その22
教室内のホワイトボードに図解しながら、龍をはじめとする元“命”たちに次々と指示をしていくミコトを、目を丸くして見つめるメイ。
「ミコトさん…天才」
「他人事だから、何とでも言えるってやつだよ」ミコトがニッコリ笑う。
「ううん。すごいわ…走馬おじさんと麗さんの結婚式も、鈴露と祭ちゃんの結婚式と一緒に行うダブル挙式なんて、誰も思いつかないわ」
「ばあちゃんが言ってたんだ。手間を省くには一挙両得をいつも念頭に置くこと」
「なるほどねえ…おめでた倍増で、手間を省いて倍褒められる感じ?」
「そうそう。ばあちゃん、ちゃっかりさんだからさ」
「紗由は小さい頃からそうだったよ」龍がため息をつく。「にいさまでなくちゃ、できないことなの、とか何とか言って、面倒を押し付けた上に、おやつも横取りされたものだよ」
「ああ…祭が見事に引き継いでるなあ」
「祭ちゃんが? そんなふうに見えないけど」
「考えてみれば、俺に嘘をついてなかった頃は遠慮がなかった」
「そっか…。でも、これからは昔に戻れるわね」笑うメイ。
「いろいろ横取りされそうで、それもなあ…」苦笑いのミコト。
「それにしても、何で若青龍さまは、あんな間抜けなこと言ったのかしら」不満げなメイ。
「ああ、華音さんを本家の“命”にっていう話ね」
「おばあちゃま、高橋なんだから、なれないわよね、そもそも」
「そこまで気づいて、その先を考えろってことなんだろうね」
「で、ミコトさん的な最善の配置はこれってことなのね」
ホワイトボードを見ながらうなずくメイ。
「西園寺龍<青龍>、西園寺聖人<白虎>、花巻充<玄武>、西園寺昇生<朱雀>がひとつの“集”。そのうち、昇生おじさまを外して…うちのおじいちゃまを、高橋から西園寺姓にして、西園寺走馬となった、走馬おじさんを置く。
もうひとつの“集”は、四辻翼<白虎>、久我大地<朱雀>、有川恭介<玄武>。<青龍>が欠けている。そこに、西園寺華音となったおばあちゃまを置く」
「とりあえず、龍おじさんと華音さんは西園寺の二大勢力というか、力が強い人らしいから、そこは違うグループに置いておく。リスクの分散だね」
「うんうん。で、鈴露は?」
「次世代のリーダーとして別グループを作る」
ボードに“ネオ命”と書くミコト。
「別グループ?」
「そう。鈴露と、龍おじさんの孫の詩音ちゃん、真琴おばさんの孫の神楽ちゃん」
「西園寺の血を引く力の強い人たちってこと?」
「あとは、メイさんか弟の歩くんが、残りの一枠に入ってくれれば完璧」
「えー。“命”なんてイヤよ」
「さっき、本家の“命”になるって言ってたじゃない」
「あれは勢いっていうか…」
「そうだね。俺も、メイさんは向かないと思う」
「そうね。私もメイちゃんは向かないと思うわ」大きくうなずく真里菜。
「おばさま…! 何でです?」
「あなたは可愛いお嫁さんとか、ステキなお着物で働く仕事が合ってる…私の鼻がそう言ってるわ」
「ええ、そうね、まりりん」奏子が身を乗り出す。「お着物という言葉に、私の石が反応してよ」
「しばし、お待ちを…」史緒が手提げ袋から半紙と筆ペンを取り出し、穂先を上に向け、天を仰いだ。「…降りて参ります…」
見守る一同。
さらさらと半紙に文字を書き出す史緒。
書きあがると、皆に紙を見せる。
「“清い流れに身を置け”…ご宣託でございます」
「あの…」戸惑うメイ。
「にゃーん」
そこに、びゃっこちゃんが、部屋の隅にあった鉢植えのアイビーの葉を加えて引きずり出した。
「びゃっこちゃん! おいたしないの!」
駆け寄った咲耶が、ハッとする。
「アイビーの花言葉は…結婚。これを史緒お姉さまの書の印にせよと?…」
「メイちゃん。もう結論は出たようだわ」
「結論…?」
「でも、教えてあげない」
真里菜は、ふふふと笑うと、ミコトを見つめた。
「さあ、みんな。ダブル挙式の準備にかかりましょう」
パンパンと手を叩く真里菜の元に、祭が難しい顔で駆け寄ってきた。
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