光景を、エリスは淡々と見つめる。何も言わず、ただ見つめ続ける。


「ぅっ、ぐっ‥‥‥」


 頭を守り続けているノエルの両腕が次第に震え始める。夥しい量の血が流れた事で、力が入らなくなってきている。


「ぅ、ぁ‥‥‥」


 今のノエルは、赤色の髪が霞むほど全身が真っ赤に染まっており、風の抵抗も少ないためゆっくりと下へ落ちていく。

 だが、今もなお短剣は右手から離さない。短剣自体も風の刃に晒され、無数の傷と刃こぼれを引き起こしているにも関わらず。


(まだ意識がある‥‥‥しぶといわね。まだ経験不足で、私の魔燎の練度が足りてない。首を刎ね落とせないのが未熟の証)


 エリスは風の刃を操り続ける。まだまだ力が足りないと痛感し、自分自身を叱咤しながら。

 正直、勝敗はもう殆ど決している。今のノエルに、自分と戦う力は残っていないとエリスは確信している。


「‥‥‥」


 だが、エリスは彼女に近付くつもりが無い。さっきの反撃を考慮して、わざわざ相手の短剣が届くまで距離を詰める必要は無いと判断した。


(少しも隙は見せないわよ。あなたの血を全て外に出して上げるわ)


 一切の油断は無く、一方的に攻撃を続けていく。そして遂に、ゆっくりと落下していたノエルが地面に倒れ込んだ。


「がはッ‥‥‥」


 犯罪組織『地獄行ゴートゥーヘル』の第一席、その命を刈り取るまで‥‥‥まさに棒読み。

 エリスも地面に着地し、両手の平を‥‥‥勢いよく引き絞る。

 激闘の勝者は、誰の目から見ても明らかだった。


「!!」


 ーーー真下から、()()を感じさえしなければ。

 エリスは何かを悟ったように眉を顰め、前転して回避する。


「ーーーおっと、さすが勇者の魔眼だね」


 地面を覆う闇から、まるで突き抜けるように両手が這いずり、勢いよく人影が飛び出す。


「‥‥‥」


 その時、エリスは()()()()()()()()()()。当然、彼女の魔燎空間は‥‥‥維持できずに崩壊する。


「今、君はいったい()()見たのかな?」


 風で銀髪を靡かせて笑う青年を、エリスは怨敵であるかのように睨み付ける。不意に、バチンと火花が散るような音が鳴る。


「ーーー!!」


 エリスは地面を蹴って走り出すと、鞘から剣を取り出して強く握る。両手両足に【血液凝固】を施しているため、2つの行動を一瞬で済ませる。


「‥‥‥」


 そして、仰向けに倒れるノエルの頭に鋭い突きを放つ。それは今のエリス自身が、最速で出せる一連の行動だった。実際、瞬きを1回出来るくらいの時間しか経っていない。


「ーーー魔燎が壊れて弱体化してるのに、この速さとは参るなぁ。でも、僕は瞬時に距離を詰められるんだよ?」


 だが、エリスの剣は青年の右腕に止められる。さっきのように、闇に覆われた地面から現れたのだ。エリスとノエルの間に割り込むように。


「エレミヤ・アマド‥‥‥!!」


「僕ってそんなに人気者? 強い子に覚えてもらえてるのは嬉しい、けどねっ!」


 エレミヤが右腕を払いのけた事で、エリスは剣を弾かれて後方で着地する。


「弱体化してるから、たぶん力も本来より弱まってるね。さっきの剣、けっこう軽かったよ」


 犯罪組織『地獄行ゴートゥーヘル』第二席、エレミヤ・アマド。『天帝』レスタことアイトの宿敵でもある、因縁のある男。


「それと自分で魔燎空間を解除したのは、僕に()()()()()()を見たからでしょ?」


「‥‥‥」


 エリスは何も言わず、エレミヤをどう倒すか思考を巡らせている。


「解除するよりも壊される方が何倍も身体に負担が掛かるからね。せっかく僕の魔燎空間を見せてあげようと思ったのに。残念だけど、僕たちはここまでだね」


 エレミヤが飄々と語り、ノエルの肩を抱く。


「ぁ‥‥‥ぇ、れ」


「これは酷いね。君じゃなかったら死んでるよ」


 そして笑顔で彼女を抱えて立ち上がる。まるで、ここから去ろうとしているように。


「ーーーッ!!」


 当然、エリスはその隙を見逃さない。まだ魔法は使えないが、【血液凝固】で両手足を強化した状態で剣を振るう。


「万全の君なら、僕は間違いなく勝てないだろうね」


 エレミヤがそう呟いた瞬間‥‥‥エレミヤの下半身が地面に沈んでいく。そのため、彼の頭を狙ったエリスの剣が空を切る。

 剣を振り抜いた時には、もうエレミヤの頭しか見えていない。


「レスタくんといい君といい、見てて本当に面白いよ。今回はもう見られないのが残念だ」


「ッ!!」


 エリスは全力で剣をまっすぐ突き出す。エレミヤの脳天を穿ち抜くために。


「じゃあね。また会おう」


 そんな声が聞こえた直後、エリスの剣が勢いよく突き刺さる。


「っ‥‥‥!!」


 そう、地面に。


「っ、ッ!!!」


 それから剣を何度も勢いよく振り払い、地面を抉り出していく。地中へと消えていった忌わしい2人を、必死に掘り返すように。


「‥‥‥逃げられた」


 だが、声が虚しく響くだけだった。

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