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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
10章後編 崩壊都市ベルシュテット

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脱出経路

 交易都市ベルシュテット、入場門付近。

 都市と大陸を繋ぐ唯一の陸路、ヴィオラ大橋は既に破壊されて渡ることができない。だがそれでも、一縷の希望に縋って集まった観光客は少なくない。

 そして案の定、脱出手段がないことを悟って絶望し、暴動を起こす者がいた。


「ふざけんじゃねえぞぉぉぉ!!!! こんな所で死んでたまるかってんだ!!」


 それは商品目当てで闘技大会に参加していた出場者、ギラファ。一回戦でレスタもどき(アイト)に負けた男である。


「っんとに今日はツイてねぇ!!! 賞品が手に入らなかったどころの話じゃねぇ! 史上最悪の一日じゃねえかよぉぉ!!!」


 ギラファは叫びながら門近くの壁を殴り、行き場のない憤りを向けていた。


「おい、お前は確かギラファとか言ったな」


「あぁん!?」


 すると、話しかけられたギラファは声を荒げながら首を横に向ける。そこには、同じく出場者の斧使いの男がいた。


「テメェは、たしかA級冒険者の‥‥‥」


「バージだ。早速なんだが、手ェ貸せ。こんな所で死にたくねえのは俺も同じだ」


「はぁ!? 脱出経路はここしかーーー」


 ギラファが言うよりも早く、バージは彼の頭付近に拳を振り抜く。そして、背後の壁を陥没させた。


「それがあるんだよ、船だ。ここは交易都市と呼ばれる海に囲まれた島だぞ? 他国との流通は主に海路を使ってる。だから港が整備されてるんだ」


「‥‥‥つまり、船が多くあるってことか!?」


「その通りだ。ここで死を待つくらいならまず港に向かってもいいんじゃねえか?」


 バージがニカッと笑うと、ギラファは頷いて手を差し出す。


「ああ、あんたの話に乗る。船を奪うのに人手がいるってことだろ」


「そうだ。幸い、この都市内には闘技大会の参加者が大勢いる。しかも、名が知れた実力者もな」


「あんた、自分のこと言ってんじゃねえだろうな」


「へっ、そう思うならそうだろうよ」


 2人は冗談混じりに言葉を交わすと、互いに手を掴んで笑う。


「っしゃ、じゃあ早く行こうぜ兄弟っ!!」


「いや、ちょっと待て」


「なんでだよっ!?」


 意気揚々としていたギラファは疑問を述べると、バージが別の方へ視線を向けた。


「まだ人手が足りねえ。そうだよなお嬢ちゃん」


 そう話しかけるバージを見て、ギラファも視線を合わせる。すると、2人の視線の先には装飾された杖を持つ少女がいた。


「はい! 少しでも成功率を上げたいので!」


「テメェは、確か‥‥‥」


 ギラファが確認するように呟くと、少女は手でとんがり帽子を押さえ、茶髪を振り乱しながら頭を下げる。


「同じく大会に参加したジェシカです! あの、できれば絶対に誘いたい人がいます!」


「ああ、俺もいるぜ」


「お、おい。いったい誰なんだよ」


 ギラファが戸惑いながら尋ねると、2人の声は偶然にも重なった。


「あのカッコいいお兄さんですっ!」


「俺に勝ちやがった左手包帯男だよ」


 ◆◇◆◇


 東地区、闘技大会が行われた舞台近く。


「これはスカーレット選手、防戦一方だぁ!」


 桃色髪の女吸血鬼イフォリンは、高らかと声を出しながら複数の赤い線を操っている。


「よく言ってくれる」


 スカーレットは冷静に回避を続けるが、相手の攻撃手段が多すぎて近寄れない。イフォリンの実況はあながち間違っていなかった。

 主に素手で戦うスカーレットにとって、遠距離攻撃を自在に扱うイフォリンと相性が最悪だった。


「ふっ‥‥‥」


 だが、その事実がスカーレットに笑みをもたらす。無数の赤い線を避けている最中でも、笑っているのだ。苦しい戦いほど、相手が手強いほど嬉しく感じる。それは間違いなく、彼女が戦闘狂の証であった。


「スカーレット選手、謎の笑みを浮かべる! いったい何がーーーなに笑っとんじゃぁぁ!!」


 腹が立ったイフォリンは両手から新たな線を射出し、スカーレットへの攻撃を苛烈にしていく。それはイフォリン自身が扱える赤い線の最大限度。その数、12本。


「厄介だな」


 独り言を漏らすスカーレットはまだ笑ったままだった。だが徐々にスカーレットの回避力よりイフォリンの攻撃力が勝ってきたのか。


「スカーレット選手、大変そうだぁぁ!!」


 スカーレットの服を幾度となく線が掠め始める。イフォリンが最初から赤い線を限度まで出さなかったのには理由がある。


「くっ‥‥‥早く当たれやっ!!!」


 まず、集中力が摩耗すること。それに伴って、相手以外に意識が向けられなくなること。


「ーーーやっと隙を見せたか」


 すると突然、舞台に登った男が走り出す。


「お、これこれ」


 そして、飾られていた優勝賞品である『鏡越しの記憶(ミラーメモリー)』を懐に入れた。


「なっ!? 貴様なにやっとんじゃ!!!」


 イフォリンは声を荒げながらスカーレットへの攻撃の手を緩めず、かろうじて男の方を向く。


「わかったって、ほら返すよっ!」


 黒髪のキザな男は意地悪い顔を浮かべ、包帯の巻かれた左手で何かを投げる。


「ーーーそれはっ!!?」


 都市に入る際に門番が配った、アローラの血で作られた結晶ーーーそれも、()()()()


「うぎゃっ!?」


 イフォリンが唖然としている間に、結晶が視界の前で爆発する。アイトやシャルロットの時と同じように。


「なんで黒の者がここにいる!? それになぜアローラ様の結晶が今まで作動しなかったの!?」


 そしてイフォリンの視界は爆発によって封じられ、意識も削がれた。動揺のあまり独り言を漏らしてしまうほどである。


「ーーーなんだ、もう終わりか!?」


 すると彼女の意志のない攻撃を掻い潜ったスカーレットが、イフォリンの右頬に拳をめり込ませるのだった。

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