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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
9章 交流戦代表選抜試験

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待ち望んでいた時

 湧き水のように流れ落ちる鮮血。震え上がる身体。そして常人では叫んでしまいそうな激痛。


「〜〜〜ッ‥‥‥」


 アイトはあまりの激痛に意識が飛びそうになっていた。そして自白してしまおうかという気持ちも湧く。

 人間は誰しも痛みに弱い。どんな人でも痛みを永久的に受け続けて正気を保つのは不可能に近い。その痛みから逃れようとするのが一般的である。だから話してはいけないと理解していても、苦痛に耐えられず話してしまうものだ。


「これ以上、誤魔化し続ける意味は無いんじゃないかな。このままだと取り返しがつかなくなる。死んだっておかしくない」


 ルークは淡々と忠告しつつも、剣に込める力を徐々に強めていく。まるで首を絞めて窒息死させるように。


「‥‥‥はは」


 すると窮地にいるはずのアイトが、不自然に笑い出す。ルークは訝しげに眉を顰めつつ、その様子を見下ろしていた。アイトは震える両手で剣を握りつつ、話し出す。


「こんな必死なルーク先輩、初めて見ましたよ‥‥‥何を、焦っているんですか‥‥‥?」


「‥‥‥」


「そもそも俺は、レスタじゃない‥‥‥何度もそう言ってるのに、ここまでされるとは思ってませんでしたよ‥‥‥」


 アイトは冷や汗を流しながら、震える口を動かして呟く。


「このままだと、先輩は相当な罰を受けることになります‥‥‥良いんですか、評判を落としても」


 そう言われたルークは、逆に脅されているような気分を味わっていた。重傷を負って窮地であるのは向こうなのに、自白は頑なに拒否する。むしろこっちが何かを曝け出しているような感覚。

 まさか自白を拒否され続ける事が、ここまでの状況を作り出すとは思っていなかった。


(‥‥‥まさか、こうなると読んでいた? 絶対に口を割らないという自信があったから、攻撃を誘発させて僕自身が精神的に引けない状況になるとーーー?)


 ルークは真っ直ぐ見下ろす。剣を首筋にめり込ませて血を流すアイト・ディスローグを。

 そして、彼の目から感じる異質の気配を。


「ーーーはははっ、なんということだ。まさか僕の方が踊らされていたなんてね」


「なんの、ことですかね‥‥‥」


 ルークが清々しく笑いながら話すと、アイトは言葉を返す。だが、ルークから見れば余計怪しく見えた。


「認めるよ。君が守ってる銀髪の子からではなく、君から白状させようとしたのは僕の間違いだった」


「なにを、言ってるんです」


「今さらやめても傷口を広げるだけだ。だから、僕はこのまま踊らせてもらうよ」


 ルークはそう宣言すると、剣に込める力をこれまでの比じゃないほどに跳ね上げていく。アイトの首筋を剣がみるみる下がっていく。傷口から血が滲み出す。


「ぐッ‥‥‥!!!?」


「君の掌から足を踏み外して落ちるまで、踊り続けることにするよっ!!!」


 ルークは完全に吹っ切れた。アイトのことはもちろん姉のマリアや家族の気持ちを度外視。完全に仕留めるつもりで、剣に力を込める。


「今度は動けない君を利用して銀髪の子を尋問しようかなぁ、果たして君ほど耐えられるかな?」


 アイトは聞こえてくる言葉に惑わされないよう、舌を噛んで必死に振り払う。そうでないと屈してしまいそうになるからだ。そして両手のひらで剣を押さえ、これ以上首筋が抉れるのを堪えようとする。


(おそ、らく‥‥‥ミストたちは近くで待機してる、はず‥‥‥ていうかそうじゃないと困る。あとは、あとはっ‥‥‥)


 アイトはもはや全身の感覚が麻痺し始め、意識も激しく混濁していた。だが、それでも懸命に何かを待つ。尋常ではない執念で、何かを待ち続けている。


「ーーー何をやってるんですかっ!!!?」


 そして、待ち望んでいた時は来た。ルークが声がした方を向くと同時に、アイトは内心で笑う。


「‥‥‥ユリア。それにーーー」


 ルークは妹の名を呼ぶと、彼女ユリアの後ろにいる人たちを見渡す。そこにいるのはシスティア、ジェイク、アヤメ、クラリッサという1年生たち。


「ルーク‥‥‥何を、してるの?」


 そして、部下のエルリカ・アルリフォン。彼女の真っ青な顔と悲痛な声に、ルークは思わず目を逸らす。


「アイトくんっ!!!!? ねぇどういう事ですか王子っ!!?? 何をやってるんですか!!!!」


 これ以上無いほど憤慨したアヤメは両手に魔力を集めて詰め寄ろうとするが、ジェイクとクラリッサが肩を掴んで阻止。

 そんな一悶着がある間も、ユリアとエルリカは絶望した表情でルークと血だらけのアイトを見つめる。


「お兄様‥‥‥正気、ですか?」


「ルーク‥‥‥いったい何をしてるのっ、早くアイトくんから剣を離しなさいよ!?」


 ユリアは焦点が定まらない瞳で見続け、エルリカは声を荒げながら詰め寄る。だが、ルークは一蹴した。


「来るなっ!!! もし彼が天帝レスタだとすれば、どうするんだい?」


「なん、ですって‥‥‥」


 エルリカは絶句した。数日前にルークと話した、天帝レスタへの疑惑と謎。その正体がマリアの弟であるアイト・ディスローグだと言われて理解ができない。


「まさか‥‥‥マリアの弟である彼が、アイトくんがレスタなわけが‥‥‥」


 エルリカは助けを乞うようにアイトを見つめる。片膝をつき、首筋に刺さる剣を必死に両手で止めている彼を。苦痛で歯を食いしばる彼の表情から、レスタであるという事実を受け入れられない。

 実際にユリアを除く全員が驚き、声が出せない。


「彼は、認めたの‥‥‥?」


「いいや、頑なに認めないんだよ。彼の足元で倒れている子は間違いなくレスタの仲間だ」


「そんな、まさか君の直感で彼をレスタだと決め付けてるんじゃーーー」


「いや、彼はその子を庇って血塗れになってるんだ。普通はそこまでして知らない人を助けないだろ? つまり、彼はその子を知っててーーーっ」


 ルークの声は途切れた。いや、遮られた‥‥‥近くから発生したであろう、銃声によって。


「っ!?」


 ルークは反射的に身体を翻して()()を避ける。それはもちろん、銃弾である。


「ーーーっ」


 ルークが躱したことで銃弾は留まらず、直線上に跳んでいく。そして、停止する。その瞬間、本人の息が漏れる音がした。

 左胸を撃ち抜かれた彼は、力が抜けたように背中から倒れるように傾いていく。誰かの悲鳴が響き渡るが、彼には一切届いていない。やがて、背中と地面が密着する。


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


 アイト・ディスローグは、力尽きたように仰向けに倒れた。

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