同じ顔をした腹違いの姉に殺されかけました。どうして私はそこまで姉に憎まれてしまったのでしょうか?
「ほら早く死んでよ!」
「やめ……やめてください」
私は崖になんとかぶら下がっています。姉が私の指先を靴で何度もぐりぐりと踏んで、早く死んでよと苦々しげにこちらをにらみながら怒鳴りつけていました。
どうしてこんなことになったのでしょうか?
『同じ顔……』
私は町に一人住む娘、母は私が生まれてすぐ死んで、父はどこの誰とも知れず、祖母に育てられました。
そして祖母も亡くなり、13で町で生きていくことになったのです。
仕立てものなどをしてなんとか生活していたのですが、ある日、領主様の馬車が町で通りかかり、そこから出てきた一人の少女を見てから、運命がもっと悪いほうに流れ始めました。
『……私と同じ顔?』
双子と見間違えるばかりによく似た顔がそこにはありました。私のほうが多少髪が短く、粗末な服を着ていましたが、長い髪の豪奢な服を着た少女と私は全く同じ顔をしていたのです。
『双子の姉か妹がいるなんて聞いたことがないですわ!』
私は無理やり馬車に乗せられ、領主館に連れていかれ、そこで領主という男性に少女が問いかけるのを聞いたのです。
『……もしかしたら昔使用人に産ませた娘かもしれない』
話を突き合わせてみると、どうも母は領主館に昔勤めていて、そこで領主が手を出して、里にかえされ生まれたのが私みたいでした。
証拠? 領主の娘と全く同じ顔をしている。というのが証拠そのものでした。
領主とは顔は似ていませんでしたが、彼の亡くなった母という方の絵姿は私たちとよく似ていました。
祖母にあたる人ですね……。
『気持ち悪い、同じ顔なんて……双子でもないのに!』
私にとっては姉にあたる人です。聞けば数か月しか誕生日が違いません。
気持ち悪いといわれましても、私とてそっくりな顔が目の前にあった驚いています。
そこからずっと気持ち悪い、あんたなんか消えてよとことあるごとに私はこの姉に言われるようになりました。
娘として引き取るというのは固辞して、私は町に戻ったのですが……。
私のことなど気にせず生活をすればいいのに、町まで時折降りてきて、姉は私のことを罵倒するのです。
母が使用人ということで憎まれているのか? と思ったのですがどうもそれだけではないようでした。
しかし私は身内が誰もいないので、姉という人と仲良くしたかったのです。
気にしないように普通に接しているつもりでした。そして……。
私はある時、姉が仲直りをしたいというのを手紙で言ってきたので、喜んで呼び出された森にいきました。
とてもきれいなお花畑があるからそこで仲直りをしたいと書いてあったのです。
「お姉さま?」
「……こっちよ」
声が聞こえる方向に進んでいくと夕方近くであたりが一瞬暗く道を見失いました。
「こっちよ」
声が聞こえるほうに足を踏み出すと、私は足を……。
「お姉さま? 助け……」
崖から足を踏み外し私は落ちかけ、なんとかしがみついて、そして姉が憎々しげにこちらをにらんでいるのを見たのです。
私の手を靴で何度も踏んで、早く落ちてよ! と叫ぶのです。
「……お願いです助けてください!」
「ああ気持ち悪い同じ顔なんて、早くいなくなって! ひと思いに落ちればいいのにしぶといわね!」
ああ、そこまで憎まれていたなんて、私の手から力が抜け……私は崖から落ちる瞬間、姉が心の底から嬉しそうに笑うのを見たのでした。
「おい、大丈夫か?」
「う、うーん」
「茂みに落ちて、あとは回復の魔法が効いたからよかったものの、あんた死ぬところだったぞ」
目を開けるとそこには同い年くらいの男の子がいて、私は粗末な小屋で寝かされていました。
助けてくれてありがとうというと、しかしあそこから落ちるやつがまだいるなんてと彼はため息をつきます。
「……私」
「崖から落ちて助けてやったのは俺、でもあんたのその手、あんたあそこから落とされたのか……俺みたいに」
彼の話を聞くと、名前はクリス、彼は昔、領主の館で粗相をしてしまい、ここにお嬢様に連れ出され、わざと落とされたというのです。
「あんた、お嬢様だと一瞬思ってビビった。でも服は粗末だし、手は荒れて傷だらけだし、別人だってわかってほっとした」
彼も姉にここに落とされて生き残ったそうです。もともと賢者と言われた老人がここにすんでいて彼は助けてもらい、老人が死んだあともここで畑などを作って生活しているそうです。
私はここで彼と生活をすることにしました。
何度か、私たちと同じように落ちてきた人を助けながら、小さな集落をここに作り上げました。
そして十数年後、最後に落ちてきた人に、どうも次の領主を姉が継ぎ、ここに集落ができているようだという噂を聞きつけ、捜索させるらしいというのを聞いたそうです。その気の強さから婚約者にも嫌われ、婚約を解消されて、ものすごく気が立っているというのも聞きました。
多分、憂さ晴らしのためにするのだろうと。
「……潮時だな」
「ええ」
「復讐をするならいまだ」
「そうですね」
賢者が残したという数々の魔法、それを解読したクリスは私たちを魔法を使い、ここから脱出しようとしていたのです。しかし……領主の娘、つまり姉に対する憎しみはみな抑えがたく、復讐をしようという話になり。
「……どうしてあんたが生きてるのよ! 同じ顔なんてきもちわる……」
「クリス、この人の舌を抜いて……もう憎しみを聞きたくない」
「ああわかった」
賢者の古代魔法を完全に解読したクリスは、みなとともに領主の館を襲い、姉を縛り上げたのです。
ええ、少し違いはありましたが、やはりよく似た顔立ちでした。
クリスは姉の舌を抜き取り、これであの悪態を聞かずにすむなと笑いました。
彼は姉のドレスの裾を誤って踏んでしまった罪により崖に落とされたそうです。それまでさんざんいじめられたそうです。ほかのみんなもそうでした。私を見ると恐れるように最初身をひいたものです。
どうしてそこまで憎まれていたのか? 同じ顔を見ると、死がすぐそこにあるという伝説からだったそうですが……血縁関係にあるから仕方ないと思います
私は舌を抜かれた姉がみなに八つ裂きにされるのを見ながら、最後まで命乞いをしなかった姉がある意味哀れに思えたのでした。
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