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【30万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
10章後編 崩壊都市ベルシュテット

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壮絶な戦い、その結末。

 カンナは原理が全く理解できない魔法を、2回ほど見たことがある。


『【消えて】』


 1回目は魔闘祭での騒動時。マルタ森に大きく張られた結界を前に、()()が唱えた瞬間。


『ーーー【消えて】』


 2回目は今回の騒動。アムディスが放った静電気の纏った血の塊に、()()が唱えた瞬間。


 その両方とも、言葉通り完膚なきまでに消し飛ばした‥‥‥伝説の魔法使いの離れ業。


「【消えて】ッ!!!!」


 カンナはその記憶を呼び起こしながら唱えた。両眼が反応し、理解すらできない魔法の模倣を始める。


「ーーーッッッ!!!」


 その刹那‥‥‥両眼から勢いよく血が噴き出すのが分かった。視界も一瞬で黒く塗りつぶされ、何も見えなくなる。


「ーーーぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」


 だがカンナは模倣を止めなかった。意地とも言えるその気迫が、願いを叶えた。

 都市を吹き飛ばすほどの魔導具の破裂が、彼女の右手によって()()()()()()()


「消え、た‥‥‥」


 ディルフィが信じられないと言わんばかりに声を漏らすと、崩壊騒動は嘘だったかのような静寂が周囲を支配する。


「やっ‥‥‥た?」


 もはや視界には濁った黒しか映らないカンナには、どうなったのか確信は持てなかった。だが近くにあった魔導具の気配が消えた事と、ディルフィの独り言から模倣が成功したと実感する。


「レスタ、くん」


 カンナは振り返り、足を引きずりながら動く。最も守りたかった相手が、無事であるか確かめるために。


「こっちこっちー」


 ネルの声に導かれ、腰を落とす。そして手を伸ばした先には、人肌の感触。ぐったりとしているが、生きていることが感じられる体温の熱。

 それだけで、カンナが泣き崩れるには充分だった。だが血まみれの両眼から、涙は溢れない。


「レスタくんっ、やったよ‥‥‥!!」


 感極まったカンナがアイトを引き寄せ、勢いよく抱き締める。見えなくても、熱を感じ取って歓喜に震える。


「よかったッ‥‥‥レスタくんが無事でっ!! 皆が無事でっ、本当によかったよぉぉぉ‥‥‥!!!」


 感情の爆発を口から発散しながら、アイトの後頭部に手を添えて抱き締め続ける。


「カンナさんっ‥‥‥本当に、全て終わったんですねッ‥‥‥ゔぁぁぁぁん!!」


「うわディルちゃんまで泣き出すし」


 こうして吸血鬼との壮絶な戦いは、人間側の勝利で幕を下ろした。



「ーーー結局、都市崩壊はしないのね。ちょうど()()()()()脱出しようと思ってたのに」


 同時刻、別の地区でジャックが独り言を呟いた。


 ◆◇◆◇


 数分後、都市内の安全が確認されたことを前市長が放送で発表。もう大丈夫であることが人々に知れ渡る。

 多くの人間が歓喜し、喜びの声を上げる。だがその後の行動は人によって異なる。


「‥‥‥あれ。さっきの気配、私の魔法だ」


「え‥‥‥まさかカンナのやつ!!」


 シャルロットの言葉に反応し、一目散に走り出すターナ。


「ーーー姉貴っ!!!!」


 都市外。自分の姉が重傷で抱え込まれたことを知り、必死に駆け寄るシスティア。


「ゔッ‥‥‥づぅ」


「クジョウっ、しっかりしろ!!」


 急遽呼び寄せられた医者に診てもらっている重傷のアヤメと、励ましの声を送るジェイク。


「ナナのやつ、まさか‥‥‥」


 スカーレットを降ろした後、何かに勘付いて相棒を探しに都市へ戻るセシルなど。


「おい、あの紋章って‥‥‥」


 だが、誰よりも周囲に驚きを与えた存在がいた。


「失礼、先を急いでいる」


 胸元に剣の紋章が刻まれた銀髪の美青年と、その隣を歩く黒髪の美少女。特に白い鎧を身に付ける彼女は、多くの視線を独り占めした。


「帝国軍の歴代最年少で将軍となった天才‥‥‥なんであんなところに」


 そんな言葉が耳に入った少女はどうでも良さそうに無視し、青年の方を向く。


「何か気になることでも」


「‥‥‥いえ。気のせいです」


 青年は向き直って言葉を返すと、彼女を先導するように歩いていく。


「ーーーなにあいつ? いきなりガン見してきて」


 すると姉の容態を側で確認しているシスティアが、不機嫌そうに青年の背中を睨みつけるのだった。

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