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【30万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
1章 王立学園入学

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これからの学園生活

 アイトとユリアは授業が終わり、廊下を歩く。


 「アイトくん、聞きたいことがあるんです」


 「な、なに?」


 短時間で呼び方が変わり、気さくに話しかけられるほど打ち解けてしまう。しかもユリアが思ったより気さくに話すタイプだとは思っておらず少し動揺。


 「マリアさんが言ってたんですけど、アイトくんはどんな魔法を使うんですか?」


 「!!?」


 アイトは返事できなかった。


 【スプーリ】という睡眠魔法、【異空間】、【打ち上げ花火】、【線香花火】など、主に自分が楽しむことにしか使っていない事に。


 「え、え〜と、ほとんど自作かな〜趣味程度のものだし」


 「え、自作!?すごいですよアイトくん!魔法を自分で作るなんて器用じゃないとできないです!」


 そう意気込むユリアの眼は輝いている。


 「マリアさんが言ってた通り、アイトくんは魔法の扱いが上手いんですね!」


 (え、魔法って普通自分で作らないの?いや作るといっても俺は基本花火しか作ってなかったけどなぁ)


 魔法で花火を作るのが、世間知らずのアイトにとってどれほど難しいか全然判断できない。


 「ま、まあ大したことじゃないけど」


 だが褒められたのは満更ではないアイト。


 「もしよかったら時間がある時に見せてくれませんか!?」


 アイトに顔をグイグイ近づけて、目を輝かせるユリア王女。


 「ま、まあ機会があれば見せるよ。あ、Aクラスの教室前だね。じゃあ俺はこれで」


 「はい!また後で〜!」


 豪快に手を振ってくるユリアに少し手を上げてから早歩きで戻っていくアイト。ようやく視線地獄から解放されるのだった。


 (ん? また後で?)




 放課後。


 (よしまだ来てないっ!!)


 アイトはマリアが来る前に急いで教室を飛び出した。だが学園を出たところで何者かに腕を掴まれる。


 「アイトさん、ちょっといいです?」


 アイトは腕を掴んできた相手を確認する。初対面の茶髪おさげのメガネをかけた女の子だった。


 「お、俺に何かよう?」


 「ここでは人目があるのでこちらへ」


 女の子はアイトを連れてとある開店準備中の店に入っていった。


 「おい、ここって」


 「うん、潜伏拠点の1つ『マーズメルティ』。さすが代表。私に気づかないふりをしてくれたね」


 アイトは戦慄した。この発言からしてここで名前を間違えてしまったら、全てが終わると。


 でもアイトの知ってる人で茶髪の子はほとんどいない事に気づいた。


 「‥‥‥もちろんわかってるって、メリナ」


 そして心当たりのある名前を呟く。


 「正解、ちょっと簡単だったかな?」


 すると相手メリナはどこか嬉しそうに微笑んでいた。


 今の彼女はどう見ても、地味で臆病そうな女子学生にしか見えない。


 「あ、制服!」


 「エリスたちから聞いてなかったの?私、レスタ様の護衛と情報収集のために学園に生徒として潜入してるんだ。ちなみに1年Eクラスだよ」


 (メリナの特別任務って、これか!!!)


 アイトは今日、狼狽してばかりである。


 「ふっふっふ、さすがに会うまではわからなかったんだね。私の演技も捨てたものではないな」


 (いや、何もわかってなかったです)


 アイトは笑いながらも、内心では冷や汗だらだらだった。


 「ちょっとお兄ちゃんといつまで話してるの‥‥‥なに、自慢?」


 「あ、メリナ!制服似合ってるね!レスタくんもいらっしゃ〜い!」


 「レーくん、メリナ、おつ、かれ」


 「お疲れ様です、レスタ様、メリナ」


 当然『マーズメルティ』の中にいるため、エリスたちが姿を現す。


 「ごめんってミア。代表の様子を話すからさ」


 「‥‥‥なら許す」


 「私もレスタ様の学園生活が気になります」


 「気になる気になるっ!」


 「きに、なる」


 そうしてメリナが、アイトの学園生活を勝手に話していく。


 姉のマリアにぶん殴られてたこと、王女2人に会ったこと、王女のユリアと仲よくしてることなど。


 なぜか最後だけ大袈裟に言ってた事に違和感を覚えるアイト。そしてメリナに知られているほど目立っていたと後悔する。


 「‥‥‥お兄ちゃん、聞きたいことが山ほどある」


 ミアは黒い瘴気を纏いながらアイトに詰め寄る。


 「な、なに?」


 アイトは不思議そうに返事した。


 「王女2人ってどんな女!?特にユリアって女!それとお兄ちゃんの姉のことも!!!」


 「ユリア王女は普通に友達で、ステラ王女はユリア王女の姉で姉の友達。姉さんは気に食わないことがあるとぶん殴ってくる系の怖い姉だ」


 思ったことを素直に口にしたアイト。


 「そういうことは聞いてないのぉ〜〜!!」


 「落ち着いてミア!? 店が揺れてるから!!」


 「カンナの言う通りです。おそらく誤解ですよ」


 「ご、かい」


 「ごめん少し大袈裟に話した」


 (おい、おそらくってなんだエリスさん。そして何故に大袈裟に話したメリナよ)


 エリスたちが宥めることで、ミアは体に纏っていた呪いを解除した。


 「‥‥‥お兄ちゃん、ミアの頭撫でて」


 「え?」


 「‥‥‥撫でて」


 「わ、わかった。これでいい?」


 「うにゃあ〜♡ もっと〜♡」


 ミアの頭をしばらく撫で続けるアイトだった。




 「まさかレスタ様のお姉さまが、そんな方だったなんて」


 頭を撫でられたことで極楽浄土にいるミアを無視してアイトたちは話をしていた。


 「そういえばエリスってレスタくんの家に滞在してたんだよね、会わなかったの?」


 「私が滞在した時には既に学生寮にいたようで。私もレスタ様から話を聞いてただけです」


 「レーくんの姉、こわい?」


 「怖いってものじゃない。鬼だ。暴君だ。今日も姉さんの魔の手から逃げてきた」


 「代表が負けるところ初めて見たもん。まあ家族が相手という点もあると思うけど」


 「家族からの不意打ちとはいってもレスタ様が避けられなかったとなると相当な手練れ。さすがレスタ様の姉といったところですね」


 アイトは姉の評価が自分への殴打1回で爆上がりしてることに笑いそうになってしまう。しかもエリスたちは超真顔で話をしてるから余計に。


 「ちなみにメリナ。印象はどんな感じですか?」


 「髪と目はレスタ様と同じで黒色、戦闘のときはポニーテール。いや〜あの髪は綺麗だった」


 「それで他には」


 「あと背が高いね。エリスより高いんじゃないかな?性格は、まあ、代表が話した通りだよ」


 「なるほど‥‥‥」


 アイトはエリスが姉を熱心に知ろうとしてるのが気になったが、聞くことでもないと思ってスルーした。


 「それでマリアさんの後輩で第1王女のステラ王女、その妹の第2王女のユリア王女と面識を持った代表というわけ」


 メリナはやれやれと目を細めながらアイトを見つめる。


 「あまりにも展開が早いから、エリスたちと情報共有しようと思ったんだ」


 「それは確かに厄介ですね。もし万が一、王族や王国関係者にレスタ様の正体がバレてしまえば王国に狙われることは確実です」


 「いや、そんな大袈裟な」


 「大袈裟なんかじゃありません」


 アイトの言葉を、エリスははっきりと否定する。


 「でもユリア王女を無視するような扱いをすればレスタ様の学園生活が一転してしまう。これはどうすればいいのでしょうか‥‥‥」


 「お兄ちゃん‥‥‥♡ もっと、もっと‥‥‥♡」


 「レーくん、ピンチ?」


 リゼッタが首を傾げてアイトをガン見する。その視線から外れるようにアイトは目を逸らして口を開く。


 「今は現状維持しか無いんじゃないか?姉には死ぬほど困ってるけどユリア王女にはそこまで困ってないし。エリスたちもこのまま継続して潜伏して」


 「‥‥‥わかりました。レスタ様、充分に気をつけてくださいね」


 「ああ。気をつけるよ」


 (‥‥‥これからの学園生活のために)


 もちろんこんな真意はアイト自身の心の中で留めている。


 「あ、せっかくなのでレスタ様。ここで少しお茶していきませんか?お菓子もぜひ食べて欲しいです」


 「え、いいの!? 食べる食べる!!お菓子食べてみたい!!」


 実はずっとこの店のお菓子が食べたかったアイトは即座に返事した。自分から店のお菓子を食べてもいいかと言えなかったのだ。


 「ふっふ〜ん、じゃじゃ〜ん!私とエリスの手作りお菓子、召し上がれっ!」


 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


 「おお、いただきま〜す」


 カンナがアイトの前にお菓子を置く。エリスがメイド服の裾をギュッとしてることに気づかないアイトはすぐに食べ始めた。


 「! うま!! 超うまい!!!」


 「やったっ! やったねエリス!」


 「は、はい。本当によかったです‥‥‥」


 超絶ホッとしているエリスに気づかず、お菓子を貪り食べるアイト。


 悩みや波乱はあるが、アイトは順風な学園生活が遅れていると実感する。


 だが、そんな楽しい生活に突如亀裂が走る。



 なぜか翌日、学園が急遽休みと言い渡されるのだった。

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