幕間 カンナのコピー日記【終焉】
アイトが【終焉】を放った数日後。
カンナはエリスと共に、とある無人島に来ていた。
「私に見てほしいものって何ですか?」
「ふっふっふっ‥‥‥レスタくんの【終焉】!」
「え、ええ!?」
カンナはそう言うと両手を前に出し、昨日見た映像からアイトの【終焉】を無色眼で映し出す。
両手の指に複数の属性魔力を発動させ、それを混ぜ合わせて発動するーーー。
「ふにゃあ!?」
しかしカンナは突然変な声を上げてその場に倒れる。その際に集結させていた魔力を真横に飛ばしてしまう。
飛ばした魔力は近くの無人島に当たり、消し飛んだ。まるで映像で見た【終焉】のような迫力。
「‥‥‥本当に【終焉】です。レスタ様が放った魔法とほとんど変わらない‥‥‥っ」
エリスはすごいと思った反面、嫌だと感じた。それはアイトの凄まじい魔法を簡単にコピーされたことに不快感が募る。それが表情に出てしまうほどだった。
「あ〜! 失敗だっ! やっぱり無理かぁ〜」
カンナは地面にうつ伏せで倒れたまま話す。エリスは失敗と聞いてどこが失敗かわからなかった。
「‥‥‥失敗ですか?」
「さっき私が指に出せた属性魔力は5個だけ。レスタくんのは10個だったよね?」
「はい、そうです」
「5個出しただけでも魔法の制御ができずに変な方向に飛ばしちゃった。模倣でも再現不可能なんて、さすがレスタくん!」
「‥‥‥そうですよ。レスタ様はすごいんですからっ」
エリスは誇らしげに腕を組んで嬉しそうに言う。カンナはそれを見て笑い出す。うつ伏せのままで。
「カンナ、そろそろ起き上がったらどうですか?」
「‥‥‥実は、【終焉】を模倣した影響で、体が全く動かない、ですっ‥‥‥」
「‥‥‥は?」
エリスはうつ伏せに倒れるカンナを、淡々と見下ろしていた。
「模倣したものと私の相性が極端に悪いと跳ねっ返りが体に来てこうなっちゃうんだよ〜」
「‥‥‥へえ」
「完璧に模倣できてないのにこの有様‥‥‥【終焉】の模倣は諦めるしかないかぁ〜」
「‥‥‥そうですか。じゃあ帰ります」
反応の薄いエリスは、踵を返して歩き始める。
「ま、待ってエリス!置いてかないで〜!!」
「‥‥‥まさか、私に担いで帰れと??」
「‥‥‥おねがい♡」
「自業自得です」
「待って待って待って!?そんなひどいっ!それになんで怒ってるの!?エリスってば〜!!」
なぜエリスの機嫌が悪いのか、カンナには分かっていなかった。
その日‥‥‥カンナが拠点に帰ったのは真夜中だったという。