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蒼天のシュプリーム!【短編版】

作者: 小鳥 遊

ロボットものが書きたくなったので勢いで書きました。

今回はパイロット版みたいな感じで作ったので評価がよければ長編連載するかもしれません。

『おはよう、アオシ。今日もいい朝だね』

機械的な音声が目覚まし機能となって俺を叩き起こす。おまけに部屋のカーテンを自動で勝手に開ける始末......。いい迷惑だ。


「シュプリー、今日は土曜だろ。学校ないんだから静かに寝かしてくれよ」


『残念ながら、君はバディロボ基礎学の補習授業がある。いい加減、ロボットアレルギーを直してくれないと......。それに、私の正式名称はシュプリーム。Dr.エメット・ムーバーによって開発された持続可能エンジン「ムーバーエンジン」とジンタ・S・ムラサメつまり君の亡くなったお父さんの作った人工骨格「シュプリームフレーム」によって』


いつもの説教モードが始まった。父親が偉いことは周りの状況から見てわかる。父の作ったものでどれだけの人間の助けになっていることか、そしてその金によって俺たち家族が今日を生きていられるのも分かっている。でも、俺はこいつが嫌いだ。



「あああああ、カタカナばっかりで頭に入ってこねえ! しかも朝から説教すんなよ、これだからロボットは......。もういい! さっさと学校に行くぞ!」


『朝ごはんを食べないと、頭に血糖がいかずボーっとしてしまうぞ』


「ロボットならもっとそれっぽく理論的に話せよ」


『こういうプログラムにしたのは君じゃないか。さあ、君の好きなテック・アカデミアに行こう!」


簡単に着替えを済ませて相棒となるロボットとともに家を出る。

よくよく街を見渡すとロボットと人間が共存している。シュプリームフレームを利用して軽々と荷物を運ぶ人。交通整理をするロボット。あくせくと接客をするコンビニ店員型ロボット。目の見えない人の杖や盲導犬代わりとして支えるロボット......。たくさんの役割をもつロボットが人間をともに暮らしている。そして、俺たちはそのロボットを開発したり、新たな役割をもたせるための英才教育機関『テック・アカデミア』で与えられたバディロボとともに学んでいる。


『スクールバスだ! 乗り遅れるとまたキンゴ教諭せんせいにどやされるぞ~』


「うるさいな。分かってるって」


「アオシ・ムラサメ」と書かれた学生証をバスの学生証スキャナーにバンッと読み込ませて、ふぅと息をつき席に座る。


「おいおい、誰かと思えばムラサメ博士の息子様とそのポンコツロボじゃないか!! 今日は目覚まし機能オンにしてたんだな。偉い偉いwww」


後の席でふんぞり返って座り、自分のバディロボを足置きにしている金髪で耳にダサいピアスをつけた学校イチの天才「レオン・グランフォルト」が俺たちに言いがかりをつける。というか、なんでこいつが土曜に学校行こうとしてんだ? まさか、補習ではないだろうし......。


「まあな、正常に起動してよかったよ。そっちのエクスマギナだっけ? そんな使い方したら先生に怒られないか? ロボット倫理に反するって」


ロボット倫理......。俺はぶっちゃけロボットの扱いはどうしたって構わない。だけど、人型が簡単に足蹴にされているのを実際に見ると気分が悪い。


「いいんだよ。これも俺がプログラムした機能のひとつなんだ! 役割ってやつさ。別に奴隷みたく扱ってんじゃあない。それともなに? 文句でもあんの? おまえの父親が作ったから怒ってんのか?いや、ロボットに襲われる悪夢にうなされて自殺した父親の肩なんて持ちたくないかな」


『レオン・グランフォルトくん、少しいいかな?』


シュプリームは走るバスの中、乱れずに立ち上がり、颯爽とレオンの元に歩き出す。


「おい、シュプリー。何しようってんだ」


鉄の拳が彼の頬をかすめ取る。


『「ロボットは人間に危害を加えられない」これが君たちの課した僕たちへのルールだ。それがあってよかったね。君は君が罵倒した博士に守られたということになるけど、なにか言うことは?』


「旧式でなんの役割のない素体のくせに......。正義の味方ぶりやがって、とっとと廃棄されちまえ」


『廃棄される前にきっと、アオシが僕の役割を決めてくれるはずさ』


だろ? といわんばかりにこちらを振り向き、その顔の電光掲示板のような瞳でウインクしてくる。


バスが止まった。学校に着いたんだ。白く、巨大で美しい学び舎。理路整然と並ぶ窓ガラス。家庭用掃除ロボを大きくしたようなものが校門前を巡回している。この学校で俺は、「最高」という名前を冠したロボット「シュプリーム」を相棒にしている。


学校では色々と学ぶことが多い。プログラミング、AI技術、科学史、ロボットとの共存の歴史......。そしてバディロボとの連携。


補習授業の教室に入るとまさかのレオンもそこにいた。


「土曜に学校来るのはおかしいなと思ってたけど、お前も補習だったのかよ。レオン」


「オレは成績トップクラスの優等生エリートなんだぞ? お前みたいに試験で赤点取ったわけじゃーない。たまたまその日に熱を出して欠席しただけだ」


「ほんとは赤点とるのが怖かったんじゃねえの?」


「なに、やるのか?」


「そんなに喧嘩したいなら、お前たちで一戦交えたらどうだ? ローグファイト」


ニュルっと顔をだし、俺たちを蛇のように睨みつける長髪のやせ形、そして長身の男性。我らがキンゴ・シルバーウィーク教諭だ。


「ゲッ、キンゴ教諭......。いつからいたんすか」


この先生、細身で幸薄そうな顔つきのくせにやけにスパルタで、俺たちを冷酷に教育する。特に俺には当たりが強く、毎回いがみ合っている。


「せ、せんせー! 聞いてくださいよぉ、ムラサメくんとそのバディロボがぼくになぐりかかろうとしてきたんですよぉ」


こいつ、あることないこと勝手に言いやがって......。


「嘘をついても私には響かないぞ、グランフォルト。ムラサメ、今日の補習は、彼のエクスマギナと試合をしろ。ロボとの連携を高めろ。それが一番の課題だ」


「言われなくても、こんなやつぶっ飛ばしてやる。シュプリー、行くぞ!」


『ええ~、僕はそういうの好きじゃないなぁ』


「ロボットが反抗すんなよ!」


『はぁい......』


レオン、キンゴ教諭とともにローグファイト専用のグラウンドへと向かう。ローグファイトはバディとの連携を深めるために考案されたアカデミアきっての授業といえる。授業外での乱闘は禁止されているが近頃は新たなスポーツとしても注目されているためルールがあやふやになってる。


「アオシ・ムラサメ、痛い目合わせてやるから覚悟しろよ?」


レオンのエクスマギナはローブをまとったように見えていたがそのローブが展開され、細い足が出てきてローブは羽のように背中に回っていく。


「そっちこそ、エクスマギナ壊しても泣きわめくなよ?」


天使のような容姿となったエクマギナを見て俺は身震いしてしまったが、これは武者震いだ。


『怖いか? アオシ』


「うっせえ。さくっと終わらせんぞ、こんな試合!」


『了解!』


ブザーが鳴り始め、両者が動き出す。エクスマギナは飛行能力を持ち合わせており、縦横無尽に空を駆け巡る。対する俺のシュプリームはあいつの言った通り素体。なんの装備もギミックも搭載していない。


「エクスマギナ、まずはそいつの足を狙え! そして、手......。頭部破損は最後だ。頭部破損すると決着になっちまうからなぁ!」


レオンの声にエクスマギナが反応し、滑空する。すかさず俺も声を出す。


「飛べ、シュプリーム!」


『はいよっと。お次は何するよ、マスター』


「ふざけてないで、適当にパンチでもキックでもしてろ! しゃべれるくらいAI知能高くしてるんだから指示されなくてもなんかできんだろ」


だが、彼はなにもしなかった。エクスマギナの右腕から光輪が発生する。それが手裏剣のように宙を舞ってシュプリームの左腕を破損させる。


「エンジェルハイロゥ......。本来は出力をさげて園芸や氷像作りでのパフォーマンス用に搭載してみたが威力はその倍を出している! これで八つ裂きにしてやるぜえ!! 旧式なんてぶっ壊れろ!」


ロボットには感情というものは本来ないはずである。だが、シュプリームは笑って見せた。


『ハハッ......。これで、僕ともおさらばできるなアオシ......。古臭いから僕を嫌っていた君を忘れないよ』


「ふざけんな! ロボットのくせに勝手に解釈すんな。俺は親父を偉大にしすぎたロボットが憎かった。もっと近くにいて欲しかったのに、遊んで欲しかったのにあいつは仕事、仕事で......。ロボットが遊び相手だと思って嫉妬していた。子供だったんだ。でも、今はそんなの関係ない! シュプリーム、お前はいつでも最高だ! だから、立ってくれ! 一緒に戦ってくれ!!」


シュプリームは俺の声に呼応して立ち上がる。


『オッケー。なんか、やる気でてきた』


「フンッ、もっとロボットっぽい言葉使えっつーの。シュプリーム、左腕を持ってあいつを叩け!」


『左手くん、悪いけど乱暴に使うよ。 おっしゃあ、いっけーーー』


「そんな小細工なしの特攻なんて無駄に決まっているだろうが! エクスマギナ、エンジェルハイロゥ乱射しろ!」


光輪が宙を舞う。だが、それを予測してシュプリームは最短ルートでエクスマギナの鋼の懐に近づく。


『これがほんとの金属バットってね!』


シュプリームは大きく振りかぶったその左腕を、エクスマギナの頭部にぶち当てる。エクスマギナは人間でいう首元で火花を散らしながらくるくると頭部を回転させながら墜落していく。



「よしっ! 見たか、レオン! シュプリームはただの素体じゃない。ちゃんとギミックがあるんだ! それをこれから見せてやる! 一発しか打てないから面倒で授業中打つのを躊躇ったけど今ならできる!」


シュプリームは肘を曲げると前腕がハッチのように開き、ブースターが露出する。拳が腕に埋まるように奥に加圧されて収納される。


「フィニッシュブローだ!」


『フィニッシュブローーーーーーーー!!』


エクスマギナの頭部は粉々に砕かれ勝負は着いた。


「エクスマギナ、ブラックアウト! 勝者、シュプリームとアオシ!」


キンゴ教諭の声があがる。これなら文句もいえないだろ。俺に負けたレオンも......。


「俺の、傑作ロボットがぁああああ! 素体ごときに......!! アオシ・ムラサメぇえ!」


レオンは俺に向かって素手で挑もうとする。だが、シュプリームがそれを止める。


『君のロボットを壊して悪かった。でも、勝負は勝負だ』


「そうだ、レオン・グランフォルト。君の成績だが、少々考え直す必要があるようだな。そしてアオシ・ムラサメ、面白いものが見れた。君は補習授業免除にしてやろう。これからも勉学に励みたまえ」


レオンはその場でうなだれて自分のロボットの亡骸を集めていた。俺は彼を見た後、窓の外を覗いた。


「すげえ青空だな」


『今日は一日中快晴らしいからな』


「アオシ・ムラサメ」


「はい?」


びっくりしすぎて覇気のない返事をしてしまった俺に対して、キンゴ教諭は神妙な顔でこちらを見つめる。


「君のその素体だが、いまだに『シュプリーム』という基本名称のままでは味気ない。なにか名づけたらどうだ?」


「そうすね......。じゃあ『蒼天そうてん』っていうのはどうっすか?」


「なるほど、蒼天のシュプリームというわけか......。まあ、悪くないだろう」


キンゴ教諭の言葉を反芻するようにシュプリームは噛み締める。


『蒼天のシュプリームか......』



エクスマギナ:機体番号SF-06EX。「シュプリームフレーム」をベースにレオンが大幅改造を加えたもの。モチーフは天使とコウモリ。羽を折りたたむ機構は彼の趣味で特に意味はない。手の甲にはムーバーエンジンから発出されるエネルギーを利用して円盤状に放出する「エンジェルハイロゥ」が搭載されている。


シュプリーム/蒼天:機体番号SF-0804。多くのシュプリームフレーム型のロボットの素体となる機体。要はノーマルフォームのようなもの。愛くるしい瞳を81灯のLEDライトで表現していたり、高機能なAIで主人公アオシと会話できる改造が施されている。会話内容はだいぶロボットとは言えないような語彙力ともとれる。

役割はないものの、ローグファイト用の必殺技として腕部に搭載されたブースターから一気にエンジンを放出させて殴りつける「フィニッシュブロー」がある。

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