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王女が2人もいる

 「あ、あれっ‥‥‥?」


 アイトは目を覚ますと、学園の医務室にいた。


 そして、マリアはもういなかった。その後、アイトはすぐに帰宅した。


 アイトはなんでマリアに殴られたのか全く理解していなかったのである。




 翌日。


 朝早くに起きて制服に着替え、寮で朝食を食べて外に出る。


 学園付近を歩いていると、門の付近で仁王立ちしている自分と同じ黒髪黒目の女の子が。


 アイトは昨日のことを思い出し、穏便に通り過ぎようとする。


 「お姉ちゃんが待ってるのに無視すんな!!!」


 「グェッッ」


 だが首根っこを思い切り掴まれ、アイトは呻き声を出す。


 「え? 俺を待ってたの?」


 「そうに決まってるでしょ!!あんたとアリサはお姉ちゃんが守ってあげるって約束忘れたの!?」


 本気で思い出せないアイト。しかも昨日自分を倒した張本人に言われても違和感しかない。そして周りの視線が痛い。


 「ほらっ、教室まで送ってあげるから!1年Dクラスよね!」


 「はい、そうです‥‥‥」


 もはやなんで知ってるかを聞く気力すら湧かないアイトだった。




 「着いた! それじゃアイト、また後でね!」


 「は〜い‥‥‥はぁ」


 マリアが教室前から去っていった。アイトはすでに目立ちまくったおかげで気が萎えている。




 魔法や歴史学の授業などが終わって正午。


 「アイト、来たわよ!」


 「な、なに?」


 「私の友達がアンタと話してみたいって!向こうも妹がアンタと同じ新入生らしいわよ!」


 「いやそんなことどうでも」


 「早く行くわよ!!」


 「話聞いてっ!?」


 腕を思い切り掴まれ意味不明な力で引っ張られていくアイトだった。 





 食堂。アイトたち4人は目立ちまくっていた。


 「あ、アイト・ディスローグです。1年Dクラスです。よ、よろしくお願いします」


 「はい、よろしくお願いしますね。では次は私が」


 目立つのは仕方なかった。アイトの前には、グロッサ王国の王女が2人もいるのだから。


 「ステラ・グロッサ。3年Aクラスです。マリア先輩にはいつもお世話になっています」


 「ふふん、そんなことないでしょっ」


 「マリア先輩からよく聞いていたのでぜひお話ししてみたかったの。よろしくお願いしますね♪」


 「は、はい。よろしくお願いします」


 アイトはとりあえず返事するだけで精一杯。



 ステラ・グロッサ。グロッサ王国第1王女。


 水色の綺麗な髪を背中あたりまで伸ばし、綺麗な水色の目をした超絶美人。話しかけるのも恐れ多いと感じるアイトにとって間違いなく関わりたくない相手の1人である。


 「ごめんなさいね。兄さんは今日任務に出ているの。ぜひお会いしてもらいたかったのだけど」


 ステラが申し訳なさそうに言う。


 「いやお気遣いなく」


 アイトは苦笑いを浮かべて手を振る。ちなみに、彼の本心はこうである。


 (聖騎士の魔眼持ちの王子に会うなんて絶対いや)



 「ルーク先輩は単独任務だから仕方ないわね。隊員の私も出番無しだし。先輩、ちゃんと休めてるかな」


 すると、マリアから穏やかじゃない発言が飛び出た。アイトは思わず机を叩いて見つめてしまう。


 「!? ちょっと待って?? 姉さんが隊員?」


 「あ! あんた知らないのね?私が『ルーライト』に所属してるってこと!」


 「ルーライト??」


 素直に聞き返すと、マリアは呆れた様子を見せる。


 「アンタ‥‥‥そんなことも知らないの??『ルーライト』はルーク先輩が隊長を務める王国内の実力者で構成される精鋭部隊よ」


 「‥‥‥うぇ???」


 アイトは全く知らなかった。姉が王子の精鋭部隊に所属していることに。


 (もしかしてすごいことでは??)


 「今はそんなことよりステラ、あんたの妹ちゃん紹介して!」


 アイトがもっと聞こうとしていた矢先に話をぶった斬るマリアである。


 「ほらユリアちゃん、ご挨拶」


 ステラの隣に座る銀髪少女が、意を決した様子で口を開く。


 「は、はい!ユリア・グロッサです!1年Aクラスです、よろしくお願いします!」


 ユリア・グロッサ。グロッサ王国第2王女。


 銀髪ロングで綺麗な青い目。今年の新入生代表。とにかく同級生の中でアイトが1番に関わりたくない相手。


 「ユリアちゃん、新入生代表だって?さすがステラの妹ね」


 「!?」


 ステラ王女のことを呼び捨てにする姉に恐怖を覚えるアイト。彼が戦慄する間にも、3人の会話は続く。


 「それは試験は魔法が重視されてたからです。わたし、すっごく運動苦手なんです!」


 「そんな謙遜しなくてもいいわ。アイト、あんたも私の弟なんだから負けてられないわよ!」


 「マリア先輩からは魔法の扱いがお上手だと話は聞いています。ぜひ機会があれば見せて欲しいです。アイトくん、これからユリアと仲良くしてあげてね?」


 「は、はあ」


 かろうじて返事をするアイトだが、内心は穏やかではない。


 (え、もしかして魔法のことバレてる?いつ見られた。まさか姉さんは魔眼持ちか?)


 そんな疑いを抱く間にも、ユリアに話しかけられる。


 「あ、アイトさん。よろしくお願いします」


 「は、はい。お願いしますユリア様」


 「様はやめてほしいです、同い年ですし、これから仲良くしたいですから」


 「わ、わかりましたユリアさん」


 「ありがとうございます!姉さん、初めて友達ができました!」


 「よかったわねユリアちゃん、マリア先輩に頼んで正解だったわ♪」


 (俺のここに呼んだのは、あんたの策略か)


 逆らえないアイトは心の中でしか悪態をつけない。


 「あんたたち緊張しすぎよ。とりあえず好きな異性の好みでも話したら?」


 (鬼か!!? いやもともと鬼だったわ!!)


 これ以上ここに居続けるとボロを出してしまうと察し、アイトは咳払いをしながら落ち着こうとする。


 「あ、そろそろ昼休み終わるし、俺は戻るよ」


 そして、この場から離れようと立ち上がった。


 「あ、あの! 次の授業って何ですか?」


 だがユリアに話しかけられ、無視して去るわけにもいかなくなる。


 「え、え〜と、王国史ですね」


 「わたしも一緒です! A、Dクラスの合同授業、わたしも一緒に行っていいですか!」


 合同授業。他のクラスと友好関係を築いたり、また切磋琢磨するために行っている授業。


 (まさか次の授業が被っているだなんて!ど、どうする‥‥‥断ったら俺が嫌がってるみたいじゃん。しかもステラ王女がキラキラした目で見てくるし!)


 アイトはこう思うのだった。


 (こんなん、逃げ道ないでしょ‥‥‥)


 もう、観念するしかないと。


 そして精一杯笑顔を作りながら、優しく話しかける。


 「い、行きましょうカ、ユリアサン」


 「!! はいっ!」


 ユリアは花が咲いたような笑顔を見せる。こんな笑顔見せられたら、もう断れなかった。


 エルジュ代表『天帝』レスタ。今は翻弄され続け、全く良いとこなし。


 結局次の授業はユリアの隣で受けることになり、視線地獄に晒されることになった。


 アイトの学園生活、早くも穏便ではない。

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