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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
序章 誕生と組織結成までの軌跡

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これが戦闘、これが異世界

「ーーーくっ!?」


 上がるように迫り来る剣の連撃を、なんとか短剣で捌くアイト。


(このオッサンっ、めちゃくちゃ強えッ!!)


「うおおお!!!」


 アイトは隙を見て反撃を繰り出すが、ラルドが軽々と避けて後ろへ飛ぶ。


「なかなかの実力だ。しかもまだ子どもの身で」


「だろ? そ、そう思うなら‥‥‥子どもに華持たせてくれない?」


 アイトはビビりながら必死に言葉を紡ぐ。


「戯言を、それで貴様が満足するのか?」


(えっ、超満足するけど? するに決まってるだろ別に戦いたくないんだから!!)


「レスタ様、側近の女は気絶させました!」


「なんだと‥‥‥ミストが負けた? あのエルフの小娘、何者だ?」


 エリスが朗報をアイトに持ちかける。ラルドは少し驚いてるようだ。


「よくやった! 念のため【スプーリ】かけといて!」


「了解です!」


 エリスは即座に、睡眠魔法【スプーリ】をかけようとする。手口が完全に悪人側なのは気にしない。


「ーーーそれをみすみす見逃すとでも?」


 そう言ったラルドは凄まじいスピードで、エリスの背後に急接近して剣を振りかぶる。魔法発動中のエリスは反応に遅れている。


「させるかッ!!」


 だがアイトが後ろ手に風魔法で空気を飛ばす。空気を飛ばした反動で前進しラルドの目の前に猛追。


「せいッ!!」


 そしてラルドの背中を思いっきり蹴って吹き飛ばす。謎の声を発しながら。


(こいつの背中硬すぎっ、鉄板かよッ!? ちょっと足痺れてるわ!!)


 アイトは少し歯を食いしばりながら着地し、エリスへ視線を向ける。


「レスタ様! 私はこの女を抱えて離れます。アイト様の邪魔にならないように!」


「ああ! わかっ、え、、、?」


 するとエリスは凄まじい速度で離れていく。目を丸くして呆気に取られている、アイトを置き去りにした。


(ま、待って!!? 援護、援護してッ!?)


 そしてアイトはその絶叫を口に出す余裕が無かった。


「っぶな!!」


「チッ」


 次の瞬間にはラルドの猛攻が、抉り込むように襲いかかってきたからだ。


「まさかこの私が背後を取られるとはな。それに良い攻撃だった」


(いや自分から背中晒したでしょ!?)


 と思っているが口に出せないアイト。理由はラルドの猛攻(以下略)。


「くっ!!? うぐッ」


 そしてアイトは武器の押し合いに力負けし、体勢を崩して床に倒れる。


「ふんッ!!」


 ラルドが躊躇なく剣を振り下ろし、仰向けのアイトを突き刺そうとする。


(やべっ!!)


 アイトは咄嗟に右に転がる。ラルドの剣が身体に当たらず、そのまま床に突き刺さる。


「ッラァ!!」


 すぐに立ち上がったアイトは腰を捻って右足を繰り出し、剣の柄を握っているラルドの左手を‥‥‥勢いよく蹴飛ばす。


「グッ!?」


 ラルドがうめき声を上げる。剣はラルドの手から離れ、床に落ちて音を立てる。


(よしっ、これでボスに武器はない!! あとは短剣で有利に立ち回ってーーー)



          バチンッ。



 そんな音が響いた刹那。何か黒い影が目前に迫る。


「ぐっ!? うぉぁぁぁッ!?」


 アイトは、背中から壁に激突していた。そして背中と脇腹を侵食する、凄まじい痛み。


「ガハッ‥‥‥」


 アイトの口から、酸素と濁った血がこぼれる。そして、顔の仮面が外れて床に落ちる。


(な、何をした? 全く見えなかった‥‥‥)


 意識が朦朧としているアイトは、佇むラルドの姿を見てようやく気づいた。彼の両足が、さっきよりも隆々としていることに。


「よもや私に【血液凝固】を出させるとはな。これを戦闘中に使ったのは久しぶりだ」


 【血液凝固】。ターナが言ってたラルドの切り札。


 ラルドは武器を弾かれた瞬間、両足に【血液凝固】を施す。つまり、ただ蹴飛ばされただけ。


「ぐっ、ぐぁッ‥‥‥」


 強化された両足での移動は目に負えない速度だった。一瞬でアイトの目の前まで移動し、腹に蹴りを入れてーーー勢いよく振り抜いたのだ。

 当然、アイトは全く見えていない。


(まさか、こんなに強いなんて‥‥‥)


 アイトは壁を背にしてなんとか立ち上がる。口から溢れ、垂れ落ちた血が床にボタボタと落ちる。


「あの攻撃を受けて立ち上がるとは。末恐ろしい少年だ。敬意を贈ろう」


 ラルドの賞賛は、アイトには全く聞こえていなかった。今、アイトの意識は()に向いていた。


(い、痛い‥‥‥床についてる赤いシミって、もしかして俺の血か‥‥‥?)


 それは‥‥‥床に付いた尋常ではない出血の理由を悟り始めたから。命を脅かされていないと、流れない血の塊。


(お、俺は殺されるのかっ? いやだっ、死にたくないっ!! 死にたくないっ、死にたくないっっ‥‥‥!!)



 ここでアイトは‥‥‥命を懸けた戦闘は、今回が初めてだと気づく。


 エリスを重装備の男から助けた時は、ただ相手が弱すぎた。ターナの時は向こうの攻撃は当たらなかったしエリスもいた。

 だからアイトは、これまで直感的に死を感じることはなかった。


(今まで勝てていたから気にしてなかったッ‥‥‥負けたらどうなるという結末をっ)


 だが今エリスは近くにいない上、アイトが明らかに劣勢。それにラルドには【血液凝固】という切り札まである。1回の攻撃を受けただけで、蹲るほどの痛み。

 アイトにとって、こんなにも死が近いと感じたことは今までなかったのだ。


「はぁっ、はぁっ、はぁっっ‥‥‥!!」


 その事実が、アイトを震え上がらせる。動悸が激しくなり足が震える。先ほど以上に息が乱れる。完全に恐怖していた。


(ど、どうするっ!? もう逃げるか!? でも背中を見せたら格好の的だっ!! さっき俺があいつの背中を蹴飛ばした時のようにっ)


 アイトは必死に、どうするかを考える。だが何も浮かばない。自分が死ぬ姿しか、想像できない。



        既に、敗北している。



(命の奪い合いっ、そんなの異世界なら当然なのに気づいてなかったッ‥‥‥!!)


 平穏に生きる、無双はしない。戦闘への意欲が低いアイトにとって、覚悟が足りていなかった。

 死という、単純明快な覚悟を。


(これが戦闘、これが異世界なんだ‥‥‥!!)


 アイトは激しく呼吸を乱しながら壁にもたれ、強敵のラルドを睨みつける。だが恐怖で支配されたアイトに、もはや敵への注意などーーー。


   「レスタ様!! お待たせしました!!」


 すると、待ち望んでいたはずの声が響き渡る。アイトは無意識に声がした方を向き、歯を噛み締める。


「さっきこの女に【スプーリ】かけ終わって‥‥‥!? れ、レスタ様っ! 大丈夫ですか!!?」


 ミストを抱えていたエリスが、目を大きく見開いて心配の声を上げたのだ。

 そんな彼女を見て、アイトの脳裏に浮かんだのは‥‥‥決して、彼女の助力ではない。


「バカっ、離れてろッ!!! 殺されるぞッ!!!」


 純粋な心配と、恐怖。エリスが‥‥‥ラルドに殺されてしまうという最悪の未来。


「!! れ、レスタ様‥‥‥?」


「安心しろ、少年。あの小娘はまだ殺さない。聞きたいことがあるのでな」


 淡々と呟きながら、彼女を見て眉を顰めるラルド・バンネール。その目付きは、まさに歴戦の暗殺者。


「っ」


 アイトの心臓が、不自然に跳ねる。


「話を聞き終わったら殺すかもしれんが。まずは貴様を始末することが先だ」


 ラルドが振り向きながら話す言葉。


「っ‥‥‥ぁ」


 それを聞いて、アイトの中にはある感情が湧き上がった。


(俺が負けたら‥‥‥エリスが、殺される‥‥‥?)


 アイトは強く短剣を握る。だが、本人は握った自覚がない。


(‥‥‥嫌だ。嫌だ、嫌だ、嫌だ、いやだッ!!!)


 エリスとの関係は‥‥‥勘違いから始まったもの。決して綺麗な形で始まったものではないし、むしろ絶叫して嫌がっていたくらいだった。


「エリ、ス」


 だが一緒に生活し、一緒に訓練し、一緒に魔物を討伐したり、など。

 一緒に時間を過ごしていくことで‥‥‥エリスの存在が、自分の中で大きくなっていたことに。



     この窮地だからこそ、気づいたのだ。



 そんな今だからこそ、エリスの存在を強く認識する。負ければ自分が死ぬだけでは終わらないと。


「ぁ‥‥‥」


 そう、自分を慕ってくれるエリスも死ぬ。手を組んだターナも、相応の代償を受けることになる。


    それを強く自覚した瞬間‥‥‥弾けた。



     (エリスに手ェ出すな!!!!)



      煮え滾るような、怒りだった。



         「ぬっ!!!?」



 ラルドが驚いた声を上げる。アイトは予想外の凄まじい速さで接近し、振り抜く短剣が心臓に届こうとしていたからだ。


「悪あがきをッ!!」


 ラルドが短剣を持つ彼の手を振り払い、軌道をずらす。アイトの突きは、ラルドの体からわずか横に逸れてしまった。


「終わりだ!!」


 そして、ラルドが冷静に【血液凝固】を施した右足足の横蹴りで仕留めようとする。


「ーーーッ!!」


 アイトはわざと両足を伸ばしてうつ伏せになって床に倒れ、ラルドの横蹴りを回避する。


「!?」


 ラルドは蹴りを避けられたことに驚く。ラルドが蹴りを行ったことで、隙ができる。


「ッ!!!」


 そこからアイトはしゃがんだ流れで勢いよく足払いをする。それが見事にラルドの姿勢を支えている片足に‥‥‥刈り取る。


         「なにッ!?」


    ラルドを、床に転ばすことに成功する。



      「がァァァァァッッ!!!!」



 アイトは仰向けの彼の上に跨り雄叫びを上げ、心臓めがけて短剣を振り下ろす。今のアイトは完全にタカが外れている。まさに獣と変わらない。


「このっ!!」


 だがラルドは咄嗟に手首を掴んで短剣を阻止。だがアイトの力は凄まじく、ラルドが徐々に押されていた。


「貴様っ、まだこんな力が!? 小娘の前でカッコつけて死ぬ気かっ!?」


「はぁ!? 何言ってんだ!? 命掛けてまでカッコつけたい奴がいると思うか!? んなの割りに合ってねえだろ!!」


 叫んだアイトは眼球が飛び出そうなほど見開き、腕に力を込める。


「エリスとの生活を知ってしまったら、もうあいつがいない生活なんて考えられない!!」


「貴様っ、いったい何を言ってーーー」


「もしエリスを犠牲にして俺が生き残っても、これからの人生ちっとも楽しくねえんだよ!!!」


 一方的に感情をぶちまける今のアイトは、まるで獣。自暴自棄になって突っ込んでいく、瀕死の獣。


「とっくに家族で大切なんだよっ!!! お前を殺すのことなんてーーー少しも躊躇わないくらいになぁぁ!!!?」


 アイトが大声で叫ぶ。右手が徐々に下がっていく。そして短剣は、ラルドの左胸まで残り数センチまで迫っていた。


「ぐっ!! がああぁッ!!」


 しかし、ラルドがすんでのところで両腕に【血液凝固】を発動。


「グあっっ!!?」


 そして、アイトは勢いよく投げ飛ばされた。アイトは背中から床に落ちる。


「っ‥‥‥!?」


 そして、アイトは仰向けに倒れたまま動かない。


「しぶとい小僧がぁっ‥‥‥!!」


 まだ、死闘の決着は着いていない。


 ◆◇◆◇


「アイトさま‥‥‥」


 私は強く胸を打たれていた。

 抱えていたミストを床に落としてしまったが、そんなことはどうでもよかった。


「あんなにもっ」


 アイト様が、あそこまで必死になっている姿を初めて見た。いつもは冷静で機転が効くけど何か間が抜けた事を言ったりして。

 でも、今のアイト様はまさしく激昂。戦闘に全神経を注いでるのは、初めて見た。


「なんて勇敢なんですかっ‥‥‥」


 【血液凝固】を扱う敵に果敢に挑む度胸、そして覚悟。彼の精神はもはや、同年代の域を凌駕している。

 さっきの攻防は明らかに、アイト様が優勢だった。ラルドはただ【血流凝固】に助けられただけ。

 暗殺組織のボス相手に圧倒するなんて。さすが、私の主。


「アイトさまっ」


 それに‥‥‥私のために、怒ってくれる。がんばってくれる。


「アイトさまっ」


 家族だと思ってくれてる。大切だと思ってくれている。本当に嬉しい。嬉しくてっ、涙がっ‥‥‥!


「アイトさまっ‥‥‥わたし‥‥‥わたしっ」


 これからもずっと‥‥‥あなたについていきますから。

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― 新着の感想 ―
自覚する瞬間て良いですよね⋯⋯やっぱりボーイミーツガールは自覚する瞬間が一番好きと言っても過言ではない⋯
バトルが好きで、バトルに飛びついてしまうクセがある。動線がキレイで読みやすい。
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