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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
9章 交流戦代表選抜試験

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放課後の茶会 前編

 1年の選抜試験中止から3日。アイトは一向に目を覚まさない。

 だからといって、物語の時間が止まるわけではない。試験を行ったのは休日で、それから3日が経過。

 つまり学生たちは学園に登校し、普段通り授業を受けている。


「‥‥‥」


 1年Dクラス所属、ユニカ・ラペンシアは退屈そうに頬杖を突き、教室内を見渡す。1年Dクラスの生徒の殆どは授業に集中しているが、数人は明らかに上の空。

 ギルバート・カルスはユニカの横顔越しに空いている席へ視線を向け、ポーラ・ベルは時々首を後ろへ向けて心配そうに眺めている。そしてクラリッサ・リーセルは暗い表情で顔を落とし、視線を机に向けていた。


(やっぱり友人だから心配みたいね‥‥‥クラリッサは事情を知ってるから違うかもしれないけど)


 ユニカは3人の様子を確認し、小さく息を吐いて顔を横へ逸らす。そして隣の空いた席を見つめる。


(ローグくん‥‥‥本当にこれでよかったの?)


 彼女が黄昏ている間も、授業は進んでいった。

 ユニカがぼんやりと思い返しているうちに授業が終わり、教室が騒がしくなる。今から昼食時間と昼休みが始まる頃だった。


「失礼するわよ」


 すると教室のドアが開き、1人の少女が室内へと足を踏み入れる。銀髪ショートカットの彼女は足早に直進し、とある机の前で止まる。


「な、なによシスティア」


 それはクラリッサの席だった。困惑して声を漏らすと、少女ことシスティア・ソードディアスは見下ろしながら口を開く。


「放課後、代表選抜試験のことで生徒会室に集まって欲しいって伝言されたの‥‥‥クソ姉貴に」


 システィアは不機嫌そうに呟いた。完全に義務感で伝えに来た感じが丸見えである。クラリッサは少し息を詰まらせながらも、「わかった」と返事をした。


「それじゃあね。ちゃんと来なさいよ」


 そう言ったシスティアは踵を返して教室から出て、素知らぬ顔で廊下を歩いて行く。成績優秀な1年Aクラスの中でもトップクラスである彼女の訪問と退室に、多くの生徒が唖然としていた。


(‥‥‥なるほどね)


 だが、ユニカはどこか腑に落ちた様子で軽く息を吐くのだった。


 ◆◇◆◇


 1日の授業が全て終わり、放課後。


「じゃあ行ってくるわね」


 クラリッサはギルバートたちにひと言伝えると、足早に教室を出て廊下を歩く。やがて階段を登り、別の棟へ足を踏み入れる。

 すると職員室が見え、その先には生徒会室が待っているはずだった。


「さすが早いわね」


 クラリッサは突然背後から話しかけられる。その声は自分に伝達した張本人、システィアだった。


「わざわざ遅く来る必要もーーーえ?」


 振り向いたクラリッサは、目の前に広がる光景に声を詰まらせる。


「とりあえず離してくれ‥‥‥」


「恥ずかしいのよ!!」


 1年Aクラスのジェイク・ヴァルダンとBクラスのアヤメ・クジョウが腕を掴まれて困惑しているのだ。2人の腕を掴むシスティアは口角を上げて笑うと、腕を離して口を開く。


「事前に伝えた事は嘘よ。でもこの前のことで話があるから、ついてきて」


「「「‥‥‥」」」


 彼女の言葉に、3人は驚きはするも反論しない。先を歩き出す彼女の後を追うようにそれぞれ歩き始める。だが、不満がないわけではない。


(呼び出した人の態度‥‥‥)


(相変わらず強引だな‥‥‥)


(ほんとに自己中の塊‥‥‥)


 クラリッサ、ジェイク、アヤメはそれぞれ内心で愚痴を零す。当然、前を歩くシスティアは気付いていない。


「〜〜〜♪」


 それどころかご機嫌に鼻歌を歌うほどだった。



「はぁ!? まだ買ってきてないの!?」


 だが30分後、システィアの機嫌は一気に悪くなっていた。自分よりも少し小さい少年に詰め寄って怒声を上げる。


「ねぇカレン? 新しい新商品が出るから買って来いって言ったよね??」


「だ、だってあの店の店員って可愛い子ばっかりなんだよ? 男1人で入ったら気まずいよ‥‥‥」


 彼女の弟カレン・ソードディアスは顔を下げてモジモジしながら呟く。そんな彼の反応を見たシスティアはますます機嫌を悪くして胸ぐらを掴み掛かった。


「そんな女々しいお前を男って店員は認識しないっつーの!! それにこの前助けた恩を忘れたの!?」


「そ、それで僕をこき使うの何回目なの‥‥‥学園見学の時に助けてくれた恩はもう返してーーー」


 カレンの言葉は、システィアによって阻まれる。


「は? 何勝手に終わらせてるの?? 良いから早く買ってこい。さもないとお母様に言うわよ? 『お母様と一緒に寝たい』と言ってたって」


「僕そんなの言ったことないっ!! そんな恐ろしい捏造しないでよ!?」


「お母様は喜んで抱きついてくるでしょうね〜? あの人は親父似のお前を溺愛してるから」


「わわわかったよ買ってくるよっ!! か、買ってくるからそれだけは本当に言わないでね!?」


 システィアの脅し(?)に屈したカレンは涙を溜めながら扉を開ける。


「気を付けてね〜」


「どの口が言ってるんだよぉぉ!!?」


 そして叫びながら外へ飛び出して行った。システィアはひと息ついて人数分のカップを用意し、紅茶を注ぎ始める。


「騒がせたわね」


(((弟をなんだと思って‥‥‥)))


 クラリッサたちは、システィアの家に招かれていた。洋風の木造建築で、貴族として恥ずかしくない立派な一軒家。

 クラリッサたちは内装に見惚れて少し緊張するほどだった。


「さ、準備できたわよ」


 茶色のトレーに4人分の紅茶を載せたシスティアはゆっくり歩き出す。オシャレな絨毯の上に置かれた机と椅子はちょうど5人分あった。

 2人ずつが向かい合っている4人分の椅子と、1つだけ置くにあって4人を見渡すような位置にある1人分の椅子。

 クラリッサたちは今4人。その中でわざわざ目立つ方の椅子に座る理由は無い。3人ともが向かい合う4人の椅子に座り始める。システィアは皆に紅茶入りのカップを置いた後、余った椅子に腰掛けた。

 席はシスティアの隣にクラリッサ、その向かいにジェイクとアヤメという形である。


「それじゃあ始めましょうか」


 システィアがそう呟くと、手に持った紅茶カップを一口煽る。それを見たクラリッサたちもそれぞれ自然にカップを手に取って口へ運んでいた。


「あ、美味しい」


 クラリッサが無意識で呟いた時、ジェイクとアヤメも同様の反応を示していた。システィアは鼻高々にほくそ笑む。


「家には紅茶やコーヒーにうるさい奴が2人もいるの。だから私はもちろんカレンですら淹れるのには慣れてるわ。まあ高いものを使ってるのもあるけど」


(こういうところで育ちが良いのが分かるわね‥‥‥普段は全く分からないけど)


 クラリッサは内心で感心しつつも失礼な事を考えていた。それはジェイクとアヤメも同様だったらしい。2人とも疑うような視線をシスティアに向けている。


「さ、始めるわよ。お前たちをわざわざここに呼んだのは理由があるわ。1年の代表選抜試験についてよ」


 システィアはいきなり本題を切り出した。クラリッサたちは面食らい、発言する気が湧かない。システィアは続きを話そうとする。


「ーーーほう? だったら私も混ぜてもらおうか」


 だが突然、彼女たちがいるリビングに別の声が響き渡る。その声は玄関から聞こえてきた。

 いち早くその存在を察したのか、システィアは眉を顰めて不機嫌になる。


「なんでこのタイミングで来るのよ‥‥‥クソ姉貴」


「帰るべき所に帰って来ただけだが」


 それは彼女の姉、スカーレット・ソードディアスだった。靴を脱いでリビングに足を踏み入れ、クラリッサたちと対面する。


「こんにちは後輩の諸君、そしてようこそ。妹がいつもお世話になっているね」


 そう言って笑みを浮かべるスカーレットは、まるで当たり前かのように空いていた奥の椅子に腰掛けるのだった。

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