表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【40万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
1章 王立学園入学

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/401

これで、ばんざい

 ユリアが捕らわれている、遺跡前。


「えい」


 リゼッタは毒を撒き散らし、大勢の魔物に浴びせていた。魔物は、残り半分。


「ふう、きつきつ」


 毒に対する耐性が高いリゼッタでも限界は存在する。その限界を超えるとリゼッタ自身も危険に晒される。


「りーと、『エルジュ』と、レーくん、のため」




 リゼッタは昔‥‥‥忌み子として、周囲から恐れられていた。


『おぎゃぁぁ!! おぎゃーー!!』


 なぜなら両親は不明で、リゼッタは赤ちゃんの時に‥‥‥毒沼に捨てられていたから。


 でも毒沼に浸かっていても、リゼッタは元気に泣いていた。その光景を見た人たちは、リゼッタを引き上げるのにも苦労したようだった。


『ここ、どこ?』


 その後にリゼッタは、とある孤児院に預けられる事になる。環境は劣悪で、ほとんど読み書きを教えられることなく育った。


 現在も話すことが苦手で、今も勉強中。


『出てく、いく』


 やがてその孤児院から追い出されてしまう。でもリゼッタはその事を恨んでいない。恨むという考えがなかったのだ。


『いくら、でしか』


 リゼッタは毒に突出した素質があったため、子供の時から魔物を討伐し、取れた素材を僅かなお金に換金して食材を食べる。そんな生活をしばらく続けていた。


『おなか、ぐう』


 だが、それは安定しなかった。どんどんリゼッタは痩せて、限界を迎えそうになっていた。


 そして、今から1年前。


「ーーー大丈夫!?」


 アイトは宝石集めの最中で、偶然にもリゼッタと出会う。


「だ、れ?」


 彼女が竜に食われそうになっていたところを、颯爽と助けた形で。


「!? 君、大丈夫!?」


 アイトは急いでリゼッタを抱えて、話しかける。


「だい、じょぶ」


 リゼッタはずっと何も食べておらず痩せ細り、体は傷だらけだった。


「‥‥‥だれ?」


「えっと、俺は‥‥‥レスタ。いやそんなことよりも安全な場所へ」


 アイトは彼女を抱えて、すぐに宿屋を目指すのだった。


「はい、これ」


「お、ふろ」


 リゼッタに宿屋で風呂に入ってもらい、自分が昔着てた服を渡す。


「それと、はい」


 アイトは【異空間】から取り出したパンを、リゼッタに食べさせ、水も飲ませた。


「‥‥‥おい、しい」


「よかった〜! 次は手当てしないと」


 アイトが慣れた手付きで手当てを始める。何度も出かけて魔物と戦う内に、包帯の巻き方なども覚えていたのだ。


 リゼッタは、ふと疑問に思った。


「‥‥‥なん、で」


「なんでって、何が?」


「なん、で助けて、くれるの?」


 それは、自分を助けてくれた理由。優しいおにいさんが、なぜ助けてくれたのか。


「ん〜‥‥‥さすがに人としてほっとけないだろ?」


「ほっとけ、ない?」


「うん。それに俺、食べるもの色々持ってたし。困った時はお互い様、それだけ」


 リゼッタは首を傾げる。誰かを助けて、また誰かに助けてもらうという発想が無かった。

 他者は、自分を忌み嫌っていたから。


「君、名前は?」


「‥‥‥りーは、リゼ、ッタ」


 優しく話しかけてくる彼に対し、リゼッタは素直に応える。


「リゼッタか。お家に送っていくよ。今の君をここに残すのはできないから」


「おう、ち? おうち?」


 リゼッタは、またしても首を傾げる。


「え? 帰る場所」


「‥‥‥ない」


 顔を下げて、苦しそうに呟く。


「ない‥‥‥? それじゃあ今までどうしてたの?」


「魔物、狩って、お金、それで」


 リゼッタは聞かれた事に対して素直に話してしまう。自分を助けてくれて、気にかけてくれるアイトを信頼している。


「え、まだ幼い君が魔物を!? すごいじゃん! 魔法使えるの?」


「‥‥‥どく」


 またしても、リゼッタは苦しそうに応える。アイトの態度が変わらないか、そんな不安に駆られる。

 そして、アイトの態度は一変した。


「毒って、毒魔法!? 絶対強いじゃん! 虫とか退治するのに便利そう。いいなぁ俺も使ってみたい!」


 興味津々とばかりに身を乗り出し、尊敬の眼差しを向けてきたのだ。


「‥‥‥うえ?」


 自分の毒魔法を、生まれて初めて褒められた。今まで恐れられ、忌み嫌われていた自分の魔法を。


「こわく、ないの?」


「怖い? まあ強そうだから、敵からしたら怖いんじゃないかな。でも毒って絶対強いから凄いよっ!」


 自分に関心を持ってもらえることが、こんなにも嬉しいなんて。

 リゼッタ自身、今まで気づいてこなかった。


「‥‥‥うぅ、うれしい」


 感情が溢れたリゼッタは、生まれて初めて涙を流した。


「泣くほど、大変だったんだね‥‥‥君は偉いよ。1人でよくがんばったね」


 アイトが優しく頭を撫で始める。


「‥‥‥いい、もっと」


「もっと?」


 リゼッタは少しも嫌じゃなかった。むしろ、もっと触ってほしいとさえ思った。


「‥‥‥じゃあさ、帰る場所ないなら俺と来る? 保護してもらえると思うよ」


「行くっ、どこ?」


 リゼッタは、もう完全にアイトのことを信頼していた。初めて頼ってもいい相手だと感じていた。何より、もう好きだった。


「それは、来てからのお楽しみ。でも、すっごく広い所だから」


 アイトは痩せ細ったリゼッタを抱え、空を飛んで移動を始めた。






 その後。


「ここ。設備も物資も揃ってるんだ」


「すご、おおきっ」


 アイトはリゼッタを抱えたまま『ルーンアサイド』の本拠地に到着。

 そして彼女を保護してほしいと、ラルドに頼みこんだ。


「ここなら色々学べるし、強くなれる。リゼッタ、君は人生はまだ長い」


 アイトはこう思っていた。リゼッタには自分の意思で、自由に生きてほしいと。


「きょう、かん。強く、なりたい」


「強く?」


「うむ。レーくんと、一緒にいたい」


 リゼッタは当時まだ12歳だったが、自分の意思で訓練生になることを志願する。


 そこで多くの訓練生たちと交流した。個性派集団の集まりであるため、リゼッタの毒魔法を忌み嫌うものなどいなかった。


「いい、人たち。レーくん、ありがと」


 人の温かさを知った。厳しい訓練を乗り越えた。


「ほんとに、ありがとう」


 そして現在、13歳になったリゼッタは立派に成長した。


 ◆◇◆◇


「ふう。これで、ばんざい」


 そして、リゼッタは大量の魔物を1人で討伐。

 リゼッタが自分の意思で努力を重ねた、毒魔法。

 それは『黄昏トワイライト』、いや組織エルジュ全体でも‥‥‥指折りの破壊力を誇っていた。


「今から、レーくんたちに、追いつく」


 そう言って、遺跡の中に入っていくリゼッタ。小柄な彼女が、精一杯足を動かして走る。


「はぁ、はぁ、レーくん」


 彼女がこれからどう成長していくのかは、まだ誰も知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ