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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
9章 交流戦代表選抜試験

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放課後の茶会 後編

 システィアが堂々と宣言してみせたことで、反論していたアヤメは困惑する。


「な、なによ。言ってみなさいよ」


 だがアヤメは意地を張り、彼女に続きを促した。その瞬間、ジェイクは何かに気付いてシスティアの話を止めさせようとする。


「ここまで来れば仕方ない。ここにいる者だけの秘密として収めよう。後輩くんには知られないように」


 だがスカーレットが手のひらを見せて制止させる。そして次の瞬間、システィアは話し始めた。


「魔闘祭の3日目‥‥‥花形競技『エリア・ペネトレイト』1年の部が終わった日の夜の事よ。私とヴァルダンくんは姉貴に突然連行された」


「ああ、ソードディアスの言う通りだ」


 ジェイクが肯定を示し、スカーレットが不敵に笑う。その2人を無視してシスティアが話を続ける。


「三途の滝の崖付近まで連れていかれて、そこにはディスローグくんがいた。私は一騎討ちに挑んで‥‥‥」


「完膚なきまでに負けたな」


 スカーレットが容赦なく続きを付け足すと、システィアは睨みつけながらも深呼吸する。


「‥‥‥意味不明なくらい理不尽な強さだった。今でもあの日を思い出して殺意が湧き上がるくらいよ」


「うそ‥‥‥でしょ? 剣バカのあんたが?」


「‥‥‥剣で負けた。あの時に受けた屈辱は一度も忘れてないわよ」


「アイトくんが、そんな‥‥‥」


 アヤメが動揺して声を震わせる。そんな彼女に理解させるように、ジェイクが便乗した。


「間違いない。ソードディアス姉妹と僕はその現場を目撃した。そして彼はソードディアス先輩との約束と言って、口止めを要求した。見せられた力を前に、僕たちは受け入れるしかなかった‥‥‥」


「これでわかったでしょ? とりあえずあいつは只者じゃない。じゃあなんで力を隠したがるのか‥‥‥自分が天帝レスタであることに気づかれないようにするためなら、辻褄が合うと思わない?」


 システィアの結論に対し、ジェイクは同意の意味を込めて頷いた。クラリッサは無言を貫き、スカーレットは目を閉じて腕を組む。


「‥‥‥そういえば。いや、まさかそんな‥‥‥」


 するとアヤメが小さく独り言を呟いた。その内容を聞き、システィアが尋ねる。


「どうしたの爆弾女。もしかして何か心当たりでもあるのかしら?」


 彼女の言葉を聞いたアヤメは、白状するように声を振り絞って話し始めた。


「‥‥‥魔闘祭の少し前、1年生の一部は競技の練習を行ったことがあったわよね」


「ええ、そんなこともあったわね」


「その時、覆面を付けた謎の集団が現れて変な結界を張った。それに反抗した私は返り討ちに遭って、崖から落ちたでしょ‥‥‥」


 アヤメの言葉に、皆は状況を思い出していた(スカーレットを除いて)。その時の光景を思い出し、システィアが真っ先に反応する。


「あの高さを頭から落ちたのに、後になって無事だったから驚いたわ。確か、お前ともう1人落ちていって‥‥‥まさかーーー」


 システィアが目を見開いて視線を合わせると、アヤメはゆっくりと首を縦に振る。


「‥‥‥あの時、アイトくんが助けてくれたの」


 アヤメの言葉に、皆は驚愕のあまり各々で声が漏れる。その中には笑い声を漏らす者もいたが。


「目が覚めたら私は医務室にいた。今までは助けてくれた事への感謝で深く考えた事がなかった‥‥‥でも、よく考えると色々とおかしかった‥‥‥」


 アヤメはもう、それ以上は語らなかった。少しの間、沈黙が支配する。だが、それもすぐに終わる。


「魔闘祭の事前練習の時、覆面とは別の組織『エルジュ』の連中が現れた。だってあの騒動の後、金髪女剣士の風貌が学園で流行ったくらいだもの」


 システィアはまるで取り憑かれたように無機質に、それでいて早口で語り始める。まるで興奮が収まらないようだった。


「その前後で爆弾女が落ち、それをあいつが助けてたとなると‥‥‥関係性は高いかもしれない!!」


 システィアは紅茶カップが揺れるほど机を叩き、勢いよく立ち上がる。


「もう私の中で結論は出たわ。私の話とお前の話といい、そして今回の一件といい‥‥‥アイト・ディスローグは、間違いなく天帝レスタよ」


 そして彼女は意気揚々と呟いた。彼女の表情が歓喜と興奮の感情を示している。これまで不明瞭だった霧が晴れたようだった。


「‥‥‥ああ、異論は無い」


 ジェイクは少し深呼吸をしてから同意を示す。彼も、システィアと同じ結論に至ったのだ。


「「‥‥‥」」


 クラリッサとアヤメは何も言わずに沈黙を続ける。だが反論する事も無い。もはや肯定していることに等しかった。


「ーーーそう考えるのは少し早計じゃないか?」


 だがここで反論の声が上がる。それは、腕組みを解いて右手を上げたスカーレット。


「あのねぇ姉貴‥‥‥さすがに水を差すようなら本気で怒るけど??」


 システィアが視線を合わせて睨み付けると、スカーレットはほくそ笑む。


「別に全部を否定するわけじゃないさ。彼が只者じゃないってことは、ここにいる誰もが認めるだろう。だが、彼が()()()()()()()()()()()()()()()


 スカーレットの言葉に、システィアとジェイクは息を呑む。それを確認したスカーレットは話を続ける。


「彼は謎の組織『エルジュ』に所属してる構成員の1人なだけかもしれないし、そもそも所属してないかもしれない」


「あの強さでレスタじゃないわけがーーー」


「いや、『エルジュ』と同様に謎が多い覆面集団側の人間という可能性もある。彼を天帝レスタと決め打ちするのは早いと思うが?」


 スカーレットは淡々と意見を呟き、皆の様子を一瞥する。そして、不機嫌そうに目を逸らすシスティアに視線が止まった。


「舞い上がっていたわけだ」


「‥‥‥うっさい。あいつが天帝レスタである可能性も充分あるでしょうが」


 そう呟く妹に対し、スカーレットは同意を示すように頷いて脚を組む。


「それとお前が私たちと話し合ったのは、この事実を受け止めてどう行動するか、方針を固めたかったんじゃないのか?」


「‥‥‥そうよ。誰かが突っ走ったら大変なことになるからよ」


 スカーレットの言葉に、システィアは肯定する。沈黙するクラリッサたちも否定はしなかった。

 それを確認したスカーレットは両手を振って目を閉じる。


「先に言っておくが、私たちで彼を捕まえるという無茶な提案は無しだからな」


「‥‥‥わかってるわよ。まだ底が見えないあの男を刺激すれば、どうなるか分かったものじゃない」


「なんだ、てっきりその気だと思っていたが」


 スカーレットが素直な感想を述べると、クラリッサたちも内心で頷く。好戦的なシスティアが慎重な事に驚いていたのだ。

 システィアはそれを察知して眉を顰めるが、深呼吸して怒りを抑え込む。


「‥‥‥私が言いたいのは、不用意にこの事を周囲に漏らさないかってこと。今回で分かった事実をディスローグくんに気付かれたくないのよ」


「そうだな‥‥‥今回、口止めされていた事も話したんだ。怪しいと思っていることを気づかれたら、何か報いを受ける可能性もある」


 ジェイクは自分が感じた事を話す。その発言を聞いた後、次に話し始めたのはクラリッサだった。


「だから私たちを集めて話したわけね‥‥‥後になって誰かがアイトの違和感に気付いて、それを本人に知られる事を防ぐために」


 彼女が今回集められた意図に気づいて呟くことで、他の人も納得する。そして今回集めた張本人、システィアもはっきりと頷く。


「ええ‥‥‥もちろん今回の話はここにいる者だけの秘密よ。絶対、誰にも話さないように‥‥‥特に姉貴」


「信用されてないな」


 スカーレットは少し残念そうに呟くが、システィアは返事をしない。クラリッサたちも気まずさで黙り込む。


「おそらく学園の中で最もあの男の正体に近づいてるのは私たちよ‥‥‥絶対本人に悟られないように油断しないで」


 システィアの一言で今回の話し合いは終わりが見え始めた瞬間、アヤメが割り込んで話しかけた。


「ねぇ、なんでアイトくんのことをそこまで気にしてるの‥‥‥?」


 そう問いかけた彼女の声は細く、何か緊張しているようだった。するとシスティアは「は?」と声を出し、目を細めて宣言する。


「そんなの‥‥‥あの男を倒すために決まってるでしょうが」


 それはアヤメが危惧していた甘酸っぱい恋心などではなく、憎悪。宣言したシスティアの顔を、皆は注視することが出来ない。ただし、姉であるスカーレットを除いて。


(‥‥‥いい顔をするようになった。やっぱり後輩くん、君は本当に罪な男だよ)


 彼女は嬉しそうに笑うと、椅子から立ち上がってキッチンシンクへ向かう。そして空の紅茶カップを洗い始める。


「ーーーはぁ、はぁ‥‥‥か、買ってきたよぉぉ」


 すると玄関の扉が開き、袋を手に取ったカレン・ソードディアスが帰宅した。帰宅した弟に対し、システィアは駆け寄って袋を受け取った。


「ちょうどいい時よカレン。よくやったじゃない」


「えぇ!? どうしたのティア姉さん!? そんな優しいなんて、いったい何を企んでるの!?」


「は???」


 この後、部屋に戻ったスカーレットの代わりにカレンが空いた椅子に座ることになる。そしてカレンが買ってきた店のお菓子を、全員で食べることになった。


(いつの間にか‥‥‥家に連れてくるほどの友人ができていたとは。よかったな、システィア)


 スカーレットはリビングの様子を一目見て微笑むと、階段を上がって自室に戻っていくのだった。

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