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好きの気持ち  作者: レリクス
少女の決意
3/5

形あるものに愛する結末

私が産まれる前から彼はいた。彼は、私のいるお腹に手をあてる。彼の温かい手は産まれる前の私でも分かる。


「産まれてきてね。」


優しい声が、私のお母さんの子宮を通り抜け聞こえてくる。透き通るような声、優しい声、それを彼が教えてくれた。


「ほら、お兄ちゃんも頑張れっていってるぞ。」

「だめだよ、お母さんそんな動いちゃ。」


私はお母さんが、二三回跳んだせいで、私は子宮の中で跳ねる。私は、みんな優しい中ですくすくと育っている。何も問題なく、このまま行けば産まれるだろう。 


「お母さん。動いてるよ。」


私は子宮の中で、お母さんのお腹を蹴る。私がお母さんのお腹を蹴ることによって、お母さんの体は壊れていくが、それはどうでもいいだろう。私はまだ子宮の中の胎児なのだから。産まれてから考えればいい産まれてからこの恩を返せばいい。


「オギャアオギャア。」


そんなとき私は産まれた。

最初の産声は、病院の中から発声させられる。生命の誕生が行われた。でもなんでだろう。私は産まれてから感情があったのだ。


「産まれてきたのね。」

「やっと念願の二番目の子が生まれてきた。」


お父さんとお母さんは喜んでいる。私はそれが嬉しかった。だから私は神に感謝をした、産まれてきたことへ私に生命を与えてくれたことに。私は目の開けられない胎児ながら、頑張って手を動かして合わせる。感謝を伝えるために。


「お父さん産まれたの。」

「産まれたよ。」


白衣姿のお父さんと、普段着のお兄ちゃんが歓喜の声を上げて喜ぶ。


「お父さん名前は何にするの。」

「待てよ。でも考えてある。」


お父さんはもったいぶるように一拍おく。それにお兄ちゃんはごくりと唾を飲み込み、全身から聞き逃さないようにする。


「洋子だよ。」

「洋子、いい名前だね。」


お兄ちゃんにお父さん二人のくったくな笑顔が、私の脳裏に浮かぶ。なぜ、私にそれが分かるのかと言われると、私は胎児の中の夢でもう三人に会っているからだ。でも、その記憶はいつか無くなってしまう。だから私は今は覚えておこうと脳にしがみついているのだ。

それから私は育っていた。

私とお兄ちゃんとお母さんとお父さんの変わらない日々、でもそんな日々は長くは続かない。私は時が立つに連れて始めから持っていた感情は、薄れていった。


「大丈夫かい洋子。」


感情が薄れていく間も、お兄ちゃんは私に笑顔で接してくれる。そんなお兄ちゃんを私は、夢の中でも好きだった。


「大丈夫だよ、お兄ちゃん。」

「ならいいんだけど、時々洋子は何を考えているのかわからないから。」


お兄ちゃんは優しい。けどこの何気ない会話が最後になってしまったのだ、私との最後の瞬間。私との会話。

その日、お兄ちゃんは精神的に壊れてしまった。何を見たのか、何をされたのか、私にはわからないことなのだが一つだけ分かることがある。それは、お兄ちゃんが今までで一番後悔していることだ。


「お兄ちゃんは大丈夫なの。」

「大丈夫だよ。」


お父さんは私に誤魔化すように私に言い聞かせるが、私はお父さんの表情でわかってしまった。なんとなく想像していた終わりの時が、私には迫っていた。幼い少女には、まだ早い決断だったのかも知れない。でもそれはいつかくる終わりを、幼い頃から知ることは経験として残るのだ。だから彼女にとっては、初めてであってもそれは損なことではない。


「じゃあ、なんでお兄ちゃんはおとなしいの。」

「お兄ちゃんは、遠い空を見ているの。」

「じゃあなんで私の声に反応しないの。」

「それはね。お兄ちゃんが愛しているからだよ。」


私には理解ができない。お父さんの言うこと全てが、私にとってわからないことなのだ。いや、それは違うのかも知れない。私が受け入れなかった、だけなのかもしれない。


「だから大丈夫、お兄ちゃんは。」

「本当。」

「本当。嘘と言うなら指切りしよう。」

「わかった。」


私はお父さんと小指をくっつけて結び合わせる。そして、呪いともとれる歌をお父さんと笑顔で歌い出す。


「指切り、げんまん、嘘ついたら。針千本のーます指切った。」


私は約束をした。お父さんとお兄ちゃんがまた元気になる。その願いを込めて、歌を歌うのだ。これで約束は交わされた。安易な物に過ぎないが、それは大切なことだ。

それから私はおとなしくなった。元気で活発だった私だが、日に日に元気がなくなっていったのだ。

そんなとき、出会ったのが望だ。


僕は元気な妹が好きだった。天使のような明るい妹だが、僕にとっては、神同然だった。世間一般的には、僕のことをロリコンと呼ぶ人もいるだろう。でも僕は、とうにそれを越えている。


「今日も元気だね。」

「そうだね。」


俺とお父さんは離れたところで、妹を見ていた。そして、他愛ない会話を交わしている。


「お兄ちゃん。」


妹は僕に近寄ってくる。妹は僕に張り付いた。これは何気ない生活の中、僕の順風満帆な日々だ。でもそんな日は続かない。

ある日僕が学校に行って帰る時だった。教室には僕以外の誰もいなかった。僕はバックを背負って歩こうとしたとき、背後から口を塞がれた。


「これで僕のものだよ。」


僕は、その声を聞いて眠ってしまった。


「ねえ、お兄ちゃん。」


僕の目の背後から声がする。


「ねえねえ、お兄ちゃん。」


聞き覚えのある声だ。確かこの子は前にどこかで。


「起きてよ、お兄ちゃん。」


僕はたたき起こされる。まるでエロゲの主人公のように。


「やっと起きた。」


優しい口調のでもどこか怖いような。まるで天使と悪魔のどちらも兼ね備えたような、魅力のある声だった。 


「これは一体。」


僕は今まで学校にいたはずなのに、なぜか今地下牢獄のような場所で、手足が監禁されている。しかも目の前には、青と水色の中間ぐらいの色をした目の女の子が立っている。


「驚いた。」


目の前の女の子は、そのように呟く。全く女の子の言った通りの驚いたが、僕にはあるのだ。


「君は誰。」

「それは覚えてなくちゃ。」


女の子は腕を重ねて立っている。本当にわからない彼女は知っているようだが、俺には覚えがない。


「やっぱり覚えてないんですね。」


彼女は蔑むような口調で、僕に語りかける。僕はなんとなくだが思い出の中から彼女を探し出す。確か目の前の彼女は、明日美とか言ったか。僕が雨の降るつり橋から身を投げようとしているところを助けたい少女だ。


「思い出した。」

「思い出してくれたんですね。嬉しいです。」


彼女は交差していた腕を口の近くまで近づけ、恥ずかしそうにしている。彼女のことを思い出したからとて、今の状況は打破できない。


「はずしてほしいですよね。」


彼女はそう言うと、僕に取り付けた手錠を外し足の鎖も外した。僕は手足が自由になった。だからといって、この不思議な状況に納得した訳ではない。


「聞いてなかったけど。ここに連れてきたのは君かい。」

「そうですよ。」


即答だった。こんな弱そうに見える女子でも、僕をもてたのがすごいと思う。彼女の身長からすると、高校生の僕の一個下ぐらいだろう。


「そしてもう一つここはどこですか。」

「教えない。」

「なんで。」

「今からやることについていけたら解放するからだよ。」


彼女は椅子に腰かけて座る。僕を試すかのような様子でこちらを見ながら。僕はその視線に、ごくりと唾を飲み込む。


「じゃあ質問。なんで私を助けたの。」


彼女の視線は人に答えを求める目ではなく。人を一人殺っている目をしている。僕は確信した。一つでも間違えたら僕は死ぬのだと。


「それは、簡単だよ。道に美女がいたからだよ。」


僕は普通の人が出しそうな答えを、明日美の殺気だった目の前で答える。


「次の質問。私を壊してくれる。」


何をいっているのだ。目の前の彼女は自分自らの破滅を願うのか。それは、僕が間違った答えを出した結果だからだろうと思う。


「それはダメだ。」

「どうして、なんで私を壊さないの。」


それは本音からくる言葉だろう。だとしても彼女を壊すのは俺の仕事ではない。俺は彼女を助けた。でも、それは殺害する動機にはならない。だから僕は彼女を壊すことはできない。


「なら、なんで私を助けようとするの。」

「それは、君だからじゃない。僕は生きとし生きるもの全てに公平でありたいからだよ。」

「わかった。」


僕の答えを聞いて満足したのか、彼女は立ち上がり僕を押し倒す。押された地面は固く冷たく僕の体を包み込む。


「わかったは。」


彼女は、今から僕に何をしようと言うのか。僕のお腹の上を馬乗りになる。僕の心は罪悪感と好奇心でいっぱいだったが、彼女はそれをいとも簡単に裏切った。


「じゃあ、あなたが苦しんで。」


彼女は馬乗りの状態で僕が何もできない状態を利用して、自分の綺麗な顔を素手で殴り付ける。血が反対の頬にかかる。


「あなたは美女が苦しんでるのは嫌なのでしょう。なら私が殺して上げる。だって、私を助けてくれたお兄ちゃんなのだから。」


頭が狂っている。僕がされたくないことを目の前の彼女は、僕にトラウマになるように植え付ける。


「ねえ、楽しいでしょう。」


少女は狂った素手でもう一度殴る。彼女の手は何回も、顔を殴り付ける。


「ねえ、お兄ちゃん。この世界を教えてあげようか。」


彼女は正気を失っている僕に話しかけてくる。それは僕にも分かりやすいようにと思う気持ちからなのだろう。


「残酷なんだよ。理不尽なんだよ。何も価値を産み出せないんだよ。」


彼女は殴って殴って殴り続ける。それに伴って、口からも血が出てくる。彼女を止められない自分が、だんだんも憎らしくなってくる。


「これでわかったでしょ。」


血が出ている状態で、話を続けようとする彼女はどうかしている。だから僕は見ないようにと努力した。そんなとき僕の頭の中では、僕が壊れるのは、メンタルだけでいい。そうだきっと神様も望んでいるはずだ。とおかしくなっていた。


「・・・・」


彼女は言葉を発しようとするが、それは言葉にはならない。でも僕にずっと訴えているのだ。助けてと、私をこの世界から助けてとそう僕に問い詰めてくるのだ。でも、僕は彼女の望む世界とは別の方向へ進もうとしている。それが正しい未来だと信じて。


「こ・・・れで・・・・いいんだよ。」


彼女は発声される声の限界の声音で、それを口にする。鋭く瞑れた目を僕へと向けて。最後の一発を顔面に殴り付ける。

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