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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
10章前編 交易都市ベルシュテット

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伝説の魔法使い

 交易都市内、東地区。


「いよいよ残り8名となりました! それでは、準々決勝を始めま〜す!!」


 闘技大会は順調に進む。司会者は笑顔で、出場者の名前を呼ぶ。


「それでは準々決勝第一試合! 『ジェシカ』選手VS『ナマエ』選手!両者、準備はいいですか〜!?」


 司会者の問いかけに、とんがり帽子を被った茶髪の少女ことジェシカは「はいっ」と答え、黒髪青年は「どぞ〜」と適当に返事をする。


「それでは、始めっ!!」


 開始の宣言が告げられると、少女は杖を両手で握りしめて青年へ向ける。


「覚悟してください、お、お兄さんっ!」


「え? あ、うん」


 顔を赤らめるジェシカと呆気に取られる青年。2人の態度は対照的である。

 そんな青年に向かって飛び交う、ジェシカが発動した魔力の光線。


「おー、さすが生粋の魔法使い。無属性の攻撃魔法を使ってくるとはねー」


 青年は迫り来る魔力の光線を半身逸らして躱すと、ジェシカの魔力が幾つにも分裂した。ジェシカは杖を小さく振り、唱える。


「【分離する魔法(セパレート・マジック)】!」


「わ、丁寧なことを」


 分裂した魔力光線の粒は、まるで弾丸の雨。

 青年は少し驚いた声を出し、魔力の粒をまともに受けた。幾つもの衝撃を受け、青年の身体が不気味に動く。


「やった!」


 ジェシカは嬉しそうな声を上げてピョンと跳ねる。高度な魔法を扱う彼女を見て、観客たちは歓声を送る。

 だが青年は特に痛がる素振りも無く、ただ眠そうな表情を浮かべる。


「そ、そんなっ‥‥‥!」


 「緻密な魔力操作、さすが一流の魔法使い。俺には一生かけても出来ない芸当だろうなぁ。でも、魔法って複雑に見えて実は簡単なんだぜ?」


 青年が不敵に笑うと、ジェシカは振り絞ったような声を出す。


「‥‥‥じゃあお兄さんの魔法、見せてください!」


「え、なんでそんな緊張してんの」


「だ、だって‥‥‥って今は関係ないです!」


「ふ〜ん。いやだね。俺は他人に興味ねえんだよ、善意で見せるか。見たかったら、お前が無理やり引っ張り出してみろ」


「‥‥‥は、はい! では行きますお兄さん!!」


「その呼び方やめてくれるか?」


 なぜか微妙な空気感が周囲に広がりつつも、試合は苛烈さを増していく。


 ◆◇◆◇


 そんな熱い試合を、現場にいながら全く見ていない者がいた。


(天使さん、ごめん遅れた)


『遅い。何してたのあーちゃん』


(‥‥‥心の準備、かな)


 それはアイトとシャルロット・リーゼロッテ。2人とも闘技大会の出場者だが、他の試合を見てる時間が無かった。


『もう見つけてるよ。赤い髪の吸血鬼』


(ホントに!? どこっ!!)


 2人の距離は声では決して届かないほど離れているが、シャルロットの魔法により互いに心の内が聴こえるようになっている。


『舞台の近くにある、豪華な椅子に座ってる人。あれ、確かこの都市の市長じゃないかな』


(‥‥‥ホントだ。仕留めるなら、この大会中か)


 アイトは一瞬だけ女に視線を向け、すぐに目を逸らす。長時間見つめると何か勘付かれるかもしれないからだ。


『できるのは君しかいない。私、凄く視線を感じてる。なんか目立ってるから』


(‥‥‥そりゃあ警戒されるよな。だから俺がやる。天使さんはこの都市の人たちを守ってほしい)


『優しいね。他の人なんて無視すればいいのに』


 シャルロットの呟きに一瞬言葉が詰まるが、アイトは苦笑いを浮かべて心の中で呟き返す。


(確かにその方が楽だけど、そう簡単に割り切れるものじゃないです。俺、まだ人間でいたいんで)


『ふーん、そういうものなんだ。あ、そろそろ私の出番だ』


 シャルロットがそう呟いた直後。


「勝者、『ナマエ』選手ーーー!!」


 全く見ていなかった試合が終わり、舞台にいた出場者の2人が降りてくる。


「あ、あのっ! 待ってくださいお兄さん!!」


「勘弁してくれ。俺、歳下に興味ねえんだよ」


「‥‥‥私っ、絶対諦めませんからっ!! 一目惚れなんです! 好きです! 私と付き合ってくださいっ!!!」


「こんな人前で公開告白やめてくれるかっ!?」



 試合を見ていなかったシャルロットは、2人の会話の意味が全く分からない。というより興味も無かった。観客は含み笑いを浮かべているが。


「つ、次の試合に参りましょう! 『シャルロット』選手VS『スカーレット』選手!」


 司会の声が響き渡ると、アイトは心の中で話しかける。


(今からの試合、なるべく目立ってください。観戦している女が気を取られている間に、俺が奇襲して首を斬り落とします)


『それはいいけど、相手が粘ってくれないと不自然に思われちゃうよ? すぐ倒しちゃうかもしれないし』


 シャルロットは心の中で返事しつつ、舞台へと上がっていく。対峙するのは、ホワイトブロンドの長い髪をハーフツインテールにまとめた女性。


「それでは、始めっ!!!」


 司会者の声が響き渡る。だがシャルロットは当然、アイトとの会話に意識が向いていた。


(それは大丈夫だと思いますよ。だってーーー)



 シャルロットは咄嗟に、二の腕で衝撃を受け止める。身体が咄嗟に反応し、相手の拳を防御したのだ。


(相手は、天使さんが興味持ちそうな人ですから)



 そんなアイトの忠告を、シャルロットはほとんど聞いていなかった。


「戦えて光栄です。伝説の魔法使いさん?」


「なるほどね。久々に楽しくなりそう」


 それは目前で拳を振るったーーースカーレットという相手に意識が向いたからだった。

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