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その25

 苛立たし気な青龍を前に、メイは淡々と述べる。

「清流九代目問題とは別に、二つの命の理、のほうは、私がミコトさんを開いて、その意味を解き明かさないといけないと言われました」

「ならば、おまえの仕事であろう」

「出来ないことは、出来る方にお任せするというのも仕事のうちかと」


「…華織の血を引くおなごは、ちゃっかり者が多い」笑う青龍。「だが、ミコトを開くことはできぬ。華織との約束だ」

「でしたら私の封印を解いてください。そうすれば、私がミコトさんを開けるかもしれません」

「よかろう。だが、そなたを解いたなら、そなたにも“それなり”の任が行く」


「“任”とは何でしょうか?」

「ここで引かぬとは…」

「な・ん・で・しょうか?」

「…ミコトの嫁となり、青龍の女将をつとめねばならぬ」

「メイさん、ごめん。あとは俺で何とかするから」慌てるミコト。


「承知しました。ミコトさんを開いてください」

「え!?」同時に叫ぶ青龍とミコト。

「嫁になり、女将をします。ミコトさんを開いてください」

「…承知。ミコトを開いてしんぜよう」

「え? 青龍さま、待ってください!」ミコトが叫ぶ。


「んー。もう遅い。開いてしまった」

「青龍さま…」頭を抱えるミコト。

「メイが嫁では嫌なのか?」

「そうじゃなくて!…メイさんには好きな人がいて…いろいろあったので、ちょっとヤケになってるというか…今、そんなことを決めたらダメなんです!」

「…このように申しておるが、メイ、そなたはどう思う」


「うーん。ここで私の気持ちの推移を述べるというのも何なんですが…」

「述べてみよ」

「鈴露は憧れの人でした。能力者として育てられ、実際に働いていて。それに比べて私は力を封じられ、海外に行かされて。鈴露のしていることを知るたびに、私は鈴露になりたいと思いました…」

「そなたの中では、それを“恋”と呼んだのだな」


「そう…ですね。鈴露は私の目標でした。彼のいる場所までたどりつきたいと思って、海外にいても、できるだけのことをしました。能力者との交流、日本国内の情報収集」

「よく学ぶ者は嫌いではないぞ」

「学んだ結果を、何にどう活かすのか。私にミッションが与えられるのではれば、私はそれを遂行したいと思います」


「まるでミコトと清流旅館はおまえの自己実現の道具だな」

「それは…」

「青龍さま。あまり彼女をいじめないでください。メイさんも頭を冷やして」

「ミコトさん…」

「青龍さま。もう一度、彼女の力を封印してください」

「何と!」

「俺の力は、真大祭までに開けばいいんですよね。できることを模索してみたいと思います」


「…よかろう」

「ありがとうございます」頭を下げるミコト。

「ミコトよ、おまえには何か策があるのか?」

「西園寺のこと、“命”システムのことを勉強しようと思います。そこにヒントがあるような気がするんです」

「どうやって学ぶのだ」

「え…と、龍おじさんたちに聞いたり…」ミコトの声が小さくなる。


「そんなにのんびりしていては真大祭に間に合わぬ…これを使え」

 青龍が言うと、十数冊の本が目の前に現れた。

「これは…?」

「華織や紗由が記した西園寺と“命”にまつわる物語だ」

「ばあちゃんも書いてた…」


 横からメイが一冊を手に取った。

「『神様のお守りも楽じゃないわと彼女は言った~西園寺命記~』……小説ですか?」

「小説風のノンフィクションといったところだな」

「わかりました。勉強させていただきます」


「よかろう。学びし後、どういう形でおまえが開くのかを見せてもらおう、ミコト。それまでしばしの猶予じゃ」

 そう言うと、青龍の姿は消え、ミコトとメイは、元いた部屋で目を覚ました。


「ん…」辺りを見回すメイ。

「戻ってきたんだね、俺たち」

「今のは夢…?…じゃない!!」

 メイが目の前に積まれた本の山を見て叫んだ。


「なんか、本の数、増えてない?」苦笑いするミコト。

「同じ本が2冊ずつあるわ」メイが本を並べながら言う。

「2冊?」

「二人で勉強しろということじゃないかしら。だって本来、ミコトさんを開くのは私の予定なんだから、私にも勉強が必要よね」頷くメイ。「ふふ。面白くなってきた」


「じいちゃんや、ばあちゃんのこと、もっとわかるんだなあ、きっと…」嬉しそうなミコト。

「じゃあ、さっそく始めましょう!」

「うん」

 メイは『紗由・翔太之巻』と書かれた一冊を手に取り、めくり始めた。


  *  *  *


青龍之巻2 終 続いて 紗由・翔太之巻 その1へ


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