その7
メイは鈴露の目を見た。
「びゃっこちゃんの中に、白虎さまがいないってことは、別のところにいるってことよね?」
「そうだな」
「つまり…ミコトさんの中に隠れているってこと?」
「ああ」
「ああって…。白虎さまなら、ミコトさんに入っててもいいの?」
「とりあえず、若青龍さまは入れなくなる」
「…そういうことか」
「それよりメイ。この宝箱に触れてみろ」
メイは言われるままに、目の前の宝箱を撫でた。
ふーっとため息をつくメイ。
「何も感じないのは、私の力が足りないから?」
「いや、違う。華織さまが、時が満ちるまで封じて行かれたからだ」
「鈴露も感じないの?」
「近寄るなと言われていることぐらいだな、感じるのは」笑う鈴露。「それにしてもメイ、やはりおまえは華織さまの血を受け継ぐ者だ。この短時間で確実に力が上がっている」
「正直、よくわからないわ。自覚しているのは、ミコトさんと話していると感情のブレ幅が広くなるってことぐらい」
「そうか…」
「私から見たら、ミコトさんのほうが目覚ましいわ」
「どうしてそう思う?」
「だって、羽童さまとずっとお話してたんでしょ? 鈴露が頭の中に話しかけた時も、それがわかった。まったく能力がないっていう設定、無理があるような気がするわ」
「その“無理”の意味にたどり着かなければいけないんだよ、メイと俺は」
「…祭ちゃんと俺、じゃなくて?」微笑むメイ。
「ああ。ここはおまえと俺なんだ。朱雀の若姫たるおまえと、西園寺の直系でありながら、一条の者として、黄龍の若宮たる我のな」
「結局…西園寺の問題だってことなの?」
鈴露は何も答えない。
「あと…なんだか祭ちゃんのことを守らなくちゃって気持ちになるの。不思議よね、しっかりタイプなのに…」
「そういえば祭は?」
「飲み物を取りに行ったまま戻ってないわね」
「…しまった!」
慌てて部屋の外に向かう鈴露。
「ど、どうしたの?」
「待て! 我らも連れていけ」
声のほうを振り向く鈴露とメイ。
「連れて行けと申しておる」
「カメのぬいぐるみがしゃべった!」
びっくりして、ぬいぐるみをわしづかみにするメイ。
「何をする! これだから朱雀の者は…」
「ふん。カメごときが何を言う」
「鳥のぬいぐるみもしゃべった!!」
メイが鳥の頭をむんずとつかむと、鳥は叫んだ。
「我を誰と思うておる! この小娘が!」
「なんか、この鳥、態度でかいんですけど…」
頭を強く握るメイ。
「お、おい、やめろ。中身は朱雀さまだ。昇生さんの主宿の守り神でいらっしゃる」
「えっと…おじいちゃまが亭主をしている“雀のお宿”の?」
「ああ」
「…何でここに?」
「悠斗と華音がジェットで運んできた…そして置き去られた」
「え? おじいちゃまと、おばあちゃま、来たんですか?」
「そなたもだったな。置き去られたのは」
鼻で笑う朱雀にイラっとしたのか、メイが言う。
「ぬいぐるみは置いておいて、早く祭ちゃんを探しましょう」
「おまえの家の宿を守ってきた、この朱雀に対して、何という物言いか!」
「じゃあ、私の力を極限まで開いてください」
「な…何を言い出すのじゃ、この小娘は」
「そして、私はミコトさんを開く。それで万事解決です」
「メイ…」鈴露が頭を抱える。
「では、うかがいます。朱雀さまと…カメ…えーと、玄武さま?がここに捨て置かれた意味は? 私を開くことではないのですか? まさか、ただの役立たずとか、ありえませんよねえ」
鼻で笑うメイに、カメのぬいぐるみに入っている玄武が言う。
「我も、悠斗が亭主を務める“黒亀亭”の守り神。役立たずなどとはあり得ぬ」
「とりあえず、我らを連れていけ。祭のもとに」朱雀が言う。
「メイ。今は…おまえを開く以前に、大事故になっておる」
「大事故?」
「はよう、我らを連れていけ」
玄武の言葉に、なぜかメイは逆らえないものを感じた。
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