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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
10章前編 交易都市ベルシュテット

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回想 アーシャの修行

 時は遡り約半年前、学園の夏休み中盤。


「はあっ、はぁっ、ごほっ、はぁ‥‥‥」


 うつ伏せに倒れ込んだアイトは、必死に乱れた呼吸を整えようとする。


「ーーーほら考えろ!! 考え続けろ!!!」


 だが師匠である銀髪美人アーシャが容赦無く腹を蹴り上げ、浮かび上がった所をすかさず殴り付ける。


「グボェッ」


 もはや声にもならない呻き声を上げ、アイトは後方へ吹き飛ばされた。するとアーシャがいきなり話しかけた。


「まずは魔力解放と魔燎創造の特徴を説明してみろ!!」


「はぁっ、はあっ‥‥‥魔力解放はっ、体内の魔力を膨張させることで起こる、自己強化」


 アイトが苦しそうに答えると、アーシャは僅かに頷いて口を開いた。


「では魔燎創造は!?」


「魔燎創造はっ‥‥‥魔力を瞬間的に燃やして生み出す魔燎を大量に費やすことで、周囲に影響を与えることっ」


「説明不足だ!!!」


 アーシャは勢いよく掴んで持ち上げると、アイトを勢いよく地面に投げ飛ばした。


「ぐはッ」


「周囲に影響を与える‥‥‥つまり独自の空間を作り出すことができる代わりに魔核に負荷を掛けるため、本人が弱体化するという大事な部分が抜けている!!」


「はあっ、はあっ、そう、だった‥‥‥」


 アイトは仰向けに倒れたまま苦しそうに声を出した。


「でも、俺は両方とも習得できてないのに‥‥‥わざわざ口で説明できるようになるほど理解する必要、ある?」


 この時のアイトは、まだ習得していない。この数ヶ月後の魔闘祭での騒動で身に付けることになる。


「愚か者が!!」


 本心を呟いたアイトに対し、アーシャは勢いよく足を振り下ろしーーー顔の僅か横の地面を砕いた。


「魔力解放と魔燎創造の知識。お前はまだ習得出来ていないが必ず役に立つ。後に戦う相手が使ってくる可能性も充分にあるからな!!」


 アーシャは完全に怒っていた。アイトは僅かに逸れて地面を抉った彼女の右足を見て、冷や汗が止まらない。


「じゃ、じゃあなんでその話を体術修行の時にするんですか?」


 思わず敬語で話しかけるほどアイトは慎重になっていた。するとアーシャは特に気にした様子も無くアイトを掴んで立ち上がらせる。


「意味はある。というか意味が無いことに時間を費やすわけが無いだろ、馬鹿」


(ほんっとこの人は小言挟むッ!!)


 アイトは内心で愚痴を零していた。アーシャはそんなことは気にも留めずに、ため息を吐きながら話し始める。


「お前の持ち味はまず膨大な魔力総量と緻密な魔力制御」


「え。なに急に」


 突然褒められてアイトが戸惑う間も、アーシャの言葉は続く。


「次に実戦的な剣術に体術」


「あ、うん」


「そして最後に機転の良さだ」


「そ、そんな急に褒められても‥‥‥」


 少し気恥ずかしそうに目を逸らすアイトの胸ぐらを、アーシャは掴み直して話を続ける。


「だが考えること、戦うことの両立は簡単なことじゃない。長考に偏れば意識が散漫し、無策で戦えば勝機を逃す。そしてそれは、窮地であるほど致命的になる」


「あっ‥‥‥」


 アイトが何か気づいた様子で声を漏らすと、アーシャは僅かに口角を上げた。


「やっと気付いたか。前者の持ち味は確かに強力だが、それらを有効に成り立たせるのはお前の思考力にかかってるんだよ」


 そして彼女は諭すように言葉を続ける。


「いつ魔法を発動するか。どう動いて、どう反撃に繋げるか。それを疲労が溜まり、身体が苦しくなった時に考え続けることが出来るか?」


「それは‥‥‥わからない」


 アイトは僅かに声を漏らすと、アーシャは意気揚々と掴み直して目を合わせた。


「どんな時でも考える事をやめず、実行に移す。お前が強者と渡り合うには、必要不可欠なんだよ」


「‥‥‥師匠」


 アイトが感心したように口を開いた瞬間ーーー額にデコピンを受けて身体が宙を舞った。そして仰向けに倒れると、アーシャが睨み付けて見下ろしている。


「師匠って呼ぶな!!」


「なんでだよ!?」


 彼女の言葉にアイトは反射的に言い返す。するとアーシャは指を鳴らしながら微笑んだ。


「ちゃんと考えて発言してるのか?? 今からもっと苦しい状態でも、思考を鈍らせるなよ」


「え、まさかーーーおわぁぁぁぁぁ!!!?」


 その後アイトは‥‥‥あまりにも過激な体術組み手を行いながら、並行して質問に答えるという心身共に追い込みをかける訓練を受けるのだった。

 そして彼女から教わった集大成が‥‥‥これからの死闘に活かされていく。

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