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何のご用でいたしましょう!?

 「よ、よく来ていただきましたっ!!

  今日は何のご用でいたしましょう!?」


 『ジュピタメルティ』会議室。一介の店舗で広い会議室があるのは、運営しているのがエルジュ構成員だからである。


 「こら、早くあの椅子と茶を持ってきなさい!!」


 そう指示を飛ばしたのはエルジュ戦力序列第16位、ルイーダ。パーマを当てた長い紫髪で切れ長の目。


 訓練生時代の成績と商術の手腕を評価され、今では『ジュピタメルティ』の店長を務めている。


 そんな彼女でも序列第1位から10位で構成された精鋭部隊《黄昏トワイライト》は、エルジュ代表『天帝』レスタに次いで憧れの存在。


 自分もその一員になりたいと日々がんばっているのだ。


 その内の2人が目の前にいる。だから畏まるのは仕方ないといえるだろう。ルイーダは粗相をしないよう細心の注意を払っている。


 さっき『天帝』が来ていたのだが、気づいていないためノーカウント。


 「ささっ! そちらへどうぞ!!」


 「わざわざありがとう。失礼します」

 「し、失礼しますぅぅぅ!!!!!」


 オリバーとミストは目にも止まらぬ速さで用意された豪華すぎる宝飾がついた椅子にそれぞれ腰を下ろす。


 「何のご用でございましょうか!

  なんなりと申しつけください!!

  すぐに用意させますので!」


 「いや、ここに来たのは情報収集のためなんです」


 「そ、そうですか! 出過ぎた真似を!!」


 ルイーダは咳払いをして落ち着きを取り戻す。そんな彼女の様子を見たオリバーは話を切り出す。


 「これは僕たち3人だけの話にして欲しいのですが、

  ここに潜入していたターナからの消息が

  昨晩から途絶えました」


 「!? た、ターナ様がこちらに来ていたのですか!?

  それにあのお方の消息が!?」


 ルイーダは椅子から立ち上がりそうになる。またしても憧れの名前が出て来たので驚いてしまったのだ。だが事の深刻さにまたも咳払いをして動揺を隠す。


 「はい。ターナは今までラルド教官に定期報告を

  行っていたのですが、今日の朝は報告なし。

  しかも今まで連絡が繋がらないらしいです」


 「な、なんですと!?」


 「その様子だと、何も情報は無さそうですね」


 「申し訳ございません!! 今初めて聞きました!!」


 「ひゃあぁぁ!?」


 ルイーダは勢いよく立ち上がり頭を下げる。それに驚きこの場で初めて声を出したミスト。


 「いや責めてるわけじゃないですから。落ち着いて」


 「は、はひ」


 オリバーが爽やかに微笑むが、それが逆にルイーダには逆効果だった。心がドキドキして落ち着かない。もしこの場に他の構成員がいれば歓喜の声が上がっていただろう。爽やか美少年であるオリバーのファンはかなり根強いのだ。


 「ミルドステア公国で最近何か噂はありませんか?

  どんなことでも構いませんから教えてください」


 「そ、そうですね‥‥‥最近だと舞踏会の話が多いかと」


 「舞踏会?」


 「はい。公国内でも最大高位の爵位を与えられた

  三大貴族の1つ、ヴァルヴァロッサ家が主催の

  伝統ある舞踏会です。公国内で1番有名かと」


 「なるほど。最近までターナが滞在していたことを

  考えると、その舞踏会が怪しいですね‥‥‥

  わかりました! ありがとうございます」


 「そんなとんでもない! ありがたきお言葉!!」


 ルイーダはオリバーよりも3倍増しの声で感謝を述べる。


 「それと最近の公国内の様子は既に?」


 「ええ。本来はその話を聞いて僕たちが来たんです」


 「! 手を煩わせてしまい申し訳ございません!!」


 ルイーダはまたしても勢いよく頭を下げる。


 「気にしないで。僕たちは同じ仲間なんですから。

  傷つけられて、黙って見てるわけにはいかない」


 オリバーとミストがここに来た本来の理由。それはミルドステア公国で活動しているエルジュ構成員が襲撃を受けたこと。


 襲われた構成員は重傷であと一歩で命にまで及んでいた。今は本拠地で静養中である。


 「まだゴートゥーヘルの仕業という

  確証は得ていませんが、必ず突き止めます」


 「いや、奴らではないと思います」


 「え? ち、違うのですか?」


 オリバーの言葉にルイーダは思わず無意識で聞き返してしまう。ゴートゥーヘルの仕業だと思い込んでいたからだ。


 「奴らの仕業なら襲われた構成員は生きていません。

  奴らは性根が腐ってますから。

  絶対に根絶やしにしなくてはならない‥‥‥」


 ルイーダは息を呑んだ。これまでは爽やかな美少年だったのが今では殺気に満ちた復讐者の目をしていたからだ。


 「ひいっ!!?」


 そんな彼を見たミストはいつものごとく驚きの声を上げる。


 その声を聞いて冷静さを欠いていたことに気づいたオリバーは深呼吸して自分を落ち着かせた。


 「‥‥‥ですから奴らの仕業ではありません。

  ということは他の勢力かもしれません。

  レスタさん、そしてエリスさんの邪魔をするなら

  僕たちが排除しなくてはいけませんから」


 「‥‥‥そうですね。その通りです。

  私たちも黙って見過ごすわけにはいきません。

  微力ですが、私たちも助力致します」


 「ありがとうございます」


 その後、オリバーとルイーダは情報を共有していく。そして話は舞踏会へと戻る。


 「もし舞踏会に必要な服がありましたら

  何なりと申しつけてください!

  当店の最高品質のものを全身全霊で見繕います!!」


 「ははっ。ありがとうございます。

  今はその予定はありませんが、

  もしそうなれば是非よろしくお願いします。

  時間を取っていただいてありがとうございました」


 「あ、ありがとうございましたぁぁ!!!」

 「あ、ありがとうございましたぁぁ!!!」


 オリバーが立ち上がってお辞儀をした直後、声が重なるミストとルイーダだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ミルドステア公国内のとある屋敷。


 召使いの女性が屋敷の主人の前で頭を下げる。


 「ご報告いたします。昨夜の一件についてです」


 「我が屋敷に無断で侵入とした愚か者か。

  それで、どうなった?」


 「まだ彼らからの連絡はありませんが、

  無いということは今も追跡中。

  そのため再び侵入することはないかと」


 「それならよい。そんなことよりも準備はどうだ?」


 主人の男にとっては侵入者の件よりも気になることがあった。それは彼が依頼しているからである。


 「明日の朝には整います」


 「なら整い次第すぐに始めろ。

  必ずハーリィの代わりを見つけるのだ」


 「かしこまりました。最善を尽くします」


 召使いの女性は一礼した後、屋敷から飛び出していった。


 そして翌日、とある催しが開かれることになる。

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