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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
9章 交流戦代表選抜試験

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血溜まりの中

 アイト・ディスローグが血溜まりの中で昏倒し、彼を知っている者は冷静ではいられない。


「アイトくんっ!!!!」

「うそ、でしょ‥‥‥?」

「ディスローグ!!?」

「あ、あぁ‥‥‥」

「何よこの状況‥‥‥」


 1年生たちはそれそれ声を漏らしてアイトの元へ駆け寄る。エルリカは絶句を続け、ルークですら困惑のあまり声が出ない。


(これが、ミストさんの言ってた合図‥‥‥っ!!)


 だがそんな中でただ1人、ユニカ・ラペンシアだけは空白の時間の中でも行動できた。


『ラペンシアとリゼッタには策の内容を話すな。話せば2人は反対するから』


 それは、ミストから伝えられた伝言。つまり、アイトの言葉。察しの良いユニカはその答えを知り、怒りのあまり歯を噛み締める。


(ほんっとにバカなんだから‥‥‥!!!)


 そして木から降りて着地すると、両手両足から火花のような音を走らせる。教官のラルドから教わっていた、身体能力向上の秘術【血液凝固】。

 それを惜しみなく発動させ、目的遂行のため全力で駆ける。


「ーーー誰だっ!!!」


 いち早く気配を察したルークが声を荒げるも、ユニカはそれを無視して四角から近づいていく。そして目撃者全員の視界に入る直前で、自身の力を解き放つ。


「【炎に紛れた呪い(ツヴァイ・ファイア)!!】」


 両手から魔力と呪力の融合物、魔呪まじゅを放出する。魔力部分が炎属性を浴び、赤く染まって熱を持つ。それを死角からルークへ放った。

 ルークが超人的な反応で対処している隙を付き、ユニカは倒れている相手を抱えて、その場を離れる。当然、近くに寄ったため全員に姿を見られていた。


「あの仮面っ‥‥‥!!?」


「まさかレスタ!!?」


 そう、今のユニカは以前アイトから取ったヒビ入りの仮面を付けていた。そして染色魔法を解いた黒い髪に特殊戦闘服。学園での彼女とは似ても似つかない。 ユニカは一目散にその場を離れようと、駆け抜けて行く。


「ーーーさすがに逃がせないな」


 だが先回りしていたルークと対峙する。ユニカは1人抱えていているため速度が落ち、追いつかれたのだ。つまり戦える状態でもない。人を抱えた状態で格上のルークと戦うなど、自殺行為である。


「まさか()()()だけ助けようとするとは思わなかったよ。彼はいいのかい?」


 ルークの言う通り、ユニカが抱えているのは()()()のみ。アイトは今も血溜まりの中で倒れている。


「‥‥‥は? なんで知らない学生を助ける必要があるの? せっかくあなたを暗殺できると思ったのに」


 ここでユニカは息をするように嘘を付いた。それがアイトの願いだと理解していたからだ。誰もが聞いても冷たく感じるような口調ではっきりと言い捨てる。

 それにはさすがのルークも、思わず困惑した。


「ふっ、大した名演技だね。詳しい話は捕まえてからじっくり聞くとすーーーっ!!?」


 突然、ルークが少し仰け反る。銃声が響くと共に跳んできた銃弾が、彼の頬を掠めたのだ。ルークは少し嫌そうに眉を顰める。ユニカは意地悪い笑みを浮かべ、完全に悪人面をした。


「動くと学生の頭が撃ち抜かれるわよ? それでも良いなら追いかけてきてもいいわよ。あ、学園の後輩を傷付けることなんて別に気にしないものね?」


「っ‥‥‥」


「邪魔するなら、まずはあなたの妹さんから撃ち抜いて貰おうかしら?」


 ユニカは淡々と言い捨てると、カンナを抱えたままその場を離れて行く。ルークは‥‥‥ついて行かなかった。


「‥‥‥みんな、今はしゃがんで遮蔽物に隠れてくれ!! 相手の銃の腕前は相当なものだ、迂闊に立っていれば撃ち抜かれる!!」


 ルークは悔しさを押し殺しつつ、エルリカと1年生へ話しかける。


「‥‥‥‥‥‥了解。みんな、今はとにかく危険だから狙撃されないようにしゃがんで!!」


 聞きたいことは山ほどあったが、エルリカは1年生たちの安全を最優先した。ルークの指示に従い、自分も声に出して促す。


「しっかりしろディスローグ!!」


「あんたが簡単に死ぬわけないわよねっ!?」


 そしてアイトは‥‥‥ジェイクとクラリッサにより木の裏にまで運ばれていた。その後はシスティアが周囲の状況を注意して眺めつつ、ユリアが治癒魔法の詠唱を始める。


「ユリア王女っ、私がなんでもするので彼を治してください‥‥‥どうか、おねがいしますっ!!」


「わざわざ頼まれるまでもありません。私の全力を持ってアイトくんは‥‥‥必ず助けます」


 泣きじゃくるアヤメにそう返事したユリアは、1秒も集中を欠くことなく治癒魔法を続ける。


(絶対に死なせません‥‥‥絶対にっ!!)


 その後、アイトの治癒と周囲の安全を兼ねて最後の銃声から約1時間、ルークたちは隠れつづけた。


「アイトくん‥‥‥早く、目を覚まして‥‥‥」


 ユリアは血塗れのアイトの手を握り、治癒魔法が全て終わった後も祈り続ける。するとエルリカがおずおずとルークに話しかける。


「ルーク‥‥‥さっきのは、いったい」


「話すと長くなるから、後でいいかな。当然、マリアも含めてね」


「‥‥‥わかったわ」


 エルリカは、即答されたルークの提案を受け入れた。それは、彼女自身も考える事が山ほどあるからだ。

 こうして、1年の代表候補選抜試験は中止という形で幕を閉じる。

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