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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
10章後編 崩壊都市ベルシュテット

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多大な迷惑

 北地区、地下。

 ここにいるのはアステス王国の諜報員ナナと、店員の吸血鬼リベルア。

 ナナの()()()()()()()()白色の結晶が、突然音を出して割れ散った。

 リベルアは、少し感心した様子で話しかけていた。


「異変を察知して捨てた‥‥‥血を受けないなんて! こうなったら、私の血を直に滑らせますね?」


 そして、心底淫らに微笑んで手から血を垂らす。


「普通なら見逃すか栄養になってもらうのですが、あなたが欲しくなりましたのでっ♡」


「その発言が既に不愉快よ」


 ナナは吐き捨てるように呟くと、ナイフを強く握って構える。


「その強気な性格も私の好みドンピシャ! やっぱり凛々しくて綺麗な方って、唆ります♪」


 リベルアは下品な笑みを浮かべると、両手から血の鞭を作り出す。


「そんな人の悲鳴って、最高にアガりますよねっ!」


 そして、顔に狂気を滾らせて勢いよく両手の鞭を振りかぶる。

 ナナは半身逸らして一本目を回避し、飛び込んで前転することで2本目も回避する。


「なんて身のこなしっ! ますます気に入りました♡」


 両手の鞭を躱されたことでリベルアには隙が生まれたように見える。

 だが、ナナは距離を詰めて反撃はしない。彼女の取った行動は、むしろ逆。


「ーーーあら?」


 彼女は一目散に離れ、階段を駆け上がっていく。


「ちょっと待ってくださいよ〜」


 リベルアも意外そうな様子を見せたが、鞭を振るいながら後を追いかける。彼女の鞭が地下から2階へ続く通路に幾つもの傷を入れていく。

 階段を駆け上がる僅かな間で、ナナは素早く魔結晶に話しかける。


「セシル、聞こえるっ!?」


『‥‥‥こちらセシル。いったいどうかしーーー』


「囚われてた市長を逃がしたわ」


『えっ、市長が見つかったのか!?』


「おそらくまだ北地区にいると思うから任せたわよ、私は手が離せないから」


『わかったけど、手が離せないって何がーーー』


 ナナは一方的に話して連絡を切断した。そして直後に迫り来る血の鞭を、壁を使った宙返りで躱す。

 2人の間には距離がある。ナナは鞭が紙一重で回避し続けながら、追いかけっこは通路を抜けるまで続いた。


(これで動きやすくなった)


 やがてナナは商業施設の2階に到達し、隠し通路の外へ飛び込みながら後ろを振り向く。


「狭い所で2人きりは嫌ですか。もう、私だって傷つきますよっ?」


 そしてナナは、臍を曲げた様子を見せるリベルアと再度対峙した。


「私、粘着質な奴は生理的に無理」


「ああっ‥‥‥嫌がられるほど求めてしまいますっ」


「この変態吸血鬼が」


「はぁっ! もっとぉ‥‥‥♡ さあ、もっとくださいッ!!」


 リベルアは恍惚とした顔に反して、勢いよく血の鞭を振るう。

 ナナは半歩横に動くことで1本目の鞭を躱す。そして次に迫り来る2本目の鞭に対応すべく目を凝らすがーーー。


「っ、このッ」


 ナナの頭上に迫った鞭が破裂し、リベルアの血が飛び散った。ナナは血の雨を目に受けてしまい、無意識に瞼を閉じてしまう。


「ふははっ♪」


 それを見て吹き出したリベルアは、嬉しそうに1本目の鞭を薙ぎ払う。


「っ!?」


 まだ見えていないナナは鞭に足を取られ、仰向けに倒れてしまう。


「失礼しま〜す♡」


 そしてリベルアは唇を舌で舐めながら、右手に作った血のナイフを持って振りかぶりーーー。


「ーーーあらら?」


 リベルアの右腕が宙を舞った。


「こんなにざっくり」


 リベルアは少し驚いた様子で右肩の断面を見つめる。そしてその隙を突くように、目が回復したナナが蹴飛ばす。


「‥‥‥?」


 近くの棚に激突したリベルアは少し驚いた様子で、立ち上がったナナの()()に視線を送っていた。


「誰か知らないけど、助かったわ」


「別にお前を助けたわけじゃないわ。興味ないし」


 ナナの感謝に対して無礼な態度を取ったのはーーー彼女の隣に立つ、全く無関係の第三者。


「ねえ。さっきボロボロのおっさんが話してたんだけど、吸血鬼ってお前? そうだったら話があるんだけど」


 ホワイトブロンド髪のショートカットが特徴の、少し威圧的な少女だった。彼女が持つ剣には血が付いている。

 先ほどの発言を聞いたナナは『変な子が来た‥‥‥』と目を細めていた。


「なんでしょうか、私の腕を斬った綺麗なお嬢さん♪」


 そんなことはいざ知らず、話しかけられたリベルアはまるで接客をしているかのような微笑みを浮かべ、優しく返事をする。

 そして、少女は吐き捨てるように言葉をつぶやいた。


「お前たちの計画なんてどうでもいい。でも私に対する多大な迷惑料として、あの剣もらうわよ」


「‥‥‥あなた、何言ってるの???」


 それを隣で聞いていたナナは、完全に『ヤバい奴』だと少女への認識を改めた。

 対して、そんな2人と対峙するリベルアはーーー。



「‥‥‥最っ高です!!! 私の超タイプ!! 美人、銀髪、強気、自己中、口調っ‥‥‥はあ♡ 私を昂らせてくれる人が、もう1人現れましたっ♪」


 人目を気にせず、完全に昂奮していた。


「は? お前は私に喧嘩売ってるの??」


「はうっ♡ いいっ、イイッ!! イイですよッ!!」


 ‥‥‥少女にゴミを見るような目をされても、涎を漏らしそうな様子で喜んでいるほどである。

 リベルアが恍惚としている隙を見て、ナナは少女に話しかける。


「あなた、何者? 年齢からして、学生かしら」


「‥‥‥システィア。ここへ観光に来た剣士。次はこっちの番。お前はいったい誰なの?」


「私は‥‥‥探偵」


 ナナは嘘だとバレないよう、口調を意識して応える。するとシスティアは目を細めて舌を出した。


「げっ、あいつが言ってたやつか。それが本当か、私にはどうでもいい。ただ邪魔するなら、お前も斬るわよ」


「あなたの邪魔なんてしない。私とあの吸血鬼の相性は最悪なの。それに私、やるべきことが残ってるから。あの吸血鬼は遠慮なく倒してもらっていいわ」


 ナナは足早に2人から離れようとすると、システィアが足止めするように剣を向ける。ナナの黒髪が剣の風圧で小さく靡く。


「私、お前を逃がすとは言ってないけど? お前が何者か分からない以上、勝手に行かせると思う? そこで見てろ」


(なにこの超自己中な子‥‥‥厄介極まりないわね)


 剣を向けられたナナは内心でため息をつきながらも、ゆっくりと剣に触れて押し返した。


「わかった。あなたが危なくなったら加勢する。あなたが負けた時、あの吸血鬼が野放しになるのは避けたいから。それでいいかしら?」


「別に加勢はしなくていいけど。逃げんじゃないわよ」


 システィアがそう忠告した後、今も夢心地となっているリベルアの方を向く。彼女の右腕は床に落ちたままで、断面からは血が漏れている。

 するとナナはシスティアだけに聞こえるよう、小さく呟いた。


「吸血鬼を倒すには頭を完全に潰すか、修復が不可能なほどのダメージを蓄積させるか。剣士システィアさん、健闘を祈るわ」


「賞賛の準備でもしてろッ!!」


 助言を受けたことで気が立ったのか、システィアは大声で言い返しながら突進する。狙いはもちろん、今も上の空である吸血鬼リベルア。


「いつまで妄想してんのクソ吸血鬼!!」


 システィアが素早い縦斬りを繰り出すと、リベルアは我に帰ったのか反射的に躱した。


「あの〜挑んでくるのはあなただけですか?」


「遺言にしてはパッとしないわねッ!!!」


 システィアの連撃は直撃こそしないが、リベルアの身体に薄い切り傷を幾度も作っていく。

 そしてシスティアはリベルアの懐に潜り、大きく踏み込んで横薙ぎを放つ。


「遺言って言うか〜、そうじゃなくてーーー」


 集中して剣を振るうシスティアには、呟くリベルアに意識がついてない。


「はあっ!!!」


 すぐに剣の横薙ぎがリベルアの右脇腹に迫り、やがて狙い通りに触れる。


「2人がかりでも、全然構いませんよ♪」


 システィアの剣が、音を立てて砕け散った。


「なーーー」


 目を見開くシスティアの前で、リベルアが淫らに笑う。


「その表情、すっごくイイ♡」

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