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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
1章 王立学園入学

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正義の味方

 ユリア拉致騒動から、翌朝。


 グロッサ王立学園が、満を辞して再開する。


「‥‥‥‥‥‥」


 アイトは学生寮の自室から学園に向かう。昨日のやらかしを気にして、何も眠れなかったのだ。

 そして学校の中では、生徒たちの中である話題で持ちきりになっていた。

 それは当然、昨日の騒動について。


『城に侵入した2人組がいる。城から逃げてメルチ遺跡を破壊した。1人は銀髪仮面の男、名前はレスタ』


『もう1人は黒いローブの女、名前は不明だがレスタの側近と思われる。情報求む』


 このような新聞記事が、王都中で配られていた。


(さすがに拉致は公にできないよな)


 ちなみに、ユリアの拉致事件は書かれていなかった。


『謎の男 レスタ』


『金髪女 名前は不明』


 そしてアイトとエリスは、既に手配されていた。一躍有名人である。


(落ち着け、変装は完璧じゃないか‥‥‥!!)


 アイトは心配で仕方がなかった。一般人の精神は、そこまで強靭ではないと言わんばかり。


(授業、授業、授業、授業を受けるんだ!!)


 アイトは真剣に授業を受けて、時間が過ぎていく。


 そして放課後。

 アイトは荷物を持って1年Dクラスの教室から出る。


『あの‥‥‥明日店に来てください。昨日の事について話したいので』


 エリスにそう言われたため、向かっている最中である。一見、何かドキドキするような展開と言えなくもない。


「ーーーアイトくん!!」


 ところが、教室を出た瞬間に腕を掴まれる。


「!? ゆ、ユリアちゃん?」


 それは昨日の重要参考人、ユリア・グロッサ。

 アイトは思わず警戒を強めてしまう。


「話したいことがあるの」


「は、はあ。それでどこに?」


「誰にも聞かれない場所に、です」


 アイトは連行されていく。少し強引に腕を引っ張るユリアによって。




「え??? ここ??」


「はい。あの、ダメでしょうか?」


 女子学生寮のユリアの自室前だった。


 学園が終わったばかりで学生寮内は誰もいないのだが、アイトは無意識に警戒していた。


「‥‥‥いいよ、ここで」


 美少女の部屋。アイトは誘惑に負けた。


「そうですか、ではどうぞ!」


 そして、男子生徒の憧れであるユリアの部屋へ入る。


「うわっ、すっごく普通!!」


 それは殺風景な部屋。アイトは率直な感想を口にしていた。


「それで、話って」


 借りた椅子に座ってアイトは話を促す。すると、ユリアが緊張した様子で頭を下げる。



「昨日は‥‥‥助けてくれてありがとうございました!!


「‥‥‥は?????」


 頭を鈍器で殴られたのではないかと錯覚した。アイトには、それほどの衝撃だった。


「な、何のことだか」


 アイトは、とりあえず誤魔化すことにした。


「とぼけなくても大丈夫、誰にも話してません。髪色を変えて仮面までつけてたのは、正体がバレたくなかったってことですよね」


「!!!!!!!!!」


 アイトの頭に閃光が炸裂する。

 ユリアの発言から、レスタ=アイト・ディスローグでという秘密が、バレていると確信した。


「‥‥‥‥‥‥」


 アイトは上手く言葉が出なかった。何を発言すればいいか迷っている。


(口封じ‥‥‥は絶対無理だ!! 王女殺害なんて本当に極悪人だろ!!)


 そして、あまりにも危なっかしい考えを巡らせている。


「なんで分かったか‥‥‥ですよね?」


「え? あ、ハイ」


 アイトは咄嗟に返事をして、危ない思考を首を振って削ぎ落とす。


「実は秘密なんですけど、恩人であるアイトくんには教えます。あ、見せた方が早いですね」


 ユリアがそう言うと、目の色が変わっていく。


「‥‥‥‥‥‥」


 アイトは、この状況に既視感を感じていた。間違いなく、嫌な既視感を。


 目の変色が終わる。水色の瞳が最終的に変わった色は青色。そして、両目の瞳には。


「わたし、【賢者の魔眼】持ちです」



 そう、彼女には賢者の聖痕が宿っていた。



「賢者の魔眼は自分や相手の魔力の波長がわかるの。だから私を助けてくれた銀髪仮面さんを見た時、アイトくんだってわかっちゃいました」


「‥‥‥へえ」


 嬉しそうに言うユリアの言葉が、アイトの耳を通り抜ける。


(これはもう‥‥‥口封じか!?)


 アイトは必死にどうしようか考えている。だが、今は気になった事を質問した。


「な、なんで隠してたんだ? ルーク王子は聖騎士の魔眼を持っているとみんなに知られているなら別に言ってもいいんじゃないか?」


 アイトの質問に対し、ユリアが強く手を握って口を開く。


「‥‥‥そう簡単に言えないのです。お兄様の他に、男系の兄弟はいません。すなわち王位継承権第一位は、お兄様です」


「う、うん。そりゃあそうだよな」


「そんなお兄様は、聖騎士の魔眼を持っています。これほど王位を継ぐのに、相応しい人はいません」


「お、俺もそう思う」


 アイトは素直な気持ちで相槌をうつと、ユリアが続きを話す。


「ですが、もしわたしも魔眼を持ってると知られたら。どうなると思いますか?」


「ぁ」


「わたしに王位を継がせようとする家臣たちがいるかもしれません」


 アイトは深く反省した。自分の発言は、あまりにも思慮が欠けていたと。


「そんな不必要な王位継承の争いを、する必要はありません」


「‥‥‥悪い。俺の考えが甘かった」


 そして、アイトは素直に謝罪した。話しづらい事を聞き出してしまった事に。


「あ、アイトくんが謝ることじゃないです! それにわたし、王位とか興味ないので! ぜひお兄様に継いで欲しいと思ってますし!」


 ユリアが必死に手を振って、気にしないように促す。そこでアイトは空気を変えるべく、新たに質問する。


「あ、ちなみにユリアの魔眼を知ってる人は?」


「お父様とお兄様とお姉様です! お母様は、既に亡くなってますので‥‥‥」


「あ‥‥‥ごめん」


 アイトはまたしても、自分の発言を後悔した。


「いえいえ! そんな気になさらずに!」


 ユリアに気を遣わせている事に。だが、中途半端に話を終える方が失礼だと思った。


「‥‥‥つまり、ユリアの家族だけ知ってるわけか。あ、もしかしてステラ王女も魔眼持ってる!?」


「いえ、お姉様は魔眼を持っていません。あ、安心してください! わたしの時みたいに正体がバレることはないですから!」


 アイトはホッと息を吐く。これ以上、魔眼持ってます宣言はされたくなかったからだ。


「あ、あの。昨日の件なんだけど」


 そして、ついに本題を切り出そうとする。自分がレスタであると気づかれてしまった事を。


「安心してください。絶対に言いませんから! お兄様にも聞かれましたが、『覚えてない』と返しました」


 ユリアの必死の弁明に、アイトは顔を上げて驚く。


「‥‥‥え。なんでそんな」


「助けてもらったのに当たり前です!」


 ユリアが少し声を張る。信じて欲しいと言わんばかりの口調で。


「それに万が一のことがあれば、私の魔眼の件を言っても構いません。その覚悟があるくらい、私は絶対に言わないので!」


「もちろん言う気はないけど、なんでそこまで」


 アイトは無意識に訪ねてしまっていた。そこまで自分を安心させるように、気を遣ってくれる理由を。


「だってアイトくんは、私の初めての友達ですから!」


 ユリアがどこか気恥ずかしそうに頬を赤らめ、優しく微笑んでいる。


「最後にもう一度言わせてください。助けてくれて、本当にありがとうございました!」


 アイトは、彼女を疑っていたことを恥じた。


「‥‥‥ユリアちゃん。こちらこそありがとう。俺も絶対に言わないから」


「これからはユリアでいいです! 秘密を共有した仲、同士ですから! これからもよろしくね!」


「あ、ああわかった」


 ユリアの感謝の言葉と笑顔。そして、本当の意味で彼女と友達になれたと実感した。


(動いた甲斐があった‥‥‥)


 全て自分のためではあったが、ユリアを助けるための行動は間違ってなかったのだと実感する。

 そう思うことで、アイトは昨日のやらかしのことをあまり気にならなくなった。いや、気にしないようにしていた。


「それに私‥‥‥正義の味方が大好きなんです!」


「‥‥‥ふぇ?」


 だが、ここで少し雲行きが怪しくなる。


「昨日のアイトくんって、まさに『正義の味方』って感じでした!! 悪を懲らしめ、困っている人を助ける。まさにそんな感じですよね!?」


「いや、俺は別にそんなんじゃなくてーーー」


「アイトくんの隣にいた人! 金髪の美しいハーフエルフだった気がします!」


「あ、はい」


「すっごい魔力を感じました! もしかしてアイトくんの仲間ですか!?」


「え、え〜っとそれは」


「まさかアイトくんって何か使命を持ってるんですか!? それとメルチ遺跡を吹き飛ばした時って、どんな魔法を使ったんですか?


「あ〜、それは」


「見せて欲しいです!」


「‥‥‥機会があればね?」


 目を輝かせたユリアによる、マシンガントークの連発。アイトは適当に返事するしかないのだった。




「ということで、ユリア王女に俺の正体を知られてしまった」


 王都での潜伏拠点『マーズメルティ』。


 あの後、アイトはユリアの部屋の窓から飛び降りて脱出した。

 そして約束通り、エリスたちが待つ『マーズメルティ』に足を踏み入れたのだ。


「えっ! 大丈夫なのレスタくん!」


 そう言ったのはメイド服を着たカンナだった。ツインテールだが、髪を黒く染めている。


「ああ、彼女は信頼できる人だから大丈夫。っていうか、なんで染色魔法で髪染めてんの?」


「これはね〜もしものための変装っ! 実は昨日、王子に顔を見られたのでしたっ!」


「え‥‥‥大丈夫か?」


 アイトは冷や汗をかきながら慎重に尋ねる。


「なぜか手配はされてないんだよね。私、ターナ、ミア、リゼッタは見られたのに」


(え、めっちゃヤバいじゃんそれ)


「私なんか顔見られて【無色眼】がバレたのにね」


「は?」


 アイトは素っ頓狂な声を上げる。まるで頭を何かで殴られたような衝撃だった。


「手配されてたのはレスタくんとエリスだけだし。よくわからないけどたぶんOK〜!」


(全然OKじゃないわ!?)


 アイトは戦慄としつつも、店内での会話は続く。次に口を開いたのは、目を細めたターナだった。


「ボクは名前までバラされたけどな」


「うっ、ターナっ。その件は誠に申し訳なく!」


「冗談だ。もう気にしていない」


「も〜! ターナが言うと冗談に聞こえないっ!」


 そんな言葉を聞き、アイトたちは思わず笑い始める。ターナが恥ずかしそうにそっぽを向く。


「そういえばターナも、ここに潜伏するのか?」


 アイトは話しを変える。ターナが『マーズメルティ』にいるのを初めて見たため、少し気になったのだ。


「違う。昨日の件で情報共有しようと思ってな。それが終わったらボクはすぐに出ていく」


「そうそう。黒髪おチビちゃんはさっさと出てってよ」


 余計な煽りをぶつけるのは、言うまでもなくミアである。


「言われなくても、用が済んだら出て行くさ。さっきの話聞いてなかったのか? 相変わらず自分勝手なお子様だな」


「は??????????」


 ターナとミアの衝突で、空気がどんどん悪くなっていく。リゼッタが椅子の上で縮こまり、ガタガタと震え出す。


「2人とも落ち着いてください。レスタ様の時間も戴いてるんですから、手短に済ませましょう」


 エリスが嗜めるように話を切り替える。

 ターナとミアは、お互いが同時に視界に入らないように反対側を向く。ある意味息ピッタリだった。




 そのあと、アイトたちは話し合った。


「あれは化け物だ」


 まずは、ターナが戦ったルークの強さ。


「え〜っとね」


 次にカンナ、ミア、リゼッタが遺跡を調査した結果を話す。

 犯罪組織『地獄行ゴートゥーヘル』の一員が、今回のユリア拉致を行っていたこと。

 目的は、ルークの妹であるユリアが‥‥‥魔眼を持っているか確認。


「っ‥‥‥」


 アイトは思わず息を呑んだ。

 もし持っていれば、実験を施そうとしていたこと。

 また、彼女の姉であるステラも狙われるかもしれないという意見を共有した。


「良い情報を集めてきたよ」


 その後はルークが総隊長を務める最強部隊『ルーライト』の隊員情報を、物知り博士のメリナが話した。


 そして会議を終えた頃には、もう日が暮れ始める。


「じゃあボクは行く。レスタ、油断するなよ」


 ターナが王都から離れ、単独行動を再開する。


「なんなのあの黒髪チビっ!?」


「まあまあ落ち着いて!」


 椅子から立ち上がった怒るミアを、カンナがやんわりと慰める。


「ユリア王女が、無事でよかったですね」


 それを穏やかな目で見守りながら、エリスが呟く。今回の騒動を終えて、平穏が訪れた事を喜んでいる。


「‥‥‥ああ。平穏が戻って何よりだよ」


 アイトは小さく息を吐き、笑って返事をしたのだった。戻ってきた平穏を、噛み締めて。

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