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これで、ばんざい

 ユリアが捕らわれている遺跡前。


 「えい」


 リゼッタが毒を撒き散らして大勢の魔物に浴びせていた。その数、残り半分。


 「ふう、きつい」


 毒に対する耐性が高いリゼッタでも限界は存在する。その限界を超えるとリゼッタ自身も危険に晒される。


 「りーと、《エルジュ》と、レーくん、のため」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 リゼッタは忌み子としてみんなから恐れられていた。


 なぜなら両親は不明で、リゼッタは赤ちゃんの時に毒沼に捨てられていたから。


 でも毒沼に浸かっていても心地良さそうにリゼッタは眠っていた。その光景を見た人たちはリゼッタを引き上げるのにも苦労したようだった。


 その後にリゼッタはとある孤児院に預けられる事になる。環境は劣悪でほとんど読み書きを教えられることなくリゼッタは育った。


 現在でも話すことが苦手で、今も勉強中。


 やがてその孤児院から追い出されてしまう。でもリゼッタはその事を恨んでいない。恨むという考えがなかったのだ。


 リゼッタは毒に突出した素質があったため、子供の時から魔物を討伐し、取れた素材を僅かなお金に換金して食材を食べる。その生活をしばらく続けていた。


 でもそれは安定しなかった。どんどんリゼッタは痩せて、限界を迎えそうになっていた。


 そして今から1年前。エリスとアイトが別れてから半年後。


 アイトは宝石集めの最中で、偶然にもリゼッタと出会う。


 リゼッタが竜に食われそうになっていたところをアイトが助けた形で。


 「!? 君、大丈夫!?」


 アイトはリゼッタを抱えながら話しかける。


 リゼッタはずっと何も食べておらず痩せ細り、体は傷だらけだった。


 「‥‥‥だれ?」


 「俺はレスタ。いやそんなことよりも宿屋に行こう!」


 アイトはリゼッタを抱えて近くの宿屋を目指すのだった。


 リゼッタに宿屋で風呂に入ってもらい、自分が昔着てた服を渡す。


 アイトは風呂から戻ってきたリゼッタに【異空間】から取り出したパンを食べさせる。そして水も飲ませた。


 「‥‥‥おい、しい」


 「よかった〜! 次は手当てしないと」


 アイトはリゼッタの手当てを始める。


 リゼッタはそんなアイトを見て疑問に思った。


 「‥‥‥なん、で」


 「なんでって、何が?」


 「なん、で助けて、くれるの?」


 「ん〜、さすがに人としてほっとけないよ。それに俺、食べるもの色々持ってたし。困った時はお互い様、それだけ。君、名前は?」


 「‥‥‥りーは、リゼ、ッタ」


 「リゼッタか。お家に送っていくよ。今の君をここに残すのはできないから」


 「おう、ち? おうち、ってなに?」


 「え? 帰る場所」


 「‥‥‥帰る場所、ない」


 「ない‥‥‥?それじゃあ今までどうしてたんだ」


 「魔物、狩って、お金、それで」


 「え、まだ幼い君が魔物を!?すごいじゃん!魔法使えるの?」


 「‥‥‥どく」


 「毒って、毒魔法!?絶対強いじゃん!虫とか退治するのに便利そう。いいなぁ俺も使ってみたい!」


 「‥‥‥うえ?」


 自分の毒魔法を初めて褒められた。自分に関心を持ってもらえることがこんなにも嬉しいことだとリゼッタ自身気づいてなかった。


 「‥‥‥うれしい」


 感情が初めて溢れたリゼッタは、生まれて初めて涙を流した。


 「‥‥‥泣くほど大変だったのか。そうだ。帰る場所ないなら俺と来る?保護してもらえると思うよ」


 「行くっ、どこ?」


 リゼッタは完全にアイトのことを信頼していた。初めて頼ってもいい相手だと感じていた。


 「それは来てからのお楽しみ」


 アイトはリゼッタを抱えて転移結晶で転移するのだった。





 その後はアイトとリゼッタは『ルーンアサイド』の本拠地に転移し、ラルドに保護してほしいと頼んだ。


 アイトはリゼッタが自分の意思で決断して生きてほしいと思っていた。


 するとリゼッタはアイトの役に立ちたいと願い、当時まだ12歳だが自分の意思で訓練生になることを志願する。


 そこで多くの訓練生たちと交流し、人の温かさを知った。厳しい訓練を乗り越えた。そして現在、13歳になったリゼッタは立派に成長した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「ふう、これで、ばんざい」


 リゼッタは大量の魔物を1人で討伐。自分の意思で努力を続けたリゼッタの毒魔法は、黄昏トワイライト、いやエルジュ全体の中でもトップクラスの破壊力を誇っていた。


 「今から、レーくんたちに、追いつかないと」


 そう言って遺跡の中に入っていくリゼッタ。


 彼女がこれからどう成長していくのかは、まだ誰も知らない。

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