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【40万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
1章 王立学園入学

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破滅魔法

 グロッサ王国近辺の平原。


「みんな、無事か?」


 グロッサ王国の王子ルーク・グロッサは後ろを見つめて話しかける。


「は、はい、なんとか‥‥‥」


 座り込んでいたのは、マリア・ディスローグ。

 アイトの姉であり、王国の精鋭部隊『ルーライト』の隊員。


「本当にありがとね、シロア!」


「‥‥‥(ペコッ)」


 シロアと呼ばれた少女が、薄桃色の髪を揺らして頭を下げる。


「しかし、ジル副隊長の【超障壁マジックウォール】が破壊されかけるなんて」


「‥‥‥すまない。私の鍛錬不足だ」


 副隊長、ジル・ノーラズが悔いるように歯を食いしばる。


「気にするなジル。あの魔法の威力が凄まじかった」


 隊長であるルークが慰め、話し出す。


「あの魔法は少なくとも『高威力魔法ハイパワーマジック』と同等以上。もしかすると‥‥‥『破滅魔法ルインマジック』にも並ぶかもしれない」


 ルークがそう言うとマリアたち隊員が絶句する。


「そんな! グロッサ王国ではルーク隊長しか認められてない『破滅魔法ルインマジック』に並ぶ!?」


 大声で叫ぶマリアが、必死に口を動かす。


「そんなこと‥‥‥あって良いはずがありませんっ!!」


「落ち着け、マリア。言いたいことはわかる。『破滅魔法ルインマジック』は相手の侵攻を防止する抑止力として国が認可されている魔法だ」


「そ、そうです!他に現れるなんてーーー」


「王国内では僕だけだが、2人目の『破滅魔法ルインマジック』所持者が現れたとなると、今までの他国との均衡が揺るぎかねない」


「‥‥‥ど、どうすればいいんでしょうか」


 マリアは絶望が混ざった声で呟く。

 謎の男が放った魔法は‥‥‥国の均衡を揺るがすほどの脅威と、一国の切り札となり得る価値があった。


「まあ、これから対策を考えていくしかないね」


 そう宥めたルークは思い出していた。


 ◆◇◆◇


 それはわずか、数分前の出来事。


「まさか、空を飛んで逃げるとはね。その技術、僕も教わりたいくらいだ」


 ターナたちが空に逃げていくのを、ルークが眺めていたところから始まる。


『ルーク! 聞こえるか!?』


「? 父上? どうされました?」


 ルークは魔結晶を取り出して返事をする。父である国王ダニエルへと。


『ユリアが帰ってきた! 今は城の中にいる。ケガもない、もう安心だ!』


「どういうことでしょう? ユリアは何者かに拉致されていたのでは?」


 ルークは即座に疑問を尋ねると、ダニエルの声が少し低くなる。


『それが‥‥‥謎の2人組がユリアを抱えて城に来たのだ』


「謎の2人組?」


『ああ。1人は銀髪で仮面を被った謎の男。もう1人は黒いローブで顔を隠していたが、声的に女だった。とにかく、怪しい連中だ』


「なるほど、そんなことが。ユリアは無事なんですね?」


『ああ、擦り傷さえ無いようだ』


 ルークは妹のユリアが無事と確認し、安堵の息を漏らす。


「では、僕たちの任務は終わりですね」


『ああ。本当にご苦労だった』


「はい。それでは今から戻ります」


 ルークは連絡を終え、顎に手を当てて考え込む。


(どういうことだ‥‥‥? 拉致された妹が急に戻るなんて)


 ルークは今の状況に、困惑を隠しきれない。拉致された妹のユリアが、城へと返された。当然、訳が分からない。


(銀髪仮面の男と黒いローブの女は、犯人ではないのか? 犯人なら返すわけがないし、拉致した意味も無い)


 彼の思考は、まだ続く。


(‥‥‥もしかして、さっき逃げた少女たちの仲間? 隣国で噂の『静寂』のターナもいたし、まさか全員が何か目的を持った集団?)


 ルークは更に思考を巡らせる。


(銀髪仮面と黒いローブの女、無色眼の少女に『静寂のターナ』、呪力使いにもう1人別の女の子‥‥‥これはさすがに興味深くて面白い)


 ルークは思わず、意地の悪い笑みを浮かべていた。とても王子として他には見せられない顔。


 そして、まだ着いてない部下たちを待つことにしたのだった。

 



「はあっ、はあっ、ルーク先輩! 勝手に先に行かないでください!!」


 すると息を振り乱したマリアが、苦しそうに声を出す。


「お、マリア。さすが『迅雷』だね。シロアを担いで最初に来るとはね‥‥‥それと、任務中は『隊長』と呼ぶようにと言っているだろ?」


「そんなことよりって‥‥‥はあ、もういいです。ほら、シロア」


 マリアは腕に抱えていた小柄な少女を地面に下ろす。彼女の薄桃色の長い髪が風で靡く。


「‥‥‥(ペコッ)」


 シロアという少女が、マリアに深くお辞儀をする。


「シロアっ‥‥‥ああもう可愛すぎ!! 私の妹にならない?」


「‥‥‥(ブンブン)」


 突然の申し出に、シロアが少し申し訳なさそうに首を振る。


「そう、残念‥‥‥」


「マリア、他のみんなは?」


「‥‥‥もうすぐ来ると思いますよ。頻繁に連絡を取り合って確認しましたから。隊長は連絡もせず最短で来たみたいですけどね」


 マリアは意地悪な言葉をぶつける。ルークが苦笑いして両手を振って、口を開いた。


「シロアが遺跡前にも()()していれば、マリアも楽に来れただろうね」


「‥‥‥(ハッ!)」


 するとシロアが突然、目を見開いてしゃがみ込む。そんな彼女に、ルークとマリアが面食らう。


「‥‥‥(かきかき)」


 そして、シロアが自前のペンで‥‥‥地面に何かを書き始めた。


「もうっ! 隊長がそんなこと言うからっ、シロアが書き始めたじゃないですか!!」


「ま、まあ他の隊員たちが着くまでに書き終わるでしょ」


 ルークとマリアの会話はシロアの耳に届いておらず、彼女は書くことに夢中になっている。


「‥‥‥ちなみに、隊長が察知した犯人と思われる人は、どこに?」


「‥‥‥さあね」


「あ、また()()()()()()()!? わざと逃がすのはやめてほしいと言ってるではないですか!!」


 マリアは勢いよくルークを嗜める。マリアは彼より年下で、しかも相手は王子。彼女は肝が座りすぎていた。


「捕まえるなら、父にバレない状態でないと意味がない。妹の拉致が起こっていた今、捕まえても罪人として牢屋に軟禁して尋問、最後には処刑されるだろ?」


「そんなの当たり前でーーー」


 マリアの言葉に、ルークが待ったをかける。


「あんなに優秀な人材を、抹消するのはもったいない。こうやって恩を売っておけば、次会った時に勧誘できるかもしれないでしょ?」


 そう言ったルークは意地悪い笑みを浮かべた。明らかに王子がしていい顔ではない。

 マリアはため息をついて、小さく声を漏らす。


「‥‥‥本当に、性格以外は完璧なのに」


「ん、何か言ったかい?」


「いえなんでもございませんっ。ところで、遺跡の中に入らないのですか?」


「そのことだが、全員集まってから話す。ま、それまで休んでて」


 その後。


 他の隊員が息を切らしながらルークの元にやってきて、やっと今回任務に出た全員が集まった。


「それじゃあ全員集まったことだし、話を始める」


「はあ、はあっ、ちょ、ちょっと待ってくだ」


 そんな声を、ルークは華麗に無視した。


「どうやら、妹がもう城に戻っているらしい」


「はぃぃ!?」


 マリアが驚く間も、ルークは続きを話す。


「謎の2人組が妹を抱えて城に来て、置いていったと報告を受けた。だから今回の任務は終わりだ」


 ルークがお構いなしに用件を話す。

 無視された部下の1人が心の中で『鬼!!!!』と叫んでいた。それは部下のほとんどが、普段から感じていることでもあった。


「ユリア王女は大丈夫なんですか!?」


「かすり傷すら無いと言っていた。それにその2人組は犯人じゃないと思う。理由と根拠は省略する。だからこれから、皆で遺跡内を探索して帰ろう、と‥‥‥?」


 ルークは、不意に言葉を途切らせる。上空に、濃密な魔力の気配を感じたからだ。


「! あれは、銀髪仮面と黒いローブの女‥‥‥?」


「ほ、本当ですっ!! 隊長っ、迎撃しますか!?」


 マリアが焦った様子でルークに問いかける。


「静かに。今は様子を見る。何か情報が欲しい。気づかれないよう息を殺せ」


「「「!?」」」


 すでに息も絶え絶えである一部の部下たちは、心の中で『鬼王子』と叫んだ。

 これがドS鬼畜と定評のあるルークである。


「静かにして」


 だが部下の全員はルークの命令に素直に応じる。性格は何ありだが、実力とカリスマ性は全員が認めていた。そして何より、彼は一国の王子なのだから。


「‥‥‥‥‥‥」


 そんなことに気付くわけもなく、ルークは上空にいる謎の男を観察する。

 すると、その男は両手から濃密な魔力を発生させた。


「両手から魔力を‥‥‥? まさか!!」


 ルークがそう言った途端、状況が一変する。


 銀髪仮面の男から真っ黒の光線が放出され‥‥‥遺跡に当たって明滅する。



        ーーーーーーー!!!!!



 次の瞬間‥‥‥凄まじい爆発と爆風が、ルークたちを襲った。


「きゃぁぁぁっ!!!?」


 悲鳴を上げるマリアたちに、追い討ちをかけるように迫り来る‥‥‥真っ黒な魔力の渦。


「ーーージル!!」


「はっ!!!!!」


 ルークが声を発すると、副隊長のジルが両手を前に出す。


「【超障壁マジックウォール】!!!」


 それは、三重に重なった魔力障壁だった。



 ジル・ノーラス。


 グロッサ王国精鋭部隊『ルーライト』の副隊長。年齢は25歳で規格外の体格を持つ男。


 ノーラス家は、グロッサ王家の護衛を任されている近衛家系。


 ジルは高い身体能力と体術、そして一点に特化した魔法の素質が強み。ルークの護衛役に任されるほどの実力者。


 ジルは障壁魔法に高い適性を持っていて、防御面に優れていた。

 今回ジルが発動させた魔法は、彼独自の魔法【超障壁マジックウォール】だった。


「ぬぅぁぁぁぁぁッ!!!」


 ジルの【超障壁マジックウォール】と、黒の魔力の渦が衝突する。


「!!? グゥゥゥゥォォォォッ!!!」


 ジルは次第に押されていき、少しずつ【超障壁マジックウォール】が壊れていく。


「!? 副隊長が押されているなんて!!」


 マリアの驚く声を聞きながら、ルークは咄嗟に指示を出す。それは、今とれる最後の手段。


「ーーーシロア!!」


「‥‥‥(コクッ)」


 『ルーライト』の隊員、シロア・クロートは頷くと‥‥‥張り切った様子で背中を向ける。

 ルークと他の隊員たちが、そんな彼女の肩に手を置く。


「副隊長、失礼します!!」


 マリアは右手をシロアの肩に、左手をジルの肩に置いた。


「‥‥‥ボソッ(【メタ】)」


 そしてシロアが、他の人には聞こえないほどの小さな声で唱える。


「ーーーーーー!!」


 その直後、ルークたちはその場から消えるのだった。


 ◆◇◆◇


 シロアの魔法によって、グロッサ王国付近の平原に転移してきたルークたち。


「ーーー隊長。隊長! 聞いていますか!!」


 ルークは話しかけられる事で、さっきの出来事を考え込んでいたことに気づく。


「ああ、すまない。聞いていなかった」


「ではもう一度お話しします。これから対策会議ですか!?」


「いや、今日はもう遅い。今日は解散だね。僕は妹の様子も見に行かないといけない。続きはまた後日で」


 ルークの決定に、反対を述べる者はいなかった。




 こうして王国精鋭部隊『ルーライト』の任務は、白紙になって終了した。新たな脅威を残して。


「‥‥‥ふふ」


 だが、ルークは喜んでいた。その理由は。


(まさかあんな人間が、まだグロッサ王国にいたとは‥‥‥あの銀髪仮面、大いに使えるかもしれない‥‥‥!)


 グロッサ王国の王子は、どこまでも腹黒い底を持っていた。

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