表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/347

王女のための異世界式即日配達

 地下3階。


 「この先の牢屋です!」


 「よし!!」


 アイトとエリスが目的地に到着しようとしていた。


 「!! レスタ様!!」


 エリスはそう言ってアイトに飛んできた魔法を障壁魔法でブロックした。


 現れたのは素顔を晒した中年の男。


 「貴様ら、我々の邪魔をするな!!!!」


 「こっちのセリフだ下衆ども」


 エリスが一瞬で男の背後に回り込んで剣を突き立てる。


 「ガッ‥‥‥!!! な、なんだ今の速さっっ‥‥‥」


 「こっちのセリフと言った。邪魔をするな」


 エリスは男の腹に刺さった剣を振り払っう。男を吹き飛ばされて全く動かなくなった。


 相手はカンナやミアが戦った覆面たちと互角以上の強さを持っていたはずだった。


 だがエリスとの力の差がありすぎたため、一瞬で勝負がついてしまった。


 アイトはその光景を見て驚く。


 「レスタ様! 早く行きましょう!」


 「あ、ああ」


 (間違いなく俺よりエリスの方が強い!?ど、どうしよ‥‥‥俺勝てるのか!?)


 謎の焦りに囚われながら走るアイトだった。




 「ここです」


 アイトとエリスは牢獄に到着した。


 「【異空間】」


 アイトが異空間を発動させると空間が裂けて別次元が見える。


 「きゃああ!!」


 そしてそこから手錠をつけられているユリア王女が飛び出てきた。


 ユリアをお姫様だっこの形で受け止めるアイト。


 「え? あなたは‥‥‥」


 「【鍵】」


 アイトは魔法で鍵を作り出すとユリアの手錠の鍵穴に差し込み、鍵を外す。手錠が床に落ちて音を立てた。


 「あ、ありがとうーーー」


 「【スプーリ】」


 ユリアの感謝の言葉に耳を傾けず、アイトは睡眠魔法【スプーリ】で彼女を眠らせた。


 「ふう、これで後はここから出るだけだ」


 「さすがですレスタ様。それでは行きましょう」


 ユリアを抱えたアイトとエリスが牢屋から出る。


 「あ! いたよ2人とも!」


 「お兄ちゃ〜〜ん!!!」


 「レーくん、エリス、はっけん」


 カンナたちがアイトとエリスに合流した。


 「みんな無事か。王女は救出できた。みんな、本当にお疲れさま」


 アイトが労いの言葉をかけるとエリスたちが嬉しそうに微笑む。


 「さあ、とりあえず王女を城へ届ける必要があるんだけど。なるべく早く、安全に」


 まるで現代の配達員のようなことを話すアイト。


 「レスタ様、どうします?」


 「ん〜‥‥‥まず王女を抱えて王都の中を歩くわけにはいかない。目立ちすぎだ」


 「そうですね‥‥‥」


 「でも急がないと城は騒動真っ最中だろうし‥‥‥」


 「では、この方法はどうでしょうか?」


 そう言って、エリスは自分の案を皆に話す。


 「‥‥‥時間も無いしそれでいこう。じゃあ3人とも、ここを探索した後に戻ってくれ」


 「OK〜!それじゃあ探索しよっか2人とも!」


 「命令すんな銀髪女」


 「ミア、げきおこ、こわい」


 「エリス、行くぞ」


 「はい!」


 アイトとエリスは遺跡から出ていくのだった。


 こうして、王女のための異世界式配達が始まる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 グロッサ王国の王城。


 城の中はユリア王女が行方不明であることで大混乱に陥っていた。


 『ルーライト』の隊員たちに調査させるが未だ見つからず。国王が不安そうな顔でどんな手を打つべきか考えていると。


 「報告します! ルーク様が帰られました!」


 「なに! 本当か!!」


 「本当ですよ、父上」


 そう言って入ってきたのはグロッサ王国の王子ルーク・グロッサ。


 「ただいま戻って参りました。父上」


 「よく戻った。帰ってきたところ悪いが事情は知っているな?」


 「はい、ユリアが行方不明だと。いてもたってもいられず任務を終わらせて戻ってきました」


 「うむ、さすがだ」


 「そのことですが実はもう調べは済んでいます。場所を特定したので今すぐ向かいます」


 「そうか、では頼んだぞルーク!」


 「はい。では失礼します」


 ルークは国王にお辞儀をした後に出て行った。


 魔結晶で隊員たちに今どこにいるかを確認して、近い者だけに集合をかけて揃うのを待つ。


 グロッサ王国最強部隊『ルーライト』の隊員たちは王子が帰還するまで各自ユリアの調査を進めていた。


 そのため現在ではグロッサ王国から離れた場所にいる隊員もいる。


 数分後。近くにいた隊員たちがルークの前に集まった。その数、5人。


 「場所はここから南、メルチ遺跡だ。行くぞ」


      「「「「「はっ!!!」」」」」


 ルークたち5人は遺跡へと移動を始める。


 その中にはアイトの姉、マリア・ディスローグもいた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「やばい。このままだと代表たちが王子たちと鉢合わせるっ、なんとかしないと!!」


 城に潜入していたメリナは焦っていた。グロッサ王国最強と言われるルークと戦闘になれば苦戦は免れないし、最悪捕まるという可能性すらある。


 「こりゃあ早く行かないと!!」


 メリナは急いでルークたちの後を追うのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 『こちらメリナ! みんな、聞こえる!?』


 「どうしたのメリナ?」


 メリナの魔結晶からの呼びかけに答えたのはカンナだった。


 『ユリア王女がそこに捕えられていたことがバレた!あと少ししたらルーク王子がそっちに着くから早くその場を離れて!』


 「それは大変だねっ‥‥‥了解っ、連絡ありがと〜。ミアとリゼッタも一緒にいるから安心してっ!」


 「え? 代表とエリスは?」


 「あ、それが今2人は‥‥‥」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 グロッサ城。


 城の中はルーク王子がユリア王女の救出に向かったことで少しずつ落ち着きを取り戻していた。


 だがそれも長くは続かなかった。


           バリンッ!!!


 城の窓ガラスが突然割れて誰かが侵入してきたからだ。それも2階の窓から。


 黒いフードで顔を隠している少女が窓ガラスを破りながら入り、その後にユリア王女を抱えた銀髪仮面の男が中に入った。


 「レスタ様、国王はこの先だと思われます」


 「ああ、急ぐぞ!!」


 まず最短距離を滑空し、障害物である窓を割る。こうして異世界式配達、現地へ到達。




 「失礼する!!」


 そう言ってエリスが扉を開ける。広間には多くの兵士と宰相‥‥‥そして国王がいた。


 「な、何者だ!? 敵襲ーーー!!!」


 兵士がそう叫ぶと周囲を囲い始める。


 「落ち着け。この少女が目に入らないのか」


 アイトは演技がかった声で発言する。


 「っ、ユリア!!」


 「!? ゆ、ユリア様!?」


 国王が叫んだ後に兵士たちも驚く。


 「そうだ。謎の遺跡の中で捕えられていたこの女を連れてきた。こっちが襲われる道理はない」


 アイトは真下の床にユリアを下ろす。王女を床に下ろすのは失礼な事だが、今回はやむを得なかった。


 「それでは失礼する。これからはもっと警備を厚くするんだな」


 「貴様が犯人だろ!!!」


 そう言った1人の兵士がアイトに剣を向けて走り出す。


 「レスタ様のご厚意に背くとは。恥を知れ」


 そう言ったエリスが兵士の腕を掴んで自分の方に引き込んで投げ飛ばす。


 そして投げ飛ばされて宙に浮いた兵士に回し蹴りをしてさらに吹き飛ばすのだった。それを一瞬の内にやってのける。


 国王や周囲の兵士はその光景を恐れを抱いた。アイトも恐怖していた。


 「忠告する。レスタ様と私の邪魔をするならこの程度では済まない。城を吹き飛ばされる覚悟をしろ」


 (いやそんな物騒なこと言うのやめよ!?)


 エリスの恐喝を聞いてビビりまくるアイト。そしてアイトよりも恐怖する城の人たち。


 「それではレスタ様、行きましょう」


 「‥‥‥ああ。戻るぞ」


 アイトは素を出してはいけないと必死に演技じみた声を出す。


 そしてアイトとエリスは破った城の窓から、空へ飛び出すのだった。


 簡潔に説明し、王女を届けたら速やかに退出していく。


 これにて王女のための異世界式即日配達、完了。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ