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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
10章前編 交易都市ベルシュテット

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市長からの贈り物

 約2時間後。


「ーーーまもなく交易都市ベルシュテット前、交易都市ベルシュテット前です」


 アイトたち5人は、蒸気機関車で交易都市ベルシュテット前の駅に到着する。すると両手を真上に伸ばしながら、真っ先に降りたシスティアが話し出す。


「案外早く着いたわね。こっち来るの初めてだから知らなかったわ」


 彼女の発言に少し驚いたのは、次に降りたジェイク。


「そうなのか? ソードディアスといえば帝国の名家」


「それが何よ」


「交易都市ベルシュテットは、グロッサ王国領内の最南東にある。そこから東に国境があるアルスガルト帝国は遠くないし、てっきり君は乗り慣れているかと思ったが」


 交易都市ベルシュテットからアルスガルト帝国まで距離はそう遠くない。そのためベルシュテットは栄えているとも言える。

 だからこそ蒸気機関車に乗ったことが無いような発言をするシスティアに、ジェイクは驚いているのだ。


「確かにお母さまは帝国の生まれだけど、私が生まれたのは王都ローデリア内。もちろん育ちもね。だから私、帝国なんて一度も行ったことないわ」


「お、おかあさま‥‥‥?」


 質問した張本人であるジェイクが驚いてるのは、まさかの別のことだった。


「は? 母親って意味。お前知らないの?」


「いや、それは知ってるが‥‥‥なんでもない」


「はあ? 意味わからないんだけど」


(く、口悪いこいつが、お母さまッ‥‥‥)


 そんな2人のやりとりを聞いて笑いを堪えていたのは3番目に降りたアヤメ。その後スカーレットが降り、最後にアイトが降りる。

 するとスカーレットはアイトの方をチラリと見た。


「ほんとに妹の勝手さには呆れたものだ。だがついてくるのを止められなかった私の責任だ。すまない」


「あ、はい別にもう過ぎたことなんで大丈夫です。むしろ先輩も俺と同じ被害者側なんで」


 珍しく素直に謝る彼女に対し、アイトは面食らう。だが最初はアイトの失言から予定が決まったようなもので、アヤメとジェイクを呼んだのはシスティアの仕業。


「気にしないでください」


 つまりスカーレットは何もしていない。だからアイトは別に気にしていなかった。


「2人とも遅いわよー。チンタラするなー」


「‥‥‥(もう剣で一度叩きのめすか???)」


 彼女の妹の方には殺意が湧いていたが。するとスカーレットはニヤリと笑い、不意にアイトの耳に口を近づけーーー。


「でも、君とここに来るのは楽しみだったぞ?」


 不意打ちの耳打ちにアイトは怒りが吹き飛び、今は隣にいるスカーレットに戸惑っている。


「え、あのっ?」


「ーーーなんてな? 少しは元気出ただろ? 早くしないとまたあいつに怒られるぞ」


 揶揄うように笑ったスカーレットは、驚いているアイトを叩いて連行していく。

 その後はアイト、アヤメが先頭。2人の後ろにスカーレット、システィア、ジェイクが並ぶ。それぞれ話をしながら歩く。そして案外、会話が弾んでいた。

 街道を数分歩いた後、ついに交易都市ベルシュテットが視界に入る。先頭のアイトは思わず声を上げていた。


「ーーー広っ!? 街並み超きれいじゃん!!」


「そ、その反応はっ、アイトくん来るの初めて?」


 すると同じく先頭で隣を歩いていたアヤメが遠慮がちに話しかける。アイトはテンションそのまま嬉しそうに返事した。


「初めて初めて!! うわ海もきれいだなぁ〜!」


「う、か、可愛すぎる‥‥‥♡」


 アヤメが両手を胸に置いて惚け始める。どこに視線を向けているかは言うまでもない。


「はあ? 海可愛いって言うやつ初めて見たわ」


「クジョウは感性が独特なのか」


「この子、海を見てない気がするが?」


 後ろの3人の声すら、今のアイトとアヤメには届いていない。


「さあ、見えてきたぞ」


 スカーレットが指を差した先にはーーー海に囲まれた島に位置する、交易都市ベルシュテット。


 アイトたちはその島と大陸を唯一繋ぐ、大きな橋に着く。これまで見てきた物とは規模が違う、大きくて真っ赤な橋。アイトは目を見開いて驚いていた。


「うわっ! なんだこの橋!? デッカ!!」


「あ、この橋は『ヴィオラ大橋』といって下路式のアーチ橋! 交易都市ベルシュテットと他国を繋ぐ象徴と言われていて、観光名所の1つなの!」


 するとアヤメは少し慌てながら橋の説明をした。完全に良い所を見せたいという欲望のみで説明している。そしてアイトは興味あったので真顔のまま聞き逃さない。


「へぇ〜、全然知らなかった。教えてくれてありがとう! クジョウさんって物知りなんだ」


 アイトが率直に感謝を伝えるとアヤメは突然視線を逸らして手をあたふたさせた。


「!! またなんでも聞いてくださるっ!?」


「え? う、うん。またなにかあったら」


 アイトは少し遠慮がちに返事をした。アヤメの言葉遣いに反応が困ったからだ。

 すると後ろでシスティアがため息をついた。隣のジェイクもどこか残念そうな様子である。


「ディスローグくんってホント何も知らないわね。ヴィオラ大橋を知らないなんて世間知らずだわ」


「同感だ。さすがに疎すぎると思うぞ」


「え」


 アイトは素でそんな声を上げる。価値観がまともなジェイクに言われたことに動揺していたのだ。


「自覚無かったの? 呆れるわー」


「これから知っていけばいい」


「そんなアイトくんもいいと思うっ!!」


 1年生たちはアイトの反応を揶揄っていた(主にシスティア)が、スカーレットだけはどこか晴れない表情を浮かべていた。


(本当によくわからない子だな。素直そうなのにどこか掴めない。とりあえず性格はマリアと全く似てないな)


 こんなやりとりの中でも、アイトに対する謎、違和感への興味がスカーレットの中でますます強まっていく。


 そしてヴィオラ大橋を歩いて通ったアイトたちは、ついに交易都市ベルシュテットの入場門にたどり着く。


「ん? 門番が入る者に何か配ってるな」


 ジェイクが視線を向けながら不思議そうに呟く。彼の言う通り、入場する人に対して2人の門番が手渡しで渡している。


「箱の中に、結晶?」


 手渡しする門番たちの足元には大きな箱に詰められた石のような物が入っていた。アイトたちは少し疑問に感じながら門に近づく。


「ようこそ交易都市ベルシュテットへ。これは市長からの贈り物です」


 すると門番に話しかけられ、赤く綺麗な結晶を渡される。それはまるで宝石のようだった。


(うわっ!? これ宝石か!?)


 宝石に目が無いアイトは目を輝かせ、既に門番の話を聞いていない。


「この結晶は都市内を歩く際に必要な入場券代わりともなっていますので、肌身離さず持っていてください」


 門番は気さくに話を続け、手のひらの結晶を見せる。


「ちなみに魔力を通すと色が変わる仕様になってますので、時間があればぜひお試しください」


 門番の説明にアイトを除く4人が頷き、門を通り過ぎていく。

 アイトは結晶に意識を奪われていたが、4人が先に歩くのは悟ったのか無意識についていく。すると門を通り過ぎる最中、ジェイクがアヤメに話しかけた。


「なあクジョウ、君は前にも来たことはあるか?」


「え? あるけど、最後に来たのは数年前ね」


「その時にこんな物貰ったか?」


 そう言ったジェイクが赤い結晶を見せる。アヤメは即座に答えた。


「もらってないわね」


「そうか、僕が来たのは約1年前だ。その時も貰わなかった」


 ジェイクはどこか曇った表情を浮かべる。何か気になっている様子である。


「色々変わったんじゃない? 入場者を分かりやすくするとか」


「そんなことどうでもいいから、お前たちは早く何色になったか教えなさいよ」


 すると2人の会話に割り込んだシスティアが自分の結晶を見せた。そして早く試してみろと言わんばかりに促す。


「私は青、ほらはやく」


「早いな。じゃあ僕も」


 ジェイクが手に持った結晶に魔力を込め始める。すると結晶の色がみるみる変化した。


「‥‥‥黄色だな」


「私も黄色」


 ジェイクとほぼ同時に、アヤメも色が変わった結晶を見せた。それを満足げに眺めていたシスティアは、スカーレットへ話しかける。


「じゃあ姉貴は?」


「興味ないからやってないが」


 するとスカーレットは興味なさそうに白シャツの胸ポケットに結晶を入れようとする。


「やって! 今すぐ!!」


 だがそれをシスティアが腕を掴むことで阻止した。


「は? なぜだ」


「暇潰しよ。別にいいじゃない」


「‥‥‥まあいいが」


 これ以上何か言えば面倒くさい事になると、渋々受け入れたスカーレットは結晶に魔力を込める。


「‥‥‥白だ」


 スカーレットの結晶は白くなっていた。それをシスティアに見せつける。


「姉貴は白か、いったい何色あるのよ。それじゃあ、最後にお前は?」


 そしてシスティアは、まだ聞いていなかった1人に視線を合わせる。そう、アイト・ディスローグに。


「‥‥‥ん? 誰か呼んだ?」


 だがアイトは結晶に夢中でこれまでの話を全く聞いていなかった。その反応にシスティアは睨みながら結晶を指差す。


「魔力込めろ。いい?」


「え?」


「込めろ」


「は、はい」


 アイトの理解してない態度にシスティアは悪態をつきそうになったが、アイトは魔力を込め始めたので我慢した。するとアイトは目を見開いて大声を出す。


「ーーーあっ!? 黒くなっちゃったじゃん!?」


 アイトが手に持っていた綺麗な赤い結晶は、濁った黒に変化していた。


「うわっ、そんな色もあるの。酷い色ねー」


「すごいな。これでは向こう側が全く見えん」


「アイトくん、私は綺麗だと思うっ!!」


「相変わらずだな、後輩くん」


 それを見た4人はそれぞれ違う反応を示す。だがそんなのアイトにはどうでもよかった。


(せっかく綺麗な色だったのに‥‥‥!! それに黒ならこんな中途半端じゃなくてもっと真っ黒とかさあ‥‥‥!!!)


 アイトが内心穏やかじゃない間にも、彼らはついに交易都市ベルシュテットの市街地へ足を踏み入れた。5人の観光は既に楽しいものとなっている。


 ◆◇◆◇


 同時刻。都市内、中央広場。最も賑やかな所を歩いていたのは、女の子2人。


「すごい! 本当に色が変わったよ!! 私のは綺麗な黄色だ〜! そっちはどう!?」


 銀髪のツインテール少女は目を輝かせながら隣の少女をガン見した。


「ボクはやらない。こんなので喜ぶのは子供かお前くらいだぞ」


 だが相手の黒髪ショートカットの少女は明らかに嫌そうな態度を見せる。


「え〜!? せっかくだしやってよ〜!」


「断る」


「お願い〜!!」


 だが涙目で懇願されたため、黒髪少女は仕方なく結晶に魔力を込める。


「はぁ‥‥‥白? 赤から薄い色に変わってる?」


「うわ白も綺麗〜!! こうなると他にどんな色があるか気になっちゃうよね! 今から門番さんに頼んだら何個か貰えないかなぁ」


「恥ずかしいからやめろ!!」


 すると黒髪少女は顔を真っ赤にして相手を嗜めた。銀髪少女は頬を膨らませてジト目で抵抗する。


「むぅ〜、ターナ意地悪だよ〜!!」


「わかった。じゃあな『自由人』カンナ」


「え、待ってターナ! なんでわざわざ強調したの!? てか待ってくださいっ!? ごめんなさいっ! 置いてかないでよぉ〜!!」


 だが抵抗もあっけなく撃沈。涙目で後をついていくことになった。

 エルジュ精鋭部隊(最高幹部)『黄昏トワイライト』No.2、ターナは任務で。

 同じくNo.3、カンナは集まった資金で組織に役立ちそうな物を買うためと、交易都市に訪れていた。


「この結晶、帰ったらみんなに見せよ〜っと!」


 カンナは結晶を握って嬉しそうに微笑む。今回、重要な鍵を握ることになるとも知らずに。

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