6人の緊急任務
翌朝、店舗『マーズメルティ』。
「明らかに変だ」
アイトたちは学園が休みになったことを話し合っていた。
「施設の耐久値調査を行うためとか言われているけど、年間予定表にはそんなこと全く書いてない」
「レスタ様、学園が休みですがどうされますか?」
「‥‥‥今日はとりあえず寮で休んでようかな」
意地でも任務をしたくないアイト。
「それならお兄ちゃん、一緒にお泊まりしよ♪」
「わかったよ!! 休みになった理由が!!」
ミアが提案している途中に、慌てた様子のメリナが店の中に入ってくる。
「チッッ、いいとこだったのに」
「メリナ、理由がわかったって本当か?」
「ああ! ユリア王女が誘拐されたらしい!」
「は? 誘拐だって?」
物騒な言葉を聞いて、アイトが思わず聞き返す。だが、メリナははっきりと頷いた。
「城の中へ潜入したらそんな話が出ていた!昨日の晩から姿が見えないらしい!」
「エリス。俺の記憶からユリアちゃ‥‥‥ユリア王女を見つけて場所を探知してくれ」
「わかりました!」
エリスは自分の顔をアイトに近づけて目を輝かせる。ミアの目がどんどんドス黒くなっていることに2人は気づかない。
「わかりました。ユリアさんの魔力を感知。ここからかなり南の方角にある古びた遺跡にいるようです」
「さすが魔眼だ」
アイトはそう言いながら異空間から特殊な魔結晶を取り出し、話しかける。
「『黄昏』のメンバー。聞こえるか。緊急事態だ。今どこにいるか把握したい。各自応答してくれ」
アイトは、この場にいない黄昏の構成員からの返事を待つ。
『‥‥‥ボクは各地で情報収集をしてるからグロッサ王国からはかなり遠い位置にいる。そっちに向かうのは少し時間を有する』
すると真っ先に連絡がついたのはターナ。
『オリバーです。カイル、アクア、ミストも一緒です。僕たちは今ギルドの任務中で、かなり遠い位置にいます。向かうには時間がかかります』
続いてオリバーが答えた。こうして黄昏全員の状況を理解したアイトは、指示を飛ばす。
「わかった。時間がかかってもいいから、今から言う場所に向かってほしい。エリス」
「はい。場所はーーーーーの遺跡です」
『わかった』
『了解しました!』
2人との連絡を終える。ターナ、アクア、カイル、オリバー、ミストの5人を待つ時間はなさそうだった。
(このままだと学園がなくなるどころかグロッサ王国が荒れて平穏な生活が終わりを迎える。今回は俺たちが行くしかないか‥‥‥)
そう決意したアイトは、魔結晶を使ってラルドに話しかけた。
「ラルド、聞こえるか」
『‥‥‥うむ。どうしたレスタ殿』
「俺、エリス、カンナ、ミア、リゼッタ、メリナの6人で今からユリア王女の救出に向かう」
『王女救出!?何が起こっているのだ!?』
「説明する時間はない。そっちからは数名を王都に配置してほしい。何かわかったらすぐに連絡を」
アイトは少し強引に話を進めると、魔結晶越しのラルドは小さく頷く。
『‥‥‥了解した。すぐに準備に取り掛かる。レスタ殿、気をつけてな』
「ああ、そっちもな」
ラルドとの通信が切れた。アイトはここにいる5人の方を向く。
「メリナは待機し、王国での情報収集を。他はユリア王女の救出に向かう!」
「はい!!」
「了解っ!」
「うん♡」
「おけ」
「準備する!」
こうしてアイトたち6人の緊急任務が始まった。