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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
序章 誕生と組織結成までの軌跡

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初めての魔法

「3人とも! そろそろご飯よ〜!」


 母親、カアラ・ディスローグの声。三児の母である彼女は、家事全般完璧超人。


「ご飯だって! 行くわよ!」


「え、でもまだ本の続きが」


「つづき〜」


 この6年を過ごして、アイトはこの世界について少しずつ知っていった。


(読みたかったな〜)


 まず自分の名前、アイト・ディスローグ。

 前世と同じく黒髪。今のところ、秀でた能力は無し。そして、2人の姉妹がいる。


「ほら、2人とも早く行くわよ!」


 まずは姉、マリア・ディスローグ。

 黒髪ポニーテール。アイトの3歳年上。雷を飛ばして遊ぶ、お転婆少女。


「えぇ〜そんなぁ」


 つぎに妹、アリサ・ディスローグ。

 黒髪ツインテール。アイトの1歳年下。少し内気で家族が大好き。


「続きはご飯の後に教えてあげるから」


「はい」


「もっと聞きたいぃ〜」


 アイトは素直な返事をし、アリサが年相応の駄々を捏ねる。明らかに、違和感があるのはアイトの方である。


「アリサも早く行くわよ」


「そんなぁ〜」


 本の続きというのはこの世界の歴史について。こっちの世界の文字をアイトはまだあまり読めないため、姉に本の内容を教えてもらっていた。


「今の時期、この地域って寒いの。早く食べないと冷えちゃうわ」


 まずアイトたちが住んでいる家は、グロッサ王国の領地内‥‥‥北にある。冬は相当寒い。


「食事の作法も学ばないとね。学園に入学して、ディスローグ家の評判を落とさないように」


 貴族の義務教育として、15歳になると王都のグロッサ王立学園に入学することになる。


「それに、早く食べないと怪盗に盗まれちゃうかもしれないわよ〜?」


「い、いやっ! 早く食べるっ」


 それに怪盗などという、前世では作り話でしかない者を実在していた。魔法があるこの世界では、無理もない。


(色々ある世界だなぁ)


 一般人として過ごしていくと決めたアイトにとって、世界の厄介事は正直どうでもいい。今の内容も、貴族としての義務教育だから学んでいるだけ。


(習う事多いなぁ‥‥‥いかにも貴族って感じだ)


 普段は父が雇った家庭教師が、アイトを含む3人の子どもたちに武術や魔法、そして教養など‥‥‥様々なことを教えた。


「はぁ、はぁ、はぁ」


「どうしたのアイト〜? あんたは私の弟なんだから、もっと強くなってもらわないとね!」


 特に、実戦訓練はキツかった。アイトは息を乱しながら、悠々と木剣を振り回す姉を見つめる。


(姉は9歳だが、俺はまだ6歳だぞ。小学1年生じゃん。低学年じゃん。小1で誰がこんな訓練を受けるんだ)


 アイトは前世の認識を、まだ捨て切れていなかった。

 また、彼は教えられた魔法を誰にも見られてない場所で試し打ちしていた。理由は目立ちたくないから。


「あ。出た」


 ちなみに、彼は魔法をそこそこ使えた。

 だがこの年齢で色々な魔法を発動しすぎると、親から将来を期待されるかもという考えがよぎる。

 思考は現代人であるアイトにとって、価値観が大きく異なる異世界の荒波には揉まれたくなかった。


(無双とかは、特別な力があればこそだ)


 結論、まだ幼くて魔法は扱えないことにした。姉のマリアは3、4歳の時点で雷飛ばして遊んでいたが。




 いつもの家庭教育が終わり、夜。


 「う〜ん‥‥‥」


 アイトは紙に文字を書き綴る。この時刻、彼は自分にとって1番重要なことを考えていた。

 それは一般人として平穏に、幸せに過ごしていくにはどうすればいいのか。アイトは自分なりにまとめていた箇条書きに、改めて目を通していた。


 ・外敵から自分の命を守ること


 この世界には魔物がいるため、自分の命くらいは自分で守る必要がある。よって強くなる必要があるという結論。

 例えば周辺にドラゴンがやってきて、家を崩壊されようとした時に、自分と家族を守れるくらいの力が必要だと。


 ・魔法はできるだけ使えるようにする


 魔法は使えれば使えるほど、自分の生活が快適になるとアイトは考えた。使えて損する時は基本無いと。その2つから、導き出される結論はこうだった。


(念の為、できるかぎりは強くなろう)


 新たに、この世界で生きていくための目標が定まった。


「よし! これくらいかな!」


 ‥‥‥まあ、散々考えた結果が2行ということは、あまり突っ込まない方がよさそうである。



「よし、やるか!」


 アイトは、さっそく行動に移す。自分のやりたい事は、すぐに実行する男である。


(誰にも知られずに、鍛えるなら‥‥‥やっぱ夜だよな)


 そして、夜にこっそり抜け出しての特訓を始めていく。ちなみに、最初は普通にバレた。


「どこ行ってたのよぉぉッ!!?」


「にいさんがどうしたの?」


 夜明け頃に帰ってくると家族全員が起きていた。

 姉のマリアが泣きながら抱きついてきた。妹のアリサは何のことかわからない様子。


「どこ行ってたの!? 心配するじゃないの!!」


 いきなり計画が台無しになりかけたのだ。

 そしてアイトは、両親に魔力のこもった説教をされたのだった。




 やがて、アイトは名案を思いついた。


(夜、深く眠らせれば‥‥‥気づかれない!)


 寝ている家族に魔法をかけ、普段通りの起床時間まで深く眠るように調整。

 そうすれば、夜は心置きなく特訓できるという案を。


「あった」


 家の本棚には、魔法について書かれた本がたくさんある。その中で、アイトが目をつけたのは睡眠魔法。さっそく、今晩に決行しようと決意する。


(そろそろだな‥‥‥)


 ちなみにアイトは6歳だが、もう自分の部屋で1人で寝ている。妙に大人びていると、家族からは思われているだろう。実際は、そんな次元ではないのだが。

 ちなみに、マリアとアリサは今も仲良く2人で寝ている。




 夜。両親のベッド前。


 「えぇ〜と、【スプーリ】」


 アイトは両親の額付近に手をかざして、昼に本で見た初級の睡眠魔法を試す。

 すると手に魔法陣が浮かび上がり、魔法の発動が証明される。


「よっし! これで間に起きる事なくグッスリ!! アリサには別にかける必要ないだろうし、あとは姉さんにかけるだけだ」


 アイトは意気揚々と歩き出し、姉妹の部屋の前に移動する。ここまでは予定通り。ここまでは。


「‥‥‥あれ〜アイトぉ?」


 一瞬で鳥肌が立つ。悪事を見られたかのような罪悪感が、アイトの心に湧き上がる。


「どうしたのー? 寂しいならお姉ちゃんと一緒に寝るぅ〜?」


 姉、マリアと廊下で鉢合わせてしまう。一階から上がってきた彼女は、おそらく水を飲みに行っていた。

 だが、アイトには悠長に会話する余裕は無く。


「【スプーリ】!!!!!」


 容赦無く、睡眠魔法を掛けた。


「アイ、ト‥‥‥」


 すると、マリアが立った状態から‥‥‥ゆっくりと後ろに倒れていく。


「ぁ‥‥‥‥‥‥」


 そして‥‥‥仰向けに倒れ込んで、豪快に寝息をかき始めた。


「や、やべっ! ついやっちまった‥‥‥!!」


 アイトはまるで、感情的に罪を犯してしまったかのように呟く。咄嗟にマリアを抱え、すぐベッドに寝かせる。それは証拠隠滅のようだった。


「あ。加減間違えたかも‥‥‥」


 ちなみに発動した睡眠魔法を、アイトは焦って魔力を少し多くしてしまった。


(ま、まあよく眠れるだけだし、いいのかな?)


 たかがよく眠れるだけ、つまり健康的。そう捉えたアイトは、夜に心置きなく特訓を行った。

 夜に特訓すると、睡眠時間が削がれるのでは‥‥‥という意見もあるかもしれない。


 だが、アイトは完全に手を打っている。

 彼は特訓が終わって1時間ほど仮眠を取る時、自分にも【スプーリ】をかける。これにより、質の良い睡眠を取っている。

 

「ふぁぁぁ〜‥‥‥朝か」


 そして、8時間の睡眠と同じ効果が見込めるという卑怯な一手。アイトの策は、かなり用意周到といえる。

 異世界でなければ、まず不可能な事を行う効率厨こと‥‥‥アイト・ディスローグ。



「‥‥‥んぁ?」


 ちなみに、初めて【スプーリ】をかけた日の朝‥‥‥マリアが起きてきたのは昼前だった。妹のアリサが、必死に身体を揺らし続けていたという。


(ほんとに目が覚めてくれてよかった‥‥‥もっと加減して魔法を発動できるようにならないと)


 相手に放った初めての魔法‥‥‥睡眠魔法。

 後に『天帝』と呼ばれる彼にとっては、絶対に知られてはいけない秘密なのである。


(今日からは気を付けて睡眠魔法かけないと‥‥‥)


     『天帝』誕生まで、残りーーー。

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― 新着の感想 ―
Xから来ました、ミルと申します。 王道に乗りつつ、新鮮な世界観と展開がとても気に入りました!!
Xから来ました! 最初のアイトの描写的にクール系かと思いきや、幼少期時代の描写に移り変った途端かなり面白いシーンが続き、意外で面白いと思いました!
スプーリ、良い魔法だ(笑) ハリーポッターに出てきて、ハリーたちがよなよな外に出るのに使ってそうです(笑)
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