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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
1章 王立学園入学

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今すぐ行くね、お兄ちゃん♡

 遺跡内、1階。


「【ムラサキ】」


 ミアがハート覆面に紫色の球を飛ばし続ける。


「っぶ!?」


 ハート覆面はミアの呪いをかろうじて避け続けていた。


「はあっ、はあっ。魔力が少しも感じられない。まさか‥‥‥呪力?」


「だったら何?」


「こんなところで呪術師に会うとはね」


「うるさい。早く死んで? 【ムラサキ】」


 ミアは淡々と呟き紫色の球を再度放出する。


「私の勝ちだ」


 すると覆面が笑いながら、魔法を発動。だが両手から白い光が出ただけで、何も起こらなかった。


「最後の悪あがき?」


 ミアは嘲笑を浮かべながら、覆面めがけて呪力を飛ばす。弾丸のように飛ぶ紫の呪力球が、覆面に迫る。


 「!?」


 ミアの攻撃は当たらなかった。覆面がその場から()()()()()()()()()()()()


「呪力は本来、人間にには存在しない。だから人間は呪力に耐性がない。呪術が魔法に有効な理由」


「なに得意げに語ってんの? 気持ち悪い」


「ところが、お前はなぜか魔力0のようね。つまり‥‥‥お前は魔力に耐性がない」


「それがなんだっていうの??」


 ミアは苛立ちを隠さずに吐き捨てると、覆面が不気味に笑う。顔は見えないが。


「お前は魔法に有利でありながら、同時に不利でもある。それに、呪術よりも魔法の方が色々な工夫ができるわ」


「は??」


 ミアはもう一度呪力を飛ばすも、覆面には全く当たらない。


「この程度の()()()()でも、お前には通用する」


 覆面が、そのカラクリを自供する。ミアは眉を顰めて呪力を飛ばしまくる。


「黙れっ!!」


 だがその後も、ミアの攻撃は全く当たらなかった。


「私がどこにいるのか分からないようね。それに、もう()()()()だよ」


「は??? なに、が‥‥‥」


 ミアの口が不自然に止まり、空いた口から涎が垂れ落ちる。


「‥‥‥‥‥‥」


 全身に纏っていた呪力が解けて、彼女はその場で棒立ちになった。まるで、催眠術をかけられたように。

 ミアの両眼は、焦点が合っていなかった。


「お前の意識に影響するほど、幻覚魔法が作用してしまったようね。せっかくだし、お前が最も愛する者の手で死ぬといいわ」


 覆面が嘲笑を浮かべて、魔法の出力を上げる。


「!? お、お兄ちゃん!!」


 するとミアは突然、覆面に向いてそう言った。

 今のミアは‥‥‥ハートの覆面をアイトだと錯覚している。


「そこに、いてくれよ?」


「? どうしたの?」


 覆面がゆっくりと、ミアへ近付いていく。ミアは夢中で話しかけるが、返答しない。


 そして、覆面がミアの目前にまで迫る。


「‥‥‥っ!!」


 覆面が慣れた所作で腰のホルダーからナイフを取り出し、ミアの心臓を狙う。


「ーーー【シロ】」


「は!!?」


 だが次の瞬間‥‥‥背後から突然溢れた白い瘴気に、覆面が全身を拘束される。

 ミアの呪力【シロ】は、物体を掴んだり拘束したりできるのだ。


「‥‥‥あ、やっぱり幻覚魔法だった」


 そう言ったミアは、目の焦点が戻り始める。


「お前!! どうやって背後から!?」


「足元見てみたら? おバカさん」


 覆面が誘導されたように自分の足元を見る。するとそこには。


 「!? か、影!?」


 明らかに意図的に伸ばされているミアの()から白い何かが出ている。それが覆面の身体を拘束しているのだ。


「やっと気づいたの? 気づくのおっそ。頭悪いねぇ〜。ミア、影を自由に使えるんだ〜。影からでも呪術を使えるの。すごいでしょ」  


 ミアの呪力は、自分の影すらも動かしてしまう。


「で、ではなぜ幻覚魔法が効いていない!!?」


「あんたの言う通り、効いてたよ。腹立つけどね。あんたがお兄ちゃんに見えた」


「それならーーー」


「でも、お兄ちゃんの姿をしてる()()


「‥‥‥は???」


 ミアは首を傾げながら、淡々と話し続ける。


「まず匂いと気配が全く違った。話すテンポも0.02秒くらい遅い。声色も少し違った。歩き方も変。あと歩幅も変だった」


 そして、当たり前のように理由を述べた。


「ただ、お兄ちゃんと同じ姿をしてただけ。その程度で、ミアを騙せるわけない」


「な、何言ってんのこの女‥‥‥」


 覆面が絶句した。魔法耐性のない者に、幻覚魔法が効かないわけないのだ。


 なのに、ミアには効いていないように見える。


 実際、覆面が考えていたことは厳密には違う。

 幻覚魔法は、ミアに効かなかったわけではない。ちゃんと効いていたのだ。ただ覆面がアイトに見えるようにした点だけ、少し異なる。


「やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんだから好き。お兄ちゃんの全てが大好き」


 アイトのことになると‥‥‥()()()()()()()()

 効かなかったのではなく元々が正気ではない。つまり、彼女は何も変わらないのだ。


「ば、化け物がっ!!」


 覆面は取り返しのつかない失敗をした。

 アイトではなく他の人に見えるようにしていれば、幻覚魔法は今もミアに作用していたはずだった。いや、今もミアには作用はしているのだが。


「【クロ】」


 ミアは動けない覆面に、黒い呪力を浴びせる。


「な、何をした!?」


「うるさいな。すぐわかるから黙ってて。まあわかると同時に死ぬけどね」


 すると覆面の体に付着した黒い呪力から‥‥‥黒い花が咲き始める。


 【クロ】は接触した物のエネルギーを吸い取り、その栄養を取り込んで花を咲かせる。

 前回ゴブリンたちに使った【クロ】は、地面の栄養を吸って花を咲かせていたのだ。


「薄暗いなぁ」


 だが今回は建物の中。大理石の床は地面と違って栄養が無いため、前回のようには使えない。


「吸われる感覚はどぉ?」


 そのため、今回は覆面本人の栄養を媒介に‥‥‥黒い花を咲かせている。


「ひっ」


 覆面の栄養を吸った黒い花が、どんどん大きくなっていきカタカタと動き始める。その光景に、覆面の恐怖心が増していく。


「そろそろだね。それじゃあ、バイバイ〜♪」


「ま、待って!! 助けてッ!!!」


 絶叫する覆面に対し、ミアは目を細めて吐き捨てた。


「アンタの敗因は、女心を理解してないこと。後悔と反省はあの世でしてね? この変態害虫さん?」


「そっ、そんなの女心じゃないっ!!」


「はいはい。最期くらい綺麗に終わろうね♪」


「いやっ、いやァァァァ!!? 誰かァァ!!」


 覆面が、恐怖で喚き叫ぶ。

 それを華麗に無視しながら、ミアは満面の笑みでこう言うのだった。


「【百花繚乱】♪」


 ◆◇◆◇



 ミアは元々、孤児院出身の子供だった。両親が早くに亡くなり、孤児院に送られたのだ。


 今から3年前。ミアが11歳の頃。ミアは多額のお金を受け、養子に出される事になる。

 養父は謎の組織の一員だった。彼がミアを引き取った理由は、彼女の素質。


 ミアは体内に宿す魔力量が人よりも何倍も多かった。そこに目をつけたのだ。


 その組織は魔法以外の力を模索していた。そこで呪いに目をつけた。

 呪いは恨みや怨念、つまり感情の強さで呪力が無制限に増していく。魔法のような魔力枯渇が、呪力にはなかった。

 ミアの魔力量の多さは、体内に質量エネルギーを宿す上限量が多いということ。だから呪力に耐えうると思ったのだ。


 そこで、彼らはミアに人体改造を施した。


「やめっ、やめてよっ‥‥‥」


 まず魔力を吸い取ることを約2ヶ月行うことで、彼女の体からは魔力が全く出なくなる。


 次に呪力を発している生物の血液を抽出し、ミアに打ち込んだ。本来人間には呪力が存在しないため、呪力の耐性は全くない。


「ギャァァァァァァァァッッ!!!!!!!」


 つまり地獄のような苦しみがミアを襲った。

 長時間苦痛で叫び続け、意識が無くなる。それが1ヶ月ほど続いた。


「ぁ‥‥‥‥‥‥」


 呪力による苦痛と極度のストレスで、黒髪だったミアは一部が白髪になってしまった。

 結果、ミアの体は呪力を宿すようになっていた。人体改造は、結果だけを見れば成功。


「‥‥‥死ねっ。みんな死ねッ!!!!」


 しかし呪力を宿したミアは彼らをを襲った。予想よりもはるかにミアの呪力は底なしだった。


 数分暴れ回った後にミアは意識を無くした。

 彼らはもう手に負えないと察知し、ミアを失敗作だと認定。

 近くの迷宮ダンジョンの奥深くにミアを拘束した。殺さなかったのは、殺した場合の呪力暴走が恐ろしいため。


「‥‥‥‥‥‥」


 ミアは呪力封印の手錠をかけられ、両足に足枷をかけられ放置された。手錠のせいで呪力が使えないミアは、そのまま死ぬはずだった。


「‥‥‥‥‥‥」


 ところが、ミアは呪術の素質もあった。

 少しずつ自分の影を伸ばせるようになった。その影が、迷宮ダンジョン内にいる魔物たちを取り込む。


「‥‥‥‥‥‥」


 その栄養を糧にして、ミアは生き長らえていた。魔物の栄養は膨大で、ミアの体は年齢に反して、大きく成長していった。


 そんな過酷な日々が、1年半ほど続いた。


 そして、今から1年3ヶ月前。


「うおっ!? なんだこれ!?」


 アイトは宝石集めで偶然、ミアがいる迷宮ダンジョンに潜り込んでいた。もちろん変装した状態で。


「ここのギミックか!? 初めて見るぞこんなのっ!!」


 アイトは迷宮内に湧き出る黒い物体が何か理解できずにいた。


「ここが最後のフロアか。失礼しま〜す」


 そしてアイトは、最悪の階層に辿り着いた時。


「ヴゥゥゥ〜!!!! あぁぁぁぁ!!!!」


 ミアが敵だと察知し、近くに影を呼び戻して呪力を飛ばしまくる。


「うわさっきの黒いやつ!! ていうか奥に女の子いるじゃん! なんでこんな所に捕まってんの!? この絵面は道徳的によろしくない!!!」


 アイトは必死に呪力を避け続け、ミアの元へたどり着く。


「【鍵】」


 アイトは【打ち上げ花火】や【線香花火】など、実用性がなさそうな魔法を多く作ってきた。その経験により、魔力操作が桁違いに上手くなっていた。


「いけるはず」


 だからミアの手錠と足枷に合う鍵すら、魔法で作ることができた。本人はこの凄さに全く気づいていない。


「よし、開いた!!」


 アイトは‥‥‥ミアの手錠と足枷を外す。呪われた彼女を、解放するように。


「‥‥‥ぇ」


 ミアは驚いて、何も声が出ない。自由に動く手足に、これは夢かと錯覚するほどだった。


「休まないと!! あ、お腹減ってる!? すぐに外出ようか、歩けそう?」


「‥‥‥」


 ミアは他者のことを信用できずにいた。人体実験をやられては、無理も無い。

 ミアは声を出さず、首を横に振る。


「わかった。それじゃあ失礼!」


「ぇ」


 唖然としたミアは抱き抱えられ、迷宮ダンジョンの外へと連れ出されるのだった。





 迷宮の外。

 ミアは約1年半ぶりに、日の光を浴びた。日光があまりにも眩しく、両目を呪力で覆って少しずつ慣らしていく。


「‥‥‥ぁ、ぁの」


「とりあえず宿屋に行こう!」


 ミアは連れられるまま宿屋に直行。まだ歩けなかったミアは風呂に入れられ、アイトが昔着てた服を着させられ、更に食事まで与えられる。


「ぁ、ありがと」


 ミアは怯えながら感謝を告げ、久しぶりのまともな食事に感激していた。


「あの迷宮ダンジョンでいっぱい収穫あったから、気にしなくていいよ」


「は‥‥‥」


「宝石宝石〜♪」


 意気揚々と宝石を眺めるアイトに対し、ミアは視線が外せない。


「あ、もしかして顔を合わせて話すの恥ずかしい?」


「‥‥‥うん。この髪、見られたくない」


 ミアは顔を下げて、恥ずかしそうに両手を添える。白と黒がまばらになっている自分の髪の毛へ。


「え? 俺は綺麗でオシャレだと思うけど」


「ぇ」


 ミアは耳を疑った。耳の機能が壊れているんじゃないかと。


「センス良いじゃん! この世界だと全然あり!」


「え‥‥‥?」


 だが、けっして聞き間違いではなかった。

 そんなこと言われると思ってなかったミアは、目を見開いて驚く。


「だけどミアが気にするなら、これあげる」


 アイトが【異空間】から黒いフードを取り出して、ミアに渡した。


「い、いいの‥‥‥?」


「変装用に買ったけど全然使わなかったし、ミアが気になるなら付けて!」


 ミアは黒いフードを身につけて被ってみる。すっぽりと頭が入り、程よい暗闇が少し落ち着く。


「それならあまり見えないだろ?」


「‥‥‥うん、ありがとう」


 ミアは嬉しかった。人に優しくしてもらえたことなんて、今までなかった。優しく気にかけてくれるが、追及はしてこない。

 そんな素朴な優しさが、ミアにとっては心地良かった。


(こんな人‥‥‥初めて)


 鎖を解いて外に連れ出してくれた。自分が気にしていた髪を、綺麗だと褒めてくれた。

 話していてとても楽しく、安心する。ミアはどんどん、彼に惹かれていく。


「な、名前。なんて言うの‥‥‥?」


「俺?‥‥‥レスタ、君は?」


 今と変装していたアイトが、いつもの名前を話す。


「‥‥‥()()


 彼女は、小さい声でそう言った。


()()か! よろしく、ミア!」


「え‥‥‥」


 一瞬訂正しようと思った。

 だが今まで人体実験をしていた彼らに呼ばれ続け、自分の名前が嫌いになっていた。


(ここから、やり直せるかも‥‥‥ミアとして)


 だから聞き間違えたアイトに、新しい名前をくれたようで嬉しかった。


「‥‥‥うん! よろしくね、お兄ちゃん!」


 ミアは、花が咲き誇ったような笑顔で話す。


「お、お兄ちゃん??」


 アイトの事を、完全に信頼していた。

 頼りになって自分より年上で優しく、カッコいい。まさに理想の兄だと感じたのだ。


「だ、だめ‥‥‥?」


「いや、まあ大丈夫‥‥‥呼ばれ慣れてるし」


 アイトが言ったのは、妹のアリサの事である。当然ミアはそんなこと知らず、笑顔で抱き付く。


「それならいいよね! お兄ちゃん♡」


「‥‥‥早く慣れないとな」


 これが、ミアの初恋となった。




 それからアイトは歩けないミアを抱えて、『ルーンアサイド』の本拠地へ辿り着く。


「それじゃあ、俺はこれで。またな、ミア」


「うんっ! 本当にありがとうお兄ちゃん!」


 アイトを笑顔で見送ったミアは、黒いフードを深く被る。そして、座り込んだままラルドと対面した。


「お兄ちゃんの役に立ちたい。近くに居られるなら、なんだってやる」


「‥‥‥わかった。だが、過酷な道だぞ」


「障害があるから恋は燃えるの」


「は?」


 そして、ミアの新たな生活が始まった。

 まずは‥‥‥歩けるようになる事。最初が最も過酷な日々となる。


「ふんっ‥‥‥ぬぅぅッ!!」


 アイトと並んで歩きたいという理由でリハビリを続けた結果。ミアは短期間で歩けるようになった。

 訓練生として、またも大変な日々が続く。


「お兄ちゃん‥‥‥ミア、がんばるからね」


 訓練が苦しくて辛い時は、アイトがくれた黒いフードを抱き締めた。


「やった‥‥‥やったよお兄ちゃんっ‥‥‥!!」


 そして、彼女は序列6位にまで上り詰めた。

 ミアの呪いは、組織エルジュで唯一無二の存在。


「お兄ちゃんに会えてよかったッ‥‥‥ミア、今が1番幸せ」


 壮絶な過去だったが、今は幸せいっぱいで生活している。


 ◆◇◆◇


「こいつのせいでお兄ちゃんと離れちゃったしっ‥‥‥ああぁぁぁ腹立つッ!!!」


 ミアは黒い花たちに串刺しにされ、死んでいる覆面を見ながら不満を漏らす。


「でもミアがんばったから、褒めてくれるかも!! 今すぐ行くからね、お兄ちゃん♡」


 情緒が安定しないミアは、恍惚としながら階段で地下を目指すのだった。


「お兄ちゃんっ、お兄ちゃん♪」


 そして誰がなんと言おうと‥‥‥彼女は今、幸せの絶頂期にいる。

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