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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
1章 王立学園入学

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私の価値は、眼だけじゃないのっ!

 遺跡内、地下2階。


「やあ!!」


「はっ!!」


 カンナと覆面の声が上がる。覆面の攻撃をカンナは捌き、すかさず反撃を行う。その反撃を覆面が対処するという、まさに均衡状態が継続していた。


「その、剣はどうやって、形状化した!!」


「ヒミツっ! 私だけの武器だもん! 私自身の武器だもんね!! あ、今の言う必要なかった!!」


「何言ってんだ!!!!」


 覆面がナイフを横薙ぎに振ると、カンナはしゃがんで避け、覆面の足元に剣を振る。


 覆面がそれを察知して跳躍するが、カンナは右手に剣を構えたまま振らなかった。見せかけで相手を釣ったのだ。


「やっ!!」


「グッ!?」


 カンナは左手で、隙だらけな覆面の腹を殴る。


「やぁぁぁッ!!」


 カンナは拳を振り抜き、覆面を吹き飛ばす。だが、彼はなんとか着地に成功した。


「え〜? 今ので決まらないか〜! 君、とっても頑丈だね!」


「俺が女のひ弱なパンチなんかで倒れるわけがねえだろ!! お前に負けるはずがねえんだよ!!」


 「あ、男女差別だっひどいひどい! それなら女性代表として勝たせてもらうからっ!」


「やってみろっ!!」


 覆面が向かって突進してくるのを、カンナは待ち構えて警戒する。


「うにゃ!?」


 カンナは素っ頓狂な声を上げた。

 覆面の速度が急激に上がり、目前に迫ったからだ。カンナは剣を蹴り飛ばされる。掛けていた伊達眼鏡も同時に吹き飛ぶ。


「ガ、ァっ‥‥‥」


 そして、覆面に首を掴まれ持ち上げられる。カンナの両足が、床から浮く。


「ガっ‥‥‥」


「はっ、これで終わりだ」


 カンナはどんどん息苦しくなっていき、遂に視界がボヤけ始める。いや、意識すら無くなり始めていた。


(‥‥‥そういえば。こんな時に、()は助けてくれたんだっけ)


 するとカンナは、意識を勢いよく吹き返す。


「ーーー【照明】!!」


 そしてカンナの両手から、目が痛くなるほどの光が飛び散る。


「ぐわっ!?」


 覆面はその光で目が眩み思わず、両手で目を覆う。カンナは覆面の拘束から脱出した。


「ゴホゴホッ!! はあ、はあ‥‥‥またレスタくんに助けられちゃった」


 瞳が少し濁ったカンナは、酸素を取り込みながら独り言を呟く。


「小癪なまねを!!! ‥‥‥!?」


 覆面が視力が回復すると、カンナの両目を見て変化に気づいた。


「目の色が少し澱んだ? ‥‥‥まさか、その眼はっ、【無色眼】!?」


「あ、バレちゃった。そっか眼鏡が無いからだ!?」


 カンナはあたふたと両手を振り、眼鏡が無いことを確認していた。


「ハハハっ、まさか希少な一品物に会えるとは! 生け捕りにすれば大出世だ!」


「はぁっ‥‥‥やっぱり、こんな人が多いよね。レスタくんやみんなに出会えた私は、とっても幸せなんだ」


「何ボソボソ言ってんだ!」


 カンナに覆面の魔の手が迫り寄る。

 カンナは拾ったヘアゴムの形状を、剣からナイフに変化させて迎え撃つ。


「はっ、俺の技を模倣しようってか!? いいぜしてみろよ!!」


 カンナは左手にナイフを持って前に突き出す。


「甘え!!」


 覆面がそれを横に向いて避ける。その直後にバチンっと火花が散るような音が鳴る。


「ぐあっ!?」


 覆面の脇腹に、カンナの右拳がめり込んでいた。


「やあああっっ!!!」


 カンナは勢いよく拳を振り抜くと、覆面が後ろに吹き飛んでいく。


「ごはッ」


 覆面が床に倒れて悶絶する。これで、もう勝負は決まった。


「作戦大成功〜! 女性のみんな、仇は打ったよ!」


 カンナは自身のポニーテールを揺らしながら喜び、右手の【血液凝固】を解除した。


 カンナは左手に持ったヘアゴムを、ナイフに変化させて覆面の意識を向ける。その瞬間、右手に【血液凝固】を発動。

 バチンっと音がしたのは【血液凝固】を右手に施したからだ。


「ふぅ」


 カンナは腕力でみると、黄昏トワイライトの中で上位に入ることはない。それは自分でも認めていた。


(すごい人がいっぱいいる)


 完璧超人で勇者の末裔のエリス。


 元暗殺者のターナとミスト。


 水使いアクア。


 呪術師ミア。


 脳筋のカイル。


 銃使いのオリバー。


 毒使いのリゼッタ。


 鞭使いのメリナなど、実力に長けた者が大勢いる。


 でも腕だけに集中し、【血液凝固】を施せば。

 あまり腕力に自信がないカンナでも、相手にダメージを与えられることは訓練で実証済み。


「クソ、がっ」


 覆面はカンナが模倣すると思い込んでいた。またカンナの素手は驚異じゃないと思い込み、彼女の右手を意識していなかった。


「私の価値は、眼だけじゃないのっ!」


 カンナの嗜めるような声は、悶絶している覆面には全く聞こえていなかった。


 ◆◇◆◇


『初めまして、カンナ様』


 カンナは幼い頃、宗教集団の1人に養子として迎え入れられた。そして、早々に次期教祖候補になっていた。理由は単純明快‥‥‥『無色眼』を持っていたからだ。


「今日のご飯は〜?」


 カンナは10歳になるまで、その宗教集団のことを悪だとは思っていなかった。自分は何もしていないのに食事は豪華、みんなが自分を勝手に慕ってくれる。


(私って特別なのかも!)


 幼かったカンナは自分が特別なのだと信じて、深く考えずに喜んだ。


「‥‥‥おかしいよ」


 だが12歳のある日。カンナはとある一件により、今の違和感に気づく。


「おかしいよッ」


 そして、カンナは気づいたのだ。

 自分の眼が目的で彼らは迎え入れたことを。自分の力を悪用して、悪事を働こうとしていることを。


(こんな所にいられないっ)


 カンナは逃げるため、少しずつ準備を進めた。自分の力について試行錯誤し、探索もする。


 それから3年が経ち‥‥‥15歳になった日。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」


 カンナは逃げ出した。

 成人になったため、もうすぐ何かされると思ったのだ。必要以上に追いかけてくる集団を、なんとか模倣なしで振り切った。


「髪色も把握されてるよねっ‥‥‥」


 カンナは、自分の銀髪に染色魔法をかけた。選んだ色は黒。偶然にも、()とは真逆。


(私はもう、隠れながら過ごすしかないんだ)


 これからは、正体を隠して生きていこうと決めた。


「きゃっ!?」


 だが数日後。

 カンナは追跡して来ていた1人に気付かれた。


「うっ!?」


 腹を蹴られてうずくまり、首を持ち上げられる。どんどん息苦しくなっていく。


(ど、どうしよ‥‥‥だ、誰か‥‥‥)


 カンナは抵抗する体力を削られ、万事休す。

 そして、意識がなくなる寸前だった。


「【照明】!!」


 そのような声が聞こえると、カンナの首を掴んでいた腕が離された。男が目を押さえて苦しんでいる。自分の背後から、凄まじい光が出たのだ。


「ゴホッ、ゴホッ」


 カンナはその場に倒れ込む。動く力は残っていなかった。だが一瞬だけ、その光を発している人の方を見る。


「ぐぉぁっ!?」


 すると目を押さえていた男が急に吹き飛び、凄まじい落下速度で叩きつけられていた。それをやったのは‥‥‥光を発していた謎の銀髪仮面の男だった。


「だ、だれっ!!」


 その身だしなみ、強さ‥‥‥明らかに普通じゃない。カンナは当然、謎の男に身構える。


「‥‥‥大丈夫?」


 相手の声を聞くと集団で聞いたことがない声だとわかる。


「な、なんだぁ‥‥‥無関係の人じゃん」


 カンナは構えを解くと、力が抜けたようにその場に座り込んだ。


「よかったぁ〜。違う人だったぁ〜‥‥‥助けてくれて、ありがとう。


 カンナは相手に感謝を告げる。絶体絶命の窮地を救ってくれた、銀髪仮面の男へと。


「君、誰かに追われてるの?」


 やけに幼なげな彼の話し方に、カンナは少し笑いながら答える。


「まあね。詳しくは話せないけど、私って大勢に追われてるんだ」


「‥‥‥大勢に追われるなんて君、何者?」


 当然、そんな質問が飛んでくる。


「‥‥‥」


 カンナは、自分の目のことを教えるわけにはいかなかった。まだ目の前の男を、信用できると決まったわけではなかったから。むしろ彼の格好を見れば、信用してはいけない部類である。


「言いたくないなら言わなくていいよ。俺は宝石集めてたついでに遭遇しただけ‥‥‥って!」


「??」


 不自然に相手の会話が途切れたため、カンナは思わず首を傾げる。


「君の目の色、すごい綺麗じゃん!まるで宝石みたい!!」


 カンナは動揺した。もしかしたら、自分の眼に気づかれたかもと思った。


「‥‥‥そう?」


 なるべく声を抑えながら、相手の真意を探るべく返事をする。


「羨ましいな〜!」


「‥‥‥!」


 彼の言葉が、カンナの心に深々と突き刺さる。


「ーーー代わってあげたいよッ!!!」


 そしてカンナは‥‥‥今までの鬱憤が爆発した。まさに他人事のように呟く男に、腹が立った。


「え、急にどうしたんだよ」


「こんな目いらない!! この目のせいでっ、私は自由に生きられないのっ!!」


 カンナの感情は溢れ出す。


「意味わからない宗教集団の大司教にされかけるし!! 執拗に追いかけられるし!!」


 まるで、勢いよく流れ始めた濁流のように。


「もう正体を隠して生きていくしかないの‥‥‥私は、自由に生きたいのっ!!!」


 カンナは涙を溢れさせて、力いっぱい叫んだ。


「‥‥‥その目、何かあるの?」


「『無色眼』だよっ!!」


 首を傾げる男に対し、カンナは大声で叫ぶ。


「え? ごめん、知らない」


 男から帰ってきたのは、純粋な疑問のみ。


「え‥‥‥??」


 カンナは素っ頓狂な声か漏れる。まさか本当に、目のことを知らない人がいるとは思わなかったのだ。


「う〜ん‥‥‥『魔眼】なら知ってるし見たことあるけど。無色眼‥‥‥は知らないな」


「はっ?」


 カンナは唖然とする。


「でも、そんなのどうでもよくない? 魔眼でも無色眼でも、何も無くても眼は目だろ」


「はぁ‥‥‥???」


 何を言われてるか言葉では理解しているが、頭が理解できずにいた。

 その間も、男の話が続く。


「魔眼を持ってる奴と知り合いだけど、別にそいつはそんなこと気にしてない。むしろ、自分の力だって誇りに思ってるよ」


「誇り‥‥‥?」


 カンナは、理解できないと言わんばかりに呟く。


「たぶん君がその眼を持ってなかったら、多少なりとも魔眼や無色眼を羨ましいと思うんじゃない?」


 男が、あっけからんと答える。


「俺は魔眼を羨ましいと思ってるし。そう言うの『ないものねだり』って言うんだ」


「ないものねだり‥‥‥?」


 カンナは無意識に反芻すると、男が頷く。


「そう。自分の眼のせいにしたらダメだ」


 まるで、諭すように言われてしまう。

 当然、カンナは猛烈に腹が立った。


「‥‥‥これを見てからでもっ、同じことが言える!?」


「え、いったいなにをーーー」


「【照明】!!!!」


 突如、カンナの両手から凄まじい光が飛び出す。そう、それは先ほどアイトが使った魔法。


「うお!?」


 銀髪仮面の男から呻き声が漏れる。


「っ!!」


 カンナは動きを模倣して、走り出す。そして銀髪仮面の頭を、全力で蹴り上げようとする。


「えっ」


 だがカンナは足を掴まれた。もう一本の足も払われ、勢いよくその場に倒れ込む。


「な、なんで‥‥‥!?」


「いや、自分の魔法だから対処方法はわかってる。なるほど、これが『無色眼』の能力ってわけか」


「そ、そう! どう!?」


 カンナはまるで駄々を捏ねる子供のような口調だった。


「いや、どうって言われても‥‥‥すごいとは思うよ。やっぱり魔眼と同じで羨ましい。でも、模倣そのものが強いとは思わないな」


 だが、男の発言は求めていたものではなかった。カンナは眉を顰めて声を荒げる。


「ば、バカにしてる!?」


「だって俺の技を俺にぶつけて、対処されてるし。模倣したせいで不利になったら意味ないし」


 男が悪びれもせず、思ったことをそのまま言い放つ。カンナの心にグサリと刺さるり


「そもそも模倣なんてできなくても、大抵の魔法は魔導書から先人の魔法を模倣コピーしてるようなものだし」


「そんなのっ、ただの屁理屈でしょ!?」


 カンナは怒りに駆られて全力で突っかかると、男がさも当然のように頷いた。


「そうだよ。ただの屁理屈。でもそう考える人もいるってことだよ。俺とかな」


「っ‥‥‥」


「それに君は俺がその眼のことを知らないこと、興味なさそうなことに腹を立ててただろ?」


「はっ? 何を、言って」


 そう言葉を濁すカンナは、無意識に動揺していた。何かに、気付くような前ぶりを感じとる。


「それが答えなんじゃないかな? 君は、自分の眼が好きなんじゃないか?」


「あ‥‥‥」


 カンナは、小さな声を上げる。

 ようやく気づいたのだ。自分が腹を立てていたのは、自分の眼を評価されないことに対してだったと。


「自分に素直になった方がいい。じゃないと、ずっと後悔すると思う」


 男が淡々と言う。

 カンナはまるで、心を鷲掴みされたような感覚に陥る。また、彼の声色が少し低かった。


「‥‥‥いいのっ? 私、素直になっても、いいの?」


 そして気付けば‥‥‥カンナは泣きそうになっていた。


「俺に聞く必要ないだろ。君自身の人生なんだから。君が誰かの人生を決める権利はないし、誰かが君の人生を決める権利もない」


「っ」


「自分の思った通りに、生きればいいんじゃないか? さっきも言ってたけど、自由にさ」


「‥‥‥っっ!!!」


 カンナは、心の霧がスッと晴れていく感じがした。


(私の眼って、やっぱり凄いんだっ‥‥‥!!)


 カンナは今まで自分に対して自己嫌悪を抱いていた。自分の眼は特別だと自慢したいけど、これまでの人生は眼のせいだと責め続けていた。


(生きるのは、自由なんだっ)


 自由に生きたいと言いつつ、自由に生きても良いのかとずっと悩んでいた。


「‥‥‥ゔぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」


 自分の眼が好きなこと。自由に生きてもいいこと。それに気づいたカンナは、涙が止まらない。ついでに鼻水も。


「豪快な泣きっぷり。相当溜め込んでたようだね」


 そんな男の空気を読まないような発言すら、今のカンナには心地よく感じている。


「‥‥‥わだじ、じゆゔにいぎだいっ‥‥‥ありがどゔッッ!!」


 カンナは涙を鼻水で顔をグチャグチャにしながら、笑顔で立ち上がる。

 そして、気付かせてくれた銀髪仮面の男に向き合う。


「わだじは‥‥‥カンナ!! 君のっ、名前は!?」


「え‥‥‥えっと、レスタ」


 ここで謎の男‥‥‥アイトが自己紹介をした。銀髪仮面という姿なので、レスタの名義を使って。


「ありがどうレスタくん! それからさっきは、襲ってごめんなざいっっ!」


 服の袖で顔を拭いたカンナは、勢いよく頭を下げる。


「‥‥‥え、何が?」


 カンナの謝罪に対し、アイトが真顔でそう答える。だが、カンナは一向に頭を上げようとしない。


「ま、まあさっきのは気にしてないから。それよりもカンナの新たな出発を記念して‥‥‥」


「えっ?」


「僭越ながら、俺からのプレゼントだ!」


 アイトが左手の指で輪っかを作る。そしてその穴に右手の指を通して、何かの準備が完了する。


「【打ち上げ花火】!!」



 アイトの手から放たれた魔法は、上空に打ち上がり‥‥‥綺麗な火花が咲き乱れた。


「うわ〜!! 綺麗〜!!」


 カンナは、初めて見る花火に心の底から感激する。


「すごいっ‥‥‥こんなのあるんだ!」


 以前ターナ戦で使った【打ち上げ花火】は、光が凄まじかった。それを反省して、改良を続けた。


「うん、上手くいった」


 そして今回はアイトの思惑通り‥‥‥立派で綺麗な花火を打ち上げることができたのだった。


「ありがとうレスタくんっ! 本当にすごかったよっ!!」


「いや〜それほどでも〜‥‥‥あ」


 カンナは身を乗り出して興奮を伝えていると、アイトが急に真顔で立ち尽くす。


「? どうしたの?」


「‥‥‥今ので、居場所知られたかもしれない」


 それは、2人とも全く考慮していない問題だった。


「ーーーいたぞっ!!! カンナ様だ!!!」


 そして予想通り、カンナは追跡されていた宗教者に見つかった。


「あ!!! やばっ!!?」


「カンナ逃げるぞ!!」


「え!? わあっ、ちょっ、レスタくん!?」


 アイトに突然抱き抱えられ、カンナは顔を真っ赤にして驚く。


「それっ!!」


 そしてアイトが、風魔法を応用した【飛行】で空へ飛び立った。


「わぁ〜!! すごいよレスタくんっ! 君ってこんなこともできるんだ!」


 カンナはお姫様抱っこされてる状態で、初めての上空に目を輝かせる。夜空を飛ぶ2人は、どこか幻想的な光景。


「まあ、教えてもらったから」


「それじゃあ、これから私に教えてね!」


「‥‥‥ん??」


 首を傾げるアイトに対し、カンナは嬉しそうに歯を見せて笑う。


「決めたの‥‥‥私、君についていく!」


「え」


「君となら、人生楽しくなりそうって思ったんだ! 自分の意思で決めたから、君についていきたいって!」


「は!? で、でも」


 カンナは咄嗟にアイトの唇に人差し指を当てて、ニヤリと微笑む。


「レスタくんが言ったんだよ? 自分の意思で決めろって。だから決めた! これからよろしくねっ?」


「ちょ、ちょっと落ち着こう!?」


「そう言うレスタくんが落ち着いてないよ? 『自分の思った通りに生きていけばいい』って!」


 カンナは顔を寄せて、満面の笑みを見せる。


「あんなこと言っておいて、まさか私の提案断らないよね!」


 カンナは、嬉しそうに話していた。まるで、楽しく人生を謳歌しているかのように。


「‥‥‥これは一本取られたな。俺の負けだ。つまり俺の部下になりたいってこと?」


「ち〜が〜う!!」


 カンナは頬を膨らませた後、ニコッと笑う。


「友達になりたいのっ! 君のために、自分のために行動したいの!」


 アイトが面食らっているのは、間違いなくエリスの影響である。部下になりたいと言われた事が尾を引いているのだ。


「そ、そうか。それならエリスやラルドも歓迎してくれるだろうな」


「え、誰っ? もしかして君の友達っ!?」


「ま、まあ話せば長くなるよ‥‥‥マジで」


「教えてっ、君のことならなんでもっ!」


 カンナは、眩しいくらいの笑顔で質問攻めを行っていった。



 その後。

 アイトは笑顔のカンナを連れて『ルーンアサイド』の本拠地に辿り着く。これが今から1年前の出来事。


「みんなっ、よろしくね!」


 その1年でカンナは訓練を受け、実力を評価され序列3位に選ばれた。訓練生のみんなとの日々はとても楽しくて幸せだった。


「1年半ぶりのレスタくんっ、果たして大きくなってるのかな〜?」


 立場的にはアイトの部下だが、カンナは部下になったつもりなど全くない。アイトのことは、今でも友達だと思ってる。また組織のみんなのことも。


「あ! 髪!!」


 ただ髪の色を元に戻すことをすっかり忘れていて数ヶ月の間、黒い髪のままだった。


「えへへ」


 それは、カンナ自身の数少ない恥ずかしい話の1つだった。


「よろしくねっ、レスタくん!」


 カンナは今、自分の人生に色がついている。


 ◆◇◆◇


 カンナは右手に持った短剣を、うずくまる覆面に突きつける。


「ま、待ってっ‥‥‥殺さないで」


 覆面が命乞いをしてくるが、カンナは真顔で首を傾げる。


「? 悪いけど、殺すよっ?」


 そして、申し訳なさそうに宣言した。今の彼女の眼は、何を考えているか分からない。


「や、やめてくれッ!!」


「君は私のことを殺す気だった。今は知らないけど。お互い様ってことで、私の意思も通させてもらうから」


「ヒッ!!!?」


 覆面の胸に、短剣が少しずつ刺さっていく。


「好き勝手に行動するのは大いに結構なことだけど、自分もされる覚悟ないならしない方がいいよ?」


 カンナはあっけからんと話しつつ、ゆっくりと短剣を押し込んでいく。


「ぎっ!? ぐぁぁっ!!?」


「別に止めろとは言わないし、言えない。個人の自由だしね。でも、それを止めたいと思う私の気持ちも‥‥‥同じく自由だよね?」


 そう呟いたカンナは力強く短剣を押し込み、躊躇なく心臓を貫いた。


「グアッッッ!!!?」


 直後、響く断末魔の声。カンナの両手には返り血が付着する。


「これがその第1歩なの。ごめんね」


 カンナは謝りながら覆面の胸から短剣を抜き、血を払ってヘアゴムに戻す。


「よいしょっと」


 そしてそれを自分の手首に付けた。そして覆面に目を瞑って黙祷する。


「こういう世界なんだよ。分かって」


 やがて黙祷を終えて立ち上がると、階段から誰かが降りてくる音がした。


「あ〜もう! 紫女、もっと走れないの!?」


「ごめん、きつい、ミアたん」


 それは激闘を終えたミアとリゼッタだった。


「あ!! 2人とも無事だったんだっ!」


 カンナは、2人の方へと勢いよく走り出す。


「ちょ!? 離れろ銀髪女!!」


「カンナ、苦、しい」


 そして、2人に飛びついて抱擁するのだった。

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