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異名

 グロッサ王国、周辺の平原。


 アイトが周囲の魔物を全て斬り伏せると、『黄昏トワイライト』の全員が戦闘を終えていた。逃げていく魔物を深追いはしない。


 それは近辺の村を守ること、王立学園を封鎖させないことが目的だからだ。


 「みんな、よくやってくれた」


 アイトは自分の前に集まった10人を称賛する。


 「いえ、当然のことです」

 「貴様に褒められても嬉しくない」

 「ありがと! でも私1匹しか倒してない!」

 「はーめんどくさかったよー」

 「はっ! 余裕だったぜ!」

 「がんばったミアに撫で撫でしてお兄ちゃん♡」

 「ありがとうございます」

 「レーくん、ありがとす」

 「あ、ありがとうございますぅぅぅ!!」

 「大変だったよ、代表」


 黄昏のメンバーがそれぞれ、アイトの称賛に反応した。


 その後、真っ先に言葉を発したのはミアだった。


 「ところで銀髪女、1匹しか倒してないの?あ〜あ、これだからお兄ちゃん以外の生物は」


 「ミア、口が過ぎるよ。カンナに謝って」


 すかさずメリナが注意する。だがカンナは全く気にしてない様子だった。


 「まあまあっ! 事実だし仕方ないよ〜!」


 それどころか憂いのない笑顔を浮かべている。


 「だからミア、ごめんね。レスタくんの【打ち上げ花火】したらみんな驚いて逃げちゃったの」


 「‥‥‥ッチッッ」


 嫌味が全く通用しないことを悟ったミアは、不機嫌そうに舌打ちをした。


 「ミア。舌打ちしない」


 「メリナ、ミアの、ほごしゃ?」


 口下手なリゼッタが珍しく意見を口にする。


 カンナたちの会話を聞きながら、アイトは【打ち上げ花火】だったのかと納得していた。


 あれは、攻撃手段じゃない。コピーされるほどの代物でもないと思いながら。


 「急いで戻ろう。これ以上の長居は無用だ」


 アイトがそう言った途端。新たな気配を感じとる。


 「お、おのれぇぇ‥‥‥」


 魔物の死骸の山から、生き残っていた1匹が飛び立っていくのが見えた。


 「あれ、もしかして魔族じゃないっ?」


 カンナがそう言うと数人の目の色が変わる。それは、飛び去っていく魔物を


 「面白え!! それじゃあ俺が!」


 「レスタ様、私がやります。みなさん下がっていてください」


 「金髪女、なんか疲れてるみたいだけど大丈夫〜〜?ミアがやってあげようか〜?ちゃんと見ててねお兄ちゃん♡」


 「レーくん、私に、まかせ」


 カイル、エリス、ミア、リゼッタの4人が自分が戦うと言いだす。先ほど討伐した魔物と違い、魔族は生態系でかなりの上位に入る。



 魔族には下級と上級に分類され、下級は一匹で一つの村を上級は一匹で一国が滅ぼされると言われている危険生物だった。


 つまり下級であっても魔族を討伐すれば、アイトに自慢できる。戦うと言い出した者はそう考えているのだ。




     「俺がやる。みんなは下がっててくれ」




 まさかのアイト自身が1人で戦うと言い出した。


 これまでのアイトの性格を知っていれば、この発言は病気を疑われるレベル。


 もちろんアイトがそう言ったのには理由があった。それもしょうもない理由が。


 (実力が原因で代表を辞める事になったらその後が怖すぎる、絶対消される‥‥‥!だから今みんなにアピールしておかないと!)


 そんな情けない理由で珍しく自分から戦うと言い出したのだ。


 代表であるアイトの意見にエリスたちは逆らわない。彼女たちはアイトから少し距離を空ける。



 「人間ごときがっ!! 調子に乗るナァッ!!!」


 魔族の凄まじい雄叫びが周囲に響いた直後、翼をはためかせてアイトヘと迫っていく。


 (そろそろかな)


 アイトは両足に【血液凝固】を施す。バチンと音が鳴った直後に跳躍し、下から下級魔族の腹に剣を突き立てた。


 「グァァッ!!?」


 響き渡る魔族の悲鳴。アイトは間髪入れずに剣を突き立てる。


 「よいしょ」


 やがて剣を抜いたアイトは魔族の足を掴みそのまま落下する。


 アイトは魔族の足から頭へ掴み直し、引き続き地面に落下する。


 「!? ま、待てっ!!」


 「待たない」


 魔族の悲痛な叫びに即答したアイトは、落下の重力を乗せて魔族の頭を地面に叩きつけるーーー。



           「【床ドン】」



 次の瞬間、魔族の頭と地面が両方陥没し、周辺に凄まじい衝撃が広まった。


 パワーアップした【床ドン】は、今ではアイトの必殺技の1つになっていた。必殺技と思っているのは本人だけだが。


 「ふう、終わった」


 魔族はすでに生き絶えていた。初めて魔族を討伐アイトだったが、この時に考えていたのはただ1つ。



    (これで実力をアピールできたかな!)


 アイトが満足した様子で佇んでいると、エリスたち『黄昏トワイライト』が近づいてくる。


 「さすがレスタ様。私の主です」


 エリスがアイトに近づいてそう言った。


 「まあ、代表だから。せめてこれくらいはな」


 「私、ずっとあなたの背中を追い続けます」


 「はは、追い抜かされないように俺もがんばるよ」


 アイトはエリスの発言で自分の実力を認めてもらえたと内心ホッとしていた。もちろんそれをアイトは口に出さなかった。


 「仮にもボクの上に立ってるからには

  このくらいは最低限やってもらわないとな」


 ターナが微妙に上から目線の発言をすると、当然それに黙っていられない者がいる。


 「何言ってんの黒髪チビ。お兄ちゃんにそんな口聞くなんて1000000000000(1兆)年早いから」


 そう、ミアである。ターナの発言から1秒にも満たない間に言い返していた。


 「すぐに突っかかってくる貴様はやっぱりまだ子どものようだな」


 「ミアより年上のくせに子ども体型の女に言われてもね〜。こんな性悪女は無視無視。お兄ちゃんすっごくカッコ良かった♡」


 「‥‥‥(イラっ)」


 珍しく冷静沈着なターナが、冷静じゃなくなる。それを察知したカンナは両手を振りながら話を変えた。


 「まあまあっ!これで一件落着だねっ!!すごいねあの技!模倣コピーできるかなっ?」


 「にんむ、終わり、ばんざい。いぇい」


 「これくらいやってもらわねえと俺の好敵手ライバルとは呼べねえわな!」


 「早く帰っていい? 寝たいー」


 「さすがエリスさんの尊敬する人です。一連の佇まい、感服しました」


 「そ、それくらい、ボスにもできますよっ!!」


 「よし。そろそろあの魔結晶回収してくるね」


 一人一人が実力者である彼らは個性が強く、もはやアイトの手に負えない。


 (俺、こんな凄い人たちをまとめていけるのっ?)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「‥‥‥何だったのでしょうあの人たち。助けてくれたのでしょうか‥‥‥?」


 ユリアはアイトたちの活躍を一部始終見ていた。


 魔物たちが吹き飛んだと思うとどんどん数が減っていっあ。


 途中で空に凄まじい破裂音と火花が飛んだ後、大柄の魔物が一瞬で倒された。


 そしてその直後に離脱していった人たち。見ていたのは遠くからのため詳しくはわからなかったが10、11人くらいだった。


 「と、とにかく報告してきます!」


 1人の兵士がそう言って移動していく。ユリアはみんなに話しかける。


 「とりあえず、窮地は脱しました!被害がなくて本当に良かったです!」


 ユリアがそう言うと兵士たちが歓声を上げる。こうしてグロッサ王国近辺の村は全て守られた。


 「本当に、何者だったのでしょうか」


 ユリアは謎の少数集団のことが頭から離れないのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 『エルジュ』本拠地。


 メリナが設置した魔結晶から見える光景を同時刻に見ていたラルドや構成員たち。


 ラルドを含めた全ての人がアイトと【黄昏トワイライト】の戦闘に魅了され、戦闘が終わった後に歓声を上げた。


 この戦いはエルジュの中でずっと語り継がれることになる。そしてアイトと『黄昏トワイライト』に訓練生たちが異名をつけるほど盛り上がった。



          エルジュ代表


      Noナンバー.0 『天帝』 レスタ




     エルジュの精鋭部隊《黄昏トワイライト


      No.1 『覇王』  エリス


      No.2 『死神』  ターナ


      No.3 『自由人』 カンナ


      No.4 『水禍』  アクア


      No.5 『脳筋』  カイル


      No.6 『黒薔薇』 ミア


      No.7 『瞬殺』  オリバー


      No.8 『腐乱』  リゼッタ


      No.9 『破魔矢』 ミスト


      No.10 『軍師』  メリナ




 アイトと黄昏トワイライトは神格化され、黄昏に所属したいと他の構成員は前よりも鍛錬に精を燃やすようになる。


 アイトとターナは後に異名をつけられていることを知り、死ぬほど恥ずかしくなったのは言うまでもない。


 こうして、アイトとその仲間たちの物語が幕を開ける。

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